フィリピン不動産を考えるうえで、新しい都市計画・都市開発は大きな要因となります。フィリピンでは、マニラに新空港を作る計画があります。今回は、フィリピンマニラの新しい空港開発「新マニラ国際空港(New Manila International Airport:NMIA)」について解説します。

新マニラ国際空港(New Manila International Airport:NMIA)

「新マニラ国際空港(New Manila International Airport:NMIA)」は、マニラの北部にあるブラカン州の沿岸部に建設予定の国際空港です。そのため、「ブラカン国際空港(Paliparang Pandaigdig ng Bulacan)」とも呼ばれています。

「新マニラ国際空港(New Manila International Airport:NMIA)」の場所

既存の「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」の場所

「新マニラ国際空港」は、フィリピンを代表する企業であるサン・ミゲル・コーポレーション(SMC)によって提案されたプロジェクトです。これは現在利用されている「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」の老朽化対策や混雑緩和を目的としたプロジェクトです。

サン・ミゲル・コーポレーション(SMC)とは

1890年にスペイン系のドン・エリンケがマニラで設立したビールメーカーです。ビール事業を柱に食品関連事業で成功を収め、金融、不動産、運輸、銃製造、メディア産業、金鉱、などの事業を傘下に収めて事業を多角化し、発電や道路などのインフラ事業も手掛けて急拡大を続け、東南アジアを始め、中国、オーストラリア、ニュージーランドなど100都市以上に主要施設を設けています。

多岐にわたる事業の成功で、フィリピンの国内GDPの約5.9%を占めるという、まさにフィリピンを代表する財閥企業として知られています。10グループ超の財閥企業が経済を牛耳ると言われるフィリピン財閥のなかでも、頭一つ飛び抜けた存在感のある企業です。

「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」に行った方であれば、感じたことがあるかと思いますが、他の国際空港と比較して小規模であり、お店なども少ないのが現状です。また、出発ロビーも、到着ロビーも、車は常に渋滞しており、余裕をもって空港に向かわないと飛行機に乗れないなど、いろいろと問題がある空港となっています。

1980年代にはすでに、マニラ国際空港 (現在のニノイ・アキノ国際空港)の収容能力を拡大することと、航空機の移動と旅客輸送量の予想される増加に対応し続ける能力を拡大することには限界があるといわれていました。

2011年5月、国際協力機構(JICA)はフィリピン政府にマニラ都市圏内の航空輸送ニーズに関する調査書を提出し、滑走路の容量を考慮すると新しい玄関口空港の開発は「緊急の必要性」であると結論づけています。

2017年2月、サン・ミゲル・コーポレーションは、3.5キロメートル (2.2マイル) の2本の平行滑走路を備えた空港の建設を提案しました。2018年4月26日に国家経済開発庁(NEDA) 理事会は、、この案を承認し、2018年12月2日に利権協定 (CA) に関する交渉報告書を承認しました。

2019年9月、新マニラ国際空港(NMIA)の開発、建設、運営、維持を目的として、運輸省が代表を務めるフィリピン共和国と利権協定を締結しました。これに続いて共和国法11506が制定され、ブラカン市の国内線および国際空港の立法権を「San Miguel Aerocity Inc.(SMAI)※SMCの子会社」に付与し、2021年1月15日に発効しました。

サン・ミゲル・コーポレーション(SMC)の社長兼最高経営責任者(CEO)のラモン・アン氏は「このプロジェクトは、政府保証や補助金なしで同社が全額出資するもので、多数の産業を促進し、全全国で数百万の質の高い雇用を創出することで、より多くのフィリピン人の生活を改善する」と述べています。

提案されている空港には少なくとも4本の滑走路があり、6本まで拡張可能であります。「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」の収容能力の約6倍となっています。プロジェクトの第1段階には、4本の滑走路のうち2本が含まれます。当初の乗客数は年間3,500万人、完成時には年間1億人の乗客を目指しています。

「新マニラ国際空港」は、北ルソン高速道路とラジアル道路10号線に接続する空港有料道路によってマニラ首都圏と接続されます。また、MRT-7エアポート・エクスプレス・プロジェクトを通じてMRT-7号線とも鉄道で接続されます。

「新マニラ国際空港」の現状

2024年3月16日の情報によると

サン・ミゲル・コーポレーション(SMC)は、7,400億ペソのプロジェクトとして「新マニラ国際空港」の開発工事を2025年に開始することを目標としています。

現在は、「新マニラ国際空港」の土地開発と地盤改良工事が進行中で、土地造成工事の進捗率は77%となっています。

広さは、2,500ヘクタールで、少なくとも4本の平行滑走路、世界クラスのターミナル、高速道路や鉄道を含む近代的で相互にリンクされたインフラストラクチャー ネットワークが組み込まれます。

「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」の改修も同時に行う

2024年2月16日、フィリピン運輸省は、マニラ首都圏の空の主要玄関口であるニノイ・「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」の改修事業を地場財閥サン・ミゲル・コーポレーション(SMC)などから成るコンソーシアム(企業連合)が落札したと明らかにしました。

フィリピン運輸大臣ハイメ・バウティスタ氏によると

「これは、当時のフィデル・ラモス大統領の政府が第3ターミナルの民営化に着手した30年前に構想されていた。残念ながら最終的には裁判所で争われ、2000年初めに政府に引き継がれた。 30年の歳月を経て、マニラ国際空港の運営と保守を民営化できるようになりました。」

「落札者は、世界の悪名高き空港のリストから卒業できるよう、築数十年の建物に重要な拡張と近代化を施すという大変な任務に直面している。」

と述べています。

サン・ミゲル・コーポレーション(SMC)は

  • 「新マニラ国際空港」の開発
  • 「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」の改修・運営

を同時並行する形になっているのです。

フィリピン不動産投資としての見解

当然、「新マニラ国際空港」ができれば、多くの人の流れが北部から、マニラの都心部に流れることになります。今までは、「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」がある南側から、北側に開発が進んできたのですが、それが逆流する可能性があるということです。

マニラの南側は、すでに開発が進み、不動産価格が日本並みに高騰しているのが現状です。「新マニラ国際空港」ができれば、まだ安い価格帯のマニラ北部の不動産が高騰する可能性があります。

ただし、「新マニラ国際空港」は、政府のプロジェクトではなく、一企業であるサン・ミゲル・コーポレーション(SMC)のプロジェクトであることに注意が必要です。また、既存の「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」の改修・運営もサン・ミゲル・コーポレーション(SMC)が行うのですから、「新マニラ国際空港」の開発よりも、「ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)」の改修・運営を優先させる可能性もあります。

新空港の開発は、不動産投資のキャピタルゲインを大きく取れるチャンスでもありますが、開発が思うように進まないケースもリスクとして考慮する必要があるのではないでしょうか?

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