海外の物件に関する支払いや、現地から入ってくる賃料の受け取りを「PayPalで済ませられないか」と考える人がいます。銀行の送金手数料が数千円かかるのに対し、PayPalは「無料」と書かれているからです。2026年11月4日に金融庁の資金移動業者登録一覧、e-Gov法令検索の資金決済に関する法律とその施行令、PayPalの公式手数料ページと公式のお知らせを読み合わせたところ、PayPalで海外へ送れる金額には法律上の上限があり、表示されている「無料」も通貨を換算しない場合に限られることが分かりました。この記事では、どこまでできてどこからできないのかを、条文と登録一覧の数字で切り分けます。

結論:1回100万円までなら送れる。それを超える送金は制度上できない

PayPalは日本で資金移動業者として登録されていますが、その種別が上限を決めています。先に3点だけ押さえてください。

2026年11月4日に一次情報で確認した3点

  • PayPal Pte. Ltd. は関東財務局長第00026号の資金移動業者。金融庁の登録一覧で丸が付いているのは第二種だけで、第一種には付いていない。
  • 第二種資金移動業が扱えるのは「少額として政令で定める額以下」の為替取引で、その額は百万円と施行令が定めている。
  • 手数料が無料なのは通貨換算を含まない場合だけ。換算が入ると基本為替レートに3.00%または4.00%が上乗せされる。

海外不動産の購入代金や、まとまった額の賃料をまとめて動かす用途には、金額の面で届きません。銀行側の条件と比べたいときは海外送金の手数料は何にいくらかかる?に5つの費用の内訳があります。

PayPalは関東財務局長第00026号。種別は第二種だけ

金融庁は、全国の財務局等に登録されている資金移動業者の一覧を公表しています。2026年11月4日に開いた版は令和8年9月30日現在で、全業者数は84です。この一覧には登録番号・登録年月日・法人番号・本店等所在地に加えて、第一種・第二種・第三種のどれで登録しているかが丸印で示されています。

金融庁「資金移動業者登録一覧」(令和8年9月30日現在・全84業者)に載っているPayPalとWiseの登録内容(2026年11月4日に確認)
資金移動業者名 登録番号 登録年月日 第一種 第二種 本店等所在地
PayPal Pte. Ltd. 関東財務局長第00026号 平成24年8月1日 なし あり 東京都港区北青山3-11-7 Aoビル15階
ワイズ・ペイメンツ・ジャパン株式会社 関東財務局長第00040号 平成27年8月18日 あり あり 東京都中央区日本橋2-13-12
金融庁が公表している資金移動業者登録一覧のPDFの画面。令和8年9月30日現在、全業者数84と書かれた表に、関東財務局長第00026号 PayPal Pte. Ltd. 平成24年8月1日の行があり、業務の種別の欄では第二種の列にだけ丸が付いている。下の行には関東財務局長第00040号 ワイズ・ペイメンツ・ジャパン株式会社があり、第一種と第二種の両方に丸が付いている
金融庁「資金移動業者登録一覧」。PayPalは第二種の列だけに丸があり、第一種の列は空欄になっている(2026年11月4日に表示)。

同じ一覧でワイズ・ペイメンツ・ジャパン(Wiseの日本法人)には第一種と第二種の両方に丸が付いています。Wiseが1回あたり1億円を超える送金まで扱えるのに対し、PayPalが百万円で止まるのは、サービス設計の違いではなく登録している種別の違いです。Wise側の条件はWise(ワイズ)とは?にまとめてあります。

100万円という上限は、法律と政令が決めている

種別ごとの上限は、資金決済に関する法律とその施行令に書かれています。e-Gov法令検索で条文を引くと、金額を直接書いているのは法律ではなく施行令のほうでした。

上限の根拠になっている2つの条文

資金決済に関する法律 第36条の2第2項

この章において「第二種資金移動業」とは、資金移動業のうち、少額として政令で定める額以下の資金の移動に係る為替取引のみを業として営むこと(第三種資金移動業を除く。)をいう。

資金決済に関する法律施行令 第12条の2第1項(第二種資金移動業及び第三種資金移動業における資金移動の上限額)

