クロアチアの不動産を日本人が買えるかどうかは、「相互主義(uzajamnost)」という一語で決まります。クロアチア法務・行政・デジタル変革省は、EU圏外の国について相互主義があるかどうかを国別に公表しており、そこに「Japan uzajamnost postoji(相互主義あり)」と条件なしで載っています。ただしEU国民のように自由に買えるわけではなく、取引ごとに大臣の同意という行政手続が入ります。省の2つのページと政府ポータルの記載を突き合わせます。

先に要点

  • 日本はクロアチア法務省の相互主義一覧で「uzajamnost postoji」。面積や件数の条件は付いていない。
  • EU・アイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェーの国民は、クロアチア国民と同じ条件で取得でき、大臣の同意は要らない。日本人はこの枠に入らない。
  • EU圏外の外国人は、取得しようとする不動産ごとに、法務・行政・デジタル変革大臣の同意を行政手続で得る。
  • 農地は特別法の管轄で、そもそも大臣の同意の対象外だと省が明記している。
  • 相互主義は相手国の制度を映す。カナダは2023年1月1日から2026年12月31日まで「なし」、オーストラリアは2025年4月1日から2027年3月31日まで既存住宅について「なし」。
  • 申請先はザグレブのUlica grada Vukovara 49。国外に住んでいる場合、クロアチア国内に住所のある送達受取人を必ず立てる。

日本は相互主義一覧に「あり」で載っている

省が公表しているのは「クロアチア共和国と、EU・アイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェー・スイス以外の国との間の、不動産所有権取得における相互主義に関する情報」という表です。国名と相互主義の状態が1行ずつ並び、条件が付く国にはその条件も書かれています。

日本の行は「Japan uzajamnost postoji」のひと言だけです。たとえば同じ表のヨルダンには「居住用または自ら事業を行う用途の不動産に限り、非都市化区域の土地などを除く」という条件が付き、カメルーンには「国境地域ではないこと、面積が10,000平方メートル(1ヘクタール)以下であること」が付きます。日本にはそうした限定が書かれていません。

クロアチア法務・行政・デジタル変革省の相互主義一覧の表。Japanの行にuzajamnost postojiと書かれ、上にインド・イラク・イランのuzajamnost ne postoji、下にヨルダンとカメルーンの条件付きの記載が並んでいる
クロアチア法務・行政・デジタル変革省の相互主義一覧。日本の行は条件なしの「uzajamnost postoji」(2026年10月21日に表示)。

同じ表で「uzajamnost ne postoji(相互主義なし)」とされているのは、インド、イラク、イラン、アフガニスタン、アゼルバイジャンなどです。アゼルバイジャンには「外国の個人・法人は同国の不動産を賃借でしか利用できない」という理由まで添えられています。相互主義とは、相手国がクロアチア国民に同じ権利を認めているかどうかを見る仕組みなので、理由は相手国側の制度に書かれることになります。

EU国民との違いは「大臣の同意が要るかどうか」

省の案内は、国籍によって3つに分けています。日本人が入るのは3つ目です。

クロアチア法務・行政・デジタル変革省の外国人の所有権取得のページ。EU・アイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェー国民の扱いと、スイス国民の扱いが見出しごとに分けて書かれている
法務・行政・デジタル変革省「外国人による所有権の取得」。国籍ごとに節が分かれている(2026年10月21日に表示)。
国籍による扱いの違い(法務・行政・デジタル変革省の案内より)
国籍 大臣の同意 条件
EU加盟国・アイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェー 要らない クロアチア国民と同じ条件。除外区域の不動産、すなわち特別法が定める農地は対象外
スイス 要らない 上と同じ条件に加え、登記申請の際に一時滞在の届出証明を他の書類と一緒に提出する
上記以外(日本を含む) 要る 相互主義のある国の国民であることが前提。不動産ごとに行政手続で同意を得る

省の英語ページは、この手続の根拠として「所有権およびその他の物権に関する法律」と「一般行政手続法」の規定を挙げています。同意を出すかどうかは、買おうとしている人、または売ろうとしている人の申請を受けて、行政手続の中で判断されます。買主だけでなく売主の側からも申請できるのが、この制度の特徴です。

相互主義は相手国の制度を映す。カナダとオーストラリアは今「なし」

相互主義の状態は固定ではありません。相手国が外国人の購入を制限すると、クロアチア側の表もそれに合わせて変わります。表を読むと、その動きがそのまま記録されているのが分かります。

相互主義一覧の記載例(クロアチア法務・行政・デジタル変革省)
国 相互主義 書かれている条件
日本 あり 条件の記載なし
韓国 あり 条件の記載なし
英国 あり 条件の記載なし
カナダ なし 2023年1月1日から2026年12月31日まで
オーストラリア なし 2025年4月1日から2027年3月31日まで、既存の不動産の購入について。クロアチアに住所のある人などは例外で、全国で1件まで、新築または建設中の住戸に限る
エジプト あり 全国で2件まで、未建築の土地は4,000平方メートルまで、本人と家族の居住または許可を得た活動が目的であること
ニュージーランド あり 1,000万ニュージーランドドル超または5ヘクタール超の不動産でなければ可。超える場合は法律の条件を満たす必要がある
インド なし 条件の記載なし
香港 あり 中国本土とは別の行に分けて記載。台湾は「なし」

