ノルウェーの不動産を日本人が買えるかどうかを調べると、「外国人でも買える」という説明と「許可が要る」という説明の両方が出てきます。どちらも部分的に正しく、どちらも単独では判断材料になりません。
判断を分けているのは国籍ではなく、買う物件の性質です。ノルウェーの取得許可法(konsesjonsloven)を読むと、許可が要るかどうかは面積・用途・耕作地の広さで決まっており、条文のどこにも国籍の条件は書かれていません。
この記事の要点
- 根拠法はノルウェーの取得許可法(konsesjonsloven、LOV-2003-11-28-98)。2004年1月1日施行、所管は農業・食料省(Landbruks- og matdepartementet)で、直近の改正はLOV-2025-06-20-107(2026年7月1日施行)です。
- 同法第2条は「この法律に定める例外を除き、不動産は国王の許可(konsesjon)なしに取得できない」と定めます。つまり許可制が原則で、例外に当たるかどうかを見ていく構造です。
- 第4条は物件の性質による例外を4つ挙げます。実務で効くのは4号で、建物のある不動産が100デカール(10ヘクタール)以下、かつ完全耕作地・表層耕作地が35デカール(3.5ヘクタール)以下なら許可は要りません。
- 未建築の住宅・別荘用の単独区画は、2デカール(2,000平方メートル)以下で分筆が承認済みなら第4条1号で許可不要。ただし5年以内に建築することが条件です。
- 第7条により、自治体の求めに応じて国が規則を定めると、通年住宅について第4条の例外が停止されます。この自治体では購入後1年以内に居住を始めるか、通年住宅として使う約束をするかが必要になります。
根拠になる法律と、その書き出し
ノルウェーで不動産の取得を規律しているのは、Lov om konsesjon ved erverv av fast eiendom mv.(konsesjonsloven=取得許可法)です。ノルウェーの公式法令データベースLovdataに全文が掲載されています。

第1条は法律の目的を5つ挙げています。将来世代の需要、農業、宅地の必要、環境・自然保護・野外活動への配慮、そして定住への配慮です。農地を守ることと、家が人の住まない別荘になるのを防ぐこと。この2つが、後の条文の線引きを決めています。
第2条が原則を置きます。「この法律に従う例外を除き、不動産は国王の許可(konsesjon)なしに取得できない」。許可の権限は規則によって自治体(kommune)へ委任でき、自治体の決定に対する不服申立ては県知事(Statsforvalteren)が受けます。
国籍の条件はどこにも書かれていない
第4条は物件の性質による例外、第5条は取得者の立場による例外を定めています。第5条が挙げるのは、所有者の配偶者・直系親族・兄弟姉妹の子までの親族、オーデル権(odel)を持つ者、国、県・自治体、そして強制競売で債権を回収する銀行です。ここに「ノルウェー国民であること」「居住者であること」という条件は出てきません。
つまり、ノルウェーの取得許可法は外国人を名指しで制限する法律ではありません。日本人が買えるかどうかは、買おうとしている物件が第4条の例外に当たるかどうかで決まります。
この点は、北欧の近隣国とは構造が違います。たとえばデンマークは居住要件を満たさない者に法務省の許可を求め、フィンランドは土地の取得に国防省の許可を求めます。ノルウェーの許可制は、取得者の属性ではなく土地の性質を基準にしている点が特徴です。
第4条:許可が要らない4つの型
取得許可法第4条は、許可が不要になる物件を4つに分けて列挙しています。
| 号 | 対象 | 面積などの条件 | 付帯条件 |
|---|---|---|---|
| 1号 | 住宅・別荘・ボートハウス(naust)用の未建築の単独区画 | 2デカール(2,000m²)以下 | 計画・建築法と土地法に基づき分筆が承認済みであること。5年以内に建築すること |
