オーストラリアの住宅を買いたい。数年前なら、承認を取り手数料を払えば中古物件にも手が届きました。いまは前提が違います。2025年4月1日から、外国人は原則として既存住宅(established dwelling)を買えません。しかもこの措置は当初2年間の時限でしたが、2026-27年度予算で2年3か月延長され、終期は2029年6月30日になりました。日本から買う人にとっては、買える物件の種類そのものが絞られたということです。オーストラリア税務局(ATO)と財務省の公式ページに書かれている中身を、順に押さえていきます。
先に結論
- ATOの公式ページは、2025年4月1日から2029年6月30日まで、外国人は既存住宅を買えないと明記しています。臨時居住者も外国法人も対象です。
- 買えるのは新築または新築同様の住宅、再開発を前提とした既存住宅、オフザプラン物件、住宅用の未利用地など。政府の方針は「外国からの投資を新築へ振り向ける」ことだと財務省が説明しています。
- 例外として残るのは、永住権保持者とニュージーランド国籍者による購入、それに太平洋島嶼国等の労働者に住宅を提供する企業の取得です。
- 取得の前に金額にかかわらずATOへの届出が要ります。申請手数料は物件価格帯で段階的に上がり、100万豪ドル以下で15,600豪ドル、200万豪ドル以下で31,300豪ドルです。
- 買ったあとも、1年のうち183日以上「居住も賃貸募集もしていない」状態だと空室料(vacancy fee)がかかります。額は申請手数料の2倍です。
禁止はいつからいつまでか
ATOの新法解説ページには、2026-27年度予算で政府が既存住宅の外国人購入禁止を2年3か月延長し、2029年6月30日までとすると発表したことが書かれています。当初は2025年4月1日から2年間の措置でした。同じページは、延長によって「2029年6月30日まで、臨時居住者や外国資本の会社を含む外国人は、例外に当たらない限りオーストラリアで既存住宅を買えない」と説明しています。

期限が動いたという事実そのものが、計画を立てるうえでの前提になります。「2027年に解除されるから、それまで待って中古を買う」という組み立ては、すでに成立しません。延長がさらに重なる可能性も、制度の性格上は残ります。
買える物件と、買えない物件
禁止の対象は既存住宅です。裏返せば、それ以外は依然として取得の道があります。ATOが列挙している、外国人が買える住宅用不動産は次のとおりです。
| 種類 | 買えるか | ATOの定義・条件 |
|---|---|---|
| 新築・新築同様の住宅 | 買える | 住宅用地に建てられる/建築中/建築済みで、住宅開発の一部であり、通算12か月を超えて居住されたことがないもの |
| オフザプラン物件 | 買える | 図面段階での購入。新築の枠に入る |
| 住宅用の未利用地 | 買える | 人・物・家畜が合法的に占有でき、原則として既存住宅が建っていたことのない土地 |
| 再開発を前提とした既存住宅 | 買える | 取り壊して住戸を増やす前提。個別審査 |
| 労働者住宅としての既存住宅 | 買える | 太平洋島嶼国・東ティモールからの労働者を雇い住宅提供が義務づけられる外国企業(PALM制度など) |
| 上記以外の既存住宅 | 買えない | 2025年4月1日〜2029年6月30日。臨時居住者が自分の主たる住居として買う場合も含む |
臨時居住者の扱いが変わった点は見落としやすいところです。以前は学生ビザや就労ビザでオーストラリアに住んでいる人が、自分の住まいとして中古住宅を買う道がありました。ATOは今回、その用途も禁止の対象に含まれると明記しています。臨時居住者に残るのは、未利用地か新築の承認申請です。
未利用地を買って住宅を建てる場合、財務省のガイダンスは原則4年以内に建築を完了すること、完成まで土地を売却しないことを条件として課すとしています。土地を寝かせて値上がりを待つ買い方は想定されていません。
誰が「外国人」から外れるのか
禁止の適用を受けない人もいます。ATOのページが挙げているのは、永住権保持者とニュージーランド国籍者による購入です。この2つは従来からある例外で、今回の延長でも維持されています。
永住権保持者
オーストラリアの永住権を持つ人は、既存住宅の購入禁止の対象外。従来からの例外がそのまま残っています。
ニュージーランド国籍者
豪ニュージーランド間の取り決めにより、外国人の枠から外れます。
住宅供給を増やす投資
住宅の供給を大きく増やす、または住宅の利用可能性を支える投資は限定的な例外として扱われます。個別の審査が前提です。
労働者住宅(PALM等)
太平洋島嶼国・東ティモールからの労働者を雇用し、住宅提供が求められる外国企業による既存住宅の取得。
注意したいのは、日本国籍のまま長期で滞在しているだけでは例外に入らないことです。永住権があるかどうかが分かれ目で、ビザの種類によっては臨時居住者として扱われます。
届出と手数料は物件価格で決まる
