ランキングの見方と評価軸
永住権の取得は「どの国が簡単か」だけでなく、申請の手間・必要資金・家族帯同・税務環境など、複数の観点を総合的に判断する必要があります。ここでは、海外不動産投資家や日本在住の方が判断しやすいように、実務上の5つの軸で評価を行っています。
日本在住で手続き開始できるか
日本から申請を進められるかどうかは、時間的・コスト的に大きな差が生まれる要素です。
オンライン申請や短期渡航のみで完結する国(例:キプロス、マルタ)は、現地に長期滞在する必要がなく、投資家にとって効率的です。
一方で、カナダやオーストラリアのように一定期間の現地居住が前提となる国は、ライフプラン全体の設計が欠かせません。
最低投資額・必要資産
永住権取得を目的とする投資型プログラムでは、不動産購入や基金拠出が求められます。
金額は国により幅があり、たとえばギリシャは約25万ユーロから、不動産市場の成長が進む地域では50万ユーロ以上が基準です。
また、マルタのように「寄付+賃貸契約」のハイブリッド型もあり、投資回収のしやすさや出口戦略も重要な比較ポイントです。
取得難易度と審査条件
申請者の年齢・健康・語学・犯罪歴・経済的自立など、国ごとに審査基準があります。
投資額を満たせばスムーズな国(例:ドバイ、キプロス)と、ポイント制や職歴審査を伴う国(例:カナダ、オーストラリア)では、手続きの性質が異なります。
また、家族帯同の可否や人数制限の有無も、移住後の生活を左右します。
維持条件(滞在義務・更新)
取得後も、一定期間の現地滞在や定期的な訪問が求められる場合があります。
たとえばポルトガルのゴールデンビザでは、年間わずかな滞在日数で更新が可能ですが、オーストラリアやニュージーランドは実居住を重視します。
この違いが、長期運用型の不動産投資やセカンドハウス利用との相性を左右します。
税制・生活メリット
投資移民の目的の一つは、税制面の最適化です。
UAEのように所得税が非課税の国は、資産運用との親和性が高く、ポルトガルやマルタは非永住者向けの優遇制度があります。
加えて、教育・医療制度の水準、国際便の利便性、治安や言語環境など、生活インフラ面も考慮に入れる必要があります。

日本在住から申請しやすい国トップ5
海外不動産を活用して永住権を取得する場合、日本在住のまま準備や申請を進められる国は非常に有利です。ここでは、現地滞在を最小限に抑えつつ永住・長期居住権を得やすい5カ国を厳選しました。いずれも手続きの透明性が高く、投資額や要件が明確な制度設計になっています。
キプロス(Cyprus)
EU加盟国の中でも、恒久居住(Permanent Residency)を得やすい国の一つです。
30万ユーロ以上の不動産購入が条件で、物件の所有を維持すれば永住資格を保持できます。
申請は日本からでも弁護士経由で進めることができ、現地訪問は原則1回で完了します。
家族帯同の範囲が広く、配偶者や両親も同時に申請できる点が魅力です。
また、キプロスは非ドミサイル居住者制度を採用しており、海外所得に対する課税を回避しやすい点も投資家から支持されています。
アラブ首長国連邦UAE(ドバイ)
不動産所有を基盤に「長期レジデンスビザ」が取得できる制度を整えています。
100万ディルハム(約4,000万円)以上の不動産を保有すれば、5年または10年の長期ビザを申請可能です。
登記証明書(Title Deed)を取得後にオンライン申請が可能で、日本から事前手続きを進められます。
税制面では所得税・資産税がなく、法人設立との組み合わせで資産防衛にも有効です。
ドバイの不動産市場は流動性が高く、売却時の出口戦略も立てやすいのが特徴です。
マルタ(Malta)
マルタ常居プログラム(MPRP)は、欧州圏でも柔軟な永住権制度です。
投資条件は「政府拠出金」「不動産の賃貸または購入」「行政手数料」で構成され、約10万ユーロ前後から設計可能です。
日本にいながら申請書類の準備や弁護士選定を進められ、現地でのバイオメトリクス登録を経てカード発行となります。
EU圏への自由な移動が可能で、家族帯同・医療アクセスの両立がしやすいことから、長期的な生活拠点としても人気です。
ギリシャ(Greece)
25万ユーロ以上の不動産購入で「ゴールデンビザ」が発行される制度を採用しています。
地域によって必要投資額が異なり、首都圏や観光地では50万ユーロが目安です。
