北欧でデンマーク・フィンランド・ノルウェーの3か国は、いずれも外国人の不動産取得に許可や条件を置いています。残るスウェーデンだけは、国籍を理由にした制限が見当たりません。ただし「制限がない」と「そのまま買える」は別の話です。
2026年10月13日に、スウェーデン国土測量庁(Lantmäteriet)の所有権登記のページ、印紙税のページ、それにスウェーデン議会が公開している住宅権法(Bostadsrättslag 1991:614)の条文を読み、日本在住の個人と法人で何が変わるのかを整理しました。
Lantmäterietは「所有権登記に関する規則は、外国籍の人とスウェーデン国民とで基本的に同じ」と書いています。国籍による購入制限や事前許可の制度はありません。
代わりに効くのが番号です。2026年7月1日から、不動産を取得した全員にスウェーデンの個人番号か調整番号が必要になりました。調整番号の取得には、スウェーデン国内での対面の本人確認が要ります。
印紙税は個人1.5%・法人4.25%。法人で買うと税率が約2.8倍になります。これに登記の処理手数料825クローナが必ず加わります。
都市部の集合住宅の多くは「ボスタッズレット」で、これは不動産の所有権ではなく組合の会員権です。入会は理事会が決めますが、規約で国籍を条件にすることは法律で無効とされています。
一方、法人が住戸のボスタッズレットを取得した場合、組合は入会を拒否できます。個人と法人で結論が逆になる点がこの国の特徴です。
登記のルールは外国籍でも基本的に同じ
スウェーデンで不動産の所有者を登記するのはLantmäteriet(国土測量庁)です。同庁は外国籍者向けのページを設けており、その冒頭に次のように書いています。「The rules are essentially the same regarding registration of ownership for foreign and Swedish citizens」。所有権登記の規則は、外国籍の人とスウェーデン国民とで本質的に同じだ、という意味です。
デンマークの法務省許可、フィンランドの国防省許可、ノルウェーの面積による線引きのような、外国人向けの事前許可にあたる制度は見当たりません。購入できる物件の種類についても、国籍を理由にした区別は置かれていません。

登記の申請には期限があります。同庁は、取得から3か月以内に所有権登記を申請しなければならないとしています。
2026年7月1日から、個人番号か調整番号が必須になった
国籍による制限がない代わりに、手続きの入口に新しい条件が加わりました。同じページの「Increased controls when someone applies for registration of ownership regarding immovable property and site leasehold from the 1 July 2026」という見出しの下に、次の内容が書かれています。
不動産または借地権を取得した者は全員、スウェーデンの個人番号(personal identity number)または調整番号(coordination number)が必要になります。会社・団体・法人については、スウェーデンの法人登録番号に加えて、会社登記庁(Bolagsverket)またはEEA域内の対応する登記簿へ実質的支配者の情報を登録していることが求められます。登録義務の対象外である場合は、それを示す書類の提出が必要です。
ここが2026年の実務上いちばん大きな変更点です。以前は番号が無くても登記ができた場面があっても、現在は取得者全員に番号が要ります。
調整番号は郵送だけでは完結しません。スウェーデン税務庁(Skatteverket)に申請したうえで、スウェーデン国内のサービスセンターで対面の本人確認を受ける予約が必要だと、Lantmäterietのページが案内しています。つまり渡航の予定を購入の工程に組み込む必要があります。
外国籍の人だけに求められる書類
Lantmäterietは、外国籍者について「当庁は個人データにアクセスできない」と説明しています。そのため国内居住者には不要な書類が追加で必要になります。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 所有権登記の申請書 | Lantmäterietの様式 |
| 売買契約または贈与証書 | 原本。写しでは受け付けない |
| 新所有者の番号 | スウェーデンの個人番号または調整番号 |
| 譲渡人の生年月日 | 成年であることを示すため |
| 行為能力の証明 | パスポートの写し、または居住国の当局が出す公的身分証明・出生証明書 |
