台北の中古マンションを見に行った、という話を聞く機会が増えました。距離が近く、言葉の壁も相対的に低い。ところが台湾の土地には、他のアジアの国とは性格の違う条件が付いています。外国人枠のパーセンテージでも、非居住者への上乗せ税でもありません。「あなたの国が台湾の人に同じ権利を認めているか」という、相手国の法制度をこちらに映して判断する仕組みです。ここでは台湾の土地法の条文そのものを読み、どこまでが誰にでも当てはまる話で、どこからが個別確認の話なのかを分けて整理します。
台湾の土地法第18条は、外国人が土地の権利を取得・設定できるのは条約またはその本国の法律によって、台湾の人がその国で同じ権利を享受できる場合に限ると定めています。国籍そのものより、相手国の制度が判断材料になります。
この条件を満たしても、7種類の土地は外国人へ移転・設定負担・賃貸ができません。さらに取得できる用途は8種類に限られ、面積と所在地は地方政府の制限を受けます。
手続きは届出ではなく許可制です。直轄市または県(市)政府へ申請し、政府は受理後14日以内に可否を決めます。用途を変えるときも、相続以外で移転するときも同じ手続きが要ります。
判断の出発点は「平等互恵」
台湾の土地法第18条は短い条文です。外国人が中華民国で土地の権利を取得または設定できるのは、条約またはその本国の法律により、中華民国の人民がその国で同じ権利を享受できる場合に限る、と書かれています。条文の日付は民国113年8月7日、西暦では2024年8月7日の改正版が現行です。
日本貿易振興機構(ジェトロ)も台湾の外資規制の解説で、台湾人が域外で同様の権利を享受できる場合に限り、当該外国の者も台湾で土地に関する権利を取得できる、と同じ趣旨を記しています。最終更新は2026年1月31日です。
この方式は、購入枠を何パーセントと決める形とも、非居住者に税率を上乗せする形とも違います。相手国の法制度が変われば、台湾側の扱いも変わりうるということです。したがって「外国人は買えるのか」という問いは、正確には「自分の国籍が平等互恵の条件を満たすと判断されるか」という問いになります。
この平等互恵の判断は、台湾の内政部が国ごとに整理した一覧にもとづいて運用されています。2026年9月18日の時点で、内政部地政司のサイトに接続できず、この一覧の中身を確認できませんでした。本稿では一覧の内容には踏み込みません。
実際に取得を検討する段階では、物件所在地を管轄する直轄市または県(市)政府へ、自分の国籍が現時点でどう扱われるかを確認する必要があります。仲介業者の口頭説明だけで進めないでください。
外国人へは移転できない7種類の土地
平等互恵の条件を満たしても、土地の種類によっては最初から対象外です。土地法第17条は、外国人に対して移転・設定負担・賃貸のいずれもできない土地を7つ挙げています。売買だけでなく、抵当権などの負担設定も、賃貸も含まれる点が重要です。

| 条文の表記 | 内容 |
|---|---|
| 林地 | 森林として使われる土地 |
| 漁地 | 漁業のための土地 |
| 狩猟地 | 狩猟のための土地 |
| 塩地 | 製塩のための土地 |
| 鉱地 | 鉱業のための土地 |
| 水源地 | 水源にあたる土地 |
| 要塞軍備区域及び領域辺境の土地 | 軍事施設の区域と、領域の境界にあたる土地 |
相続は例外として扱われます。第17条第2項は、前項の移転に相続による取得は含まれないとしたうえで、相続登記が終わった日から3年以内に本国人へ売却しなければならないと定めています。期限を過ぎても売却されない場合、直轄市・県(市)の地政機関が国有財産局へ移送し、公開入札の手続きに入ります。改正法の施行前に相続で取得しながら相続登記を済ませていない場合も、同じ扱いになります。
国籍に関係なく私有できない土地もある
第17条とは別に、第14条が誰であっても私有できない土地を10種類定めています。外国人だから買えないのではなく、台湾の人でも私有の対象にならないという意味です。海岸の一定限度内、公共の需要がある天然の湖沢とその沿岸の一定限度内、通行できる水道とその沿岸の一定限度内、市街区域内の水道・湖沢とその沿岸の一定限度内、公共交通道路、鉱泉地、瀑布地、公共の需要がある水源地、名勝古跡、そのほか法律で私有が禁じられている土地です。
海沿いや川沿いの物件を検討するときは、この線引きが効いてきます。建物ごと買うつもりでも、敷地の一部がこの範囲に掛かっていれば、その部分は私有の対象になりません。
取得できる用途は8種類に限られる
第19条は、外国人が自用・投資・公益のいずれかの目的で使う場合に取得できる土地の用途を、8つ列挙しています。面積と所在地については、管轄する直轄市または県(市)政府が法令で定める制限に従わなければならないという条件が付きます。

| 号 | 用途 | 補足 |
|---|---|---|
| 一 | 住宅 | 居住用。面積と所在地は地方政府の制限に従う |
| 二 | 営業処所、事務所、店舗および工場 | 事業の拠点にあたるもの |
| 三 | 教会 | 宗教施設 |
| 四 | 病院 | 医療施設 |
| 五 | 外僑子弟学校 | 外国人の子弟のための学校 |
| 六 | 使領館および公益団体の会所 | 公館・公益団体の拠点 |
| 七 | 墳場 | 墓地 |
| 八 | 国内の重大建設、全体経済または農牧経営に資する投資 | 中央の目的事業主管機関の許可が要る |
