先に要点
- デンマークに住所がなく、過去に通算5年の住所も持っていない人は、法務大臣の許可がなければデンマークの不動産を取得できない。根拠は erhvervelsesloven(不動産取得法)第1条で、現行の法令番号は LBK nr 265 af 21/03/2014 である。
- 許可の実務は法務省の下にある Civilstyrelsen(民事局)が扱う。通年住宅(helårsbolig)の審査期間は、必要な情報がそろってからおよそ4週間と公表されている。
- サマーハウスなどのセカンドハウスは「デンマークへの特に強い結びつき」が条件で、Civilstyrelsen は過去25年間、毎年最低1週間デンマークで休暇を過ごしていれば原則として十分だと例示している。
- 許可の申請は譲渡時から6か月以内。申請しなかった場合や許可が下りなかった場合、法務大臣は6か月以上1年以内の期限を定めて売却を命じることができる(同法第3条・第8条)。
デンマークは、ヨーロッパのなかでも外国人の不動産取得を正面から許可制にしている国です。日本の居住者がコペンハーゲンの住戸や郊外のサマーハウスを買おうとすると、まず「許可が要るかどうか」の判定から入ることになります。ここでは法令そのものと、許可を出す当局の案内だけを根拠に、条件と手順を整理します。
許可が要るかどうかは「住所」と「通算5年」で決まる
出発点は1960年1月1日に施行された不動産取得法です。現行版は法務省所管の LBK nr 265 af 21/03/2014 で、デンマーク政府の法令データベース Retsinformation に「GÆLDENDE(有効)」として掲載されています。第1条は次のとおりです。
§ 1. Personer, der ikke har bopæl i Danmark, og som ej heller tidligere har haft bopæl her i landet i et tidsrum af i alt 5 år, kan kun med justitsministerens tilladelse erhverve adkomst på fast ejendom her i landet.
(訳:デンマークに住所を有さず、かつ過去に通算5年の住所を有したこともない者は、法務大臣の許可を得た場合にのみ、国内の不動産について権原を取得することができる。)Retsinformation「Erhvervelsesloven」LBK nr 265 af 21/03/2014(2026年10月9日に表示を確認)
条文が見ているのは国籍ではなく、デンマークに住所があるかと過去に通算5年の住所があったかの2点だけです。日本に住む日本人はどちらも満たさないため、原則として許可が要ります。第1条第2項により、デンマークに本拠を置かない会社・団体・財団・外国の公的機関も同じ扱いです。法人を挟んでも判定は変わりません。
| 取得のしかた | 法務大臣の許可 | 根拠 |
|---|---|---|
| 売買(日本在住の個人が買う) | 必要 | 第1条 |
| 売買(デンマークに本拠がない法人が買う) | 必要 | 第1条第2項 |
| 相続による取得 | 不要 | 第2条 |
| 未分割遺産としての承継 | 不要 | 第2条 |
| 共有財産の分割による取得 | 不要 | 第2条 |
| 直系血族への贈与 | 不要 | 第2条 |
| 6か月を超える用益質(brugeligt pant) | 必要 | 第4条 |
表の時点:2026年10月9日。Retsinformation に掲載された erhvervelsesloven の条文から整理しました。
相続と直系血族への贈与が外れているのは重要です。すでにデンマークに不動産を持つ家族から受け継ぐ場合、許可の手続きそのものが発生しません。いっぽう、買う場合は住戸でも土地でもサマーハウスでも、第1条が等しくかかります。
通年住宅の申請は「4週間」と、そろえる3点
法務大臣の権限は Civilstyrelsen(民事局)へ委ねられており、申請の受付と審査はこの機関が行います。通年住宅(helårsbolig)、つまり生活の本拠として使う住まいについては、オンラインの自己サービスとPDF様式の2通りが用意されています。

| 項目 | Civilstyrelsen の案内 |
|---|---|
| 申請方法 | デジタル自己サービス、またはPDFの申請用紙 |
| デジタルを使える条件 | MitID を持っている/申請する住所が1件だけ/デンマークに他の不動産を所有していない/単独か、最大でもう1名との共同申請であること(4つすべて) |
| 用意する書類 | NemID/MitID、購入契約書または販売資料を1つの文書にまとめたもの、滞在許可・滞在カード・滞在書類を1つの文書にまとめたもの |
| 審査期間 | 約4週間(必要な情報をすべて受け取った時点から) |
| 4条件を満たさないとき | PDFの申請用紙を使い、e-Boks・電子メール・郵送のいずれかで提出する |
表の時点:2026年10月9日。Civilstyrelsen「Ansøg om tilladelse til at erhverve en helårsbolig」の記載を整理しました。
注意したいのは、デジタル申請の条件に MitID が入っていることです。MitID はデンマークの電子身分証明で、現地に住んでいない日本人は通常持っていません。実務上はPDF様式での申請になります。Civilstyrelsen は「必要な情報を一度にまとめて送ってほしい」と案内しており、4週間という期間はあくまで書類がそろってからの日数です。
デンマーク以外の国でも、許可制を取る国は審査期間と提出先が決まっています。たとえばポーランドは内務省の許可制で、手数料が条文で定められています。国ごとに窓口も費用の有無も違うため、1か国の手順を他国へそのまま当てはめないでください。
サマーハウスは「過去25年、毎年1週間」が目安
別荘やサマーハウスといったセカンドハウス(sekundærbolig)は、通年住宅よりはるかに厳しい扱いです。Civilstyrelsen は、許可の条件を「デンマークへの特に強い結びつき」と定め、その判断材料をはっきり書いています。

Det vigtigste forhold er, om du gennem en længere periode har holdt en væsentlig del af dine ferier i Danmark. Har du eksempelvis hvert år de seneste 25 år holdt mindst en uges ferie i Danmark, vil du som udgangspunkt have en tilstrækkelig tilknytning til Danmark.
