結論から言うと、タイでは外国人でもコンドミニアムの一室を自分名義で所有できますが、土地は原則として取得できません。コンドミニアムも無条件ではなく、棟ごとに定められた外国人向けの枠が空いていることが前提です。枠が埋まっていれば、代金を払えても外国人名義での登記はできません。
この記事では、タイで日本人がコンドミニアムを買うときに最初に確認すべき「所有できる対象」「枠の有無」「代金の送り方」「保有中と売却時の税」を、公的資料で確認できる範囲に絞って整理します。物件の良し悪しより前に、登記までたどり着けるかどうかを判断するための材料です。
タイで外国人が所有できるのは「建物の専有部分」だけ
タイの制度では、土地とコンドミニアムの専有部分は別に扱われます。ジェトロは、タイでは原則として外国人(法人を含む)は土地を取得できないと説明しています。外国人事業法の第1表には「土地取引」が、外国企業の参入が禁止されている業種として挙げられています。
| 対象 | 外国人個人の所有 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 土地(一戸建て・タウンハウスの敷地) | 原則不可 | 戸建てを「買った」と説明される取引でも、土地の権利は別構成になっている |
| コンドミニアムの専有部分 | 可能(棟ごとの外国人枠の範囲内) | 枠が空いていれば外国人名義で登記できる |
| 建物のみ(土地は借地) | 構成による | 借地期間、更新条件、期間満了時の扱いを契約で確認する |
| 例外的な土地取得 | 条件付きで可能 | BOI奨励企業やIEAT認定工業団地の企業。個人では4,000万バーツ以上の投資などの条件で居住用1ライ以下 |
ジェトロは、1999年5月に改正された土地法では、4,000万バーツ以上の投資などの条件を満たした場合に、居住用として1ライ(1,600平方メートル)以下の土地取得が可能としている、と記載しています。ただしこれは一般的な購入手段ではなく、条件と手続きの確認が別途必要です。「土地付きで買える」という説明を受けたときは、誰の名義で、どの法律に基づいて所有するのかを書面で確認してください。

棟ごとの外国人枠が空いているかを、契約より先に確認する
コンドミニアムの専有部分を外国人が所有できるのは、コンドミニアム法(Condominium Act B.E. 2522/1979年)に基づく制度です。ここで重要なのは、外国人が所有できる面積が棟単位で制限されていることです。上限は、その棟の専有面積の合計に対する割合で決まり、枠の充足状況は土地局での所有権登記の時点で確認されます。
つまり「この部屋は外国人でも買える」という説明は、その時点で枠が空いていることを意味しているにすぎません。契約から登記までの間に他の外国人が先に登記すれば、枠が埋まる可能性があります。売主やデベロッパーに対しては、口頭ではなく現時点の外国人枠の残りを示す書面を求めてください。中古物件の場合は、売主が外国人枠と国内枠のどちらで所有しているかによって、あなたが引き継げるかどうかが変わります。
| 確認項目 | 確認できていれば進める | 確認できないうちは契約しない |
|---|---|---|
| 外国人枠の残り | 棟の外国人枠の残量を書面で提示された | 「大丈夫です」という口頭説明だけ |
| 売主の所有区分 | 中古で、売主が外国人枠で所有していることを確認 | 国内枠の部屋を外国人枠として売られている |
| 枠が埋まった場合 | 解除条件と返金方法が契約書に明記 | 枠が取れなければ賃借に切り替える、という口約束 |
| 登記の名義 | 自分名義で登記する前提が明記されている | 現地法人や第三者名義を勧められている |
| 完成前物件の引渡し | 完成予定と遅延時の取り扱いが契約書にある | パンフレットの完成予定だけ |
棟ごとに枠を管理する仕組みは、東南アジアの他国でも形を変えて存在します。国ごとの違いはマレーシアのコンドミニアム購入ガイドやインドネシア不動産は外国人も買える?、セブ島コンドミニアム購入ガイドで整理しています。比較してから決めたい場合は、あわせて確認してください。
名義を他人や現地法人に置く構成を勧められた場合は、いったん止めてください。自分名義で登記できないということは、制度上あなたが所有できない状態にあるということです。所有しているつもりでも、権利を主張できない構成になっている可能性があります。
代金は「外貨のまま送る」ことが登記の前提になる
外国人枠でコンドミニアムを登記する場合、購入代金を海外から外貨で送金し、タイ国内で両替したことを示す銀行の証明が必要になります。日本国内でバーツに両替してから持ち込む、現地の口座にあるバーツで支払う、といった方法では、登記に必要な証明を用意できないことがあります。
実務上は、送金の名義を購入者本人にそろえること、送金目的にコンドミニアム購入である旨を記載すること、銀行が発行する外国送金の証明書を保管しておくことが要点です。金額は購入代金の全額を送る必要があるかどうかを含め、送金する前に取引銀行と土地局の要件を確認してください。送ってしまったあとでは組み直せません。
