トルコの不動産は、外国人でも買えます。ただし「誰でも」ではありません。買えるかどうかは大統領決定で指定された国の国民かどうかで決まり、その一覧は公開されていないからです。この記事では、土地登記・地籍総局(Tapu ve Kadastro Genel Müdürlüğü、TKGM)が運営する外国人向け公式ポータル「Your Key Türkiye」に出ている内容をもとに、取得の可否を左右する条件、面積の上限、買えない区域、更地を買ったときに付く義務、そして40万米ドルで市民権を得る制度の現在の形を整理します。掲載内容は2026年10月7日に同ポータルで表示されていたものです。

この記事の要点

・取得できる国の一覧は公開されていません。2012年の閣僚会議決定の附属リストに185か国が載っているとTKGMは説明しており、自分の国籍が対象かどうかは各地の土地登記局(tapu müdürlüğü)へ個別に照会して確かめます。

・外国人個人が持てるのは全国で合計30ヘクタールまで。さらに郡(ilçe)の私有地面積の10%という枠が別にかかります。

・軍事禁止区域と軍事安全保障区域の不動産は取得できません。81県すべてで登記簿への記載が終わっているため、司令部に問い合わせる必要はなく、登記情報で判定されます。

・建物の建っていない土地(arsa・tarla)を買うと、取得から2年以内に開発計画を所管省庁へ提出する義務が付きます。出さない、または期限内に実現しない場合は清算(tasfiye)の対象です。

・不動産による市民権取得は40万米ドル以上。登記簿に3年間売却しない旨の注記が付きます。2023年12月12日の改正で、農地と建物のない宅地は対象から外れました。

買えるかどうかを決める「国の一覧」は公開されていない

根拠になるのは1934年の土地登記法(2644号 Tapu Kanunu)35条です。同条は「法律上の制限に従うことを条件に、国際的な二国間関係および国益が必要とする場合に大統領が定めた国の国民である外国人は、トルコにおいて不動産および制限物権を取得することができる」と定めています。つまり国籍が指定リストに入っていることが入口の条件です。

では、その一覧はどこで見られるのか。TKGMのよくある質問は、はっきりこう答えています。「2644号土地登記法35条により、トルコで不動産を取得できる国の一覧は公開されておらず、国ごとの取得可否は各地の登記局で個別に確認することが可能である」。あわせて、2012年6月25日付2012/3504号閣僚会議決定の附属リスト「わが国で不動産を取得できる国の国民」に185か国が載っている、と説明しています。

一覧が非公開である以上、仲介業者の説明や第三者サイトの「対象国リスト」を信じるのではなく、取引を進める前に登記局へ照会するのが唯一の確実な方法です。しかも35条3項は、大統領が国益上必要な場合に、国・人・地理的地域・期間・数・割合・種類・性質・面積・数量を基準として取得を制限し、一部または全部を停止または禁止できると定めています。条件は固定ではなく、決定一本で変わりうる構造になっています。

35条に反して取得された不動産、または法律上の義務以外の理由で取得目的に反して使われていると当局が認定した不動産は、清算の対象になります。清算されると、代金は権利者へ支払われたうえで所有権は手元に残りません。登記局から財務省の地方組織へ通知が行く仕組みです。

面積の上限は2つ。全国30ヘクタールと、郡の私有地の10%

国籍の条件を満たしていても、無制限に買えるわけではありません。TKGMの「外国人自然人の不動産取得」ページは、法律上の制限として次の2つの枠を挙げています。どちらか一方ではなく、両方が同時にかかります。

制限の種類 内容 何を基準に数えるか
個人の総量規制 外国人1人が取得できる不動産は、全国で合計30ヘクタールまで 国全体での合計面積
地域の割合規制 外国人が取得する不動産の合計面積は、私有地を対象とした郡の面積の10%を超えられない 郡(ilçe)単位の私有地面積
区域の規制 軍事禁止区域・軍事安全保障区域内の不動産は取得できない 登記簿に記載された区域の表示
地目の義務 建物のない土地は、取得から2年以内に開発計画の提出が必要 取得日からの経過期間

