韓国の不動産は、外国人でも原則として取得できます。土地の所有そのものを禁じる国とは違い、制度の骨格は「買えるが届け出る」です。ところが2025年の夏から、首都圏の住宅にかぎって話が変わりました。外国人だけを対象にした土地取引の許可制が敷かれ、契約の前に自治体の許可を得ないと売買契約そのものが成立しなくなっています。
この措置は当初1年間の期限付きでした。期限が切れる直前の2026年8月20日、韓国国土交通部は指定期間だけを1年延ばすと公表しています。つまり今も続いています。ここでは、どの地域が対象で、いつまでで、何を確かめればよいのかを、韓国政府とソウル特別市が公開している資料で整理します。
外国人による取得自体は禁じられていません。取得したら60日以内に物件所在地の自治体へ申告します。軍事施設保護区域などでは以前から事前許可が必要です。
これに加えて2025年8月26日から、ソウル特別市の全域、仁川広域市の7区、京畿道の23市・郡が外国人を対象とした土地取引許可区域に指定されました。この区域内の住宅を買うには事前の許可が要ります。
2026年8月20日の公告で、この指定は2026年8月26日から2027年8月25日までに延長されました。区域の範囲は前回と同じです。
原則は「買える」。ただし取得後60日以内の申告がある
韓国で外国人が不動産を取得するときの基本の枠組みは、不動産取引申告等に関する法律(不動産取引申告法)と不動産登記法です。韓国政府の投資誘致機関である大韓貿易投資振興公社(KOTRA)が運営するInvest KOREAの案内では、外国人が不動産を取得した場合の手続きが3つの類型に分けて説明されています。
国内に居住している外国人と外国法人の韓国支店の場合、契約後に代金を支払い、物件所在地の市・郡・区の役所へ取得の申告を行います。この申告は契約の締結から60日以内で、不動産取得契約書の提出が求められます。所有権移転の登記は、契約締結または残金支払いから60日以内に管轄の登記所で行います。
韓国に居住していない外国人の場合は、これに外国為替取引法が加わります。代金の支払いのあと、外国為替銀行の本支店へ取得の届け出を行う流れが案内されています。日本に住んだままソウルの住宅を買う場合はこちらに当たります。
取得を禁じられているわけではない、という点は、外国人による既存住宅の購入そのものを止めている国と大きく違います。たとえばオーストラリアは既存住宅の購入を期限付きで禁じており、シンガポールは購入自体は認めつつ印紙税を60%まで引き上げています。韓国は3つ目の型で、地域と用途を限って許可制を敷いています。
申告とは別に、以前から事前の許可が必要な区域もあります。Invest KOREAは、軍事施設保護区域、指定文化財の保護区域、生態・景観保全地域などを挙げ、これらに所在する不動産の取得は契約を結ぶ前に許可を得る必要があるとしています。
| 手続き | いつ | どこへ | 対象 |
|---|---|---|---|
| 取得の申告 | 契約締結から60日以内 | 物件所在地の市・郡・区 | 外国人による取得全般 |
| 所有権移転登記 | 契約締結または残金支払いから60日以内 | 管轄の登記所 | 取得者全般 |
| 外国為替の届け出 | 代金の支払い後 | 外国為替銀行の本支店 | 韓国に居住していない外国人 |
| 事前の許可 | 契約を結ぶ前 | 所管の行政庁 | 軍事施設保護区域・文化財保護区域・生態景観保全地域など |
2025年8月26日から、首都圏の住宅は外国人だけ許可制になった
ここからが近年の大きな変化です。韓国国土交通部は2025年8月21日に報道資料を出し、「実居住しない外国人は首都圏の住宅を買えない」という見出しで、外国人を対象とした土地取引許可区域の指定を公表しました。副題には、ソウル特別市の全域、仁川広域市の7つの区、京畿道の23の市・郡を指定すること、許可区域内で住宅を取引するときには海外資金の出所とビザの類型の申告を義務づけること、違法な海外資金の持ち込みや脱税の疑いが見つかった場合には関係機関を通じて海外の当局へ通報することが並んでいます。
この指定は、ソウル特別市が公開している土地取引許可区域の指定現況にも載っています。指定権者を国土交通部長官とする行で、指定区分が「外国人を対象とした住宅用途」、最初の指定日が2025年8月26日、面積が市の全体、備考に住宅の種類が並ぶ形です。

備考欄に挙がっている住宅の種類は、日本の感覚に置き換えると、一戸建て、賃貸併用の一戸建て、集合住宅、低層の共同住宅、区分所有の小規模共同住宅にあたります。つまり住宅の形をほぼ網羅しています。一方で、住宅として登記されない事務所兼用の住戸は指定の文言に含まれていません。個別の物件が対象かどうかは、地番ごとに確認する必要があります。
2026年8月20日に1年延長され、2027年8月25日まで続く
当初の指定は1年間でした。期限が近づいた2026年8月20日、国土交通部は参考資料を公表し、外国人の投機を防ぐために土地取引許可区域を1年延長すると発表しました。資料の冒頭には、2025年8月に指定した許可区域をそのままに、指定期間だけを1年延長すること、許可区域の範囲は従来と同一で、行政区域の変更を反映して指定を公告することが書かれています。

