
「キプロス不動産って買えるですか?」
「キプロス不動産投資ってどうなんですか?」
キプロス不動産の購入、キプロス不動産投資を検討している方もいるかと思います。今回は、キプロス不動産投資、キプロス不動産の買い方・メリットデメリット・リスク・利回り・税金まで、徹底的に検証したいと思います。
そもそも、キプロス不動産は、日本在住の日本人が買えるの?
元々、キプロス不動産では、
「外国人(非EU国籍者)は、キプロスでの不動産購入には一定の制限がある」とされてきました。
具体的には、
- 戸建て、またはアパート、1件
- または、最大4,014㎡の土地
- 所有目的は基本的に「本人および家族の使用」である必要がある
- 購入には、閣僚会議(Council of Ministers)の承認が必要
とされていました。
これだけ聞くと、「制限が多くて、投資できないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、近年のキプロス政府の方針により、外国からの投資促進が重要課題となり、規制は事実上かなり緩和されています。
現在では、リマソールやパフォスといった人気地域では、外国人の不動産購入が可能で、かつ賃貸や転売も許可されており、実質的には不動産投資として活用できる環境が整っています。
また、キプロスには不動産購入を通じた「永住権取得制度(ゴールデンビザ)」もあり、一定の投資額(30万ユーロ以上)を満たせば、永住ビザも取得可能です。

大前提として、キプロス政府は、外資導入による経済成長とEU圏内での競争力を高めることを目的として、外国人投資家への不動産市場開放を進めています。
キプロスという国とは?
概要
| 投資先 | キプロス不動産 |
|---|---|
| 国名 | キプロス共和国 |
| 面積(k㎡) | 9,251k㎡ |
| 日本との比較 | 0.02倍 |
| 人口 | 1,358,282人 |
| 日本との比較 | 0.01倍 |
| 首都 | ニコシア |
| 民族 | ギリシャ系、トルコ系、その他(マロン派、アルメニア系等) |
| 言語 | ギリシャ語、トルコ語(この他、英語が広く用いられている) |
| 宗教 | ギリシャ正教、回教、その他(マロン派、アルメニア教会等) |
| 通貨 | ユーロ(EUR) |
| 政策 | 一院制 |
| 主要産業 | 観光業、金融業、海運業 |
| 日本からの移動時間 | 16時間 |
| 為替 | 変動相場制 |
| 格付け | S&P BB- フィッチ B+ ムーディーズ BB- |
キプロス共和国(Republic of Cyprus)は、東地中海に位置する島国で、ヨーロッパ・中東・アジアの交差点という戦略的な立地を持ちます。面積は約9,251平方キロメートルで、四国とほぼ同じ規模。人口は約92万人と小規模ですが、EU加盟国として高い生活水準と安定した政治体制を有しています。首都は内陸部のニコシアで、世界で唯一分断された首都でもあり、北部は事実上トルコ系勢力が支配する「北キプロス・トルコ共和国」となっています(国際的には承認されていません)。
気候は典型的な地中海性気候で、夏は暑く乾燥し、冬は温暖で雨が少ないのが特徴です。年間300日以上が晴天といわれ、ヨーロッパのリゾート地としても人気が高く、特にリマソール、パフォス、ラルナカなどの沿岸都市には観光客が多く訪れます。通貨はユーロを採用し、ギリシャ語とトルコ語が公用語ですが、英語も広く通用するため外国人にとって生活しやすい環境が整っています。
経済面では、観光業、金融業、不動産業、IT産業が主要な柱で、法人税率が欧州でも低水準(12.5%)に抑えられていることから、国際企業の誘致にも成功しています。加えて、EU域内でのアクセス性、英国との歴史的つながり(旧英領)もあり、イギリスやロシア、イスラエルなどからの不動産投資・移住需要が高まっています。政治的安定性、法整備の信頼性も高く、特に不動産取引においては英米法の影響を受けた厳格な登記制度があり、外国人でも安心して購入できます。
また、ゴールデンビザ制度により、一定額以上の不動産投資を行った外国人には永住権が付与される制度もあり、資産運用・移住を目的とした投資家にも魅力的な選択肢となっています。キプロスは小国ながらも、多文化・多機能な魅力を併せ持つ注目の投資先です。
経済