家族全員を同時に申請でき、永住ビザの更新は5年ごとに物件所有を維持していれば自動延長されます。
日本からの申請サポート体制も整っており、現地渡航は物件確認と手続き1回で完結可能です。
欧州経済圏へのアクセスを確保したい投資家に向いています。
ポルトガル(Portugal)
欧州内で人気の「ゴールデンビザ制度」を持ち、国外からも申請手続きを進めやすい国です。
以前は不動産投資が中心でしたが、現在は基金投資や企業出資などの選択肢も整備されています。
居住要件は年間わずか7日で、実際の居住負担が少ない点が大きな魅力です。
将来的に市民権取得を目指すルートもあり、長期的な資産分散・相続設計にも適しています。
法制度の安定性と英語対応の高さから、欧州での生活拠点としても注目度が高い国です。

現地滞在・実居住が求められやすい国トップ5
永住権を取得する際、現地での生活実績や滞在日数が重視される国もあります。こうした国では「不動産を買うだけ」では不十分で、実際に居住していることが前提とされるケースが多く見られます。現地生活を通じて制度の恩恵を受けやすい、代表的な5カ国を紹介します。
カナダ(Canada)
世界的に人気の高い移民先で、永住権(PR)の取得は明確なポイント制で管理されています。
Express Entry制度では、学歴・職歴・語学力・年齢などのスコアを基に選抜されます。
不動産購入そのものは永住権の条件ではないものの、生活基盤の証明としてプラスに働くことがあります。
永住申請後も、5年間のうち2年以上の現地滞在が義務づけられており、実際にカナダ社会に溶け込む姿勢が求められます。
教育・医療水準の高さや治安の良さも、家族帯同での移住先として魅力です。
オーストラリア(Australia)
永住権は技能移民や投資家ビザを通じて取得するのが一般的です。
投資家ストリームでは、一定の投資額と現地滞在日数の両方が条件となり、居住実績がないと更新や永住への切り替えが難しくなります。
実際に現地で事業活動や投資運用を行っていることを証明する必要があり、短期滞在型よりも「生活の拠点」を築く意識が求められます。
気候・医療・教育などの生活環境が整っており、長期移住を前提とした投資家に人気です。
ニュージーランド(New Zealand)
技能ビザ・投資家ビザいずれのルートでも、継続的な滞在が前提となっています。
投資家カテゴリー1では約1,000万NZドル以上、カテゴリー2でも約300万NZドル前後の投資が必要で、さらに数年間の滞在実績が求められます。
現地での事業活動や雇用創出が審査に影響し、不動産購入は投資対象として認められない場合もあります。
生活環境のクオリティが高く、教育・福祉・自然環境を重視する層に向いています。
メキシコ(Mexico)
所得証明を基に「一時居住者ビザ」を取得し、4年間の更新を経て永住権を申請できる制度です。
不動産所有は居住の裏付けとして活用できますが、主な条件は「安定した収入」または「十分な資産額」の証明です。
在外公館での事前審査後に現地で手続きを完了する流れが一般的で、永住化には実際の居住が重要視されます。
生活コストが比較的低く、観光地を中心に外国人の長期滞在者が増加しています。
トルコ(Türkiye)
25万ドル以上の不動産購入で居住許可を得られますが、永住権を維持するには住所登録や定期的な現地滞在が必要です。
不動産投資による居住許可は比較的容易でも、永住へのステップには「実態としての生活」が重視されます。
トルコは欧州・中東の中間に位置し、ビジネスや資産防衛の拠点としても注目されています。
ただし、制度改定の頻度が高いため、最新の条件確認が欠かせません。

アジア編。投資家が検討したい国トップ5(制度と実務のしやすさで選定)
アジアは日本からの距離が近く、生活コストや気候面の相性からも永住や長期滞在に適した地域です。投資家にとっては、現地不動産を活用しやすく、滞在制度が比較的柔軟に設計されている点が魅力です。ここでは、実務面で手続きが進めやすく、長期滞在制度が安定している5カ国を紹介します。
フィリピン(Philippines)
フィリピンのSRRV(Special Resident Retiree’s Visa)は、アジアで最も柔軟な長期滞在制度の一つです。
35歳以上から申請が可能で、預託金と不動産投資を組み合わせる形で設計できます。
預託額は年齢や目的によって異なり、5万ドルから1万ドル台まで幅があります。
