インドネシア不動産を検討するとき、物件名や利回りより先に確認したいのが「誰が、どの権利を、どの土地の上で取得するのか」です。日本の登記簿上の所有権と同じ感覚で契約すると、広告でいう「所有」と法令上の権利が一致しないことがあります。
この記事は、日本人個人が住宅・コンドミニアムを検討する際の権利確認に絞り、インドネシア政府の法令データベースにあるPP(政令)18/2021と土地基本法を基準に整理します。価格、利回り、税務を網羅する総合記事ではありません。実際に取得できる権利は、買主の在留・入国書類、物件の土地権利、用途、所在地ごとの基準、契約構造で変わります。
結論:Hak Milikを買う話と、外国人が住宅を保有する話は分ける
インドネシア土地基本法(1960年法律第5号)第21条は、土地のHak Milik(所有権)を持てる主体を原則としてインドネシア国民としています。一方、現行のPP 18/2021は、所定の入国・在留関係書類を持つ外国人について、住宅のHak Pakai(使用権)や、条件を満たす区分住宅を規定しています。
| 確認する言葉 | 意味 | 契約前に見る資料 |
|---|---|---|
| Hak Milik | 土地の強い所有権。外国人個人の通常取得を前提にしない | 土地証書の権利種別、名義人 |
| Hak Pakai | 法令と証書で定められる使用権 | 証書、開始日、期間、延長・更新条件 |
| 区分住宅 | 住戸だけでなく敷地権・共用部分との関係を確認 | 住戸証書、敷地の権利、管理規約 |
| リース | 売買による権利取得とは異なる賃借関係 | 賃貸借契約、延長条件、譲渡・相続条項 |
PP 18/2021は、外国人が住宅を持つ要件として入国・在留関係書類を挙げています。そのため「日本在住の日本人なら無条件で土地付き住宅を買える」とは整理できません。営業資料の説明だけで判断せず、買主本人の条件と対象物件を現地の公証人・土地証書作成官(PPAT)等に個別照合します。
購入判断は5段階で止めながら進める
最初に買主資格を確定する理由は、同じ物件でも個人・外国資本会社・賃借で使える制度が違うためです。法人スキームは設立するだけで土地の完全所有権が得られる仕組みではなく、事業目的、投資許可、会計、税務、実体運営を伴います。小規模な一戸購入で法人を勧められた場合は、維持費と法的根拠を書面で比較します。
権利証書で確認する項目
証書の表紙や翻訳だけでなく、土地事務所で確認できる登録内容と契約書の対象を一致させます。売主名、地番、面積、権利種別、有効期間が一つでも異なれば、その場で理由と訂正方法を確認します。
確認用コピーには取得日を入れ、原本との照合者も記録します。販売担当者が作った物件概要、予約申込書、売買契約案、土地・住戸証書で名称や面積が違う場合、もっとも買主に有利な説明を採用してはいけません。公的登録と契約上の定義を揃え、違いが解消するまで予約金を含む次の支払いを保留します。
売主と登録名義人、代理権、婚姻・相続関係
地番、住戸番号、面積、境界、所在地
種類、開始日、残存期間、延長条件
担保、差押え、係争、未払金、第三者占有
建築・利用許可、住宅用途、短期賃貸の可否
譲渡先の条件、相続、契約解除、返金条件
PP 18/2021第69条は、外国人の住宅保有と相続人の入国・在留関係書類について定めています。相続できるという説明だけでは不十分で、相続人が外国人の場合の要件、遺言・現地手続き、日本側の相続実務まで別々に確認します。
避けるべき名義貸しと、説明を保留すべき表現
「現地人の名義を借りれば実質的に自分の土地になる」「契約を複数作れば所有権と同じ」「外国人向け物件なので全員買える」といった説明は、権利の安全性を示しません。名義人が売却、担保設定、相続、離婚、債務問題に巻き込まれたとき、買主の支払証拠だけで土地権利を回復できるとは限りません。
また、地域別の最低購入価格や面積条件は改定され得ます。本記事では変動しやすい金額を一律に断定しません。契約日時点の省令、州・地域、物件種別を指定し、現地専門家から根拠条文と適用表を受け取ってください。

予約金を払う前に停止条件を決める
デューデリジェンスは、問題を見つけるだけでは機能しません。「どの資料が何日までに提出されなければ解除できるか」「権利種別や名義が説明と違った場合に全額返金されるか」「返金手数料と送金費用を誰が負担するか」を契約案で確認します。確認前に返金不能な申込金を払うと、問題が分かっても撤退しにくくなります。
完成前物件では、土地権利だけでなく、事業者、建築工程、引渡条件、遅延時の扱い、完成後に発行される住戸証書も確認対象です。完成予定日や期待利回りを権利確認の代わりにせず、権利・建築・運営・出口の各確認を独立させます。
契約前に受け取る回答は書面化する
- 買主が取得できる権利の正式名称と根拠条文
- 土地・住戸証書の写しと土地事務所での照合結果
- 権利期間、延長・更新に必要な条件と費用
- 最低価格その他の取得条件が対象物件にどう適用されるか
- 売却、相続、賃貸運用、短期宿泊運営の制限
- 予約金・手付金を含む解除条件と返金先
回答者の肩書、確認日、参照法令も残します。仲介会社、デベロッパー、売主側担当者だけでなく、買主側で選任した独立専門家の確認を入れると、販売上の説明と法的確認を分けられます。未確認事項は「たぶん問題ない」で埋めず、支払いを止める条件として契約書へ反映します。
日本語訳を使う場合も、契約言語の原文、用語対照表、翻訳者を保存します。Hak Milik、Hak Pakai、区分住宅、リースをすべて「所有権」と訳すと重要な違いが消えます。分からない用語は日本語へ丸めず、原語のまま質問票に残してください。
インドネシア不動産の総合判断へ戻る
権利確認を通過しても、投資として良いとは限りません。賃料、空室、管理費、修繕、為替、税金、売却期間を含む収支は、インドネシア不動産投資の総合ガイドで別に確認してください。権利が曖昧な物件は、想定利回りの計算へ進む前に除外するのが基本です。
出典
- インドネシア政府法令データベース:PP No.18 Tahun 2021
- ATR/BPN:PP 18/2021英訳
- インドネシア土地基本法(1960年法律第5号)英訳
- インドネシア税務総局:外国人所有の土地建物移転に関する解説
本記事は一般的な確認手順を示すもので、個別案件の法律・税務助言ではありません。法令・運用は改定されるため、契約時点の原文と対象地域の運用を独立した現地専門家へ確認してください。専門家による個別監修を実施済みとする記事ではありません。