(訳:最も重要な点は、長い期間にわたって休暇の相当部分をデンマークで過ごしてきたかどうかである。たとえば直近25年間、毎年最低1週間の休暇をデンマークで過ごしていれば、原則としてデンマークへの十分な結びつきがあることになる。)Civilstyrelsen(2026年10月9日に表示を確認)
25年というのは、投資目的で初めてデンマークに関わる人にはまず届かない水準です。Civilstyrelsen は他の材料として、家族的な結びつき、言語や文化の結びつき、買おうとしている物件そのものとの結びつきを挙げていますが、いずれも「過去に積み上げてきた関係」を見るものです。資金の多寡や物件の価格は判断材料に挙がっていません。
図:セカンドハウスの許可で見られるもの
休暇の過ごし方(最重要)
長期間にわたってデンマークで休暇の相当部分を過ごしてきたか。公式の例示は「直近25年間、毎年最低1週間」。
家族的な結びつき
デンマークに家族がいるかどうか。
言語・文化的な結びつき
デンマーク語や文化との関わり。
対象物件との結びつき
買おうとしている物件そのものとの関係。
一般的な許可
取得できない。ただし結びつきが十分なら事前同意(forhåndstilsagn)を得ることができ、有効期間は3年。
物件の差し替え
決定の時点から3年以内であれば、別のセカンドハウスへ変更できる。
申請の形式も通年住宅と違います。セカンドハウスはPDFの申請用紙だけで、デジタル申請はありません。Civilstyrelsen はデンマーク語か英語で書かれた申請しか受け付けず、申請者ごとに1枚ずつ提出し、パスポートの写しを添えるよう求めています。安全上の理由から申請書に貼ったリンクは開かないとも明記されています。
許可を取らないとどうなるか
許可制には期限と制裁がセットで決められています。買ってから考えればよい、という設計にはなっていません。
図:申請しなかった場合に起きること
譲渡から6か月の申請期限(第3条)
確定的な権原の取得についての許可は、譲渡の時点から6か月以内に申請しなければならない。その前に物件が別の所有者へ移った場合は除かれる。
登記の段階で止まる(第6条)
登記を申請するとき、デンマークに住所がない取得者は、通算5年の居住について宣誓供述をするか、法務大臣の許可を提示しなければならない。提示できない場合、裁判官は許可を用意するための期限を定める。
売却命令(第8条)
許可が拒否された、失効した、または申請そのものが行われなかった場合、法務大臣は所有者に対し、6か月以上1年以内の期限を定めて物件を売却するよう命じる。
罰金(第10条)
定められた期限内に申請しなかった者は罰金に処せられる。第8条の命令に従わない場合も同じで、裁判所は継続的な週単位の罰金をもって命令の履行を強制する。
第9条は、この法律の規定を回避する目的で結ばれたと認められる長期の使用契約・賃貸契約を無効と定めています。長期リースで実質的な所有に近づける、といった組み立ては条文で正面から否定されています。回避を図った他の法律行為にも、第3条から第8条までの規定が準用されます。
EU・EEA国籍者とは手続きそのものが違う
同じ「外国人」でも、EU・EEA加盟国とスイスの国籍者は扱いが分かれます。デンマーク外務省の英語ページは、一般規則が主たる住居とセカンドハウスの両方に及ぶと述べたうえで、EU・EEA国籍者は一定の場合に許可なしで購入できると説明しています。

Civilstyrelsen の案内によれば、EU・EEAまたはスイスの国籍者が通年住宅を買う場合、必要なのは同局の許可ではなく Tinglysningsretten(登記裁判所)への宣言です。宣言では、デンマークまたは他のEU・EEA加盟国で被用者であること、生計に足りる資力があること、EU・EEAの滞在書類を持っていること、自営業を行うこと、デンマークで支店や代理店を設けるかサービスを提供すること、のいずれかに当たることを述べます。加えて、自分がEU・EEA(またはスイス)の国民であること、その物件を通年住宅として使うこと、その物件がサマーハウスではないことも宣言します。許可なしで取得できるかどうかを判断する権限は、Civilstyrelsen ではなく Tinglysningsretten にあります。
| 買う人 | 通年住宅 | セカンドハウス | 窓口 |
|---|---|---|---|
| デンマークに住所がある人 | 許可不要 | 許可不要 | — |
| 通算5年の居住歴がある人 | 許可不要 | 許可不要 | — |
| EU・EEA・スイス国籍者 | 宣言で足りる場合がある | 許可が必要 | Tinglysningsretten |
