ニュージーランドの住宅は、日本に住む日本人が思い立って買える対象ではありません。住宅用地は海外投資法(Overseas Investment Act)の下で「sensitive land(機微な土地)」として扱われ、海外にいる人が既存の住宅を買うことは原則としてできないからです。ただし、2026年に入って例外の枠がひとつ増えました。ここでは、Land Information New Zealand(LINZ)とInland Revenue(IRD)が公表している内容だけを使い、誰なら買えるのか、買えない人に何が残っているのかを整理します。

先に結論

  • 同意(consent)を申請せずに住宅を買えるのは、ニュージーランド市民、residence class visa を持ち「ordinarily resident」に当たる人、そして物件区分が residential または lifestyle であればオーストラリアとシンガポールの市民です。
  • 「ordinarily resident」の条件は、直近12か月ニュージーランドに住んでいることと、直近12か月のうち183日を超えてニュージーランド国内にいたことです。ビザを持っているだけでは足りません。
  • これに当たらない人には、500万NZドル以上の住宅を買う/建てる枠が用意されました。対象は Active Investor Plus、Investor 1 resident visa、Investor 2 resident visa の保有者で、すでに申請を受け付けています。
  • 2026年3月6日に改正法が施行され、農地・漁業割当・住宅用地を除く資産の審査が単一のテストに統合されました。住宅用地はこの統合の対象外で、従来の枠組みが続きます。
  • 買えた場合、売却時にはbright-line testが効きます。2024年7月1日以降の売却は、取得から2年以内に売ると利益が課税対象です。

ニュージーランドは「原則として買えない」側の国

海外不動産を検討していると、規制が緩い国と厳しい国の差が大きいことに気づきます。ニュージーランドは明確に厳しい側です。住宅用地の取得は海外投資法の審査対象で、Immigration New Zealandも「一般的に、市民またはある条件を満たす居住者である場合にのみ住宅を購入できる」と案内しています。

この設計の背景にあるのは住宅供給の問題です。だからこそ例外の作り方も一貫していて、住宅の数を減らす買い方は認めず、増やす買い方には道を残すという形になっています。開発によって住宅供給を増やす場合や、他の用途へ転換して国に広く便益があると示せる場合には、住宅用地の取得が認められる余地があるとされています。

ニュージーランドで住宅用地を買えるかどうかを、市民権・ビザ・居住実績で分けた判定図と、買えない場合に残る選択肢をまとめた図
LINZが公表しているガイダンスの記載にもとづく整理。自分がどの区分に当たるかで、同意の要否と取れる手段が変わる。

同意なしで買える人、申請が必要な人

LINZのガイダンスは、立場ごとに扱いを分けています。表にすると次のようになります。

立場 同意(consent) LINZの記載
ニュージーランド市民 不要 申請せずに住宅を買う、または建てられる
residence class visa を持ち ordinarily resident 不要 直近12か月の居住と、直近12か月で183日超の国内滞在が条件
オーストラリア市民 不要 物件区分が residential または lifestyle のものを買う場合
シンガポール市民 不要 同上
residence class visa はあるが ordinarily resident に未到達 必要 同意を申請したうえで購入する
上のいずれにも当たらない海外在住者 必要 既存住宅の取得は原則として認められない

注目したいのは、オーストラリアとシンガポールの市民が別扱いになっている点です。国際協定にもとづく取り扱いで、日本国籍にはこの扱いがありません。日本のパスポートを持っているだけでは、ニュージーランドの住宅を買う根拠にはならないということです。

Land Information New Zealandの公式サイト「Buying residential property to live in」の画面。目次にWho needs consentやAre you ordinarily resident が並んでいる
出典:Land Information New Zealand「Buying residential property to live in」。ページ内に「Who needs consent」「Are you ‘ordinarily resident’?」「Types of consent and when to apply」といった項目が並ぶ。

「ordinarily resident」は書類ではなく実績で判定される

ここが日本人にとっていちばん引っかかる部分です。residence class visa を取得しても、それだけでは同意なしの購入はできません。LINZは、直近12か月ニュージーランドに住んでいること、直近12か月のうち183日を超えて国内にいたことを求めています。実際に住んだ時間が条件になっているため、ビザを取ってすぐに家を買う、という順番は成り立ちません。

2026年に開いた「500万NZドル以上」の枠

2025年9月に政府が方針を示し、その後に運用が始まったのが、投資家ビザ保有者向けの枠です。LINZは、Active Investor Plus、Investor 1 resident visa、Investor 2 resident visa のいずれかを持つ人が、500万NZドル以上の住宅を買う、または建てることを申請できるとしています。

項目 内容
対象となるビザ Active Investor Plus/Investor 1 resident visa/Investor 2 resident visa
対象となる住宅 500万NZドル以上で購入または建築するもの
契約の条件 購入のオファーは、海外投資法にもとづく同意の取得を条件とする形にしておく必要がある
申請手数料 2,040〜3,500ドル(この枠の新規申請)
審査にかかる期間 法定の評価期間は15営業日。LINZは多くの申請を5営業日以内に評価する目標を示している
受付状況 すでに申請の受付が始まっている

