ハンガリーの住宅やマンションを日本人が買えるのかを、ハンガリーの法令本文と県政府庁の案内で確かめました。結論は「買えるが、物件ごとに県政府庁の許可が要る」です。EU・EEA加盟国とスイスの国民は許可が免除されますが、日本はその一覧に入っていません。許可そのものは政令が「engedélyezni kell(許可しなければならない)」と定めており、断れるのは公益・自治体利益を害する場合などに限られます。印紙は申請者1人・物件1件につき5万フォリント。一方で農地と林地は、この許可の対象ですらなく、外国人は法律で取得できません。
日本は「許可が要る側」。免除されるのはEU・EEA・スイスなど
根拠はハンガリーの住宅法(1993年第LXXVIII号法)1/A条と、それを受けた251/2014.(X.2.)政令です。政令1条1項は、農地・林地に当たらない不動産の所有権を「外国人の法人または自然人」が取得する場合の許可にこの政令を適用すると定めています。県政府庁が配布している案内「外国人のハンガリー不動産取得の許可手続について」には、許可が要らない範囲が列挙されています。
| 区分 | 許可 | 案内の記載 |
|---|---|---|
| EU加盟国の国民・法人 | 不要 | 加盟国名が1つずつ列挙されている |
| EEA協定の締約国(ノルウェー・リヒテンシュタイン・アイスランド) | 不要 | 国民・法人・法人格のない団体まで対象 |
| スイス国民 | 不要 | 人の自由移動に関する協定(2006年第CXXV号法で公布)に基づく |
| 二重国籍者 | 不要 | 一方がハンガリーまたはEU加盟国の国籍である場合。国外在住のハンガリー国民も同じ |
| 相続 | 不要 | 住宅法1/A条1項が「相続の場合を除く」と明記 |
| 上記以外の外国人(日本を含む) | 必要 | 「上に挙げた以外のすべての場合、外国の自然人・法人は、農地・林地に当たらない不動産の所有権を、もっぱら県政府庁の許可によって取得できる」 |

この列挙に日本は出てきません。国籍を理由に禁止されているわけではなく、許可という手続を1つ挟む扱いです。EU圏外の買い手に物件ごとの同意を求める作り方はクロアチアやオーストリアでも見られますが、ハンガリーは判断する役所が州や自治体ではなく県政府庁に一本化されている点が違います。
申請先は物件所在地の県政府庁。法令上の処理期間は45日
政令2条は、1号附則の様式による申請書を物件の所在地を管轄する首都・県政府庁(fővárosi és vármegyei kormányhivatal)へ提出すると定めています。ブダペストの物件ならブダペスト首都政府庁です。処理期間は政令3条が「45日」と明記しています。

| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 申請先 | 物件所在地の首都・県政府庁 | 政令2条 |
| 様式 | 政令1号附則の申請書。附則内の「付録」も記入必須 | 政令2条・1号附則 |
| 処理期間 | 45日 | 政令3条 |
| 印紙 | 50,000フォリント(申請者1人・物件1件ごと)。申請書に印紙を貼って納める | 県政府庁の案内(印紙法 別表XX款) |
| 印紙の軽減 | 自由移動・滞在の権利を持つ者または定住資格者で、ハンガリー国籍の取得を申請済みの者が住宅を取得する場合は10,000フォリント | 県政府庁の案内 |
| 添付書類 | 旅券など本人確認書類の認証謄本、売買契約または予約契約(無い場合は2号附則の所有者による譲渡意思の申述書)、21日以内の登記簿謄本(tulajdoni lap) | 県政府庁の案内 |
| 謄本取得の手数料 | 登記簿謄本などを政府庁に取り寄せてもらう場合は3,600フォリント | 県政府庁の案内 |
| 代理人 | 本人以外が手続する場合は、完全な証拠力を持つ私文書による委任状の原本を添付 | 県政府庁の案内 |
添付書類のうち登記簿謄本は「21日以内」という鮮度の条件が付きます。日本から準備する場合、現地の司法書士や弁護士へ委任して取り寄せる段取りを先に決めておかないと、謄本の日付が古くなって出し直しになります。
許可は「出さなければならない」のが原則。断れるのは限られた場合
ここがハンガリーの特徴です。政令4条1項は、2項の例外を除いて「ingatlanszerzést engedélyezni kell(不動産取得を許可しなければならない)」と書いています。要件は、公益と自治体の利益を害さないこと、申請者の本人確認が確実にできること、所有権を譲り渡す意思が確認できることです。4条1a項は「当事者の申述は、欠けている証拠の代わりにはならない」とも定めています。
