海外の物件代金や手付金を送るとき、比較の起点にされるのは「送金手数料◯円」という1行です。ところが実際に請求される金額はそれだけでは決まりません。円建てで送るか外貨で送るか、窓口かネットバンキングか、支払銀行の手数料を誰が負担するか。条件が変わるたびに費用は増減し、経由する銀行が勝手に差し引く分にいたっては、送る前には金額が確定しません。ここでは各社が公表している数字だけを使って、費用の内訳と増え方を整理します。
この記事の要点
- 海外送金の費用は5つに分かれる。事前に確定するのは前半の3つだけ。
- 三菱UFJ銀行の個人向け仕向送金手数料は、インターネットバンキングで2,500円〜3,000円、店頭窓口で7,000円。
- 円建てで送ると円為替取扱手数料(送金金額の0.050%・最低2,500円)が上乗せされる。高額送金ほどここが効く。
- ゆうちょ銀行の「ゆうちょの国際送金」は料金3,000円だが、1回あたり100万円未満の限度額がある。
- 三菱UFJ銀行は「外為手数料には消費税はかかりません」と明記している。
費用は1つではなく、5つに分かれている
送金の見積もりが合わない原因は、ほぼここに集約されます。銀行のページで最初に目に入る「仕向送金手数料」は、5つあるうちの1つにすぎません。

前半の3つは、送る前に金額がわかります。後半の2つはわかりません。中継銀行の手数料は経路によって数も金額も変わり、為替レートの上乗せは明細に「手数料」として現れないことが多いためです。比較するときは、この5つを同じ土俵に並べる必要があります。
銀行で送るときの実額
三菱UFJ銀行が公表している個人向けの外為手数料を見ると、同じ「海外へ送る」でも経路で倍以上の差が出ることがわかります。
| 手数料名称 | 条件 | 金額 |
|---|---|---|
| 仕向送金手数料 | 三菱UFJダイレクト(インターネットバンキング)/当行在外支店・現地法人あて | 2,500円 |
| 三菱UFJダイレクト(インターネットバンキング)/他行あて | 3,000円 | |
| 店頭窓口/外国送金Webサポート+ | 7,000円 | |
| 円為替取扱手数料 | 円建てで送金する場合、仕向送金手数料に加えてかかる | 送金金額の0.050% 最低2,500円 |
| 外貨取扱手数料 | 外貨預金から外貨建(同一通貨)で送金する場合、仕向送金手数料に加えてかかる | 送金金額の0.050% 最低2,500円 |
| 支払銀行手数料 | 支払銀行の手数料を「送金人負担」とする場合。後日10万円を超える請求があれば差額を請求 | 3,000円 |

あわせて確認しておきたい注記が3つあります。第一に、三菱UFJダイレクトは「受取人負担」のみの取扱いとされています。送金人が支払銀行手数料を負担する形にしたい場合は、経路そのものを変える必要があります。第二に、店頭窓口での依頼は送金実行まで3営業日程度かかると案内されています。第三に、手書きの送金依頼書で受け付ける場合は、外国送金Webサポート+の手数料金額に500円が加算されます。
円建てで送ると、金額に比例して増える
見落とされやすいのが円為替取扱手数料、いわゆるリフティングチャージです。送金金額の0.050%という料率のため、少額なら最低額の2,500円で済みますが、不動産の代金のような金額になると無視できません。三菱UFJ銀行の計算方法の注記どおりに当てはめると次のようになります。
ここに仕向送金手数料が加わります。ネットバンキングで他行あてに1,000万円を円建てで送るなら、3,000円+5,000円で8,000円。店頭窓口なら7,000円+5,000円で12,000円という計算になります。金額が大きいほど、窓口かネットかという「入口の選択」より、料率のかかる部分の影響が大きくなります。
外貨預金から同一通貨で送る場合の外貨取扱手数料も同じ料率です。ただし注記では、送金金額×0.050%×送金日当日のTTSレートで計算するとされています。円建てか外貨建てかで、手数料の計算に使う基準が変わる点に注意してください。
中継銀行の手数料は、送る前には確定しない
送金は送り手の銀行から受け手の銀行へ直接届くとは限りません。通貨や国によっては、間に別の銀行が入ります。三菱UFJ銀行の注記にも「別途、支払銀行・経由銀行の手数料がかかることがあります」と書かれています。ゆうちょ銀行も、仲介機関・受取銀行等により送金金額から仲介手数料や口座登記料等が差し引かれる場合があると案内しています。