| 2号 | 住宅・別荘用の未建築の単独区画 | 面積の上限なし | 自治体計画の土地利用部分または規制計画で建築・施設用に指定された区域内で、区画割が建築当局により実施または承認されていること。5年以内に建築すること |
| 3号 | その他の未建築の土地 | 面積の上限なし | 規制計画で農林業・自然・野外活動・トナカイ飼育以外の用途に指定された区域、または自治体計画で建築・施設用とされた区域内にあること。計画に反する用途変更をしないこと |
| 4号 | 建物のある不動産 | 100デカール(10ha)以下/完全耕作地・表層耕作地が35デカール(3.5ha)以下 | 規制計画のある区域では、計画に反する用途変更をしないこと。第7条の規則で例外が停止されることがある |
取得許可法第4条1項4号は、建物のある不動産について100デカール以下かつ完全耕作地・表層耕作地35デカール以下であれば許可を要しないと定めています。デカール(dekar)はノルウェーで使われる面積の単位で、1デカールは1,000平方メートルです。4号の「100デカール以下」は10ヘクタール、「耕作地35デカール以下」は3.5ヘクタールにあたります。
日本人が購入を検討する対象、つまり都市部の住戸や、郊外の戸建て、海辺の別荘のほとんどは4号に収まります。10ヘクタールを超える敷地や、3.5ヘクタールを超える耕作地が付いてくるケースは、農場を買う場合に限られます。
図1 許可が要るかどうかの判断の順序
第5条:親族に売るときの居住義務
第5条第2項には、物件が一定の規模を超えたときの条件があります。完全耕作地・表層耕作地が35デカールを超える建物付き不動産、または生産林が500デカールを超える不動産では、親族やオーデル権者への譲渡で許可が不要になる条件として、取得者が1年以内にその不動産に居住を開始し、自ら5年以上居住することが付きます。
同法第5条2項は、この居住の条件を生産林500デカール超の不動産にも等しく課しています。これがノルウェーで言われるboplikt(居住義務)です。農場や林地が人の住まない資産にならないようにする仕組みで、投資目的で広い土地を取得する場合には直接関わってきます。なお、同条は事実婚のパートナー(samboere)にも同様に適用されると定めています。
第7条:別荘にさせない自治体の規則
外国人の購入計画にとって見落としやすいのが第7条です。国は自治体の求めに応じて規則を定め、第4条1項2号・4号と第5条1項1号の許可不要を停止できます。対象になるのは次の3つです。
| 対象 | 条文の内容 | 許可を避ける方法 |
|---|---|---|
| 通年住宅として使われている/使われていた建物付き不動産 | 第4条の例外が停止される | 所有する間、自分または他人が通年住宅として使うことを約束する |
| 通年住宅として使われていない建物(建築中を含む)で、規制計画が住宅用途に指定した区域にあるもの | 第4条の例外が停止される | 同上 |
| 住宅用途に指定された未建築の区画 | 第4条の例外が停止される | 同上 |
取得許可法第7条5項は、この場合の居住開始の期限を取得から1年と定めています。第7条第3項は、取得者が「所有している間、その不動産を通年住宅として使う」と約束する場合には、規則による許可義務は適用されないと定めています。
第6項には、この規則を定められるのは自治体からの要請があったときに限られ、かつ「通年住宅として使われるべき不動産が余暇目的で使われることを防ぐために必要と認められる範囲」に限ると書かれています。別荘として買いたい日本人にとっては、この規則がある自治体かどうかが購入可否を分ける条件になります。
現地の仲介業者に確認しておく項目
- 物件の敷地面積はデカールで何デカールか 100デカールを超えるかどうかが第4条4号の線です。
- 完全耕作地・表層耕作地が含まれるか、何デカールか 35デカールを超えると例外から外れ、居住義務の対象にもなります。
- その自治体が第7条の規則を持っているか 持っていれば、通年住宅として使う約束か、許可の申請が必要になります。
- 規制計画でどの用途に指定されているか 農林業・自然・野外活動・トナカイ飼育の指定だと、未建築地の例外(3号)に当たりません。
