面積が小さい国を調べると、サイトによって並び順が違います。1位がバチカンのところもあれば、モナコから始まるところもあり、そもそもバチカンが入っていない一覧もあります。これは誰かが間違えているというより、使っているデータが「国」と「地域」を分けていないか、面積の数え方が違うためです。世界銀行の統計と外務省の基礎データを突き合わせて、何が何位なのかを整理します。
世界でいちばん小さい国はバチカン市国で約0.44平方キロメートルです。外務省の基礎データは、日本の皇居(約1.15平方キロメートル)の半分以下だと書いています。
ただしバチカンは世界銀行の面積の統計には入っていません。世界銀行の系列で最小になるのはモナコの2.084平方キロメートルです。順位が食い違う理由の多くはここにあります。
上位には国ではない地域が混ざりやすいです。ジブラルタル、マカオ、バミューダ、ケイマン諸島などは世界銀行の表に並びますが、独立国ではありません。これを除くと顔ぶれが変わります。
同じ国でも出典によって数字が違います。ナウルは外務省が21.1平方キロメートル、世界銀行が20平方キロメートル。ツバルは外務省が26、世界銀行が30です。
面積が小さいことは、投資先としての不利を意味しません。シンガポールは718平方キロメートル、バーレーンは800平方キロメートルで、どちらも小さい国の上位に入ります。
1位はバチカン市国。約0.44平方キロメートル
外務省の「バチカン基礎データ」は、面積を約0.44平方キロメートルと記載しています。そのうえで「日本の皇居は約1.15平方キロメートル」という比較を添えています。皇居の半分以下の広さに、国家の機能が収まっていることになります。

バチカンの特殊さは面積だけではありません。同じページによれば、バチカン市国内の在住者は882人(2024年12月)ですが、全員が国籍保有者ではなく、国籍保有者の多くは外交官などとして国外に居住しています。バチカン国籍保有者は618名、国籍を持ちかつ市国内に住む人は246人です。国土も人口も、ふつうの国の数え方が当てはまりません。
そしてバチカンは、世界銀行の面積の統計に入っていません。世界銀行の「Land area (sq. km)」は国連食糧農業機関のFAOSTATを出典としており、収録されているのは262の国と地域です。バチカンはその中にありません。世界銀行のデータだけで一覧を作ると、1位がモナコになります。ネット上の順位が食い違う最大の理由がこれです。
世界銀行の陸地面積で見た「小さい国」上位24
世界銀行の「Land area (sq. km)」(指標コードAG.LND.TOTL.K2)の最新値は2023年のもので、2026年7月13日に更新されています。この系列から、独立国だけを抜き出して小さい順に並べると次のようになります。地域・属領は後述のとおり除いています。
| 順位 | 国名 | 陸地面積 | 順位 | 国名 | 陸地面積 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | モナコ | 2.084 | 13 | アンティグア・バーブーダ | 440 |
| 2 | ナウル | 20 | 14 | パラオ | 460 |
| 3 | ツバル | 30 | 14 | セーシェル | 460 |
| 4 | サンマリノ | 60 | 16 | アンドラ | 470 |
| 5 | リヒテンシュタイン | 160 | 17 | セントルシア | 610 |
| 6 | マーシャル諸島 | 180 | 18 | ミクロネシア連邦 | 700 |
| 7 | セントクリストファー・ネービス | 260 | 19 | シンガポール | 718 |
| 8 | モルディブ | 298 | 20 | トンガ | 720 |
| 9 | マルタ | 320 | 21 | ドミニカ国 | 750 |
| 10 | グレナダ | 340 | 22 | バーレーン | 800 |
| 11 | セントビンセント及びグレナディーン諸島 | 390 | 23 | キリバス | 810 |
| 12 | バルバドス | 430 | 24 | サントメ・プリンシペ | 960 |
この表にバチカンは入りません。繰り返しになりますが、世界銀行の系列に収録がないためです。実際の最小国はバチカンなので、この表は「バチカンを除いた2位以下」と読むのが正確です。
1,000平方キロメートルを超えると、コモロ(1,861)、モーリシャス(1,997)、ルクセンブルク(2,574.46)、サモア(2,780)、カーボベルデ(4,030)、トリニダード・トバゴ(5,130)、ブルネイ(5,270)と続きます。ルクセンブルクは金融の国として名前が出ますが、面積では小さい側から44番目です。
「国」と「地域」を分けないと順位が変わる
世界銀行の表には、独立国ではない地域も並んでいます。これを混ぜたまま小さい順に並べると、上位の顔ぶれが大きく変わります。
| 名称 | 陸地面積(平方キロメートル) | 位置づけ |
|---|---|---|
| ジブラルタル | 10 | 英国の海外領土 |
| マカオ | 33 | 中国の特別行政区 |
| シント・マールテン | 34 | オランダ王国の構成国 |
| サン・マルタン | 50 | フランスの海外共同体 |
| バミューダ | 54 | 英国の海外領土 |
| 英領ヴァージン諸島 | 150 | 英国の海外領土 |
| アルバ | 180 | オランダ王国の構成国 |