財務省の「Residential land」ガイダンスは、外国人投資家が住宅用地を取得する前に、金額にかかわらずATOへ届け出る必要があると述べています。無償・少額だから不要、という扱いはありません。

申請手数料は物件の価格帯ごとに定額で決まっています。2026年7月1日から2027年6月30日までの、新築・新築同様の住宅および住宅用未利用地の取得にかかる手数料は次のとおりです。
| 物件価格 | 1件あたりの手数料 | 空室料になった場合(手数料の2倍) |
|---|---|---|
| 75,000豪ドル未満 | 4,600豪ドル | 9,200豪ドル |
| 100万豪ドル以下 | 15,600豪ドル | 31,200豪ドル |
| 200万豪ドル以下 | 31,300豪ドル | 62,600豪ドル |
| 300万豪ドル以下 | 62,600豪ドル | 125,200豪ドル |
| 400万豪ドル以下 | 93,900豪ドル | 187,800豪ドル |
| 500万豪ドル以下 | 125,200豪ドル | 250,400豪ドル |
価格帯が1段上がるごとに手数料がほぼ倍々で増える設計です。100万豪ドルの物件と200万豪ドルの物件では、手数料の差が15,700豪ドル。物件価格そのものの差に比べれば小さく見えますが、これは購入前に現金で出ていく費用です。ATOは手数料の減免を「ごく限られた場合にしか認めない」としています。
この手数料は毎年7月1日に改定されます。上の数値は2026年7月1日から2027年6月30日までの期間に適用されるものです。予算を組むときは、購入時点の期間に対応する表を確認してください。
空室のまま持っていると年ごとに課される
買ったあとにかかる費用として、空室料(annual vacancy fee)があります。財務省のガイダンスは、年間183日(約6か月)を超えて居住もされず、実際に賃貸募集もされていない場合に支払う必要があると説明しています。ATOのページは、期限までに空室料の申告書を提出しなかった場合にも課されるとしています。
金額は、その物件について払った対内投資の申請手数料の2倍です。ATOが載せている例では、200万豪ドル未満の新築アパートを買うために31,300豪ドルの手数料を払った人が、183日を超えて空室にした結果、62,600豪ドルの空室料を負担する形になっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課される条件 | 1年(vacancy year)のうち183日以上、居住も賃貸募集もしていない/申告書を期限までに出さない |
| 金額 | 対内投資の申請手数料の2倍(2024年4月9日以降に始まる年から) |
| 手続き | 毎年、空室料の申告書(vacancy fee return)を提出する |
| 起算 | 物件を占有できるようになった日から1年ごと |
短期で値上がり益だけを狙い、借り手を探さずに寝かせておく買い方は、この仕組みで割に合わなくなります。オーストラリアの不動産価格の動きそのものはオーストラリア不動産価格推移データにまとめていますが、価格が上がっても空室料が毎年乗れば手取りは目減りします。
州の上乗せ課税は別に効く
ここまでは連邦(国)の制度です。オーストラリアは州ごとに不動産税制が分かれていて、外国人が住宅用不動産を取得すると、通常の印紙税(transfer duty)に加えて上乗せ分が課される州があります。
ニューサウスウェールズ州の歳入当局(Revenue NSW)は、外国人が同州で住宅関連不動産を取得する場合、印紙税に加えてサーチャージ購入者印紙税(surcharge purchaser duty)を支払うと案内しています。外国人に当たらないのはオーストラリア国籍者、通常オーストラリアに居住している人(永住権があり、取引前1年間に200日以上オーストラリアにいたこと)、一定の永住権保持者などです。
州の上乗せは連邦の禁止・手数料とは別勘定です。どの州で買うかによって総コストが変わるため、物件を絞る前に、対象州の歳入当局が公表している条件を確認しておくほうが手戻りが少なくなります。
海外から不動産を買うときに国側の規制と地方の課税が二層になるのは、オーストラリアに限りません。シンガポールの外国人購入規制でも、承認の要否と追加印紙税(ABSD)は別の仕組みとして動いています。
いま日本から検討するなら
制度の形が変わったぶん、検討の順番も変わります。物件を探す前に、自分がどの区分に入るかを確定させるのが早道です。
| 立場 | 既存住宅 | 新築・未利用地 | ATOへの届出 |
|---|---|---|---|
| 日本在住の日本国籍者 | 買えない | 承認を得れば買える | 必要 |
| 臨時居住者(学生・就労ビザ等) | 買えない(自分の住居用も含む) | 承認を得れば買える | 必要 |
| 永住権保持者 | 買える | 買える | 不要(外国人に当たらない) |