- 未建築地なら5年以内に建てられるか 1号・2号の例外は5年以内の建築が条件です。
許可が必要になった場合の手続き
第2条により、許可を出すのは国王(政府)ですが、規則によって自治体に権限を委ねることができます。実務では物件の所在する自治体が判断し、不服があれば県知事へ申し立てる流れです。
第4章(第9条から第11条)は許可を出すかどうかの判断材料を定めており、第9条は農業用不動産についての特別な考慮事項を置いています。第5章(第12条から第14条)が手続きの規定です。
第8条では、省が第4条・第5条・第7条の適用に必要な情報の範囲と、第4条1項4号・第5条2項でいう「完全耕作地・表層耕作地」の定義を規則で定められるとしています。面積の数え方そのものが規則で決まるため、境界事例では自治体の判断を仰ぐことになります。
北欧3か国と比べたときの位置づけ
| 国 | 許可を判断する基準 | 許可を出す機関 |
|---|---|---|
| ノルウェー | 物件の性質(面積・耕作地・用途指定)。国籍の条件は条文にない | 国王。規則により自治体へ委任、不服は県知事 |
| デンマーク | 取得者の属性(住所または通算5年の居住) | 法務省 |
| フィンランド | 取得者の属性(EU・EEA域外か)と対象(土地か住宅株式会社の株式か) | 国防省 |
この3か国を並べると、ノルウェーだけが取得者の属性ではなく物件の性質で線を引いていることが分かります。日本人であることそのものが障害にならない代わりに、どの物件を選ぶかで手続きの重さが変わるという構造です。デンマークとフィンランドの制度はデンマークの不動産は日本人が買える?とフィンランドの不動産は日本人が買える?にまとめています。
この記事で確認できなかったこと
Lovdataに掲載された法律の条文から読み取れる範囲をまとめました。次の点は条文だけでは確定できず、別の資料や現地への確認が必要です。
- 第7条の規則を現在どの自治体が持っているか。条文は「自治体の要請により国が規則を定める」としているだけで、対象自治体の一覧は法律本体には含まれていません。
- 許可の申請にかかる手数料と標準的な処理期間。第5章の手続き規定には金額の定めがありません。
- 許可が下りなかった場合の売買契約の扱い。第6章の雑則に関連する規定がありますが、実務上の運用は自治体によって異なる可能性があります。
- 不動産取得にかかる税(文書税など)の税率。取得許可法は許可制度の法律であり、税率は別の法律で定められています。
購入を具体的に進める段階では、物件所在地の自治体に対し、第4条のどの号に当たるか、第7条の規則があるかを書面で確認することをおすすめします。
参照した一次情報
法令番号LOV-2003-11-28-98、所管官庁Landbruks- og matdepartementet、施行日2004年1月1日、最終改正LOV-2025-06-20-107(2026年7月1日施行)、略称Konsesjonsloven: Lovdata「Lov om konsesjon ved erverv av fast eiendom mv. (konsesjonsloven)」https://lovdata.no/dokument/NL/lov/2003-11-28-98
第1条(法律の目的5項目)、第2条(許可の原則と自治体への委任、県知事による不服審査)、第4条(許可不要の4類型、2デカール・100デカール・35デカール、5年以内の建築)、第5条(取得者の立場による例外、35デカール超・生産林500デカール超の場合の1年以内の居住開始と5年以上の居住)、第7条(自治体の要請による例外の停止、通年住宅として使う約束、1年の居住期限)、第8条(省令への委任): 同法の各条文
確認の時点: 2026年10月13日。この記事は条文の内容を日本語で整理したものであり、個別の取引に対する法的助言ではありません。実際の購入にあたっては、物件所在地の自治体およびノルウェーの資格を持つ専門家に確認してください。
