この記事の要点
ポーランドの不動産を日本人が買うときは、原則として内務行政省(MSWiA)の許可が要ります。根拠は1920年3月24日法「外国人による不動産取得に関する法律」で、EEA(EU+ノルウェー・アイスランド・リヒテンシュタイン)とスイスの国民・事業者だけが場所と面積を問わず許可を免除されています。日本人はこの免除に入りません。
ただし、国境地帯の外にある「独立住居ユニット」=分譲マンションの住戸は、日本人でも許可なしで買えます。省の案内は、この免除を住戸と、住宅需要に結びついたガレージ用ユニットに限って認めています。土地付き一戸建てや別荘用地を買う場合は許可の対象です。
許可の印紙手数料は1,570ズロチ、事前の約束である「プロメサ」は98ズロチで、有効期間は発行日から1年です。許可が下りなかった場合は手数料の還付を申請できます。
根拠は1920年法。許可を出すのは内務行政大臣
ポーランドで外国人が不動産を取得するときの可否は、1920年3月24日の法律「外国人による不動産取得に関する法律」と、2012年6月20日の内務大臣規則で決まります。許可は内務行政大臣が行政決定として出し、手続きは申請を受けて始まる行政手続です。

省の案内は、許可が必要な「外国人」を4つに分けています。日本に住む個人も、日本に本店を置く法人も、どちらもここに入ります。
| 区分 | 省の案内による定義 |
|---|---|
| 1 | ポーランド国籍を持たない自然人 |
| 2 | 外国に本店を置く法人 |
| 3 | 1または2に挙げた者の、法人格を持たない会社で、外国に本店があり外国法に基づいて設立されたもの |
| 4 | ポーランド国内に本店を置く法人および法人格を持たない商事会社のうち、1から3の者に直接または間接に支配されているもの |
表の時点:2026年10月8日。内務行政省の案内ページの記載を日本語にしたものです。
4つめが重要です。ポーランドに現地法人を作って買えば許可を回避できる、という理解は成り立ちません。日本人が支配する現地法人も「外国人」として扱われます。
分譲マンションの住戸は、国境地帯の外なら許可が要らない
許可が要らない場合は省の案内に列挙されています。日本人にとって現実に効くのは2つめの項目です。
図:日本人が買う場合に許可が要るかどうかの分かれ目
許可が要らない
国境地帯の外にある「独立住居ユニット」。1994年6月24日の区分所有法にいう住戸のことで、分譲マンションの1戸がこれにあたります。
許可が要らない
国境地帯の外にある、ガレージ用途の独立ユニットまたはその持分。ただし取得者または住戸の所有者の住宅需要に結びついている場合に限られます。
許可が要る
土地付きの一戸建て、別荘用地、未建築の土地。住戸以外の不動産は原則として許可の対象です。
許可が要る
国境地帯にある不動産。住戸であっても、国境地帯の中にあると免除の対象から外れます。
つまり、ワルシャワやクラクフの市街地でマンションの1戸を買うだけなら、日本人でも許可の申請は要りません。いっぽう、同じ金額でも土地付きの家を買うとなると手続きが一段増えます。買う物件の種類で手続きの重さが変わる、というのがこの制度の形です。
このほかに、永住許可またはEU長期居住者許可を持ち、その許可を得てから5年以上ポーランドに継続して住んでいる場合(ポーランド国民との夫婦共有財産として取得するときは2年)も、国境地帯の外で、1ヘクタールを超える農地でなければ許可が免除されます。法定相続人としての相続・遺贈も対象外です。免除と適用除外の全部は法律の第7条と第8条に並んでいる、と省の案内は書いています。
許可の条件は「安全保障」と「ポーランドとの結びつき」の2つ
許可が必要な物件を買う場合、申請すれば通るわけではありません。省の案内は、許可が出る条件を2つ挙げています。
許可は、外国人の申請にもとづき、次の場合に発給される。①外国人による不動産の取得が、国防、国家の安全または公共の秩序に対する脅威を生じさせず、社会政策および国民の健康の観点からも妨げとならないこと。②ポーランド共和国との結びつきを裏づける事情があることを示すこと。
出典:内務行政省の案内「許可取得の条件(Warunki uzyskania zezwolenia)」より、要旨を日本語にしたもの(2026年10月8日に表示を確認)