キプロスの経済は、地中海の要衝という地理的優位性と、欧州連合(EU)加盟国としての制度的安定性を背景に、サービス産業を中心に発展してきました。特に観光、金融、不動産、海運の4分野は、GDPの大半を占める重要な柱となっています。
観光業は、キプロス経済の中心的な存在であり、国の外貨収入の多くを支えています。年間300日以上が晴天とされる温暖な気候、青い海とビーチ、古代遺跡の数々が、ヨーロッパや中東、旧ソ連圏の旅行者を惹きつけています。イギリス、ドイツ、ロシア、イスラエルなどからの観光客が多く、夏場のリゾート地は非常に賑わいを見せます。観光客の回復とともに、ホテル・飲食・交通・小売など幅広い関連産業も潤い、地方経済を支えるエンジンともなっています。
金融業もキプロスの特徴的な産業です。法人税率が12.5%と欧州内で低水準に抑えられ、かつ英米法ベースの法制度が整備されていることから、多国籍企業がキプロスを本拠地とするケースが多く見られます。特に投資ファンド、信託業務、保険・金融仲介業などは国際的にも競争力があり、「地中海のオフショア金融センター」としての立ち位置を確立しています。
不動産市場も活況を呈しています。EU内での住居需要、観光による短期賃貸需要、そして外国人による投資や移住が相まって、キプロス各地で新築住宅や商業物件の開発が進んでいます。特に、永住権(ゴールデンビザ)制度の存在が大きく、30万ユーロ以上の不動産投資によってEU圏内での長期滞在権を得られる仕組みが、アジアや中東、ロシアなどからの富裕層を引き寄せています。物件価格は年々上昇傾向にあり、賃貸利回りも3〜6%と安定していることから、キャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙える市場となっています。
さらにキプロスは、意外にも「海運大国」です。国際船籍の登録数で世界上位に位置しており、海運関連会社の多くがリマソールに拠点を置いています。こうした企業から得られる法人税・登記収入なども国家財政の重要な一部となっています。
近年では、情報通信産業やスタートアップ誘致にも注力しており、特にイスラエルや欧州のIT企業が進出を始めています。英語が広く通じ、税制も明確で、法的な安定性もあることから、リモートワーカーやITフリーランスにとっても魅力的な拠点とされています。
一方で、キプロス経済にはいくつかの課題もあります。例えば、北キプロスとの分断状態が依然として続いており、国土の一部は事実上トルコの支配下にあります。ただし、経済活動の大部分は南側(ギリシャ系のキプロス共和国)で行われており、日常的には大きな混乱はありません。さらに、観光業の季節変動性や、外資への依存度の高さといった構造的な弱点も指摘されています。
それでも、マクロ経済は安定しており、インフレや財政赤字もコントロール下にあります。EU規制に準拠した透明な制度、地政学的に重要な位置、そして比較的柔軟な税制度を活かして、キプロスは今後も中東・欧州間のビジネス拠点として発展していくと見られています。小さな島国ながら、経済的には多様な顔を持ち、国際投資家や事業家にとって注目に値する市場といえるでしょう。
キプロス不動産が不動産投資で注目される理由・メリット
1.EU加盟国でありながら、不動産価格が割安
キプロスは2004年にEUに加盟し、ユーロ圏の一員でありながら、不動産価格が他の地中海諸国と比べて極めて割安です。
例えば、スペインのバルセロナでは新築物件が1㎡あたり5,000〜6,000ユーロが相場ですが、キプロスの首都ニコシアでは1,800〜2,500ユーロ、人気リゾート地のリマソールでも3,000〜4,000ユーロ程度にとどまります。この価格差により、低予算でも地中海リゾート物件が保有できることから、個人投資家やリタイアメント層に人気です。
ユーロ圏の不動産価格比較
| 国名 | 都市名 | 販売価格(EUR or USD:1-Bed) |
|---|---|---|
| オーストリア | ウィーン | 325000 € |
| キプロス | ニコシア | 140000 € |
| フランス | パリ | 443000 € |
| ドイツ | ベルリン | 329000 € |
| アイルランド | ダブリン | 295000 € |
| イタリア | ミラノ | 305000 € |
| ルクセンブルク | ルクセンブルク | 620000 € |
| オランダ | アムステルダム | 400000 € |