売買契約そのものにも要件があります。公式の不動産表示(Gävle Torp 1:1 のような呼称)を記載すること、売主または贈与者が物件を移転すること、および全部か持分かを明示すること、売買なら購入価格を記載すること、署名があることです。
加えて同庁は、外国籍者と国外へ転出したスウェーデン国民について、婚姻の有無の情報を持っていないと述べています。売却や贈与をする側に回ったときは、本国の身分証明書にあたる書類で婚姻状況を示すことが求められます。
日本から買う場合の手続きの順番
- 物件を決め、売買契約を結ぶ。公式の不動産表示と購入価格を契約書に入れる
- スウェーデン税務庁へ調整番号を申請する。個人番号を持っていない場合は必須
- スウェーデン国内のサービスセンターで対面の本人確認を受ける
- パスポートの写しなど行為能力の証明をそろえる
- 取得から3か月以内にLantmäterietへ所有権登記を申請する
- 登記が認められると印紙税と処理手数料の請求書が届く。30日以内に支払う
印紙税は個人1.5%・法人4.25%
購入時に国へ納める税が印紙税(stämpelskatt)です。税率は買い手の種類で分かれます。
| 買い手 | 税率 |
|---|---|
| 個人 | 1.5% |
| 住宅権組合(tenant owner associations) | 1.5% |
| 自治体 | 1.5% |
| 法人(株式会社・パートナーシップ・経済団体など) | 4.25% |
注意したいのは課税標準です。印紙税は売買価格だけで決まるのではなく、売買価格と「登記が認められた年の前年の課税評価額(tax assessment value)」を比べて、高いほうの金額に対して計算されます。端数は1,000クローナ未満を切り捨てます。
Lantmäterietは次の例を挙げています。親族から物件を買い、売買価格として象徴的な1,000クローナを支払った。課税評価額は288,750クローナ。売買なので高いほうの金額が基準になり、288,000クローナの1.5%である4,320クローナを納める。これに処理手数料825クローナが加わる。

同庁は、印紙税について売主と買主の双方が連帯して責任を負うとも書いています。買主が支払わない場合、売主に請求が向かうことがあります。
登記以外にかかる手数料
印紙税がかからない取得でも、処理手数料は必ず発生します。
| 項目 | 金額 | 付記 |
|---|---|---|
| 所有権登記の処理手数料 | 825クローナ | 取得文書1通ごとに1件 |
| 抵当権の印紙税 | 抵当額の2% | 1,000クローナ未満切り捨て |
| 抵当権の処理手数料 | 375クローナ | 抵当1件につき |
| 登記簿の証明(Land register proof) | 230クローナ | 顧客サービス経由で注文 |
贈与の扱いにも線引きがあります。相続と遺産分割では印紙税はかからず処理手数料だけですが、贈与の場合、受け取る側が支払った対価が課税評価額の85%以上になると、売買と同じ扱いで印紙税を納めることになります。
支払いの時期は、申請が処理されたあとに請求書が届き、30日以内に納付します。
都市部の集合住宅は「ボスタッズレット」で、所有権ではない
ここからが、スウェーデンで住宅を買うときにいちばん誤解されやすい部分です。スウェーデンの都市部にある集合住宅の住戸は、その多くがボスタッズレット(bostadsrätt)という形で取引されます。建物を所有しているのは住宅権組合(bostadsrättsförening)で、買い手が得るのはその組合の会員権と、特定の住戸を使用する権利です。
したがって、ここまで説明してきたLantmäterietの所有権登記も印紙税も、ボスタッズレットの売買には同じようには当てはまりません。登記するのは不動産の所有権ではないからです。
不動産そのものを所有する。Lantmäterietに所有権登記を申請する。
国籍による制限はなく、個人なら印紙税1.5%と手数料825クローナ。
建物の所有者は組合。買い手が得るのは会員権と住戸の使用権。
取引には組合の理事会による入会の承認が要る。
規約で国籍を条件にするのは法律で無効
組合の承認が要ると聞くと、外国籍だと断られるのではないかと考えがちです。ここはスウェーデン議会が公開している住宅権法(Bostadsrättslag 1991:614)の条文で確認できます。
第2章第1条は、組合員を受け入れるかどうかの判断は、規約に定める会員条件と同章の規定に従い、組合の理事会が決めるとしています。
そのうえで第2章第2条が、無効(utan verkan)になる規約条件を列挙しています。第1号が「特定の国籍(ett visst medborgarskap)、または一定の所得もしくは資産を、組合への加入の前提とすること」です。第2号は譲受人を住宅権者以外の者が指名すること、第3号はその他内容などから加入希望者や譲渡者に対して不当(oskäligt)な条件です。