県政府庁が許可・不許可を決めるまでの分かれ方
5番目の「相互主義」が日本人にとって気になるところですが、政令4条5項が答えを書いています。相互主義の存在は、外交を担当する大臣が異なる見解を出さないかぎり推定される(vélelmezni kell)という定めです。つまり申請者側が日本との相互主義を証明する必要はなく、大臣が否定していない以上は在るものとして扱われます。2026年10月23日時点で、日本について否定する見解が公表されているかは確認できませんでした。
なお4条2項の拒否には例外が2つあり、共有物分割を目的とする取得と、ハンガリーに5年以上継続して住所・滞在地・宿泊地の届出があり、その間に通算3年以上雇用関係にあった外国人は、相互主義を理由に断られません。
2026年1月3日施行版で加わった「地域アイデンティティ保護法」の論点
いま有効な政令は2026年1月3日施行版です。6条3項には、2項の自治体利益の侵害に加えて、地域アイデンティティの保護に関する法律の授権に基づいて制定された自治体条例の、物権的保護手段に関する規定を無視した場合も自治体利益の侵害に当たる、という条文が入っています。
この記事で確認できなかったこと
6条3項が指す「地域アイデンティティの保護に関する法律」の本文と、どの自治体がこの授権に基づく条例を制定しているかまでは確認できていません。条例は市町村ごとに違うため、特定の物件が該当するかどうかは、その自治体の条例を見ないと判断できません。
購入を検討する段階では、物件所在地の自治体にこの種の条例があるかを現地の専門家に確認してください。該当すれば、政令4条1項の「自治体利益を害さない」という要件を満たさず、許可が下りない可能性があります。
この条文は、外国人の取得そのものを狙ったものとは限りません。ただ、許可の可否を決める材料が国の政令だけでなく自治体条例にも置かれたことは、買い手から見ると調べる場所が1つ増えたことを意味します。
県政府庁の案内PDFは、現行の政令と食い違っている
実務で使われている案内文書には、現行法と合っていない記述があります。突き合わせると次のようになります。
| 項目 | 案内PDFの記載 | 現行の定め |
|---|---|---|
| 処理期間 | 「ügyintézési határideje 15 nap」(15日) | 政令3条は45日 |
| EU加盟国の列挙 | 「Egyesült Királyság(英国)」が加盟国として入ったまま | 英国は2020年にEUを離脱している |
| 参照している行政手続法 | 2004年第CXL号法 | 現在の一般行政手続法は2016年第CL号法 |
| 政府庁の呼び方 | 「fővárosi és megyei kormányhivatal」(megyei=県の旧表記) | 政令2条・4条2項は「fővárosi és vármegyei kormányhivatal」 |

印紙の額は案内PDFにしか書かれていないため、金額の根拠としてはこの文書に頼るしかありません。一方で処理期間は政令本文に45日と書かれており、こちらが優先します。「案内に書いてあるから正しい」と読まず、政令の条文に当たり直すのが安全です。英国が加盟国として残っている点は、この文書がいつの時点のものかを示す目印になります。
農地と林地は許可の対象ですらない。外国人は取得できない
251/2014政令の対象は、冒頭から「農地・林地に当たらない不動産」に限られています。では農地はどうかというと、別の法律が正面から禁じています。農地・林地の取引に関する2013年第CXXII号法9条1項は、土地の所有権を取得できない者としてa)外国の自然人を挙げています。同法15号の定義で「外国の自然人」とは「非加盟国の国民」であり、日本人が該当します。
| 不動産の種類 | 日本人の取得 | 根拠 |
|---|---|---|
| マンション住戸・一戸建て・店舗など | 県政府庁の許可を得れば可能 | 251/2014政令1条・4条 |
| 農地・林地(mező- és erdőgazdasági hasznosítású föld) | 取得できない | 2013年第CXXII号法9条1項a) |
| 相続による取得 | 許可は不要 | 住宅法1/A条1項(相続の場合を除く) |
| 外交・領事機関、これに準じる国際機関 | 条約または相互主義があれば許可 | 251/2014政令8条 |