2つめの「結びつき(więzi)」が実務上のハードルです。省は、結びつきを裏づける事情として次のものを例示しています。
図:省が例示している「ポーランドとの結びつき」
ポーランド民族であること、またはポーランド系の出自であること
血統・出自に関する事情です。
ポーランド国民との婚姻
配偶者がポーランド国籍である場合です。
滞在許可の保有
一時滞在許可、永住許可、EU長期居住者許可のいずれか。ただし人身取引被害者向けの一時滞在許可と、短期滞在を要する事情による一時滞在許可は除かれます。
ポーランド所在の法人・商事会社の経営機関のメンバーであること
その法人・会社が外国人に直接または間接に支配されている場合です。
ポーランドで事業または農業を営んでいること
ポーランド法に従って行われているものに限られます。
日本から投資目的だけで土地を買おうとすると、この5つのどれにも当てはまらないことがあり得ます。逆にいえば、ポーランドで会社を作って事業を行う、あるいは滞在許可を得て住む、といった計画と一体であれば、結びつきを示す材料が揃います。
省の案内には、自己の生活上の需要のために取得する不動産の面積は0.5ヘクタールを超えられない、夫婦の場合の上限は1ヘクタールである、と書かれています。これを超える面積は事業または農業を営む目的でしか取得できず、その場合の面積は事業の性質から生じる実際の必要によって正当化される必要がある、とも記されています。農地の取得には、さらに農業制度形成法の規定も適用されます。
申請に定型様式は無く、印紙手数料は1,570ズロチ
許可の申請には、決まった書式がありません。省の案内は「申請書のひな形は用意していないので、法律と規則に書かれている情報に従って準備すること」と明記しています。提出方法は、郵送のほか、電子行政プラットフォームのePUAPと電子送達(e-Doręczenia)が使えます。電子メールでの提出はできません。

| 手続き | 印紙手数料 | 補足 |
|---|---|---|
| 不動産・持分・株式の取得許可 | 1,570ズロチ | 納付証明の原本を申請書に添付する |
| プロメサ(許可の約束) | 98ズロチ | 発行日から1年有効。これ自体では取得できない |
| 行政手続法が適用されるその他の決定 | 10ズロチ | — |
| 委任状 | 17ズロチ | — |
| 証明書の発行 | 17ズロチ | — |
表の時点:2026年10月8日。内務行政省の案内ページに掲載されている額です。納付先はワルシャワ市納税者サービスセンターで、銀行振込または窓口での現金納付が案内されています。
共有で買う場合の扱いにも注意が要ります。省は「1通の申請で2人が申請できるのは夫婦の場合だけ」と書いています。親子や友人同士で共有持分を取得するときは、それぞれが自分の持分について別々に申請し、申請ごとに手数料を払うことになります。
物件が決まる前なら「プロメサ」という選択肢がある
プロメサ(promesa)は、許可を出すという約束です。許可と同じく申請にもとづいて行政手続を経て発給され、有効期間中は、判断にかかわる事実関係が変わらないかぎり許可を拒めなくなります。
省が挙げている使いどころは2つです。入札や交渉に参加するときと、デベロッパーから買う予定だが専有面積や共用部分の持分といった最終的なデータがまだ確定していないときです。住戸の引渡しが先のプレビルド物件を検討する場合に向いた仕組みといえます。
注意したいのは、プロメサを取っただけでは不動産を取得できないことです。省は「プロメサは外国人に不動産取得の権利を与えるものではない」と明記しており、取得のためには改めて許可を得る必要があります。費用も98ズロチと1,570ズロチの両方がかかります。
なお、購入をやめた場合や売主が他人に売ってしまった場合は、省に連絡すれば手続きが終了し、印紙手数料の還付を申請できます。還付の申請先はワルシャワ市納税者サービスセンターで、手続きの終了を知らせる省の書面の写しと納付証明を添えます。
EEA市民との差と、イギリス人の扱い
この制度は国籍によって扱いが大きく変わります。省の案内にある区分を整理すると、次のようになります。
