通帳を持って郵便局へ行けば海外へ送金できる。長くそう思われてきましたが、いまは違います。ゆうちょ銀行は窓口とゆうちょダイレクトでの国際送金を終了し、Webだけで完結する別のサービスに切り替えました。切り替えを知らないまま窓口へ行くと、その場では何も手続きできません。海外の不動産や学費のように期日のある支払いでは、この1回の空振りが致命傷になります。ゆうちょ銀行が公開している条件を、送る側と受け取る側の両方から整理します。

この記事の要点

  • ゆうちょ銀行は2025年8月末をもって、窓口およびゆうちょダイレクトにおける国際送金の取り扱いを終了しました。
  • 代わりに2025年7月に「ゆうちょの国際送金」というWebサービスが始まっています。パソコンやスマートフォンから申し込みます。
  • 使えるのは個人名義の総合口座・振替口座を持つ人だけです。法人口座では利用も受け取りもできません。
  • 送金申込料金は1件あたり3,000円。この料金に消費税はかかりません。
  • 限度額は1回100万円未満、1日200万円以下、1か月500万円以下。物件の決済額には届かない水準です。
  • 外国から受け取る場合は米ドル建てまたはユーロ建てのみで、仲介手数料が送金金額から差し引かれます。

窓口に行っても手続きできなくなった

ゆうちょ銀行の「国際送金」ページの冒頭には、注意喚起の枠で次のように書かれています。「2025年8月末をもって、窓口およびゆうちょダイレクトにおける国際送金の取り扱いを終了いたしました」。続けて「2025年7月に新サービス『ゆうちょの国際送金』を開始しましたので、ぜひご利用ください」とあります。

ゆうちょ銀行の国際送金ページにある告知の画面キャプチャ。2025年8月末をもって窓口およびゆうちょダイレクトにおける国際送金の取り扱いを終了したと書かれている
出典:ゆうちょ銀行「国際送金」。ページ冒頭に取り扱い終了の告知が置かれている。

ここで見落としやすいのが、終了したのが窓口だけではないという点です。従来のインターネットバンキングであるゆうちょダイレクトからも国際送金はできなくなりました。つまり「ネットからならできるだろう」と考えて普段のゆうちょダイレクトにログインしても、そこに送金メニューはありません。新サービスは専用サイトで、利用登録も別に必要です。

ゆうちょ銀行の国際送金が、窓口とゆうちょダイレクトでの取り扱い終了からWeb専用の新サービスへ移った変化を左右に並べた比較の図
入口が3つから1つに絞られた。手持ちの口座があっても、利用登録は別に必要になる。

使うために満たしておくべき条件

「ゆうちょの国際送金」は、ゆうちょ銀行の総合口座・振替口座から世界各国への送金を申し込めるWebサービスです。ゆうちょ銀行は利用条件と料金を1つの表にまとめて公開しています。

ゆうちょの国際送金のご利用条件・料金等の表の画面キャプチャ。送金申込料金3,000円、送金限度額1回100万円未満、1日200万円以下、1か月500万円以下、利用時間24時間365日と表示されている
出典:ゆうちょ銀行「『ゆうちょの国際送金』(日本から外国への送金)」の利用条件・料金等。
項目 ゆうちょ銀行が公表している内容
利用できる人 個人名義の総合口座・振替口座を持つ人
送金申込料金 1件あたり3,000円(消費税はかからない)
送金限度額 1回100万円未満/1日200万円以下/1か月500万円以下
利用時間 24時間365日(23時55分~0時5分を除く)
事前に必要な手続き ゆうちょ認証アプリまたはゆうちょ通帳アプリによる「書類によるご本人様確認」
送金先の国・通貨 国際送金取扱国一覧で確認する

実務でつまずくのは、最後の2つです。まず本人確認がアプリ経由でしか完了しません。ゆうちょ認証アプリかゆうちょ通帳アプリで「書類によるご本人様確認」を済ませていないと、専用サイトに登録しても送金まで進めません。スマートフォンを使わない人にとっては、ここが実質的な入口の壁になります。

もう1つ、ゆうちょ銀行は本人確認について「当面の間、一部の在留カードをご利用いただけません」という注意も出しています。在留カードで本人確認をする予定なら、着手前に該当しないか確かめておいたほうが安全です。

限度額は「申込時の適用レートで換算した送金金額」で判定されます。円で考えていた金額が、レート次第で100万円の線を越えることがあります。

3,000円のほかに、どこで目減りするのか

送金申込料金は1件3,000円と明快ですが、相手の口座に届く金額はこれだけでは決まりません。為替レートと、受け取り側で引かれる分があります。

ゆうちょ銀行の海外送金で、日本から送るときの3,000円と、外国から受け取るときに差し引かれる仲介手数料の内訳を上下に分けて示した図
送るときと受け取るときで、費用の乗り方が違う。

費用の全体像をつかみたい場合は、海外送金の手数料が何にいくらかかるかを先に読んでおくと、3,000円がどの部分に当たるのかが見えます。日数の見積もりについては海外送金は何日かかるかで、決済日から逆算する考え方を整理しています。

