結論から

オランダの政府サイトを住宅購入の入口から順にたどっても、国籍で購入を禁じる規定の案内は見当たりません。政府が「購入の制限」として案内しているのは、自治体が導入できる買い上げ保護(opkoopbescherming)だけで、これは国籍ではなく「買って貸すかどうか」で効きます。

買うときの税は2026年に変わりました。自分が住まない住宅の移転税が、10.4%から8%へ引き下げられています。自分が住む住宅は2%のまま、18歳以上35歳未満の初回免除は住宅価値55万5,000ユーロまでです。

注意したいのは、同じ政府の中でも数字がそろっていない点です。中央政府の解説ページには2026年9月29日時点でも「投資家は10.4%」と書かれたままで、税務当局の税率表と食い違っています。金額は税務当局の表で確かめてください。

国籍による購入制限はない。効いているのは「買い上げ保護」

オランダの住宅購入について、中央政府(Rijksoverheid)は購入にかかる費用、移転税の免除、賃貸に出すときの手続きをそれぞれ案内しています。そのいずれにも、買い手の国籍や居住地を条件にする記述はありません。購入そのものを制限する仕組みとして政府が説明しているのは、2022年1月1日に施行された買い上げ保護です。

この制度は「外国人対策」ではありません。住宅を買って賃貸に回す動きが強い地域で、実際に住む人が買えるようにするための仕組みです。したがって、オランダ人が買っても日本人が買っても、同じ条件で引っかかります。逆に言えば、自分で住むために買うのであれば、この制度は基本的に関係しません。

この記事は、公開されている一次資料で確認できたことだけを書いています。国籍による制限が「存在しない」ことを政府が明記した文書は見つかっていないため、ここでは「住宅購入の案内に国籍の条件が置かれていない」という事実として扱います。実際の取引では公証人(notaris)が本人確認と適格性の確認を行います。

買い上げ保護は「買って貸す」を許可制にする仕組み

買い上げ保護は、自治体が地域を指定して導入します。オランダ住宅省の解説では、「望まれている地域で、住宅が賃貸目的で簡単に買い上げられないようにし、自分で住む人のために持ち家をより多く残す」ための制度だと説明されています。導入できるのは、安価・中価格帯の持ち家が不足している地区か、賃貸目的の買い上げによって地区の住みやすさが損なわれている地区です。どの価格帯までを対象にするかは、自治体が事前に決めます。

オランダ住宅省の買い上げ保護の解説ページの画面キャプチャ
出典:Volkshuisvesting Nederland「Opkoopbescherming」。2022年1月1日施行、当面5年間の制度と説明されている

指定地域内で対象になる住宅を買った場合、自分で住まずに貸すには賃貸許可(verhuurvergunning)が要ります。ただし、次の3つに当たるときは、買い上げ保護が導入されていても自治体は許可を出さなければならないとされています。

買い上げ保護があっても賃貸許可が必要的に認められる3つの場合
場合 内容 付帯する条件
家族への賃貸 住宅を家族(familie)に貸す場合 解説ページに追加の条件の記載なし
店舗・事務所・事業用建物の一部 住宅が店舗・事務所・事業用の建物の一部になっている場合 解説ページに追加の条件の記載なし
一時的な賃貸 住宅を一時的に貸す場合 所有者が最低1年間その住宅に自ら居住していたこと

この3つに加えて、自治体は地区の事情に合わせた独自の例外を定めることができます。したがって、条件は全国一律ではありません。買う前に、その自治体が買い上げ保護を導入しているか、対象となる価格帯はいくらか、独自の例外に何があるかを、自治体の条例で確認することになります。

制度の期限にも触れておきます。買い上げ保護は当面5年間とされており、その後に必要性と妥当性の評価が行われるとされています。2022年1月1日の施行から数えると、この5年の区切りは2027年に来ます。

移転税は2026年に10.4%から8%へ下がった

買うときに効いてくるのが移転税(overdrachtsbelasting)です。2026年に、自分の主たる住居として使わない住宅の税率が引き下げられました。税務当局(Belastingdienst)が公表している税率表がそのまま答えになります。