カナダとオーストラリアの行が示しているのは、相互主義が外交上の宣言ではなく、相手国の現行制度を写した帳簿だということです。カナダが外国人の住宅購入を期限付きで禁じ、オーストラリアが既存住宅の購入を期限付きで止めている。その期限がそのままクロアチア側の表に書き込まれています。

日本の行が今「あり」でも、将来を保証するものではない。

表は相手国の制度に連動して書き換えられます。日本が外国人の不動産取得に新しい制限を設ければ、クロアチア側の記載もそれに応じて変わり得ます。購入を決める時点で省のページを開き直し、日本の行を自分の目で確かめるのが確実です。

申請はザグレブの省へ。必要書類は5点と委任状

政府ポータル e-Građani の案内には、申請先の住所と添付書類が列挙されています。窓口(pisarnica)に直接出すか、郵送でも受け付けます。

クロアチア政府ポータルe-Građaniの外国人の不動産購入のページ。EU国民とスイス国民の扱い、それ以外の国民の行政手続についての節が並んでいる
政府ポータル e-Građani の「外国人の不動産購入」。申請先と添付書類が書かれている(2026年10月21日に表示)。

同意の申請に添える書類

1

取得の法的根拠。売買契約、贈与契約、扶養契約などの原本または認証謄本。

2

売主がその不動産を所有していることの証明。土地登記簿の抄本(izvadak iz zemljišne knjige)。

3

不動産の所在地を所管する都市計画・空間整備の行政機関が出す、不動産の法的地位についての証明。都市計画で定める建築区域の中にあるかどうかを示すもの。

4

国籍の証明。パスポートの認証謄本など。法人の場合は商業登記簿の抄本。

5

代理人を立てる場合は委任状の原本または認証謄本。

6

代理人を立てず、かつ国外に居住している場合は、クロアチア国内に住所のある送達受取人(opunomoćenik za primanje pismena)を必ず指定する。

提出先は次のとおりです。手続の中で他の書類が必要になった場合は、適当な期限を示して追加提出を求められると書かれています。

申請先(政府ポータル e-Građani の記載)
機関 Ministarstvo pravosuđa, uprave i digitalne transformacije Republike Hrvatske(法務・行政・デジタル変革省)
部局 Uprava za građansko, trgovačko i upravno pravo(民事・商事・行政法局)
住所 Ulica grada Vukovara 49, 10000 Zagreb
提出方法 窓口に直接提出、または郵送

6番目の送達受取人は見落としやすい項目です。日本に住んだまま申請する場合、代理人を立てないのであれば、書類を受け取るための窓口をクロアチア国内に用意しなければなりません。海外送金の手順と費用は三菱UFJ銀行の海外送金の記事で扱っています。

農地は大臣の同意の対象外。別の法律で決まる

注意したいのは農地の扱いです。省の英語ページは「農地は特別法によって規律されるため、農地の所有権取得は大臣の同意の対象ではない」と書いています。つまり農地は、同意を申請すれば買えるという枠組みの外側にあるということです。

EU国民についても、同じ案内の中で「EUの国民および法人は2023年6月30日まで農地を取得できない」という注記が残っています。これはEU加盟時の経過措置について書かれたもので、EU国民の農地取得がどのように扱われているかは、この案内だけからは読み切れません。

EU圏外の個人が農地を取得できるかどうかについては、省のこの2ページにも政府ポータルにも明示の記載が見当たりませんでした。この記事では、農地については「大臣の同意の対象外であり、別の法律で決まる」というところまでしか確認できていません。海沿いの土地や畑を含む物件を検討する場合は、対象の筆が農地に区分されているかどうかを登記簿と都市計画の証明で先に確かめ、農地であれば現地の専門家に当たってください。

確認できたことと、確認できなかったこと

確認できたのは、省と政府ポータルが公開している制度の形です。日本は相互主義一覧に条件なしで載っており、EU圏外の国民として、不動産ごとに大臣の同意を得る行政手続を踏むことになります。申請先と添付書類も公開されています。

確認できなかったことも書いておきます。同意の審査にかかる期間、手数料の額、申請の却下率は、今回見た省のページと政府ポータルには書かれていませんでした。相互主義一覧には更新日の表示がなく、いつ時点の内容かはページからは分かりません。農地の取り扱いは前の節のとおりです。クロアチア国内の不動産価格や利回りについては、この記事では扱っていません。

国ごとの制度の違いを続けて読むなら、同じくEU加盟国で許可の仕組みが州ごとに分かれるオーストリアの記事と、OECD加盟国という基準で線を引くエストニアの記事が参考になります。

出典

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