添付された資料の本文には、2026年8月20日の土地取引許可区域の指定公告により、2026年8月26日から2027年8月25日まで効力が発生すると明記されています。今回の指定範囲は前年8月に指定した地域の範囲と同じで、仁川市の行政区域の改編を反映したとも書かれています。
期限付きの措置が1年ごとに更新されている、という点が実務上は重要です。2027年8月25日のあとにどうなるかは、その時点の公告を見るまで分かりません。購入の検討が長期にわたる場合は、契約の直前に指定の有無をもう一度確かめる必要があります。
ソウルでは、外国人向け以外の許可区域も重なっている
混乱しやすいのは、ソウルの許可区域が一つではないことです。外国人を対象とした指定とは別に、ソウル特別市長や国土交通部長官が用途や地区を限って指定した区域がいくつも重なっています。同じ指定現況の表から、代表的なものを並べます。
| 指定権者 | 指定区分 | 最初の指定日 | 備考(現在) |
|---|---|---|---|
| ソウル市長 | 江南・松坡・瑞草・龍山の4区 | 2025年3月24日 | 区の全体。用途は集合住宅 |
| ソウル市長 | 狎鴎亭・汝矣島・木洞・聖水 | 2021年4月27日 | 主要な再建築団地など。4.58平方キロメートル |
| ソウル市長 | 江南・瑞草の自然緑地地域 | 1998年11月19日 | 26.69平方キロメートル |
| 国土交通部長官 | 外国人を対象とした住宅用途 | 2025年8月26日 | 市の全体 |
| 国土交通部長官 | ソウル市25区の全体 | 2025年10月20日 | 市の全体。用途は集合住宅 |
| 国土交通部長官 | 新規住宅供給の候補地の発掘 | 2026年8月13日 | ソウル19区内の開発制限区域。115.31平方キロメートル |
2025年10月20日にはソウル25区の全体が集合住宅の用途で指定されており、こちらは国籍を問わない指定です。つまりソウルで集合住宅を買う場合、外国人は少なくとも2系統の指定に同時に当たる可能性があります。「外国人だから許可が要る」のか「その物件だから許可が要る」のかは、地番と用途を見て切り分けることになります。
許可が要るかどうかを確かめる順番
指定の一覧を眺めても、目の前の物件が対象かどうかは分かりません。ソウル市の案内も、掲載されている土地調書は参考資料であり、個別の筆地が許可区域に含まれるかどうかは土地利用計画の確認サービスで調べるようにと注意書きを付けています。確認は次の順番で進めるのが確実です。
1
所在地が首都圏かどうかを見る
ソウル全域、仁川の7区、京畿道の23市・郡が外国人向けの指定対象です。対象外の地域なら、この指定による許可は要りません。
2
物件の用途を見る
指定の対象は住宅です。住宅として登記されているかどうかで扱いが変わります。
3
地番で土地利用計画を引く
指定現況の表ではなく、地番ごとの確認サービスで許可区域に含まれるかを確かめます。他の指定が重なっていることもあります。
4
最新の公告文を読む
許可の条件は公告文で定まります。ソウル市の指定は市の公報、国土交通部の指定は電子官報で確認できます。
5
契約の前に許可を取る
許可区域内の取引は、許可を受けてから契約します。順番を逆にすることはできません。
この記事で確認できなかったこと
許可を受けた後の利用義務、たとえば何か月以内に入居し何年住む必要があるかという条件は、公告文と施行令で定まります。今回の作業では、その数値を韓国政府の公開資料から直接確認できませんでした。確認できていないため、本文には具体的な年数を書きません。検討を進める段階では、物件所在地の自治体か、韓国の資格を持つ専門家に公告文の条文で確かめてください。
同じく、海外資金の出所とビザ類型の申告について、提出書類の様式や記載事項の詳細も報道資料の見出しの範囲までしか確認できていません。記事の性質上、手続きの入口を示すところまでにとどめます。
| 項目 | 状態 | 根拠 |
|---|---|---|
| 外国人の取得可否 | 取得できる | Invest KOREA(KOTRA)の案内 |
| 取得後の申告期限 | 契約から60日以内 | Invest KOREA(KOTRA)の案内 |
| 首都圏の住宅の許可制 | 2027年8月25日まで有効 | 国土交通部の参考資料とソウル市の指定現況 |
| 許可後の利用義務の年数 | 本記事では未確認 | 公告文・施行令の確認が必要 |
| 資金出所の申告様式 | 本記事では未確認 | 報道資料の見出しまで |
地域を限って外国人の取引に条件を付ける動きは、韓国だけのものではありません。制度の型が国ごとに違うことは、台湾の平等互恵の原則と並べて読むと分かりやすくなります。
この記事が参照した一次情報
- 大韓民国 国土交通部「参考・説明資料」2026年8月20日:土地取引許可区域の1年延長、2026年8月26日から2027年8月25日まで
- 大韓民国 国土交通部 報道資料 2025年8月21日:ソウル全域・仁川7区・京畿23市郡の指定、資金出所とビザ類型の申告義務
- ソウル特別市 ソウル不動産情報広場「土地取引許可区域 指定現況」:指定権者・指定区分・最初の指定日・備考
- Invest KOREA(KOTRA)“Procedures and Required Documents”:60日以内の申告、登記、外国為替の届け出、事前許可が要る区域