オランダ税務当局の移転税の税率表の画面キャプチャ
出典:Belastingdienst「Het tarief van de overdrachtsbelasting」。2025年と2026年の税率が並べて示されている
オランダの移転税の税率(Belastingdienstの税率表より)
状況 2025年 2026年
自分が住む住宅 2% 2%
35歳未満の初回購入者で、自分が住む住宅 0%(要件をすべて満たす場合) 0%(要件をすべて満たす場合)
主たる住居として使わない住宅(別荘・セカンドハウス・賃貸用・投資用) 10.4% 8%
住宅以外(事業用建物・事務所・車庫・店舗) 10.4% 10.4%

投資として買う場合の負担は、2.4ポイント下がった計算になります。40万ユーロの住宅なら、移転税は4万1,600ユーロから3万2,000ユーロへ、9,600ユーロ軽くなります。とはいえ8%は、自分で住む場合の2%の4倍です。「住む」と「貸す」で税率が4倍違うという構造そのものは変わっていません。

なお、住宅に付属する車庫の扱いは購入のタイミングで変わります。住宅と同時に買う車庫は住宅と同じ税率ですが、住宅と別に買う車庫は「住宅以外」として10.4%になると税率表に明記されています。

18歳以上35歳未満の免除は、2026年は55万5,000ユーロまで

0%の免除(startersvrijstelling)は、条件が細かく決まっています。中央政府の解説では、次の5つをすべて満たすことが求められています。

オランダ中央政府の移転税免除の解説ページの画面キャプチャ
出典:Rijksoverheid「Wanneer krijg ik vrijstelling van overdrachtsbelasting?」。2026年の上限は55万5,000ユーロ

移転税0%の免除を受けるための5要件

  • 取得の時点で成年(18歳)に達していて、35歳未満であること。取得の時点とは、引渡しの公正証書に署名した時点を指す。
  • 買うものが住宅であること。
  • この免除を過去に受けていないこと。そのことを書面で申告すること。
  • 自分でその住宅に住むこと(主たる住居の要件)。そのために専用の申告書を提出すること。
  • 住宅の価額が2026年は55万5,000ユーロを超えないこと。

誤解されやすい点が2つあります。ひとつは、この免除は「人生で最初に買う住宅」である必要がないことです。過去に住宅を持っていたかどうかは問われず、免除そのものを1回しか使えないという制限だけがかかります。もうひとつは、共同で買う場合の扱いです。免除は買主ごとに判定されるため、片方が35歳以上でもう片方が35歳未満なら、35歳以上の人は自分の持分について2%を払い、35歳未満の人は自分の持分について免除を受けられます。

自分で住むけれども他の要件を満たさない場合は2%です。これは標準の税率より低いため、公証人に対して申告書を出す必要があります。

新築は移転税がかからない。中古は「kosten koper」

オランダでは、物件の売り方に2つの慣行があります。中古住宅はたいてい「kosten koper(k.k.、買主負担)」で売られ、移転税と引渡し証書の公証人費用を買主が負担します。新築住宅はたいてい「vrij op naam(v.o.n.)」で売られ、これらの費用が販売価格に織り込まれます。中央政府の解説では、v.o.n.の場合は移転税を払う必要がないと説明されています。

買うときにかかる費用として政府が挙げているもの
区分 費目 備考
物件を探す段階 仲介業者(makelaar)の費用、建物診断(bouwkundige keuring)の費用、鑑定(taxatie)の費用 いずれも政府の解説では「必要に応じて(eventuele)」と書かれている
取得の段階 移転税、引渡し証書の公証人費用 中古の「kosten koper」では買主の負担
資金調達の段階 助言費用、媒介費用、抵当権設定証書の公証人費用 住宅ローンを組むときの一時費用
保険 建物保険(opstalverzekering)、集合住宅なら管理組合(VvE)の保険 貸し手が建物保険を求めるのが一般的。死亡リスク保険を求める貸し手もある
保有中 不動産税(OZB) 毎年、自治体へ。額は住宅のWOZ評価額で決まる