つまり、組合が規約に「スウェーデン国籍であること」と書いても、その条件は法律上効力を持ちません。さらに第2章第3条は、規約の会員条件を満たし、かつ組合が合理的に受け入れるべき場合には、住宅権が移転した者の加入を拒否してはならないと定めています。

ただし法人が買うと、組合は入会を拒否できる
個人について国籍で断れないことは上のとおりですが、買い手が法人になると結論が変わります。
第2章第4条は、法人(juridisk person)がレクリエーション目的ではない住戸の住宅権を取得した場合、第3条の加入要件を満たしていても組合は加入を拒否できると定めています。同条の後段では、自治体やリージョンが取得した場合は拒否できないとされており、一般の法人とは扱いが分けられています。
また第2章第6条は、住宅権の持分を取得した者について、規約に別段の定めがなければ加入を拒否されうるとしています。配偶者や同居者が関わる場合には第3条と第5条が適用される例外があります。
| 買い手・条件 | 組合は拒否できるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 個人(国籍を理由に) | できない。規約に書いても無効 | 第2章第2条第1号 |
| 個人(規約の条件を満たす) | 原則できない | 第2章第3条 |
| 法人(住戸・レクリエーション目的以外) | できる | 第2章第4条 |
| 自治体・リージョン | できない | 第2章第4条後段 |
| 持分だけを取得した者 | 規約に定めがなければできる | 第2章第6条 |
日本から買うときに押さえる点
- 国籍による購入制限や事前許可の制度は見当たらない
- 2026年7月1日から個人番号か調整番号が必須。渡航して対面の本人確認を受ける
- 印紙税は個人1.5%、法人4.25%。課税標準は売買価格と課税評価額の高いほう
- 集合住宅を法人名義で買うと、組合が入会を拒否できる
- 一戸建て・土地なら法人でも所有権を登記できるが、税率は4.25%になる
北欧のほかの3か国については、ノルウェー、フィンランド、デンマークでそれぞれ条件を整理しています。
スウェーデンの不動産購入についてよくある質問
日本人でもスウェーデンの不動産を買えますか
Lantmäterietは、所有権登記の規則は外国籍の人とスウェーデン国民とで本質的に同じだと書いています。国籍を理由にした購入制限や事前許可の制度は確認できませんでした。
スウェーデンに住んでいなくても買えますか
居住要件は見当たりません。ただし2026年7月1日以降、取得者にはスウェーデンの個人番号か調整番号が必要です。調整番号を得るにはスウェーデン国内のサービスセンターで対面の本人確認を受ける必要があるため、少なくとも一度は渡航することになります。
法人名義で買うと何が変わりますか
2つ変わります。印紙税が1.5%から4.25%に上がること、そして集合住宅のボスタッズレットでは、住宅権法第2章第4条により組合が加入を拒否できることです。一戸建てや土地であれば法人でも所有権を登記できます。
購入にかかる税金と手数料はいくらですか
個人の場合、印紙税が課税標準の1.5%、所有権登記の処理手数料が825クローナです。課税標準は売買価格と前年の課税評価額のうち高いほうで、1,000クローナ未満は切り捨てます。住宅ローンを組む場合は抵当額の2%と、抵当1件につき375クローナが加わります。
組合に外国籍を理由に断られることはありますか
住宅権法第2章第2条第1号は、特定の国籍を加入の前提とする規約条件を無効と定めています。したがって国籍を理由とした拒否は法律上認められません。ただし理事会の判断そのものは残るため、規約に定められたほかの条件は満たす必要があります。
登記はいつまでに申請すればよいですか
Lantmäterietは、取得から3か月以内に所有権登記を申請しなければならないとしています。登記が認められたあと、印紙税と手数料の請求書が届き、30日以内に支払います。
この記事で確認した一次情報
Lantmäteriet「Registration of ownership – foreign citizen or Swedish citizen who has emigrated」:lantmateriet.se
Lantmäteriet「Stamp duty and fees」:lantmateriet.se
Lantmäteriet「Registration of ownership – immovable property and site leasehold」:lantmateriet.se
Riksdagen「Bostadsrättslag (1991:614)」:riksdagen.se
