「親日国ランキング」という一枚の表を見ると、世界中の国を同じものさしで並べたように見えます。ところが元になっている外務省の調査は、年度ごとに対象国を入れ替えて実施されています。毎年すべての国を測っているわけではありません。
直近では、令和7年10月から11月にかけて、米国・ASEAN・インド・オーストラリア・アフリカ3か国を対象に調査が行われ、令和8年3月13日に結果が公表されました。ASEANは93%、インドは97%、オーストラリアは90%が日本と「友好関係にある」と回答しています。
数字を読むときに効いてくるのは、「友好関係にあるか」と「信頼できるか」と「重要なパートナーか」が別々の設問だという点です。割合が高くても順位は下がる、という逆転が実際に起きています。
外務省の調査は毎年同じ国を測っていない
ランキングの土台になっている「海外における対日世論調査」は、外務省が毎年度実施しています。ただし、対象国は固定されていません。米国だけは毎年入りますが、それ以外の地域は年度ごとに入れ替わります。
| 年度 | 対象 |
|---|---|
| 令和7年度 | 米国、ASEAN10か国、インド、オーストラリア、アフリカ3か国 |
| 令和6年度 | 米国、欧州5か国、中央アジア4か国、中東7か国 |
| 令和5年度 | 米国、ASEAN、インド、オーストラリア、中南米7か国 |
| 令和4年度 | 米国、カナダ、欧州5か国、アフリカ3か国 |
| 令和3年度 | 米国、ASEAN、豪州、インド、中央アジア4か国、中東7か国 |
| 令和2年度 | 米国、中南米7か国、欧州5か国 |
この表の意味するところははっきりしています。ある年の数字だけを並べてランキングにすると、その年に調査されなかった国は最初から入りません。「入っていない=親日ではない」ではなく、「その年は測っていない」だけです。逆に、複数年の数字を混ぜて一覧にすると、今度は調査時期の違うものを比べることになります。
外務省自身も、この調査の目的を「海外における一般的な日本のイメージや、日本の外交政策に対する理解等について観測し、外交政策立案等の参考とすべく」実施していると説明しています。国同士を順位づけるために作られた調査ではありません。
令和7年度に公表された数字
令和8年3月13日の報道発表から、対日関係と対日信頼度の数字を抜き出します。前回調査との比較も外務省が併記しています。
| 対象 | 友好関係にある | 信頼できる | 調査の規模 |
|---|---|---|---|
| インド | 97%(前回97%) | 97%(前回96%) | 18〜69歳 2,200名 |
| ASEAN10か国 | 93%(前回91%) | 94%(前回91%) | 18〜59歳 3,000名(各国300名) |
| オーストラリア | 90%(前回80%) | 87%(前回79%) | 18〜69歳 400名 |
| アフリカ3か国 | 89%(前回86%) | 88%(前回87%) | 18〜59歳 1,500名(各国500名) |
| 米国(一般の部) | 76%(前年度78%) | 80%(前年度77%) | 無作為抽出の成人1,004名 |
| 米国(有識者の部) | 97%(前年度96%) | 98%(前年度97%) | 指導的立場の200名 |
注目したいのは米国です。一般の部は76%で、一覧の中では最も低い数字になっています。ところが同じ米国でも、有識者の部は97%でインドと並びます。同じ国でも、誰に聞くかで20ポイント以上動きます。ランキングが「国ごとに1つの数字」を置く形をとっている以上、この幅は表からは消えてしまいます。
もう一点、オーストラリアの伸びが目を引きます。友好関係は80%から90%へ、信頼度は79%から87%へと動きました。ただし前回調査は令和5年度で、2年分の変化が一度に出ています。サンプルも400名と、他より小さい規模です。
「友好」と「信頼」と「パートナー」は別々の設問
対日関係
「日本とあなたの国は現在どのような関係にあると思いますか」に対し、「とても友好的な関係にある」「どちらかというと友好的な関係にある」と答えた割合です。相手国との距離感を聞いています。
対日信頼度
「とても信頼できる」「どちらかというと信頼できる」と答えた割合です。友好かどうかとは別に、信を置けるかを聞いています。
今後重要なパートナーとなる国・機関
G20諸国等の中から選ぶ質問で、複数回答が可能です。ここでは他国との相対評価になります。
最も信頼できる国・機関
こちらは選択肢の中から1つを選ぶ形です。日本を高く評価していても、他国をより高く評価していれば日本は選ばれません。
この違いが数字に表れているのがASEANです。対日関係93%、対日信頼度94%と高い水準にありながら、「今後重要なパートナー」では45%で中国に次ぐ2位、「最も信頼できる国・機関」では17%で中国とASEANに次ぐ3位でした。
| 対象 | 今後重要なパートナー | 最も信頼できる国・機関 |
|---|---|---|
| ASEAN10か国 | 45%(前回43%)で2位。前回は1位 | 17%(前回17%)で3位。前回は2位 |
| インド | 57%(前回50%)で、ロシアに次ぐ2位 | 報道発表に記載なし |
| オーストラリア | 44%(前回42%) | 報道発表に記載なし |