法第三十六条の二第二項に規定する少額として政令で定める額は、百万円に相当する額とする。

法律が「政令で定める額」とだけ書き、金額は施行令が百万円と定める二段構えになっている。金額を調べるときは施行令まで開かないと出てこない。

同じ施行令の第12条の2には、第一種資金移動業について別の扱いが置かれています。第一種は上限額の定めを持たない代わりに、登録とは別に内閣総理大臣の認可を受ける必要があります。登録一覧で第一種に丸が付いている事業者が少ないのはこのためです。PayPalが百万円を超える為替取引を日本の利用者に提供していないのは、事業上の選択ではなく、第二種として登録している以上は制度上できないということになります。

「手数料無料」は通貨を換算しない場合だけ

PayPalの公式手数料ページ(パーソナルアカウント)は、最終更新日が2021年12月21日と表示されています。ここに書かれている無料の範囲は、どちらも同じ括弧付きの条件が付いていました。

PayPalパーソナルアカウントの手数料(PayPal公式「PayPalパーソナルアカウント手数料」より、2026年11月4日に確認)
項目 公式の記載
PayPalで購入する(オンライン・店舗) 手数料はかかりません(通貨換算が含まれていない場合)
個人間の支払いの受け取り 手数料はかかりません(通貨換算が含まれていない場合)
支払いまたは返金の受取り時の換算 基本為替レートに4.00%を上乗せしたレート(取引為替レート)
残高・振替・受け取った支払いを別の通貨に換算 基本為替レートに3.00%を上乗せしたレート(取引為替レート)
記録依頼 10.00 SGD
PayPalの公式サイトのPayPalパーソナルアカウント手数料のページの画面。最終更新日2021年12月21日と表示され、国内取引、海外取引、市場コード表の3つの説明が横に並び、関連市場/地域として日本(JP)が挙げられている
PayPal「PayPalパーソナルアカウント手数料」。無料と書かれた項目にはいずれも「通貨換算が含まれていない場合」という条件が付いている(2026年11月4日に表示)。

海外との資金のやり取りでは、ほぼ必ず通貨換算が入ります。つまり実際に負担するのは送金手数料ではなく、為替レートへの上乗せです。100万円相当を換算して受け取ると、4.00%なら4万円相当が上乗せ分として差し引かれる計算になります。銀行のように「送金手数料◯◯円」という形で表に出てこないため、比較表の上では安く見えます。

比較するときは、手数料の金額ではなく受取額で並べてください。PayPalの公式ページも「手数料と通貨換算の正確な内容を確認して、受取人が受け取る金額を確認できます」という書き方をしており、受取額で見ることを前提にしています。

もう1つ、同じページには「同じ国、同じ通貨での送金は無料です。通貨換算をして別の国の口座に送金する際には手数料がかかります」とあります。国内・同一通貨と、海外・異種通貨はまったく別の料金体系です。国内で使ったときの印象をそのまま海外へ当てはめると外れます。

マイナンバーを出すまで、海外への送金も海外からの受け取りもできない

金額の上限とは別に、手続き上の関門があります。PayPalは「【国外送金等を行うお客様へ】法律に基づくマイナンバーご提出のお願い」という告知を出しています。根拠として挙げているのは、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国調法)です。

この告知は「お客様のマイナンバーが確認されるまでは、対象アカウントを通じた海外への送金、海外加盟店への支払、および海外からの送金の受領はご利用いただけませんので、ご注意ください」と書いています。止まるのは送金だけではなく、受け取りと海外加盟店への支払いも含まれます。

PayPalの公式サイトの国外送金等を行うお客様へ、法律に基づくマイナンバーご提出のお願いというページの画面。内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律に基づき個人番号の提出を依頼している旨と、マイナンバーが確認されるまでは海外への送金、海外加盟店への支払、海外からの送金の受領が利用できない旨が太字で書かれている
PayPal「法律に基づくマイナンバーご提出のお願い」。国調法を根拠に、マイナンバー未提出のアカウントでは海外関連の3つの機能が止まる(2026年11月4日に表示)。