外国から受け取るときに用意する情報

受け取り側の条件は、送る側とは別に決まっています。ゆうちょ銀行は、外国の銀行からゆうちょ口座あてに送金する場合に必要な情報を表で公開しています。

ゆうちょ銀行の外国からの送金に必要な情報の表の画面キャプチャ。使用通貨は米ドルまたはユーロ、受取人取引銀行はJapan Post Bank、SWIFTコードはJPPSJPJ2と示されている
出典:ゆうちょ銀行「国際送金のお受け取り(外国から日本への送金)」。
伝える項目 内容 間違えやすいところ
通貨 米ドルまたはユーロ 円建てでは送れない。入金時に円へ換算される
銀行名 Japan Post Bank 郵便局名ではなく銀行名を伝える
SWIFTコード JPPSJPJ2(またはJPPSJPJ2XXX) 末尾XXXを求められる様式がある
口座番号 5桁の「記号」と最大8桁の「番号」を続けて記入 番号だけでは口座を特定できず、返金されることがある
名義・住所 口座に登録した氏名・住所を英字で記入 登録内容と一致していないと入金できないことがある

仲介銀行も指定されています。米ドル建てはDEUTSCHE BANK TRUST COMPANY AMERICAS、ユーロ建てはDEUTSCHE BANK AGを経由します。そして送金金額から仲介手数料が差し引かれます。ゆうちょ銀行は目安として、米ドル建ては通常10米ドル、ユーロ建ては通常5ユーロ(いずれも100米ドル以上・100ユーロ以上の送金の場合)としたうえで、これ以外にも控除される場合があると注記しています。

受取人の口座番号に「番号」だけを書くと口座を特定できず、送金元へ返金されることがあります。返金の過程でも手数料が引かれるため、往復で目減りします。記号と番号の両方を伝えてください。

受け取りは、すんなり入金されるとは限らない

ゆうちょ銀行は受け取りの留意事項として、外為法などの法令・規制に基づき、取引のたびに送金目的や送金原資、送金人との関係が分かる資料の提供を求める場合があると書いています。そのうえで、口座への入金までに「場合によっては1か月以上」かかることがあると明記しています。

さらに踏み込んだ記述もあります。資料を提供できない場合や、提供された資料から送金目的・原資・取引相手方の詳細が十分に確認できない場合は、入金を断ることがあるとされています。断られた場合、送金資金は送金元へ返却されます。過去に同じ相手から受け取った実績があっても、今回は詳しい資料を求められることがある、とも書かれています。

受け取り側の条件として、もう1つ重要なのが名義です。法人や人格なき社団などの口座では受け取れません。法人の取引に関わる国際送金を個人の口座で受けることもできないと明示されています。

海外不動産の決済に使えるかは、限度額で決まる

ここまでの条件を、海外不動産の購入という文脈に当てはめてみます。結論から言えば、物件代金の送金には限度額が足りません。1回100万円未満、1か月500万円以下という枠は、手付金や管理費、修繕積立金、現地口座への生活費といった用途を想定した水準です。

用途 ゆうちょの国際送金で足りるか 理由
物件の残代金 足りない 1回100万円未満、1か月500万円以下の枠を超える
予約金・申込金 金額次第 1回の枠に収まれば申し込める
管理費・修繕積立金 使える 金額は小さいが、1件ごとに3,000円がかかる
現地生活費の送金 使える 月500万円の枠内で回せる
賃料などの受け取り 条件つきで使える 米ドル建てかユーロ建てで、個人口座に限る

管理費のように毎月発生する少額の送金では、1件3,000円という固定費が重くのしかかります。5万円を送るのに3,000円なら6%です。金額が小さく回数が多い送金ほど、Wiseのような送金サービスと比べる意味が出てきます。逆に、ゆうちょ口座しか持っていない人が単発で送るなら、新しく口座を開くより早いこともあります。

大きな金額を動かす予定があるなら、送金手段は物件を選ぶ前に決めておくのが順序として正しいでしょう。決済日が決まってから「限度額が足りない」と気づくと、打てる手がほとんど残りません。

よくある質問

郵便局の窓口で海外送金を頼めますか

できません。ゆうちょ銀行は2025年8月末をもって、窓口およびゆうちょダイレクトでの国際送金の取り扱いを終了しています。Web専用の「ゆうちょの国際送金」を使うことになります。

ゆうちょダイレクトのIDでそのまま使えますか

「ゆうちょの国際送金」は専用サイトで、利用登録が別に必要です。あわせて、ゆうちょ認証アプリまたはゆうちょ通帳アプリによる書類での本人確認を済ませておく必要があります。

法人の口座で使えますか

使えません。利用できるのは個人名義の総合口座・振替口座です。受け取りについても、法人や人格なき社団などの口座では受け取れないと明記されています。

1回の送金でいくらまで送れますか

1回あたり100万円未満です。あわせて1日200万円以下、1か月500万円以下という枠があります。判定は申込時の適用レートで換算した金額で行われます。

円建てで受け取れますか

外国からの受け取りは米ドル建てまたはユーロ建てのみです。円建ての送金は受けられません。入金の際に、ゆうちょ銀行が定める入金日の換算レートで日本円に換算されます。

受け取りにどのくらいかかりますか

ゆうちょ銀行がすべての被仕向送金の内容を確認したうえで入金します。資料の提供を求められた場合、入金までに場合によっては1か月以上かかることがあると案内されています。期日のある支払いの受け取りには向きません。

この記事で参照した一次情報

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