| ポルトガル | リスボン | 415000 € |
| スペイン | マドリード | 320000 € |
2.不動産購入による永住権(PR)取得が可能

キプロス政府は投資移民制度を整備しており、30万ユーロ以上の不動産を購入すれば、投資家本人と家族(配偶者・子ども・親)に永住権(PR)が与えられます。
この永住権は就労義務がなく、EU域内での滞在や移動に制限がないのが魅力です。教育移住を希望する家庭や、ヨーロッパとの2拠点生活を望む富裕層にとって、資産取得とビザ取得を同時に実現できる投資となっています。
3.賃料収入・売却益にかかる税負担が軽い
キプロスの所得税制度では、個人の年間所得が19,500ユーロ未満であれば所得税が非課税です。
また、賃料収入は特別防衛税(SCD)などの対象にはなりますが、その税率も非常に低く抑えられています(例:3%~5%)。不動産の譲渡益についても、特定条件(居住年数や自己使用など)を満たせばキャピタルゲイン税が軽減または非課税になる制度があります。
これにより、インカムゲイン・キャピタルゲインの両方で高い税効率が期待できます。
キプロスの主な税制概要
1. 法人税(Corporate Tax)
- 税率:12.5%
- EU加盟国の中でも最も低い水準。
- キプロス法人が国外で得た所得(配当、利息など)には免税や非課税制度あり。
2. 配当所得税(Dividend Tax)
- 原則:非課税(個人・非居住法人)
- 特定条件を満たす法人間配当も非課税
※居住者が受け取る国内配当については「防衛税(SDC tax)」がかかる場合あり(17% など)。
3. キャピタルゲイン税(Capital Gains Tax)
- 原則:非課税
- 株式や不動産の売却益は基本的に非課税
- ただし、キプロス国内不動産の売却益に限り20%のキャピタルゲイン税がかかる
4. 所得税(個人所得税)
- 年間19,500ユーロ以下:非課税
- 超過部分は以下の累進課税:
| 年間所得額 | 税率 |
|---|---|
| 0~19,500ユーロ | 0% |
| 19,501~28,000ユーロ | 20% |
| 28,001~36,300ユーロ | 25% |
| 36,301~60,000ユーロ | 30% |
| 60,001ユーロ超 | 35% |
5. VAT(付加価値税)
- 標準税率:19%
- 生活必需品等は5%または9%の軽減税率対象
4.相続税・贈与税がゼロで資産承継に有利
2000年に相続税・贈与税が廃止され、現在キプロスでは生前贈与・相続ともに非課税です。
他国であれば数十%課税されるケースが多い中、資産保有者が子どもや孫に不動産を譲渡する際、税金を一切支払う必要がありません。
これは特に、世代を超えた長期資産運用や相続対策を重視する投資家にとって大きなメリットです。
5.地中海の交通要衝として経済発展が継続
キプロスは、ヨーロッパ・中東・アジアの交差点に位置する地理的優位性から、物流・観光・ビジネス拠点としての重要性が高まっています。
リマソール港の拡張プロジェクトや、ラルナカ空港の近代化に加え、中国やイスラエルからのインフラ投資も流入中です。こうした公共投資の恩恵を受けて、不動産価値の上昇が期待されるエリアが次々と開発されています。
6.英語が広く通用し、契約書や登記も英語対応
キプロスはイギリス統治下にあった歴史的背景から、英語が非常に広く使われており、人口の80%以上が英語を話せるとされています。
行政手続きや銀行口座開設、不動産登記・契約書も英語で対応可能なため、外国人でも法的リスクなく不動産を取得・保有できる環境が整っています。
英語が共通言語であることは、他の非英語圏EU諸国と比べて大きな安心材料です。
7.高水準の医療・教育インフラが整備されている
キプロスはEU加盟国として、医療制度の質とアクセス性が高く、EU圏の医療カード(EHIC)を使って多くの治療が受けられます。
また、英語で授業を行うインターナショナルスクールや大学も充実しており、特に医療・法学・観光学分野の教育に強みがあります。教育目的での移住や、リタイアメント後の安心した生活を求める層にとっても、選ばれる理由となっています。
8.ユーロ建てで資産を保有できる
キプロスはユーロ圏であるため、不動産価格や収益は基本的にユーロ建てとなります。