住宅を1戸か2戸買う個人投資家にとって、30ヘクタールという上限が効く場面はまずありません。効いてくるのは郡の10%のほうです。外国人の購入が集中した郡では、ある時点から新規の取得が通らなくなります。買いたい物件が決まってから初めてこの枠に当たると、計画がそこで止まります。

トルコ土地登記・地籍総局の外国人向けポータルで、外国人自然人の不動産取得にかかる法的制限を示した公式画面のキャプチャ
TKGMの公式ポータル「Your Key Türkiye」。30ヘクタールの上限と郡の10%の枠、軍事区域の扱いが並ぶ(2026年10月7日表示)。出典:Tapu ve Kadastro Genel Müdürlüğü

軍事禁止区域かどうかは、司令部ではなく登記簿で分かる

外国人の購入でよく問題になるのが軍事禁止区域です。この点についてTKGMは、参謀本部との2011年5月5日付の協力合意にもとづく作業の結果、全81県で該当区域の登記簿への記載が完了していると説明しています。したがって、物件が軍事禁止区域に入っているかどうかは、所管の司令部へ照会するまでもなく、登記簿の情報だけで判断されます。登記局が申請時に知らせる仕組みです。

一方で「特別安全保障区域(Özel Güvenlik Bölgeleri)」に入る物件は、取得そのものが禁じられているわけではなく、所在地の県知事(valilik)の許可が必要になります。許可が下りるまで登記は進みません。また、文化財の保護区域(sit alanları)にある物件は、区域の性質に応じて文化観光省または環境・都市化・気候変動省の地方組織へ、申請が法令に適合するかを照会する必要があります。

区域によって手続きが変わる

軍事禁止区域・軍事安全保障区域

取得できません。全81県で登記簿への記載が完了しており、登記局が申請時に知らせます。

特別安全保障区域

取得は可能ですが、物件所在地の県知事の許可が要ります。

文化財の保護区域

区域の性質により、文化観光省または環境・都市化・気候変動省の地方組織へ適合性を照会します。

それ以外の区域

住宅・事業所・宅地・農地など、性質を問わずあらゆる不動産を取得できます。

更地を買うと、2年以内の計画提出が義務になる

日本の感覚で見落としやすいのがこの義務です。外国人自然人および外国法に基づいて設立された商事会社は、建物の建っていない不動産(arsa=宅地、tarla=農地など)を買った場合、その不動産の性質に合った開発計画を、取得から2年以内に所管省庁の承認へ提出しなければなりません。

提出された計画は、省庁が着工期限と完了期限を決めて承認し、物件所在地の登記局へ送られて登記簿の申告欄(beyanlar hanesi)に記録されます。承認された計画が期限内に実現したかどうかは、省庁が追跡します。2年以内に申請しなかった場合、または計画が期限内に完了しなかった場合、その不動産は清算規定の適用対象になります。

この義務は「土地を買って値上がりを待つ」という持ち方と正面から衝突します。トルコで土地を買うなら、買う前に開発計画と資金の見通しまで用意しておくのが前提条件だと考えてください。建物が建っている不動産を買えば、この義務はかかりません。

評価報告書は一般の取得では廃止され、市民権取得だけに残った

以前は外国人の不動産取得全般に不動産評価報告書(taşınmaz değerleme raporu)の提出が求められていました。TKGMの現在の案内では、外国人自然人の不動産取得における評価報告書の運用は廃止されています。代わりに、市民権取得を目的とする取得については「金額確定書(Tutar Tespit Belgesi、TTB)」という仕組みが導入されました。