一度取得すれば無期限に更新が可能で、家族帯同にも対応。英語が通じる環境と低コストな生活費から、資産リタイア層にも人気があります。
マニラやセブでは外国人向けの不動産供給が豊富で、賃貸・運用の両立も実務的に進めやすい点が特徴です。
マレーシア(Malaysia)
マレーシアのMM2H(Malaysia My Second Home)は、政府が推進する代表的な長期滞在プログラムです。
2024年に制度が再編され、所得・預金・資産証明などが明確化されました。
年齢区分や滞在目的に応じた複数カテゴリーが設けられ、より透明性のある審査基準になっています。
不動産購入は永住条件ではありませんが、居住証明や滞在更新の際にプラスとなるケースが多く、クアラルンプールやペナンなどで外国人所有が可能な物件も増えています。
生活コスト・医療水準・教育環境が高いバランスで整い、長期的な生活拠点として実用性が高い国です。
タイ(Thailand)
タイはLTR(Long-Term Resident Visa)やエリートビザ(Thailand Elite)など、目的別の長期滞在制度が整備されています。
特にLTRは、富裕層・退職者・リモートワーカーなどに区分され、年収や資産条件を満たせば10年の長期滞在が可能です。
エリートビザでは5年〜20年の滞在が可能で、空港VIPサービスや行政サポートなどが付帯します。
不動産投資は永住権には直結しないものの、コンドミニアム保有や長期賃貸契約で生活基盤を作りやすく、プーケット・バンコク・チェンマイなどエリアごとの選択肢が広がっています。
インドネシア(Indonesia)
近年新設された「セカンドホームビザ(Second Home Visa)」が注目されています。
10億ルピア(約1,000万円)以上の資産証明があれば、5年または10年の滞在許可を得ることができます。
この資産は銀行預金でも不動産でも認められるため、柔軟な設計が可能です。
永住権というより「長期滞在ビザ」に近い制度ですが、実務上は半永住的に生活できる安定性があります。
外国人向けの不動産購入が限定的なため、法人設立を介した所有やリース契約を活用するケースが多く見られます。
アラブ首長国連邦UAE(ドバイ)
中東に位置するものの、ビジネス・金融・生活圏としてアジア圏投資家との親和性が非常に高い地域です。
不動産投資による長期ビザ制度が整っており、100万ディルハム(約4,000万円)以上の不動産所有で5年または10年ビザが取得可能です。
所得税・資産税がなく、法人設立や海外所得の非課税制度を利用することで、税制面の最適化が図れます。
日本との直行便が多く、現地不動産市場は透明度が高いため、アジア圏の投資家が実務的に動きやすい国として定着しています。

キプロスの要点。EU圏拠点としての恒久居住
キプロスは、ヨーロッパの中でも永住権取得が比較的スムーズな国として知られています。EU加盟国でありながら、手続きや要件が現実的で、不動産投資を軸に恒久的な居住権を得られる制度を整えています。地中海気候で治安も良く、税制上のメリットも多いため、投資家の「第二の生活拠点」として注目されています。
明確で安定した不動産投資要件
キプロスの永住権プログラムは、不動産投資を条件とした制度で、投資額は30万ユーロ以上が基準です。
対象となるのは政府認定の新築物件であり、購入契約書と送金証明を提出することで申請が可能です。
不動産の所有を維持し続ける限り、永住資格は無期限で保持できるため、長期的な資産運用との親和性が高いのが特徴です。
また、購入する物件が家族の居住地として登録されるため、投資と実生活を両立しやすい点も評価されています。
家族帯同と手続きの柔軟性
配偶者および子ども(25歳未満の未婚者)だけでなく、両親も同時に永住権申請が可能です。
家族全員の居住権を一括で取得できる制度はEU内でも珍しく、世代を超えた資産移転や家族単位の生活設計に適しています。
現地訪問は申請時に1回のみで済む場合が多く、日本から弁護士経由で書類準備を進められるなど、実務のしやすさも魅力です。
英語が公用語レベルで通じるため、手続きや生活のハードルも低い国です。
税制メリットと資産防衛の優位性
キプロスは「非ドミサイル居住者制度(Non-Domicile Status)」を導入しており、国外所得に対して所得税が課されません。
配当や利子収入も免税となり、資産運用における税負担を最小化できます。