ユーロは米ドルに次ぐ世界の主要通貨であり、為替リスクを軽減した資産分散が可能です。日本円建ての資産に偏っている投資家にとって、為替ヘッジとしてのユーロ不動産は価値が高いです。
キプロスの為替「EUR/JPY」
キプロスの為替「EUR/USD」
9.観光地としての魅力が高く、安定した賃貸需要
キプロスは「ヨーロッパのハワイ」とも呼ばれるほど、気候・自然・治安の三拍子が揃ったリゾート地で、年間平均320日が晴れとされています。
ラルナカやパフォスなどのエリアでは、観光客向け短期賃貸(Airbnbなど)が活況を呈しており、表面利回りが6〜8%を超えるケースも存在します。
また、英語圏からの観光客に人気が高く、長期滞在者向けの賃貸需要も安定しています。
10.不動産登記制度や法制度が整っており、安全性が高い
キプロスは英米式のコモンロー(Common Law)をベースとした法制度を採用しており、不動産登記制度も非常に整っています。
所有権登記は電子化されており、重複登記や虚偽登記のリスクは極めて低く、海外投資家も安全に権利保有が可能です。さらに、法務局(Land Registry Office)による登記保証制度があり、万が一のトラブル発生時にも保護を受けられる体制が整っています。
キプロス不動産投資におけるデメリット・リスク
1.人口が増えるわけではない
キプロスは、島国であり、大きな国土があるわけではないため、人口は微増・維持という国です。今後のキャピタルゲインを狙う上での人口ボーナスは期待できない国と言えます。
キプロスの総人口推移
2.為替リスク。ユーロ安による円建て価値の目減りに注意
キプロスはユーロ圏に属しており、通貨は「ユーロ(EUR)」です。
ユーロの為替レートは、世界情勢や金融政策の影響を受けやすく、円に対して大きく上下することがあります。たとえば、欧州中央銀行(ECB)の利下げや、地政学的リスク(ウクライナ情勢など)によってユーロ安が進めば、日本円に換算した不動産価値や家賃収入は減少するリスクがあります。
今後、日本が利上げを進め、ユーロが低金利政策を維持した場合には、ユーロ安・円高が進行する可能性も否定できません。ユーロ建ての資産は、日本円換算の価値に為替影響を大きく受けることを理解しておく必要があります。
3.政治・外交リスク。分断国家としての特殊事情
キプロスは、1974年のトルコによる北部占領以降、現在も南北で実質的に国家が分断されています。
投資対象となるのは国際的に承認された「南キプロス(ギリシャ系)」ですが、北キプロス(トルコ系)との緊張状態が完全に解消されたわけではありません。地政学リスクは比較的低いとはいえ、政治的対立が再燃すれば投資先としての信用に影響する可能性があります。
また、トルコとの外交関係の影響で、周辺国との摩擦が経済や不動産市場に影響を与えるリスクもゼロではありません。
4.市場の流動性リスク。買い手が限られる可能性
キプロスの不動産市場は、マルタやギリシャと同様に「欧州域内の富裕層」や「第三国の移住者」をターゲットとしたものが中心です。
そのため、日本人やアジア人投資家による現地物件の売却時には、買い手が欧州圏に限定されやすく、市場の流動性に制限が出る可能性があります。特に高級リゾート物件や移住目的の住宅は、景気後退時に売れにくくなる傾向があるため、中長期保有を前提に考える必要があります。
また、短期売却を前提にすると、登記費用・仲介手数料・税負担などのコストが利益を圧迫する点にも注意が必要です。
5.税制変更・優遇措置の見直しリスク
キプロスは、かつて「投資による市民権付与プログラム(通称:ゴールデンパスポート制度)」を導入し、不動産投資を通じて多くの外国資本を呼び込んできましたが、制度の乱用や政治スキャンダルを受けて2020年に市民権付与プログラムは廃止されました。
一方で、不動産投資を通じた永住権取得プログラム(Permanent Residency by Investment)は現在も継続中であり、20万ユーロ〜30万ユーロ程度の不動産購入を条件に、非EU圏からの投資家に対してキプロスでの居住権が付与されています。
ただしこの永住権制度も、EUの圧力や国際的な規制強化によって将来的に条件が厳しくなる可能性はあります。また、税制面においても、OECDのBEPS対応や最低法人税率制度(15%ルール)などの影響で、キプロスの低税率・非課税メリットが今後見直されるリスクも考慮すべきです。
キプロス不動産価格推移