| 買う人 | マンションの住戸(国境地帯の外) | 土地付き住宅・土地 |
|---|---|---|
| EEA(EU+ノルウェー・アイスランド・リヒテンシュタイン)とスイスの国民・事業者 | 許可不要 | 許可不要(場所・面積を問わない) |
| 日本人(EEA・スイス以外) | 許可不要 | 許可が必要 |
| イギリスの国民・事業者 | 許可不要 | 2021年1月1日以降は原則として許可が必要 |
表の時点:2026年10月8日。内務行政省の案内の記載にもとづきます。EEAの地理的範囲には、グアドループ・フランス領ギアナ・マルティニーク・レユニオン・アゾレス諸島・マデイラ・カナリア諸島も含まれると省は説明しています。
イギリスについては、省が個別に説明を置いています。2021年1月1日以降、イギリスの国民と事業者はポーランドで不動産を取得する際、原則として一般の規定に沿って許可を申請する必要があります。ただし、EU離脱協定の第10条に定める受益者にあたる場合は、法律第8条2項により許可が免除されます。移行期間が終わる前からEU法にもとづいて加盟国での居住権を行使し、その後も住み続けている人などが、ここに含まれます。
ヨーロッパの不動産の購入可否は国ごとに設計がまったく違います。許可制を敷かず税率で差をつける国もあります。フランスの不動産は日本人が買える?購入制限はなく、登録税は県ごとに約5.81%か約6.32%。相続は居住国の法で決まると、ドイツの不動産は外国人が買える?購入制限はなく、契約は公正証書が必須。取得税の基本は3.5%で税率は州が決めるがその例です。逆に、住宅の取得を正面から制限している国もあります(スイスの不動産は外国人が買える?事業用は許可不要、住宅はLex Kollerで原則取得できない)。
よくある質問
日本人がワルシャワのマンションを買うのに許可は要りますか
その住戸が国境地帯の外にあり、区分所有法にいう「独立住居ユニット」であれば、許可は要りません。内務行政省の案内が、この免除を住戸と、住宅需要に結びついたガレージ用ユニットに限って認めています。
許可の手数料はいくらですか
許可は1,570ズロチ、プロメサは98ズロチです。委任状と証明書の発行はそれぞれ17ズロチ、行政手続法が適用されるその他の決定は10ズロチと案内されています。
許可が下りなかったら手数料は戻りますか
行政手続が許可の発給で終わらなかった場合、1,570ズロチの還付を申請できると省は案内しています。申請先はワルシャワ市納税者サービスセンターで、手続きを終える省の書面の写しと納付証明の添付が必要です。
ポーランドに現地法人を作れば許可は不要になりますか
なりません。ポーランド国内に本店を置く法人・商事会社であっても、外国人に直接または間接に支配されていれば、法律上の「外国人」として扱われます。
夫婦で買うときはどうなりますか
1通の申請で2人が申請できるのは夫婦の場合だけです。自己の生活上の需要のために取得する面積の上限も、単身が0.5ヘクタール、夫婦が1ヘクタールと区別されています。
この記事で参照した一次情報
- ポーランド共和国 内務行政省(MSWiA)「Uzyskaj zezwolenie na nabycie nieruchomości, akcji, udziałów przez cudzoziemców」https://www.gov.pl/web/mswia/uzyskaj-zezwolenie-na-nabycie-nieruchomosci-akcji-udzialow-przez-cudzoziemcow(2026年10月8日に表示を確認。ページの最終更新表示は2026年10月1日)
- 1920年3月24日法「外国人による不動産取得に関する法律」(ISAP:ポーランド共和国法令システム)https://isap.sejm.gov.pl/isap.nsf/DocDetails.xsp?id=WDU19200310178(内務行政省の案内からリンクされている条文。2026年10月8日に確認)
- 2012年6月20日内務大臣規則(外国人が許可申請時に提出すべき情報と書類の種類)https://isap.sejm.gov.pl/isap.nsf/DocDetails.xsp?id=WDU20120000729(同上)