通常の売買の流れは、物件について合意したあと、外貨売却証明書(döviz alım belgesi)を登録電子郵便(KEP)経由で提出し、必要書類をそろえて登記局へ申請します。書類がそろっていれば手続きが始まり、不備があればSMSで知らせが来ます。条件を満たすと登記手数料と回転資本料の金額がSMSで通知され、支払い後に公式証書が作成され、署名の時刻がSMSで案内されます。署名を終えると権利証(tapu senedi)が渡されます。

市民権は40万米ドル。2023年12月に農地と更地が対象から外れた

不動産を買ってトルコ国籍を取得する制度は、トルコ国籍法施行規則20条2項(b)号にもとづくものです。TKGMの公式ページは、規則が2017年1月12日、2018年9月19日、2018年12月7日、2022年1月6日、2022年6月13日、2023年12月12日の6回改正されたとしたうえで、金額と条件の変遷を次のように整理しています。

時期 何が変わったか
2017年1月12日〜2018年9月18日 この期間に購入した不動産は、価額が100万米ドルであること
2018年9月19日以降 購入する不動産の価額が40万米ドルであること
2018年12月7日以降 売買予約契約を結ぶ場合も、価額が40万米ドルであること
2022年1月6日 「相当額のトルコリラ」が規則から削除され、不動産代金の外貨は中央銀行へ売却するために銀行へ売る必要が生じた
2023年12月12日 農地および建物のない宅地は市民権取得の対象から外れた。宅地は建物があることが条件になった

手続きとしては、WEBTAPU上でTTBの根拠となる不動産評価報告書を作成させ、外貨売却証明書とともに登記局へ申請します。登記局は、外貨売却証明書、公式証書または売買予約契約、振込明細に記載された価額が規則の基準を満たすか、そしてその価額がTTBで裏づけられているかを確認します。条件を満たして署名が済むと、登記簿に3年間売却しない旨の申告が記録され、権利証が渡されます。その後、登記局から総局または地方局へ通知が行き、「不動産投資確認書(Taşınmaz Yatırımı Tespit Belgesi)」が作成されて、人口・市民権総局と移民管理庁へ送られます。

なお、25万米ドルで確約書を出して確認書を作る運用は終了しています。2024年12月9日付の2024/4号通達と、同日施行の手引きが現在の基準です。

トルコ土地登記・地籍総局の公式ポータルで、不動産による市民権取得の金額と改正履歴を示した公式画面のキャプチャ
市民権取得のページ。40万米ドルの基準と6回の規則改正が並ぶ(2026年10月7日表示)。出典:Tapu ve Kadastro Genel Müdürlüğü

複数の国籍を持つ人は「いちばん権利の狭い国籍」で判定される

二重国籍・多重国籍の扱いは明確です。TKGMは、複数の国籍を持つ人について取得できる不動産の点で最も権利が少ない国籍を基準とすると説明しています。そのうちの1つがトルコ国籍であれば、トルコ国籍が基準になります。

逆に、持っている国籍のうち1つでも取得が認められない国のものがある場合、提出書類、外国人番号(YKN)の照会、または身元情報申告フォームからそれが判明すれば、取得の申請は却下されます。取得が認められる国の国籍を併せ持っていても、認められない国籍があればそちらが優先される、という考え方です。

契約の前に確かめておくこと

  • 自分の国籍がトルコで不動産を取得できる国に含まれるか。登記局へ個別に照会して確認する。
  • 複数の国籍を持っている場合、そのすべてについて取得の可否を確認する。1つでも対象外があれば申請は通らない。
  • 物件が軍事禁止区域・軍事安全保障区域に入っていないか。登記簿の記載で判定される。
  • 特別安全保障区域や文化財の保護区域に入っていないか。該当すれば県知事の許可や省庁への照会が必要になる。
  • 買おうとしている不動産に建物があるか。建物がなければ、取得から2年以内の計画提出義務が付く。
  • その郡で外国人の取得が10%の枠に達していないか。登記局で確認する。
  • 市民権の取得も目的にするなら、WEBTAPUでの評価報告書とTTB、外貨の銀行売却、3年間の売却禁止の注記まで織り込んでおく。