さらに、EU圏でありながら法人税は12.5%と低水準で、国際ビジネス拠点としても機能します。
不動産購入を通じた投資移民にとどまらず、節税・資産保全の拠点としても活用できる国です。
物件選定と出口戦略
永住権対象となるのは「新築物件」に限定されており、再販物件や中古物件は対象外です。
このため、デベロッパーの信頼性や完成時期、立地の将来性を慎重に見極める必要があります。
主要都市のニコシアやリマソールでは商業開発が進んでおり、再販・賃貸の両面で出口戦略を立てやすいエリアです。
リゾートエリアのパフォスなどは永住目的の欧州居住者が多く、生活インフラも整備されています。

ドバイの要点。不動産×長期ビザの実務が明快
ドバイは不動産投資によって長期滞在資格を得やすい国として、世界中の投資家から注目されています。所得税や相続税が存在せず、手続きの透明性やスピード感でも他国を上回ります。欧州やアジアの永住権制度と比べても、投資額の明確さと手続き効率の高さが特徴です。
不動産所有で取得できる長期ビザ
ドバイでは、100万ディルハム(約4,000万円)以上の不動産を所有することで5年または10年のレジデンスビザを取得できます。
購入後に「タイトル・ディード(Title Deed)」を発行してもらい、その書類をもとにビザ申請を行う流れです。
物件が完工済み・自己名義登記済みであることが条件となるため、建設中の未完成物件(オフプラン)は対象外です。
この制度は個人投資家に開かれており、法人設立を介さずに申請できる点が大きな利点です。
手続きフローと実務のしやすさ
申請の流れはシンプルで、物件購入後に土地局(DLD)で登記→ビザ申請→健康診断・バイオメトリクス登録という3ステップで完了します。
エージェントやデベロッパーが申請代行を行うことも多く、日本在住のままオンラインで書類手配を進めることが可能です。
審査期間はおおむね2〜4週間と短く、家族帯同も容易です。配偶者・子ども・親などが同時に居住許可を得られるため、世帯単位での移住・資産設計がしやすい環境が整っています。
税制・資産保全・居住のメリット
ドバイは完全な非課税国家であり、所得税・相続税・キャピタルゲイン税が一切かかりません。
外国人でもフリーホールドエリア内で不動産の所有権を100%取得でき、登記制度も安定しています。
また、国外居住者扱いを維持したままビザを保持できるため、日本の課税との二重負担を避けやすい点も魅力です。
近年は金融・IT・医療などの国際企業が進出しており、投資用物件としての賃貸需要も高水準を維持しています。
投資物件選びのポイント
対象となる不動産は「フリーホールドエリア」に限定されており、信頼できるデベロッパー選びが重要です。
立地はマリーナ、ダウンタウン、ビジネスベイなど、流動性の高いエリアが中心です。
購入時には管理費・登記費用・サービスチャージを加味し、実質利回りを把握しておく必要があります。
賃貸運用や将来的な売却を見据えるなら、完成済み物件で実績のあるプロジェクトを選ぶのが安全です。

ドバイ不動産関連情報
ドバイ不動産基本情報
ドバイ不動産データ
ドバイ不動産物件最新
制度変更リスクとデューディリジェンスのチェックリスト
永住権や長期居住権を目的とした不動産投資は、制度改定や税制変更の影響を強く受ける分野です。特に投資移民制度を持つ国では、経済情勢や政権交代によって投資額や滞在条件が見直されることがあります。長期的な安定を得るためには、投資前に制度のリスクと信頼性を徹底的に確認するデューディリジェンスが不可欠です。
制度改定の頻度と方向性をモニタリングする
ゴールデンビザや投資移民制度は、世界的に「資金流入策」として設計されていますが、人気が高まるほど規制が強化される傾向があります。
たとえば、ポルトガルやギリシャでは投資額が段階的に引き上げられ、対象エリアの制限も導入されました。
このため、申請時点の条件だけでなく、更新時に条件が変更されるリスクを把握しておくことが重要です。
過去3〜5年の制度改定履歴を調べることで、国の方針の「安定度」を見極めやすくなります。
居住権・永住権・市民権の違いを正確に理解する
「居住権」は滞在や就労を認める一方で、更新が必要な一時的資格です。
「永住権」は原則として無期限に居住できる資格ですが、一定期間国外に滞在しすぎると失効するケースがあります。
「市民権」は選挙権やパスポート取得を伴うもので、国家の一員としての地位を持ちます。