キプロス全国住宅価格指数推移
住宅物件(2010年第1四半期 = 100)
出典:Global Property Guide 2026年1月最新データ
キプロス全国住宅価格指数推移変動率
住宅物件(2010年第1四半期 = 100)
出典:Global Property Guide 2026年1月最新データ
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キプロス不動産 最新動向
マクロ環境・金利
- インフレは低位で落ち着き、実質購買力は改善方向
2025年11月時点のHICP(EU統一基準)年率は0.1%と低水準で推移しています。エネルギー・食品の波が一服し、家計の体感インフレは沈静化しやすい局面です。 - 政策金利はECBの水準が“キプロスの上限”になりやすい
キプロスはユーロ圏のため、金融環境はECB(欧州中央銀行)の政策金利に強く連動します。2025年末時点のECB金利水準(主要政策金利)は、市中金利・住宅ローン金利の上限圧力として意識されます。 - 住宅ローン金利の実務感:新規は“3%台前半〜中盤”が目安
中銀統計ベースでは、住宅購入向けローン金利は2025年秋時点で3%台が中心帯です(新規ローンの加重平均や月次統計で概ね3%台が示される)。固定より変動が多く、Euribor連動の条件が残るため、「金利は落ち着いたが、返済額は金利改定に左右される」実務感です。
取引量(売買の温度感)
- 売買は“減速ではなく高水準で推移”が近い
2025年の売買契約(登録済みContract of Sale)の年間合計は、18,114件(2024年は15,797件)で、前年比+15%と明確に増えています。 - 地区別のボリューム(2025年の年間合計)
実需と投資の両面で“主要都市+リゾート”に集中しています。 - リマソール:5,563件(+11%)
- ニコシア:4,115件(+17%)
- ラルナカ:3,978件(+19%)
- パフォス:3,567件(+15%)
- ファマグスタ:891件(+15%)
- 月次のクセ(実務上の読みどころ)
8月は一部地区で前年差が弱く出やすい一方、春〜初夏・年末に向けて積み上がりやすい季節性があります(契約登録ベース)。
外国人需要(需給を動かす“上振れ要因”)
- 2024年:外国人の取得は“高水準だが前年より鈍化”
2024年に外国人が取得した不動産(DLSに提出された売買契約ベース)は6,228件で、2023年(6,900件)から約10%減。ただし水準自体は大きいです。 - 外国人取引が集まる地域:パフォス&リマソールが中心
外国人取引の地域シェアは、パフォス32%・リマソール29%が上位で、外需は“西のリゾート×南のビジネス都市”に集まる傾向が明確です。 - 2025年(1〜11月)の外国人アクティビティ:EU内・EU外ともに厚い
「売買移転(transfer)」「売買契約(contract)」のどちらでも、EU外がやや優勢〜拮抗の水準で推移しています(Pancyprian集計)。 - 売買移転(物件数)合計:EU内 1,752/EU外 2,227
- 売買移転(購入者数)合計:EU内 2,212/EU外 2,618
- 売買契約(物件数)合計:EU内 2,524/EU外 2,730
- 売買契約(購入者数)合計:EU内 3,175/EU外 3,113
住宅(分譲・賃貸)
- 価格は“上昇は続くが、急騰というより選別的”
RICS(不動産指数)では、2025年Q3の資産別の年次上昇が示され、住宅は緩やかな上昇を維持しています。目安として、年次ではアパート+4%台、戸建て+4%台が示されています。 - エリア別の体感
- リマソール:最も高価格帯になりやすく、海沿い・新築・眺望など“スペック勝負”の物件が強いです。賃貸も駐在・移住・富裕層需要で高止まりしやすい一方、利回りは圧縮しがちです。
- ニコシア:実需(居住・勤務)主導で、価格変動は比較的マイルドになりやすいです。賃貸は学生・地場就業者の需要が読みやすく、利回り狙いの選択肢になりやすいです。
- ラルナカ:取引件数が増えやすく(2025年+19%)、空港・海沿い・再開発期待が織り込まれやすい地域です。
- パフォス/ファマグスタ:リゾート・別荘・短期滞在の需要が乗りやすく、観光シーズンの稼働と賃料が鍵になります。
- 賃貸の追い風:観光・短期滞在が強い