| 日本在住の日本人 | 許可が必要 | 許可が必要 | Civilstyrelsen |
| デンマークに本拠のない法人 | 許可が必要 | 許可が必要 | Civilstyrelsen |
表の時点:2026年10月9日。erhvervelsesloven の条文と、Civilstyrelsen およびデンマーク外務省の案内から整理しました。個別の可否は当局の判断によります。
ヨーロッパのなかでも対応は割れています。ドイツには購入制限がなく、オランダは国籍ではなく自治体の規制で絞り、スイスは住宅を原則取得できない仕組みを持っています。デンマークはスイスに近い位置にありますが、制限の根拠が連邦法ではなく「住所と居住年数」である点が違います。
日本から検討するときに確かめる順番
許可が要ることが分かっている以上、物件探しより先に自分の立場を確定させるほうが早道です。
図:問い合わせ前に自分で決められること
住所と居住歴を数える
いまデンマークに住所があるか、過去に通算5年の住所があったか。どちらかに当たれば許可は要りません。留学や駐在の期間は合算して数えます。
通年住宅かセカンドハウスかを決める
生活の本拠にするのか、休暇用に持つのか。前者なら4週間の審査で進みますが、後者は結びつきの立証が前提になります。
セカンドハウスなら、結びつきを先に点検する
公式の例示は「直近25年間、毎年最低1週間」です。これに遠い場合、物件を決めてから申請しても通る見込みは低くなります。事前同意を取れるかを先に相談するほうが無駄がありません。
書類を1つにまとめてから出す
購入契約書または販売資料、滞在に関する書類は、それぞれ1つの文書にまとめるよう求められています。分割して送ると、4週間の起算点が後ろへずれます。
6か月の期限から逆算する
申請期限は譲渡から6か月です。審査に4週間かかる前提で、契約から申請までの空白をつくらない計画にします。
よくある質問
日本人はデンマークの不動産を買えますか
買えますが、原則として法務大臣(実務は Civilstyrelsen)の許可が必要です。デンマークに住所があるか、過去に通算5年の住所があった場合だけ許可が不要になります。
許可の審査にはどれくらいかかりますか
通年住宅について、Civilstyrelsen は必要な情報をすべて受け取ってからおよそ4週間と案内しています。セカンドハウスの審査期間は、同じ形では公表されていません。
サマーハウスを投資用に買えますか
セカンドハウスの許可には「デンマークへの特に強い結びつき」が必要で、公式の例示は直近25年間にわたる毎年1週間以上の滞在です。資金額や物件価格は判断材料として挙げられていません。
許可を取らずに買ってしまったらどうなりますか
申請は譲渡から6か月以内と定められています。申請しなかった場合や許可が下りなかった場合、法務大臣は6か月以上1年以内の期限を定めて売却を命じることができ、期限内に申請しなかったこと自体が罰金の対象になります。
長期の賃貸契約で代用できますか
できません。法の規定を回避する目的で結ばれたと認められる長期の使用・賃貸契約は、第9条により無効と定められています。
相続で受け取る場合も許可が要りますか
要りません。相続、未分割遺産としての承継、共有財産の分割による取得、直系血族への贈与は、第2条で許可不要とされています。
参照した一次情報
- Retsinformation「Erhvervelsesloven(LBK nr 265 af 21/03/2014、法務省所管)」(2026年10月9日に表示を確認)
- Civilstyrelsen「Erhvervelse af fast ejendom」(2026年10月9日に表示を確認)
- Civilstyrelsen「Ansøg om tilladelse til at erhverve en helårsbolig」(2026年10月9日に表示を確認)
- Civilstyrelsen「Ansøg om erhvervelse af sekundærbolig」(2026年10月9日に表示を確認)
- Civilstyrelsen「Tilladelse til køb af sekundærbolig kræver særlig stærk tilknytning til Danmark」(2026年10月9日に表示を確認)
- Ministry of Foreign Affairs of Denmark「Foreign citizens’ acquisition of property in Denmark」(2026年10月9日に表示を確認)