| ケイマン諸島 | 240 | 英国の海外領土 |
| 米領ヴァージン諸島 | 350 | 米国の自治領 |
| キュラソー | 444 | オランダ王国の構成国 |
| マン島 | 570 | 英国王室属領 |
| 香港 | 1050 | 中国の特別行政区 |
この一覧には、金融やタックスヘイブンの文脈でよく出る名前が並びます。ジブラルタル、バミューダ、ケイマン諸島、英領ヴァージン諸島、マン島、キュラソー。「小さい国ランキング」に出てくる名前の多くは、実は国ではありません。投資や法人設立の話でこれらの名称を見たときは、国家としての主権があるのか、どこかの国の一部なのかを先に確かめる必要があります。
国の数そのものも、数え方で変わります。世界銀行の面積の系列に値があるのは262の国と地域で、そのうち独立国はおよそ190台です。面積が大きい国ランキングでは223の国と地域を扱いましたが、これも使うデータによって母数が変わります。順位を比べるときは、まず母数を見るのが先です。
同じ国でも出典によって数字が違う
世界銀行と外務省の数字を突き合わせると、同じ国でも値がずれます。どちらかが誤っているのではなく、測り方と出典の年が違うだけです。

| 国名 | 外務省の基礎データ | 世界銀行の陸地面積 | 外務省が添えている比較 |
|---|---|---|---|
| バチカン | 約0.44 | 収録なし | 日本の皇居は約1.15平方キロメートル |
| モナコ | 2.02 | 2.084 | バチカンに次いで世界第2の小国 |
| ナウル | 21.1 | 20 | 東京都品川区とほぼ同じ |
| ツバル | 26 | 30 | 東京都品川区とほぼ同じ |
| リヒテンシュタイン | 160 | 160 | 小豆島にほぼ相当 |
| マーシャル諸島 | 180 | 180 | 霞ケ浦とほぼ同じ大きさ |
| モルディブ | 298 | 298 | 全島総計。東京23区の約半分。1192の島々より成る |
| マルタ | 316 | 320 | 淡路島の半分 |
| セーシェル | 460 | 460 | ほぼ種子島大。115の島から成る |
| アンドラ | 468 | 470 | — |
| パラオ | 488 | 460 | 屋久島とほぼ同じ |
| シンガポール | 約720 | 718 | 東京23区よりやや大きい |
| バーレーン | 786.8 | 800 | 宮城県仙台市の面積とほぼ同じ大きさ |
外務省の数字は、国によって出典が違います。バーレーンのページには「2025年4月、バーレーン政府情報・電子政府庁」と書かれており、グレナダとバルバドスには「(世銀)」と注記があります。つまり外務省の値も、相手国政府の公表値と世界銀行の値が混在しています。1平方キロメートル未満の差を比べる意味はあまりなく、桁として押さえるのが実用的です。
埋め立てで面積が変わる国もあります。シンガポールは外務省が「約720平方キロメートル」と書いており、世界銀行の2023年値は718です。測った年が違えば数字も動きます。
日本の面積は377,973.68か364,569.27か
比較の基準として日本を置くと、同じ問題がはっきり見えます。国土地理院は令和8年7月1日時点の国土の面積を377,973.68平方キロメートルと公表しています。いっぽう世界銀行の陸地面積(2023年)では、日本は364,569.27平方キロメートルです。差は約13,400平方キロメートルあります。

理由は数え方です。国土地理院の国土面積は、河川や湖沼といった内水面を含んだ総面積です。世界銀行の「Land area」は、FAOSTATの定義にもとづいて内水面を除いた陸地面積です。琵琶湖のような大きな湖や主要河川の面積が、片方には入り、片方には入りません。どちらが正しいかではなく、何を数えているかが違います。
国土地理院のページには、国土面積が年ごとに変わることも示されています。令和7年10月1日時点が377,979.67平方キロメートル、令和6年10月1日時点が377,975.64平方キロメートルで、差は4.03平方キロメートルの増加です。主な変動要因として、能登半島地震による海岸隆起、海面の埋立てによる増加、自然海岸の侵食と堆積による増減が挙げられています。小さい国どうしの比較で小数点以下を争うより、こうした変動幅を知っておくほうが役に立ちます。
面積の小ささは、投資先としての不利を意味しない
小さい国の一覧には、国際金融や不動産投資でよく名前の出る国がいくつも入っています。面積の順位をそのまま経済規模の順位と読むと、実態を外します。
小さい国のうち、投資の文脈でよく出る3か国
シンガポール
陸地面積718平方キロメートル。外務省は東京23区よりやや大きいと説明しています。小さい国の上位19番目に入ります。
バーレーン
陸地面積800平方キロメートル。外務省の基礎データは786.8平方キロメートル(2025年4月)で、宮城県仙台市とほぼ同じ大きさとしています。
モナコ
陸地面積2.084平方キロメートル。独立国としては世界で2番目に小さく、人口は38,631人(世界銀行2024年)です。
面積が小さい国では、土地そのものが希少になります。供給が増やせないため、人口と経済が伸びれば価格に跳ね返りやすい構造です。いっぽうで、災害や規制の変更が国全体に一度に効くため、分散が効きにくいという裏返しもあります。国ごとの購入規制については、スイスのように住宅の取得が原則できない国もあり、面積の大小とは別の軸で見る必要があります。