PayPalで海外のやり取りを始める前に決まっていること

1 送れる金額

第二種資金移動業の上限により、1回あたり百万円相当まで。施行令第12条の2が定める額で、利用者側では動かせない。

2 本人確認

国調法に基づくマイナンバーの提出が済むまで、海外送金・海外加盟店への支払・海外からの受領が使えない。

3 実質コスト

換算が入ると基本為替レートに3.00%または4.00%。送金手数料の表示だけでは分からない。

4 使えない用途

百万円を超える不動産の購入代金・決済資金は、金額の時点で対象外。銀行か第一種の事業者を使う。

金額・本人確認・コスト・用途の4点。どれか1つでも外れると、PayPalは選択肢から落ちる。

海外不動産の資金移動では、どこまでが守備範囲か

用途ごとに整理すると、PayPalが成立するのは金額の小さい継続的な支払いに限られます。物件そのものの代金や、年にまとめて動かす賃料には届きません。

海外不動産まわりの資金移動で、PayPalが使えるかどうか(2026年11月4日時点の公開情報にもとづく整理)
用途 想定される金額 PayPal 理由
物件の購入代金・頭金 数百万円〜数千万円 使えない 1回百万円の上限を超える
年1回まとめた賃料の受け取り 数十万円〜数百万円 金額次第で使えない 百万円を超えると受領できない
現地の管理会社への毎月の管理費 数千円〜数万円 金額の面では使える 上限の範囲内。ただし換算の上乗せは発生する
現地の業者へのスポット報酬 数万円 金額の面では使える 上限の範囲内。相手がPayPalアカウントを持つ必要がある
海外のサイトでの資料・サービス購入 数千円 使える 購入自体は無料(通貨換算が含まれない場合)

PayPalの送金・請求のページは「110ヶ国以上の人々に送金と請求を行えます」としており、対応範囲の広さが強みです。相手の銀行口座の情報ではなく、メールアドレスや携帯電話番号、PayPalユーザー名で送れる点も、現地の個人へ少額を払う場面では扱いやすくなります。ただし公式ページ自身が「送金と受け取りにはPayPalアカウントが必要です。受取人がPayPalアカウントを持っていない場合は、作成する必要があります」と書いているとおり、相手にも口座が要ります。

金額が百万円を超える局面では、銀行かWiseのように第一種の登録を持つ事業者に切り替えることになります。銀行側の手数料は各行で差があり、たとえば三菱UFJ銀行の海外送金やゆうちょ銀行の海外送金のように、窓口とオンラインで条件が変わります。

よくある質問

Q. PayPalで100万円を超える海外送金をする方法はありますか。
A. ありません。PayPal Pte. Ltd. は第二種資金移動業としてのみ登録しており、第二種が扱えるのは施行令第12条の2が定める百万円相当までです。金額を分けて複数回に送る運用も、制度の趣旨からは想定されていません。

Q. なぜWiseは1億円以上を送れるのですか。
A. 金融庁の登録一覧で、ワイズ・ペイメンツ・ジャパンには第一種と第二種の両方に丸が付いているためです。第一種は上限額の定めがない代わりに、登録とは別の認可が必要になります。

Q. 「手数料無料」と書いてあるのに、受け取った金額が少ないのはなぜですか。
A. 通貨換算が入っているためです。公式の手数料ページは、支払いまたは返金の受取り時の換算に基本為替レート+4.00%、残高・振替・別通貨への換算に+3.00%を適用すると書いています。無料と書かれているのは「通貨換算が含まれていない場合」に限られます。

Q. マイナンバーを出さずに海外のサイトで買い物はできますか。
A. PayPalの告知は「海外加盟店への支払」も対象に挙げています。マイナンバーが確認されるまでは利用できないと明記されているため、海外のサイトでの決済も止まります。

Q. PayPalの登録はいつからですか。
A. 金融庁の一覧によると、PayPal Pte. Ltd. の登録年月日は平成24年8月1日です。法人番号は3700150006491、本店等所在地は東京都港区北青山3-11-7 Aoビル15階と記載されています。

Q. 海外に住んでいても使えますか。
A. この記事で確認した範囲では、居住地ごとの可否をPayPalの日本語ページから特定できませんでした。手数料ページは「送金人および受取人の両者が、同じ市場または地域の居住者として登録されている場合」を国内取引、「異なる市場の居住者として登録されている場合」を海外取引と定義しており、登録した市場によって適用される料率が変わる仕組みです。

この記事で参照した一次情報

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