同法10条1項は、土地の所有権を取得できるのは「国内の自然人と加盟国国民」だとし、農業従事者でない者は保有面積が合計1ヘクタールを超えない範囲でのみ取得できると定めています。農地は許可の問題ではなく、取得の可否そのものが閉じていると理解してください。別荘地を探すときに、登記簿上の地目が農地になっている土地を候補に入れてしまうと、許可申請の前で止まります。
競売で買う場合は「事前許可」という別の仕組みになる
政令9条は、競売(árverés)で不動産を取得する場合の扱いを分けています。県政府庁は特定の物件を指定しない事前許可(előzetes engedély)を先に出し、これは政府庁の管轄区域内で競売にかけられる任意の不動産を取得する資格を与えます。有効期間は確定から1年です。
所有権を登記するには、競売調書の写しに基づいて、落札した物件の住所と地番を記した裏書を政府庁から受ける必要があります。政府庁は裏書の申請から8日以内に処理します。競売時点で事前許可が有効でなかった場合は裏書を受けられません。事前許可の審査では4条1項・4条2項a)・6条・8条は適用されず、公益を害さなければ出されます。
買ったあとに払う4%の取得税
許可とは別に、所有権移転には取得税(visszterhes vagyonátruházási illeték)がかかります。印紙法(1990年第XCIII号法)19条1項は、不動産について1物件あたり10億フォリントまで4%、これを超える部分は2%、1物件あたり上限2億フォリントと定めています。持分取得の場合は、10億フォリントを持分割合で按分した額に4%を適用します。
この税率は国籍で変わりません。許可の有無とも別の話です。海外から資金を送る場合の手数料と税の扱いについては海外送金の手数料に消費税はかかる?もあわせて確認してください。
ハンガリーの不動産購入についてよくある質問
日本人がブダペストのマンションを買うのに許可は要りますか
要ります。県政府庁の案内に列挙された許可不要の範囲(EU・EEA・スイス・二重国籍・相続)に日本は含まれません。物件所在地を管轄する首都・県政府庁へ、251/2014政令1号附則の申請書を出します。ブダペストの物件ならブダペスト首都政府庁です。
許可が下りないことはありますか
あります。政令5条の公益の侵害(退去命令・入国滞在禁止・逮捕状・前科など)、政令6条の自治体利益の侵害に当たる場合です。また政令4条2項により、本国がハンガリー国民に内国民同等の待遇を与えていない場合は拒否できます。ただし同条5項で、相互主義は外交担当大臣が異なる見解を出すまで存在すると推定されます。
許可にかかる費用と期間はどれくらいですか
印紙が申請者1人・物件1件につき50,000フォリントで、申請書に印紙を貼って納めます。処理期間は政令3条で45日です。登記簿謄本などを政府庁に取り寄せてもらう場合は3,600フォリントが別にかかります。県政府庁の案内PDFには処理期間が15日と書かれていますが、現行の政令は45日です。
ハンガリーの農地や森林は買えますか
買えません。農地・林地の取引に関する2013年第CXXII号法9条1項a)が、外国の自然人は土地の所有権を取得できないと定めています。同法の定義で「外国の自然人」は非加盟国の国民を指し、日本人が該当します。251/2014政令の許可制度は、そもそも農地・林地以外の不動産だけを対象にしています。
相続でハンガリーの不動産を受け取る場合も許可が要りますか
要りません。住宅法1/A条1項が「相続の場合を除く」と明記しており、県政府庁の案内でも許可不要の範囲に「Öröklés(相続)」が挙げられています。
この記事が参照した一次情報
- ハンガリー国立法令データベース「251/2014.(X. 2.)Korm. rendelet」(2026年1月3日施行版、2026年10月23日に表示。申請先・45日・許可の要件・競売の事前許可)
- 同「2013. évi CXXII. törvény a mező- és erdőgazdasági földek forgalmáról」(2026年10月23日に表示。9条1項a)と15号の定義、10条の取得資格)
- 同「1990. évi XCIII. törvény az illetékekről」(2026年10月23日に表示。19条1項の取得税率)
- 県政府庁「Tájékoztató a külföldiek magyarországi ingatlanszerzésének engedélyeztetése iránt kezdeményezett eljárásról」(PDF、2026年10月23日に表示。許可不要の範囲・添付書類・印紙50,000フォリント)