| 米国 | アジアの国・地域の中で1位(一般の部・有識者の部とも) | 報道発表に記載なし |
ASEANの「最も信頼できる国・機関」は、割合が17%で前回と同じなのに、順位は2位から3位へ下がりました。日本の数字は動いていないのに、順位だけが動いています。相対評価の質問では、こういうことが普通に起きます。「順位が下がった=日本の評価が下がった」と読むと、事実と食い違います。
米国では設問ごとに答えが分かれている
米国の調査は毎年実施されているため、経年の動きが追いやすくなっています。令和7年度の報道発表からは、次のような数字が読み取れます。
| 設問 | 一般の部 | 有識者の部 |
|---|---|---|
| 日米安全保障条約を維持すべき | 78%(前年度74%) | 93%(前年度81%) |
| 日本の防衛力を増強すべき | 33%(前年度33%) | 55%(前年度45%) |
| 日本の防衛力は現状維持がよい | 39%(前年度34%) | 38%(前年度35%) |
| 日本は米国経済に良い影響(貿易) | 71%(前年度69%) | — |
| 日本は米国経済に良い影響(投資) | 66%(前年度59%) | — |
| 日本は米国経済に良い影響(雇用創出) | 57%(前年度53%) | — |
| FOIPの取組を進めていくべき | — | 86%(前年度77%) |
「日本と友好関係にある」が一般の部で76%なのに対し、「日米安全保障条約を維持すべき」は78%、「日本は米国の貿易に良い影響を与えている」は71%です。対日感情という一語でまとめられがちな部分が、実際には設問ごとにばらけています。ひとつの割合を取り出してランキングにすると、この幅が落ちます。
ランキングを読むときの5つの注意
調査年が同じか確かめる
令和7年度の調査は米国・ASEAN・インド・豪州・アフリカ3か国だけです。欧州や中東の数字は令和6年度、中南米は令和5年度のものになります。
設問が同じか確かめる
「友好関係にある」と「信頼できる」と「重要なパートナー」は別の質問です。出典の違う数字を同じ列に並べると比較になりません。
誰に聞いたかを見る
米国調査は一般の部と有識者の部で結果が大きく違います。オーストラリアは400名、ASEANは各国300名と、規模もそろっていません。
順位の変動と割合の変動を分ける
ASEANの「最も信頼できる国・機関」は、割合が17%で据え置きのまま順位だけが下がりました。
調査されていない国は「不明」と扱う
この調査は世界のすべての国を対象にしていません。表に出てこない国について、良い悪いの判断材料はありません。
外務省は令和元年度以前の結果概要について、国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業(WARP)のサイトで閲覧できると案内しています。古い年度の数字を出典つきで確かめたい場合は、そちらを当たることになります。
親日国ランキング
以下の表は、外務省「海外における対日世論調査」に加え、言論NPOの日中共同世論調査・日韓共同世論調査、Levada Centerの調査から、各国の対日印象にあたる割合をまとめたものです。上で見たとおり、調査年・設問・対象者が国によって異なります。順位そのものよりも、どの調査のどの設問から来た数字かを見ながら読んでください。
| 国名 | 順位 | 平均 | 令和7年 | 令和6年 | 令和5年 | 令和4年 | 令和3年 | 令和2年 | データソース |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| フィリピン | 1位 | 98% | 98% | 97% | 98% | 海外における対日世論調査 | |||
| タイ | 2位 | 97% | 98% | 98% | 94% | 海外における対日世論調査 | |||
| インドネシア | 3位 | 96% | 98% | 96% | 95% | 海外における対日世論調査 | |||
| ベトナム | 3位 | 96% | 96% | 97% | 96% | 海外における対日世論調査 | |||
| ケニア | 5位 | 95% | 95% | 95% | 海外における対日世論調査 | ||||
| ブルネイ | 6位 | 94% | 94% | 92% | 97% | 海外における対日世論調査 | |||
| インド | 7位 | 94% | 97% | 94% | 91% | 海外における対日世論調査 | |||
| カンボジア | 8位 | 92% | 92% | 92% | 91% | 海外における対日世論調査 | |||
| マレーシア | 9位 | 90% | 94% | 88% | 88% | 海外における対日世論調査 | |||
| UAE | 10位 | 90% | 95% | 84% | 海外における対日世論調査 | ||||
| シンガポール | 11位 | 89% | 91% | 87% | 88% | 海外における対日世論調査 | |||
| ヨルダン | 12位 | 87% | 89% | 85% | 海外における対日世論調査 | ||||
| KSA | 12位 | 87% | 95% | 79% | 海外における対日世論調査 | ||||