個人が住む家、あるいは貸し出すための住宅は第1号に入ります。いっぽう「土地そのものを値上がり待ちで持つ」という使い方は、この8つのどれにも当てはまりません。条文が自用・投資・公益の目的で使用する場合と書いているとおり、用途を示して許可を得る仕組みになっているためです。
手続きは届出ではなく許可制
第20条が手続きを定めています。第19条にもとづいて土地を取得する外国人は、関係書類を添えて管轄の直轄市または県(市)政府へ申請し、許可を受けなければなりません。取得のときだけでなく、土地の用途を変更するとき、相続以外の理由で移転するときも同じです。第19条第1項第8号の投資として取得する場合は、その前に中央の目的事業主管機関の同意を得る必要があります。
用途が8号のいずれかかを確かめる
住宅なのか事業拠点なのか、第19条のどの号に当たるかで、必要な同意と書類が変わります。
第8号の投資なら中央機関の同意を先に取る
重大建設や農牧経営への投資として取得する場合、地方政府への申請より前の段階です。
直轄市または県(市)政府へ申請する
関係書類を添えて提出します。政府は受理後14日以内に可否を決めます。
許可後は中央地政機関へ報告される
地方政府が許可した場合、中央の地政機関へ報告して備査を受けます。
登記を経て権利と義務が生じる
第24条は、外国人が賃借または購入した土地は登記後、法令の定めに従って権利を享受し義務を負うとしています。
第8号で取得した場合には、その後にも条件が続きます。認可された期限と用途に沿って使わなければならず、事情があって期限内に使えないときは理由を述べて中央の目的事業主管機関へ延長を申請します。認可どおりに使っていない場合、地方政府は土地所有者へ通知し、通知の送達後3年以内の売却を求めます。期限を過ぎても売却されなければ、そのまま入札にかけることができ、代金は所有者へ返されます。土地の上に改良物があるときは、あわせて入札の対象になります。
日本から検討するときに確かめる5点
ここまでが条文から読み取れることです。実際に動く前には、条文だけでは決まらない部分を個別に確認する必要があります。
自分の国籍が現時点で平等互恵の条件を満たすと扱われるか。管轄の直轄市・県(市)政府に確認する。
対象地が第17条の7種類、または第14条の10種類に掛かっていないか。登記簿の地目で確かめる。
用途が第19条のどの号に当たるか。住宅として買うなら、その用途で申請できる状態か。
その自治体が面積と所在地にどんな制限を定めているか。制限は地方政府ごとに異なる。
将来、用途を変えたり売ったりするときにも許可が要ること。出口の手続きを先に織り込む。
アジアの他の国と比べると、性格の違いがはっきりします。タイは建物の外国人枠という形で上限を設けていますし、シンガポールは物件の種類ごとに承認の要否を分け、印紙税で調整しています。台湾は枠でも税率でもなく、相手国の制度と用途の許可で入り口を絞る設計です。
日本側でも手続きが残る
台湾側で許可を得て取得できたとしても、それで終わりではありません。日本の居住者が国外の不動産を持つ場合、外国為替及び外国貿易法にもとづく報告や、国税庁へ提出する調書の対象になることがあります。取得時、保有中、売却時でそれぞれ見るべき制度が違うため、日本側で必要になる報告と調書を整理した記事もあわせて確認してください。
よくある質問
日本人でも台湾の住宅を買えますか
土地法第18条の平等互恵の条件を満たすと判断されることが前提です。そのうえで第19条第1号の住宅として、管轄の政府から許可を得る必要があります。本稿では内政部の一覧を確認できていないため、日本国籍がどう扱われるかの断定はしません。
マンションの一室なら土地の話は関係ないのでは
区分所有の住戸にも敷地の持分が付きます。土地法の制限は土地の権利に掛かるため、建物だけの話として切り離すことはできません。
許可の審査にはどのくらいかかりますか
第20条第2項は、直轄市または県(市)政府が受理後14日以内に可否を決めると定めています。ただし第19条第1項第8号の投資では、その前に中央機関の同意を得る工程が入ります。
相続で受け取った土地はどうなりますか
第17条の7種類に当たる土地を相続で取得した場合、相続登記が終わった日から3年以内に本国人へ売却する必要があります。期限を過ぎると公開入札の手続きに移ります。
買った後に用途を変えられますか
第20条第1項は、土地の用途を変更するときも、相続以外の移転をするときも、あらためて政府の許可が要るとしています。
まとめ
台湾の土地は、外国人枠の数字ではなく、相手国の制度と用途の許可という2つの関門で管理されています。第18条の平等互恵が入り口、第17条と第14条が対象から外れる土地、第19条が認められる用途、第20条が許可の手続き。この4つの順番で読むと、条文の全体像がつかめます。
そのうえで、条文だけでは決まらない部分が2つ残ります。自分の国籍が現時点でどう扱われるかと、その自治体が面積・所在地にどんな制限を定めているかです。どちらも管轄の直轄市または県(市)政府が窓口になります。物件を探す前に、この2点を先に当たっておくと、手戻りを避けられます。
参照した一次情報:全国法規資料庫「土地法」(修正日期 民国113年8月7日)/同 第17条/同 第19条/ジェトロ「外資に関する規制|台湾」(最終更新 2026年1月31日)(いずれも2026年9月18日に表示を確認)