よくある質問

日本人はトルコで不動産を買えますか。
TKGMは取得できる国の一覧を公開していないため、公式情報だけで断定することはできません。確実な確認方法は、各地の土地登記局へ国籍を伝えて個別に照会することだとTKGM自身が案内しています。契約や手付の前に、この照会を済ませてください。

どんな種類の不動産でも買えますか。
法律上の制限を守る限り、住宅、事業所、宅地、農地など性質を問わず取得できる、とTKGMは説明しています。ただし建物のない土地には2年以内の計画提出義務が付き、軍事禁止区域などの区域規制は別にかかります。

評価報告書は必要ですか。
通常の取得では不要になりました。外国人自然人の不動産取得における評価報告書の運用は廃止されています。市民権取得を目的とする取得については、WEBTAPU上で評価報告書を作成させ、TTB(金額確定書)で金額を確定させる必要があります。

市民権を取るには今いくら必要ですか。
40万米ドル以上です。2018年9月19日以降に購入する不動産が対象で、登記簿に3年間売却しない旨の注記が付きます。2023年12月12日の改正により、農地と建物のない宅地は対象外です。

海外にいたまま手続きできますか。
TKGMはWEBTAPUという電子システムを用意しており、登記局へ出向かずに申請と書類提出ができるとしています。外国人がこのシステムを使うには、移民管理庁で発行される外国人番号(YKN)と、PTTの窓口で取得するe-Devletの利用パスワードが必要です。

買ったあとに制度が変わることはありますか。
あります。土地登記法35条3項は、大統領が国益上必要な場合に、国・人・地理的地域・期間・数・割合・種類・性質・面積・数量を基準として取得を制限・停止・禁止できると定めています。市民権の金額も2017年から2023年までに6回改正されています。

この記事で確認した一次情報

  • Tapu ve Kadastro Genel Müdürlüğü「Yabancı Gerçek Kişilerin Taşınmaz Edinimi」https://www.yourkeyturkiye.gov.tr/yabanci-gercek-kisilerin-tasinmaz-edinimi(大統領決定で定められた国の国民であることが条件、全国30ヘクタールの上限、郡の私有地面積の10%、軍事禁止区域・安全保障区域の登記簿記載が81県で完了、特別安全保障区域は県知事の許可、更地は2年以内の計画提出、評価報告書の運用廃止、売買手続きの8段階)
  • Tapu ve Kadastro Genel Müdürlüğü「Vatandaşlık Kazanımı」https://www.yourkeyturkiye.gov.tr/vatandaslik-kazanimi(トルコ国籍法施行規則20条2項(b)号、40万米ドル、3年間の売却禁止の注記、6回の改正日、2022年1月6日のトルコリラ建て削除、2023年12月12日の農地・未建築宅地の除外、25万米ドルの確認書運用の終了、2024年12月9日施行の2024/4号通達と手引き)
  • Tapu ve Kadastro Genel Müdürlüğü「Sık Sorulan Sorular」https://www.yourkeyturkiye.gov.tr/sss(取得できる国の一覧は非公開で登記局へ個別照会、2012年6月25日付2012/3504号閣僚会議決定の附属リストに185か国、土地登記法35条3項の制限権限、軍事禁止区域は登記簿で判定、多重国籍は最も権利の狭い国籍が基準、更地の計画提出期限は取得日から2年)
  • Tapu ve Kadastro Genel Müdürlüğü 公式ポータル「Your Key Türkiye」https://www.yourkeyturkiye.gov.tr/(WEBTAPUの利用には外国人番号とe-Devletの利用パスワードが必要、問い合わせ窓口)

掲載内容は2026年10月7日にTKGMの公式ポータルで表示されていたものです。取得できる国の一覧は非公開で、金額や条件も改正されます。実際の取引では、物件所在地の土地登記局への照会と、現地の法務・税務の専門家の確認を受けてください。この記事は情報提供であり、法律または税務の助言ではありません。

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