| コートジボワール | 12位 | 87% | 87% | 87% | 海外における対日世論調査 | ||||
| キルギス | 15位 | 86% | 90% | 81% | 海外における対日世論調査 | ||||
| ミャンマー | 16位 | 85% | 85% | 海外における対日世論調査 | |||||
| ラオス | 17位 | 83% | 87% | 76% | 87% | 海外における対日世論調査 | |||
| オーストラリア | 18位 | 83% | 90% | 80% | 78% | 海外における対日世論調査 | |||
| トルコ | 19位 | 82% | 88% | 75% | 海外における対日世論調査 | ||||
| カザフスタン | 20位 | 81% | 87% | 75% | 海外における対日世論調査 | ||||
| メキシコ | 21位 | 81% | 92% | 70% | 海外における対日世論調査 | ||||
| ブラジル | 22位 | 81% | 85% | 76% | 海外における対日世論調査 | ||||
| エジプト | 23位 | 80% | 87% | 73% | 海外における対日世論調査 | ||||
| イラン | 23位 | 80% | 94% | 66% | 海外における対日世論調査 | ||||
| 南アフリカ | 25位 | 79% | 83% | 74% | 海外における対日世論調査 | ||||
| チュニジア | 26位 | 77% | 89% | 65% | 海外における対日世論調査 | ||||
| ウズベキスタン | 27位 | 76% | 61% | 91% | 海外における対日世論調査 | ||||
| コロンビア | 28位 | 75% | 84% | 66% | 海外における対日世論調査 | ||||
| イタリア | 29位 | 74% | 70% | 78% | 75% | 海外における対日世論調査 | |||
| 米国 | 30位 | 74% | 76% | 78% | 75% | 72% | 70% | 74% | 海外における対日世論調査 |
| タジキスタン | 31位 | 73% | 92% | 53% | 海外における対日世論調査 | ||||
| ボリビア | 32位 | 72% | 78% | 66% | 海外における対日世論調査 | ||||
| カナダ | 32位 | 72% | 72% | 海外における対日世論調査 | |||||
| フランス | 34位 | 71% | 74% | 76% | 64% | 海外における対日世論調査 | |||
| ドイツ | 35位 | 71% | 73% | 60% | 80% | 海外における対日世論調査 | |||
| ウルグアイ | 36位 | 70% | 73% | 66% | 海外における対日世論調査 | ||||
| 英国 | 37位 | 69% | 71% | 69% | 67% | 海外における対日世論調査 | |||
| ハンガリー | 38位 | 67% | 75% | 57% | 68% | 海外における対日世論調査 | |||
| アルゼンチン | 39位 | 64% | 69% | 59% | 海外における対日世論調査 | ||||
| トリニダード・トバゴ | 40位 | 62% | 55% | 68% | 海外における対日世論調査 | ||||
| ロシア | 41位 | 46% | 41% | 50% | Levada Center | ||||
| 中国 | 42位 | 32% | 12.3% | 37.0% | 35.2% | 32.0% | 45.2% | 言論NPO 日中共同世論調査 | |
| 韓国 | 43位 | 23% | 28.9% | 30.4% | 20.5% | 12.3% | 言論NPO 日韓共同世論調査 |
この記事で確認できなかったこと
- ASEAN10か国それぞれの内訳。報道発表は10か国の合計値で示されており、国別の割合は結果詳細のPDFを見る必要があります。
- アフリカ3か国それぞれの内訳。こちらも3か国全体の数字として公表されています。
- 令和8年度の調査結果。令和7年度の公表が令和8年3月13日、一覧ページの更新が令和8年6月17日であり、次の結果はまだ出ていません。
- 言論NPOの日中・日韓共同世論調査の最新回。今回アクセスした時点で同団体のまとめページが表示されず、最新回の確認ができませんでした。
- 上の表に含まれる各国の数字がどの年度の調査に対応するか。表の説明欄の記載をあわせて確認してください。
この記事が参照した一次情報
- 外務省「海外における対日世論調査」(令和8年6月17日更新。年度ごとの調査対象国と結果PDFの一覧)
- 外務省「令和7年度海外対日世論調査」(令和8年3月13日報道発表。調査時期・対象・サンプル数と、米国・ASEAN・インド・オーストラリア・アフリカ3か国の結果)
本記事は公表された世論調査の整理であり、特定の国への評価を示すものではありません。数値はいずれも調査時点のものです。
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