契約書の書き方がそのまま可否に効きます。同意を取る前提の枠なので、オファーの段階で「同意が下りることを条件とする」条項を入れておかないと、同意が下りなかったときに契約だけが残ります。ニュージーランドの弁護士またはコンベイアンサーに、条項の文言を含めて先に確認してください。Immigration New Zealandも、独立した専門家の助言を得ることを勧めています。

2026年3月6日に施行された改正で変わったこと

同じ時期に、海外投資法そのものの改正も施行されています。LINZの説明では、変更点は大きく3つです。目的規定に、海外投資が経済機会を増やす役割を明示的に認める文言が加わったこと。国益テスト、ニュージーランド利益テスト、投資家テストが単一のテストに統合されたこと。そして、審査の対象範囲そのものは変わらず、感度の低い資産の審査方法が変わったことです。

ただし、この統合からは農地・漁業割当・住宅用地が除かれています。住宅を買いたい人にとっては、法改正で手続きが軽くなったわけではない、という理解になります。

買えた場合に効く税金とコスト

ニュージーランドには、日本の不動産取得税や登録免許税に相当する購入時の課税が、購入者側の大きな負担として立ちはだかる仕組みにはなっていません。代わりに保有と売却の側で押さえるべきものがあります。

bright-line test(売却時)

2024年7月1日以降に売却する住宅用不動産は、取得から2年以内に売ると利益が課税対象になります。期間の起点は原則として所有権が移転した日、終点は売却の拘束力ある契約を結んだ日です。

main home exclusion(除外規定)

面積の50%超を自分の主たる住居として使い、bright-line期間の50%超を主たる住居として住んでいた場合に適用されます。どちらかが50%以下なら適用されず、利益に課税されます。

rates(地方税)

Immigration New Zealandは、地方議会が地域に提供するサービスの費用にあてる税として rates を説明しています。物件の価値にもとづいて算定され、保有している限り毎年かかります。

住宅ローンのLVR規制

ローンを使う場合は貸出比率の制限がかかり、相応の頭金が必要になるとされています。海外在住者が現地で借りられるかは、金融機関ごとの判断になります。

ニュージーランド歳入庁Inland Revenueの公式サイト「The bright-line test」の画面。bright-line periodの説明が表示されている
出典:Inland Revenue「The bright-line test」。住宅用不動産を一定期間内に売却した場合の利益が課税対象になること、除外規定やロールオーバー救済がある場合を除くことが説明されている。

日本から検討する場合の現実的な結論

整理すると、日本に住みながらニュージーランドの住宅を買う道は、実質的に次の2つに絞られます。

先に住む

residence class visa を取り、直近12か月の居住と183日超の国内滞在という条件を満たしてから買う。時間はかかりますが、購入時に同意の申請が要らなくなります。

投資家ビザと500万NZドル枠を使う

対象の投資家ビザを取得したうえで、500万NZドル以上の住宅について同意を申請する。金額の下限が高く、対象者は限られます。

逆に言えば、数千万円規模の物件を投資目的で買って賃貸に回す、という入り方はニュージーランドでは想定されていません。同じ英語圏でも、州ごとに外国人向けの追加印紙税を課しつつ新築なら買えるオーストラリアや、外国人所有そのものに枠を設けているアジア各国とは、設計思想が違います。国選びの段階で外すか残すかを決めておくほうが、時間の使い方として合理的です。

暮らしの側の条件を先に確かめたい場合はニュージーランド移住の解説記事、治安やリスクの前提はニュージーランドの治安に関する記事、他国と並べて比べたい場合は海外不動産の国別最新動向を参照してください。

よくある質問

日本人は永住権があればニュージーランドの家を買えますか

residence class visa を持っているだけでは足りません。LINZは、同意なしで買えるのは「residence class visa を持ち、かつ ordinarily resident」である場合としています。直近12か月の居住と、直近12か月で183日を超える国内滞在が条件です。

新築なら海外在住でも買えますか

新築であれば自由に買える、という一般的な例外はLINZのガイダンスには示されていません。住宅供給を増やす開発として取得する場合や、投資家ビザ保有者の500万NZドル以上の枠に当てはまる場合など、条件に合致するかどうかで判断されます。

オーストラリア人が優遇されているのはなぜですか

理由は本記事の参照元では説明されていません。確認できるのは、LINZのガイダンスでオーストラリアとシンガポールの市民について、物件区分が residential または lifestyle であれば同意が不要とされている、という記載です。

500万NZドル枠の審査はどれくらいかかりますか

LINZは、法定の評価期間を15営業日としたうえで、多くの申請を5営業日以内に評価する目標を示しています。実際の期間は案件によって変わります。

買った家を短期間で売ると税金はどうなりますか

2024年7月1日以降の売却は、bright-lineの起点から2年以内であれば利益が課税対象になります。主たる住居の除外規定やロールオーバー救済に当てはまる場合を除きます。ニュージーランドの税務居住者が海外の住宅を売った場合にも同じルールが及ぶとIRDは説明しています。

2026年3月の法改正で買いやすくなりましたか

住宅用地については変わっていません。テストの統合は農地・漁業割当・住宅用地を除く資産が対象で、住宅用地は従来どおりの枠組みが続きます。

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