| ニュージーランド国籍者 | 買える | 買える | 不要(外国人に当たらない) |
日本に住んだまま買う場合、選択肢は新築・オフザプラン・未利用地の3つに絞られます。オフザプランは完成までの期間に為替と工期の変動を抱え込みますし、未利用地は4年以内の建築完了という条件が付きます。どちらも「買って終わり」ではない点が、中古住宅を買うのとは決定的に違います。
よくある質問
日本国籍でもオーストラリアの不動産は買えますか
買えます。国籍を理由に取得を止める制度はありません。ただし2029年6月30日までは既存住宅が対象外になるため、新築・新築同様の住宅、オフザプラン、住宅用未利用地から選ぶことになります。取得の前にATOへの届出と手数料の納付が必要です。
すでに持っている既存住宅はどうなりますか
今回の措置は購入の禁止です。ATOと財務省のページは、いずれも新たな取得を対象として書いています。保有中の物件について売却を強いる内容は示されていません。
商業用不動産も禁止の対象ですか
いいえ。禁止の対象は住宅用の既存住宅です。ATOは、商業用不動産・農地・水利権・事業持分・鉱業生産などの非住宅資産については別の手続きを案内しています。
申請手数料はいつ払いますか
購入や免除証明書の承認を申請するとき、既存の承認を変更するとき、そして空室料の申告で料金が発生するときです。ATOは減免を認めるのはごく限られた場合だとしています。
手数料はクレジットカードで払えますか
財務省の対内投資サイトは、2026年9月19日から対内投資の手数料をクレジットカードとデビットカードで受け付けなくなると告知しています。以後の支払い方法はBPAY、口座振込、国際送金です。
空室料を避けるにはどうすればよいですか
年間183日以上、実際に居住するか、賃貸として市場に出しておくことです。財務省は「居住されている」か「実際に賃貸募集されている」かを条件にしています。募集を出さずに空けておくと、日数が積み上がります。
禁止はさらに延長されますか
現時点で示されているのは2029年6月30日までです。当初は2027年3月31日が終期でしたが、2026-27年度予算で延長されました。将来の再延長について公式に示された情報はありません。
この記事で参照した一次情報
- Australian Taxation Office「Foreign investment – extending the ban on foreign purchases of established dwellings」 https://www.ato.gov.au/about-ato/new-legislation/in-detail/international/banning-foreign-purchases-of-established-dwellings
- Australian Taxation Office「Types of property a foreign person can buy」 https://www.ato.gov.au/individuals-and-families/investments-and-assets/foreign-resident-investments/foreign-investment-in-australia/types-of-property-a-foreign-person-can-buy
- Australian Taxation Office「Residential fees for a foreign person」 https://www.ato.gov.au/individuals-and-families/investments-and-assets/foreign-resident-investments/foreign-investment-in-australia/fees-for-foreign-residential-investors
- The Treasury「Foreign investment in Australia – Residential land」 https://foreigninvestment.gov.au/guidance/types-investments/residential-land
- The Treasury「Changes to foreign purchases of established dwellings」 https://foreigninvestment.gov.au/news-and-reports/news/changes-foreign-purchases-established-dwellings
- Revenue NSW「Surcharge purchaser duty」 https://www.revenue.nsw.gov.au/taxes-duties-levies-royalties/transfer-duty/surcharge-purchaser-duty