買ったあとに毎年かかるのがOZBです。額は自治体が定める税率とWOZ評価額の組み合わせで決まるため、同じ価格の住宅でも自治体によって負担が変わります。集合住宅では、これに加えて管理組合の月額負担が乗ります。

同じ政府サイトの中で、数字が食い違っている

ここで、実務として知っておいたほうがよいことを1つ書いておきます。2026年9月29日時点で、中央政府の「家を買うときにかかる費用」のページには、免除の説明のあとに「投資家は10.4%を払う」と書かれたままになっています。一方、税務当局の税率表には、2026年の税率は8%と明記されています。

同じ日に確認した2つのページの記述

中央政府の費用解説ページ

「Beleggers betalen 10,4%」(投資家は10.4%を払う)と記載。免除の上限額は55万5,000ユーロで最新。

税務当局の税率表

2026年の欄に、主たる住居として使わない住宅は8%と明記。あわせて「2026年から、主たる住居として使わない住宅には8%の税率が適用される」という注意書きがある。

読み方

税率は税務当局の表を優先する。解説ページの数字は改定の反映が遅れることがある。

公的な情報でも、部署やページによって更新のタイミングが違います。金額と税率については、その税を実際に扱う当局のページまで降りて確かめるのが確実です。同じ確かめ方は他の国でも必要で、当サイトではドイツの不動産は外国人が買える?やイタリアの不動産は日本人が買える?でも、条文と税務当局の数字を突き合わせています。制度が近いイギリスの扱いはイギリスの不動産は日本人でも買える?にまとめました。

よくある質問

日本に住んだままオランダの住宅を買えますか。

オランダ政府の住宅購入の案内には、買い手の居住地を条件にする記述がありません。ただし、自分で住まない住宅の移転税は2026年で8%になり、自分で住む場合の2%や35歳未満の免除は使えません。加えて、買い上げ保護が導入されている地域で対象の住宅を買って貸す場合は、賃貸許可が必要になります。

買い上げ保護はどこの自治体にありますか。

導入するかどうかは自治体が決めるため、全国一律ではありません。住宅省の解説も「自治体が選ぶことができる」という書き方です。対象になる住宅の価格帯も自治体が事前に定めます。購入を検討している自治体の条例で確認してください。

買ってすぐ貸しに出すことはできますか。

買い上げ保護の対象地域・対象価格帯であれば、賃貸許可が要ります。一時的な賃貸として許可を受ける道はありますが、その場合は所有者が最低1年間その住宅に自ら住んでいたことが条件です。買ってすぐ貸す、という形は想定されていません。

35歳未満の免除は外国籍でも使えますか。

中央政府が挙げている5要件に国籍の条件はありません。ただし「自分でその住宅に住む」ことが要件であり、公証人に対して主たる住居の申告書を出す必要があります。賃貸に回す予定であれば要件を満たしません。

新築と中古で、買主の負担はどう変わりますか。

中古はたいてい「kosten koper」で、移転税と引渡し証書の公証人費用を買主が負担します。新築はたいてい「vrij op naam」で、これらが販売価格に含まれ、移転税を別途払う必要はありません。表示価格の後ろに付く「k.k.」「v.o.n.」の2文字で、どちらの慣行かが分かります。

住宅以外を買う場合の税率は。

事業用建物、事務所、店舗、住宅と別に買う車庫、未建築の土地は、2026年も10.4%のままです。引き下げられたのは、住宅のうち主たる住居として使わないものだけです。

出典

掲載内容は2026年9月29日にBelastingdienst・Rijksoverheid・住宅省のページで表示されていたものです。税率と上限額は改定されます。実際の取引では、物件所在地の自治体の条例と、公証人・税務の専門家の確認を受けてください。この記事は情報提供であり、税務または法律の助言ではありません。

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