為替レートの上乗せは明細に出てこない
5つ目の費用が、両替に使うレートと市場レートの差です。Wiseは自社の料金ページで、実際の為替レート(ミッドマーケットレート)と明確な少額の手数料のみでサービスを提供していると説明し、送金手数料が「無料」と広告されていても為替レートに上乗せされているのが一般的だと指摘しています。また25,000米ドル以上の送金には割引が自動適用されるとも記載されています。
ここで重要なのは、どちらが安いかという結論ではなく、比べ方です。手数料の合計だけを並べても、レートが違えば実際の受取額は変わります。比較するなら「同じ日時に、同じ金額を送ったとき、相手の口座にいくら着くか」で見るしかありません。銀行もサービスも、送金前に受取見込額を提示できる仕組みを持っています。
金額の上限で選べなくなることがある
手数料だけで選ぶと、そもそも使えないという壁に当たります。ゆうちょ銀行の「ゆうちょの国際送金」は料金3,000円と分かりやすい一方で、限度額が設定されています。
| 項目 | ゆうちょの国際送金(日本から外国への送金) |
|---|---|
| 料金 | 3,000円(消費税なし) |
| 1回あたりの限度額 | 100万円未満 |
| 1日あたりの限度額 | 200万円以下 |
| 1か月あたりの限度額 | 500万円以下 |
| 差引に関する注記 | 仲介機関・受取銀行等により、送金金額から仲介手数料・口座登記料等が差し引かれる場合がある |
不動産の購入代金は、この限度額の範囲に収まりません。生活費の仕送りや少額の支払いには向きますが、物件代金の送金手段としては候補から外れます。高額送金では、手数料の安さの前に「1回でいくらまで送れるか」を先に確認してください。
消費税はかかるのか
三菱UFJ銀行の外為手数料のページには「外為手数料には消費税はかかりません」と明記されています。銀行の外国為替業務に係る役務の提供は、消費税法上の非課税取引に位置づけられているためです。一方で、国税庁の消費税法基本通達では、外国為替業務に該当しない周辺業務の手数料は非課税の対象外として扱われる旨が示されています。手数料の名前ごとに扱いが分かれるため、経費として処理する場合は請求内容の区分を確認してください。
手数料を抑える手順
- 送金経路を先に決める。ネットバンキングか窓口かで数千円変わります。三菱UFJ銀行の例では2,500円と7,000円の差です。
- 円建てか外貨建てかを決める。円建てなら円為替取扱手数料、外貨預金からなら外貨取扱手数料。どちらも0.050%で、計算の基準が異なります。
- 負担区分を確認する。支払銀行手数料を送金人が負担するのか受取人が負担するのか。経路によっては選べません。
- 受取見込額で比べる。手数料の合計ではなく、相手の口座に着く金額で比較します。
- 限度額を確認する。1回・1日・1か月の上限に収まらなければ、その手段は使えません。
- 回数を減らす。固定費が回数分かかるため、分割送金は不利になりがちです。ただし限度額と着金確認の都合を優先してください。
よくある質問
海外送金の手数料はいくらですか
一律ではありません。三菱UFJ銀行の個人向けでは、仕向送金手数料がインターネットバンキングで2,500円または3,000円、店頭窓口で7,000円。これに円建てなら送金金額の0.050%(最低2,500円)の円為替取扱手数料が加わります。
リフティングチャージとは何ですか
三菱UFJ銀行の表記では「円為替取扱手数料」です。円建てで送金する場合に、仕向送金手数料に加えてかかる、送金金額に比例した手数料を指します。
送った金額より少ない額しか届かないのはなぜですか
中継銀行や受取銀行が送金金額から手数料を差し引くことがあるためです。支払銀行手数料を受取人負担にしている場合も、差し引かれた残額が着金します。
海外送金の手数料に消費税はかかりますか
三菱UFJ銀行は外為手数料に消費税はかからないと明記しています。ただし外国為替業務に該当しない周辺業務の手数料は扱いが異なるため、明細の区分で確認してください。
ゆうちょ銀行で物件代金を送れますか
「ゆうちょの国際送金」は1回あたり100万円未満、1か月あたり500万円以下の限度額があるため、一般的な物件代金の送金には使えません。
手数料の安さだけで選んでよいですか
受取額で比べる必要があります。手数料が低くても為替レートに上乗せがあれば、実際の受取額は下がります。限度額と着金までの日数も判断材料に含めてください。
関連記事
参照した公式情報
- 三菱UFJ銀行「外為手数料」(仕向送金手数料、円為替取扱手数料、外貨取扱手数料、支払銀行手数料、消費税の扱い)
- ゆうちょ銀行「ゆうちょの国際送金」(日本から外国への送金)(料金、限度額、差引に関する注記)
- Wise「送金手数料」(ミッドマーケットレートと手数料の考え方、高額送金の割引)
- 国税庁 消費税法基本通達 第6章第5節「国等の手数料、国際郵便為替及び外国為替業務等関係」
手数料と限度額は改定されます。三菱UFJ銀行は被仕向送金の一部手数料を2026年10月1日および12月14日から改定すると告知しています。送金の前に、必ず各社の最新の公式ページで金額と条件を確認してください。