制度によっては、永住権と市民権の境界があいまいな場合もあるため、どの段階までを目指すかを明確にしておくことがリスク回避の第一歩です。
更新条件・滞在義務・失効リスクの確認
永住権や長期ビザの維持には、「現地への一定期間の訪問」や「不動産の継続保有」などが条件として設定されています。
たとえば、ギリシャでは5年ごとの更新時に不動産を所有していることが必要で、ポルトガルのゴールデンビザでは年間7日以上の滞在が求められます。
これらを怠ると、投資を継続していても権利を失う可能性があるため、実際のライフスタイルに合った国を選ぶことが重要です。
現地法務・税務のデューディリジェンス
不動産取得と居住資格の関連は国によって異なり、登記・所有形態・名義制限などの法的条件も複雑です。
現地の弁護士・会計士を通じて、以下の点を事前に確認しておくと安全です。
- 不動産の名義制限(外国人所有の上限・特定エリアの規制)
- 投資対象資産の適格性(新築限定、商業不動産不可など)
- 二重課税防止条約の有無と適用範囲
- 現地居住判定や源泉税、固定資産税の仕組み
- 売却時のキャピタルゲイン課税や国外送金ルール
これらを日本側の税務(所得税・相続税)と合わせて設計しなければ、二重課税や課税逃れ認定のリスクが発生します。
投資判断を支えるチェックリスト
- 最新の制度改定履歴と、投資額・滞在条件の変化を確認する
- 永住権の種類(家族帯同可否・更新要件・居住義務)を明確にする
- 現地法務・税務の専門家を通じてデューディリジェンスを行う
- 為替・物価・市場リスクを踏まえて出口戦略を立てる
- 日本側の税務影響(二重課税・国外資産報告)を試算しておく

使い分けガイド。最短で動くか、長期で腰を据えるか
永住権や長期ビザの取得には、「スピード重視で動く投資家」と「長期的に生活拠点を築く投資家」とで、最適な国や制度が大きく異なります。ここでは目的別に、制度の方向性と実務上の使い分けを整理します。
日本在住のまま進めたい場合は“スピード重視型”
日本を生活拠点にしながら、短期渡航やオンライン手続きのみで完結したい投資家には、国外から申請可能な永住制度が適しています。
代表的なのはキプロス、ドバイ、マルタ、ポルトガルなどで、不動産購入や基金投資を条件とした永住・長期滞在権が得られます。
これらの国は、投資証明と身元審査を経て手続きが進むため、現地滞在の義務が緩く、書類と資金の準備が整えば最短数週間で取得可能です。
また、キプロスやドバイのように税制が非居住型に対応している国では、日本の納税義務を維持しながら資産の一部を海外にシフトでき、資産防衛や相続設計の面でも実務的なメリットがあります。
投資目的の不動産を保有しつつ、将来の移住オプションを確保する「準備型投資」として活用しやすいタイプです。
現地に腰を据えて生活拠点を築くなら“実居住型”
教育、医療、ビジネスなどを現地で展開したい場合は、居住実績を重視する制度が向いています。
オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、メキシコなどは、一定年数の滞在や現地納税を前提とするため、永住取得までの期間は長くなりますが、その分「市民権」に近い権利を得やすい特徴があります。
現地経済に貢献する実体のある生活を前提とするため、現地法人の設立や長期就労を伴うケースも少なくありません。
このタイプは、永住後の社会的信用や生活基盤が安定しやすく、教育移住やビジネス拠点の移転を視野に入れた家族層にも適しています。
不動産投資を単なる“条件クリア”ではなく、“生活と連動する資産形成”として位置づけられる点が魅力です。
アジア圏で生活圏を築くなら“利便性重視型”
日本との行き来を重視しつつ、コストを抑えた長期滞在を希望する場合は、アジア圏の長期居住プログラムが現実的です。
フィリピン(SRRV)、マレーシア(MM2H)、タイ(LTR・エリートビザ)などは、取得要件が比較的柔軟で、預託金や賃貸契約でも長期滞在資格を得られます。
物価が安く、医療・教育水準が安定しているため、老後移住やセカンドライフ拠点としても人気が高い地域です。
アジア圏は直行便や通信インフラも整っており、リモートワークやデュアルライフにも対応しやすい環境です。
初期コストを抑えながら、生活ベースを海外に広げたい層には最もバランスの良い選択肢といえます。