島国の場合は、陸地面積と排他的経済水域の広さが一致しない点も押さえておきます。モルディブは全島総計で298平方キロメートルですが、1192の島々から成ると外務省は書いています。キリバスやマーシャル諸島も同様に、陸地は狭くても海域は広く取っています。
小さい国を調べるときの手順
順位の食い違いに振り回されないために、調べる順番を決めておくと早く済みます。
面積の数字を確かめる順番
- その名前が国かどうかを先に確認する
ジブラルタル、マカオ、ケイマン諸島、マン島などは独立国ではありません。外務省の「国・地域」のページに基礎データがあるかどうかが、ひとつの目安になります。 - 総面積か陸地面積かを見る
国土地理院の国土面積は内水面を含む総面積、世界銀行の「Land area」は内水面を除いた陸地面積です。日本では約13,400平方キロメートルの差になります。 - 出典の年をそろえる
世界銀行の最新値は2023年、外務省の基礎データは国ごとに更新日が違います。年がずれた数字を並べて順位を論じないようにします。 - 桁で押さえる
ナウルの20と21.1、マルタの316と320のように、出典による差は数パーセント出ます。小数点以下を比べる意味は薄く、2平方キロメートル台、20平方キロメートル台といった桁で把握するほうが実務的です。
この手順は、面積に限らず人口や所得の一覧にも当てはまります。裕福な国ランキングでも、国と地域が混在した一覧と、独立国だけの一覧では上位が入れ替わります。
よくある質問
- 世界でいちばん小さい国はどこですか。
- バチカン市国です。外務省の基礎データは面積を約0.44平方キロメートルとし、日本の皇居(約1.15平方キロメートル)より小さいと示しています。
- なぜ1位がモナコになっている一覧があるのですか。
- 世界銀行の面積の統計にバチカンが収録されていないためです。世界銀行のデータだけで並べると、最小はモナコの2.084平方キロメートルになります。
- 日本で2番目に小さい国は何ですか。
- 独立国だけで見ると、バチカンの次がモナコ、その次がナウル(世界銀行20平方キロメートル、外務省21.1平方キロメートル)です。外務省はナウルを東京都品川区とほぼ同じ大きさと説明しています。
- ジブラルタルやマカオは国ですか。
- 国ではありません。ジブラルタルは英国の海外領土、マカオは中国の特別行政区です。世界銀行の表には並びますが、独立国の一覧からは外れます。
- 日本の面積はいくつですか。
- 国土地理院の公表値は令和8年7月1日時点で377,973.68平方キロメートルです。世界銀行の陸地面積(2023年)では364,569.27平方キロメートルで、内水面を含むかどうかの違いがあります。
- 小さい国は投資先として不利ですか。
- 面積の大小だけでは決まりません。シンガポール(718平方キロメートル)やバーレーン(800平方キロメートル)は小さい国の上位に入りますが、国際金融の拠点です。土地が増やせないぶん供給が限られる一方、国全体が同じ規制や災害の影響を受ける点は押さえておく必要があります。
- 数字が出典で違うのはなぜですか。
- 測った年と、総面積か陸地面積かの違いです。外務省の基礎データも、国によって相手国政府の公表値を使う場合と世界銀行の値を使う場合があり、ページに注記されています。
- 面積が大きい国のほうは調べられますか。
- 大きい側は別の記事で扱っています。母数の取り方で順位が変わる点は、小さい側と同じです。
この記事が参照した一次情報
- 世界銀行「Land area (sq. km)」(指標コード AG.LND.TOTL.K2、出典はFAOSTAT、ライセンスはCC BY-4.0)
https://data.worldbank.org/indicator/AG.LND.TOTL.K2 - 外務省「バチカン基礎データ」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/vatican/data.html - 外務省「モナコ基礎データ」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/monaco/data.html - 外務省「ナウル基礎データ」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nauru/data.html - 外務省「ツバル基礎データ」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/tuvalu/data.html - 外務省「モルディブ基礎データ」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/maldives/data.html - 外務省「シンガポール基礎データ」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/singapore/data.html - 外務省「バーレーン基礎データ」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bahrain/data.html - 国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」
https://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO-title.htm
