「ドバイ不動産は、エスクロー口座があるから安全というのは、どういうことですか?」
ドバイ不動産は「他の国よりも、エスクロー口座があるから安心」と言われることがあります。今回は、エスクロー会社・エスクロー口座について解説します。
エスクロー口座とは?
エスクローとは
売り手と買い手の間に信頼を置ける中立な第三者を仲介させること。二者の契約について一方から他方への義務の履行が確認されるまで、対価として引き渡される金銭や証書、物品などを第三者が預かる仕組みのこと
を意味します。
一般的に、売り手と買い手だけの取引の場合は
順番として
- 売り手 → 買い手 販売する商品を渡す
- 買い手 → 売り手 代金を支払う
「売り手」が販売する商品を「買い手」に渡した後に、「買い手」が代金を支払わずに逃げてしまったら、「売り手」が損をする
順番として
- 売り手 → 買い手 販売する商品を渡す
- 買い手 → 売り手 代金を支払う
「買い手」が代金を支払った後に、「売り手」が販売する商品を「買い手」に渡さなかった場合には、「買い手」が損をする
ことになってしまいます。
こういう状況の場合に、エスクローサービスを利用することで
- 買い手 → エスクロー会社・エスクロー口座 代金を支払う
- 売り手 → 買い手 販売する商品を渡す
- エスクロー会社・エスクロー口座が商品が渡ったことを確認したら
- エスクロー会社・エスクロー口座 → 売り手 代金を支払う
- エスクロー会社・エスクロー口座が商品が渡ったことを確認できなければ
- エスクロー会社・エスクロー口座 → 買い手 代金を買い手に返す
と、買い手にとっても、売り手にとっても、リスクがない取引のために利用されるのが「エスクローサービス(エスクロー口座・エスクロー会社)」です。
この仕組みがドバイ不動産には採用されているのです。
ドバイ不動産を購入する際は、エスクロー口座に投資家は入金をし、ディベロッパーは開発計画の進行に伴い、エスクロー口座から資金を下請けの支払いに利用できるようになります。
このエスクローを管理するのは、ドバイ政府(ドバイ土地局)です。
ドバイ不動産のエスクローサービスは、利用が法律で義務化されている
ドバイでは
ドバイ不動産のオフプランの購入資金の入金には、エスクローサービスを利用することがディベロッパーに法律で義務付けられています。
2008年のドバイのバブル崩壊から脱却するための継続的な取り組みの一環として、ドバイ政府は首長国の不動産部門を保護するために広範な措置を講じてきました。
当局は、急成長する不動産セクターに対する外国人投資家の信頼を高めることに一貫して取り組んできました。その一つが「ドバイにおける不動産開発のためのエスクロー口座に関する 2007 年法律第(8) 号」(「エスクロー口座法」) の導入であり、投資家とドバイ首長国自身の不動産を保護する目的で施行されました。
エスクロー口座法が可決される前には、開発業者が不動産プロジェクトの建設を中断し、その結果、建設の完了が遅れ、不動産プロジェクトに投資していた投資家に大きな損失を与える事例がありました。
そこで「エスクロー口座法」が作られたのです。
ドバイ不動産のエスクロー口座法とは?
不動産エスクロー口座の運用条件は、各首長国の不動産規制当局によって規制されます。
オフプラン物件を購入する方は、開発プロジェクトのエスクロー口座に物件代金を支払います。
ディベロッパーは、このエスクロー口座の資金をプロジェクトの建設、コンサルティング、販売およびマーケティング、土地の支払い以外の費用に使用することはできません。
資金は、建設の各段階が完了して、事前に決定された進行状況が確認されてはじめて、エスクロー口座からプロジェクト請負業者(下請け業者)およびコンサルタントに直接支払われます。不動産規制庁(RERA)は、エスクロー口座の収入と支出の明細書を定期的に要求し、監査します。
その他のエスクロー口座の支払いには、エスクロー契約およびそれぞれの規制当局の指示が適用されます。
エスクロー口座法では、ディベロッパーの債権者はエスクロー口座に保持されている資金を差し押さえる権利がありません。
また、開発プロジェクトの完了後1年間は、エスクローに保持されている総資金の5%を保持しなければなりません。
さらに、ディベロッパー登録を怠り、不動産開発活動を実施した場合は、最低100,000ディルハム(27,225 米ドル) の罰金と懲役刑が科せられます。また、不適切な理由で建設の開始を中止した場合、開発者とそのプロジェクトはドバイ土地局の登録から抹消されます。
簡単にまとめると
- ディベロッパーは、オフプラン物件の販売では、エスクロー口座を利用することが義務
- ディベロッパーは、エスクロー口座から、自由に出金できない
- エスクロー口座は、建設計画の進行状況に応じて「下請け」に対して直接支払われる
- ディベロッパーの債権者も、エスクロー口座には手を付けられない
- ディベロッパーが倒産したら、エスクロー口座に残っている資金は返金される
ということになります。
ドバイ不動産のエスクロー口座法のメリットデメリット
メリット
- ディベロッパーが他の資金繰りなどに資金を使うことがない
- ディベロッパーは、利益を得るためには、物件を完成させなければならない
- 支払いの履歴が法的に残る
- すべての開発プロジェクトは、不動産規制庁(RERA)に申請が必要になる
- 開発プロジェクトの収支を不動産規制庁(RERA)が監査に入る
- 不適切な理由で建設の開始を中止した場合、ディベロッパーとそのプロジェクトはドバイ土地局の登録から抹消
デメリット
- 建設計画の進捗によって、エスクロー口座から下請けに資金が直接支払われるということは、開発途中段階でも、エスクロー口座の資金は減っていることを意味する(途中で開発がとん挫した場合に、全額が戻ってくるというわけではない)
まとめ
ドバイ不動産のエスクロー口座は、一定レベルの投資家保護を実現しています。
しかし、これは完ぺきな補償・保護でないことに注意が必要です。開発計画が進んでいく間に、エスクロー口座の資金は、下請けに支払われるため、残高は減っていきます。開発途中でディベロッパーが倒産した場合に、エスクロー口座の資金が投資家に返金されるとしても、100%の金額が戻ってくるわけではないのです。