2025年1〜11月の観光客到着は4,377,114人で前年比+12%。短期滞在・サービスアパート・ホリデー需要の下支え材料です。
供給(新規供給・建設コスト)
- 供給は“増えるが一気に出るわけではない”
2025年8月の建築許可は694件(前年比-4.3%)ですが、許可価値(€386.9m)と床面積(312.5k㎡)は増加、住戸数も増加しており、「件数は減っても、プロジェクトの規模は大きい」局面が見えます。 - 建設コストは高止まりだが、材料は“横ばい〜微増”寄り
建設資材価格指数は2025年10月時点で118.63、前月比は+0.10%と小動きです。急騰局面ではないものの、労務費・仕様高度化でコストは下がりにくいです。
オフィス
- “Aグレード集中”が進みやすい
移転・新規入居は、立地・設備・省エネ性能で選別されやすく、リマソールは高品質物件への需要が残りやすい構図です。二級物件は改装(リポジショニング)や用途転換が前提になりやすいです(サービスオフィス化など)。
リテール・商業
- 観光回復の恩恵は受けやすいが、立地二極化
観光客増が続く限り、観光導線・中心街・大型商業の優良区画は底堅い一方、周辺立地はテナント入替・賃料条件調整が必要になりやすいです。
ホテル・観光不動産
- 稼働のベースが強く、開発・改装投資が成立しやすい
観光客数が前年差で増えているため、既存ホテルの改装、サービスアパート、短期賃貸向けの物件整備が進みやすい環境です。
制度・税務トピック(投資判断で効くところ)
- 外国人購入:手続き・制限を前提に“設計”が必要
EU域外の買主は、取得形態や許可・手続きなどの要件確認が実務上の必須になります(物件タイプ、名義、用途で扱いが変わり得ます)。 - 税務:保有税のイメージ違いに注意
国のImmovable Property Tax(IPT)は2017年に廃止されており、日本の固定資産税のような“国税としての保有課税”を前提にするとズレます(ただし地方税・手数料は別枠で発生し得ます)。 - 購入時コスト:VAT・移転費用・印紙税が効きます
- 新築は原則VAT(標準税率)対象で、条件を満たす居住用は軽減5%の枠が論点になります。
- 名義移転時の移転手数料(Transfer fees)、契約時の印紙税(Stamp duty)など、取引コストは合算で効きやすいです。
投資家への示唆(セグメント別)
- 住宅(売買差益狙い)
取引件数が増えているため地合いは強い一方、価格は“どこでも上がる”より「立地・眺望・新築/築浅・管理品質」で差が出ます。リマソールは高値追いになりやすい分、出口(売却先の属性)を先に決める発想が重要です。 - 住宅(賃貸インカム狙い)
- ニコシア:実需賃貸が読みやすく、空室リスクを抑えやすい傾向。
- リマソール:賃料は強いが取得価格が高く、利回りは圧縮しがち。
- パフォス/ファマグスタ:観光連動。稼働の季節性と運営(清掃・鍵管理・OTA対応)で収益がブレます。
- 外国人需要の取り込み
外国人需要は引き続き大きく、特にパフォス・リマソールに集中します。販売・賃貸のどちらでも「外国人が好む仕様(家具付き、眺望、管理、共用施設)」が価格決定力になりやすいです。
リスク・留意点
- 金利(変動金利が多い)
政策金利は落ち着いても、変動条件ではEuribor等の影響が残り、返済額が“じわじわ”動くリスクがあります。 - 供給増による“選別”
許可の価値・床面積が増えており、供給増が進むと「二級立地・中途半端な間取り・管理が弱い物件」から相対的に伸びが鈍りやすいです。 - 法務(タイトルディード、担保・権利関係)
キプロスは物件ごとの権利関係(担保設定、共同所有、区分の登記状況など)の精査が重要です。とくに新築・オフプランは、引渡し・登記のタイムライン確認が投資成否に直結します。 - 観光連動(短期賃貸)
観光が強いほど短期賃貸は伸びますが、規制や運営コスト、シーズン変動でブレやすい点は織り込む必要があります。
まとめ
キプロス不動産は、2025年の売買契約件数が18,114件(前年差+15%)と強く、外需もなお大きい市場です。中心はリマソール(高価格・外需)/ニコシア(実需安定)/パフォス(リゾート外需)/ラルナカ(伸び)の4軸で、価格は上昇基調ながら“選別色”が濃くなっています。金利は3%台が目安ですが変動条件の影響が残り、供給増の中で「立地・仕様・管理・法務の確実性」を優先した物件選定が投資の勝ち筋になります。