棟の外国人枠の残りを書面で受け取る
枠が取れない場合の解除・返金条件を入れる
本人名義で外貨送金し、証明書を保管する
土地局で所有権を移転し、権利証を受け取る
土地家屋税と管理費の支払い体制を作る
保有中にかかる土地家屋税
2019年3月13日に新しい土地家屋税法が施行され、2020年8月から課税が始まっています。ジェトロによれば、旧法では資産の賃貸価格を課税標準として年率12.5%が課されていましたが、新法では土地、建物またはコンドミニアムユニットの評価額が課税標準になりました。税率は利用目的(農地、住宅地、商業地)に応じて0.15%から3%が上限とされています。空地も課税対象です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税標準 | 土地・建物・コンドミニアムユニットの評価額 |
| 税率 | 利用目的に応じて0.15%〜3%が上限 |
| 納税義務者 | 毎年1月1日時点の所有者 |
| 納付期限 | 同年4月末日まで |
| 課税対象外 | コンドミニアムの共用部分、公用資産、宗教資産など |
| 住居の免除 | 資産価値5,000万バーツ以下の個人の主たる住居(住居登録があり、土地と建物の所有権を両方持つもの) |
注意したいのは、免除の条件が「住居登録があり、土地と建物の所有権を両方持つもの」とされている点です。土地を所有できない外国人が投資目的で保有するコンドミニアムは、この免除の前提から外れます。年間の維持コストを見積もるときは、管理費・修繕積立金に加えて土地家屋税を必ず入れてください。税率は自治体と用途で変わるため、購入前に対象物件の評価額と適用税率を確認します。
売却・相続で効いてくる税
出口の税は、購入時の利回り計算に入れ忘れやすい部分です。ジェトロの税制ページには、一般企業でも土地の譲渡を行った場合に特定事業税が課され、税率は3.3%と記載されています。文書には印紙税が課され、税率は取引と文書の種類によって異なります。
相続については、2016年2月1日から相続税が導入されています。課税対象資産が1億バーツを超える場合、相続人には10%(直系尊属・卑属の場合は5%)が課税されます。ここで重要なのは課税対象者の範囲で、タイ国内の財産を相続する外国人も対象とされています。タイにコンドミニアムを持ったまま相続が発生する可能性を考えるなら、日本側の相続税との関係も含めて、購入前に専門家へ確認しておくのが安全です。
賃貸に出す前提で購入する場合は、想定利回りの計算方法を海外不動産投資での賃貸運用のやり方・利回り・費用・注意点で確認してください。表面利回りだけで判断すると、税と管理費で手残りが大きく変わります。
また、タイの居住者が非居住者へ送金する場合、配当は10%、支店利益は10%、特許権等使用料は15%、利子収入は原則15%(日本の金融機関・保険会社への利子支払は租税条約で10%に軽減)の源泉徴収が必要とされています。賃貸運用の収益を日本へ戻す設計をする場合は、この源泉徴収を織り込んでください。
購入を見送る判断をするとき
タイの物件は情報量が多く、見学に行くと判断が甘くなりがちです。次のいずれかに当てはまるときは、価格や利回りが魅力的でも進めないほうが安全です。
逆に言えば、枠、名義、送金、税の4点が書面で確認できていれば、あとは物件そのものの検討に集中できます。順序を逆にして、物件を決めてから制度を確認すると、引き返しにくくなります。
まとめ
タイでは、外国人はコンドミニアムの専有部分を自分名義で所有できますが、土地は原則として取得できません。コンドミニアムも棟ごとの外国人枠の範囲内という条件があり、枠の充足は登記の時点で確認されます。代金は本人名義で外貨のまま送金し、銀行の証明を保管しておく必要があります。
保有中は、評価額を課税標準とする土地家屋税(利用目的に応じて0.15%〜3%が上限)がかかります。投資目的の保有は、主たる住居に対する免除の前提から外れる点に注意してください。売却時の特定事業税3.3%や印紙税、相続税(1億バーツ超で10%、直系は5%、タイ国内財産を相続する外国人も対象)まで含めて、購入前に総額で判断することをおすすめします。
参考にした公的資料
- ジェトロ「タイ 外資に関する規制」(外国企業の土地所有の可否、外国人事業法の規制業種)
- ジェトロ「タイ 税制」(土地家屋税、特定事業税、印紙税、相続税、海外送金に対する源泉徴収)
コンドミニアムの外国人所有は、コンドミニアム法(Condominium Act B.E. 2522/1979年、以後の改正を含む)に基づく制度です。棟ごとの枠の残量と、自分が登記できるかどうかは、契約前に売主および土地局で個別に確認してください。制度は改正されることがあるため、この記事の内容は判断の出発点として使い、実行前には最新の一次情報にあたることをおすすめします。
