「海外不動産を購入した場合、損益通算はできますか?」
「海外不動産を購入した場合、損益通算による利益の圧縮、節税はできますか?」
一番、多くの投資家が気になるのがこの質問です。今回は「海外不動産の損益通算」について解説します。
そもそも、海外不動産の損益通算とは?
多くの投資家、経営者が「海外不動産投資による税金対策(節税)」を盛んに行ってきました。
その背景にあるのは「損益通算による節税スキーム」です。
米国を代表する海外不動産は、日本の不動産と比較して、実質的な耐用年数が長期(100年)になるため、価値が下がりにくい
という特徴がありました。
そのため、日本の耐用年数で「減価償却費」の計算をすると、減価償却費を実際の価値よりも早く消化できるため、「赤字を作りやすく、その分、本業などで得た利益を圧縮し節税につなげられる」というメリットがあったのです。
当時は、簡便法で減価償却費を計算できたため、中古不動産を購入すれば、数年は大きな赤字を計上できて、売却時の譲渡税も、大きな金額にはならないメリットがありました。
簡便法とは
中古で取得した資産が、取得した時点で法定耐用年数のうち既に何年経過しているかにより、それぞれ次の算式により耐用年数を算出する方法のこと
築25年の木造の場合
- 22年 × 0.2 = 4年(1年未満切捨):4年で償却
となります。
税制改正により、上記の節税スキームが封じられた
国税庁も、上記の節税スキームを放置しておらず
国外中古建物の不動産所得の損益通算等の特例
令和3年以後の各年において、国外中古建物の不動産所得を有する場合において、その年分の不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合、そのうち、耐用年数を「簡便法」により計算した国外中古建物の減価償却費に相当する部分の金額については、生じなかったものとみなされます。
これにより、その損失の金額については、国内にある不動産から生じる不動産所得との内部通算(いわゆる所得内通算)および不動産所得以外の所得との損益通算はできません。
出典:国税庁
つまり、
国外中古建物の減価償却費に相当する部分の金額については、生じなかったもの
= 海外不動産の減価償却費(簡便法)は赤字としてみなさない
= 利益と損益通算して、利益の圧縮はできない
としたのです。
海外不動産の損益通算でのよくある質問
Q.簡便法じゃなければいいの?
はい。その通りです。
「見積法」は、実際の使用可能期間を算定して、見積もり減価償却費の計算方法です。
たしかに「見積法」であれば、損益通算は認められます。
しかし、とで、節税スキームとしては、使えないのです。実際の使用期間と同じ計算となってしまうため、差が生まれず、大きな赤字は作れないこ後から税務署に否認されないように根拠ある年数でなければいけません。
Q.法人はいいの?
今回の税制改正の対象は「個人」です。
- 個人が海外不動産を持って、簡便法による減価償却費での損益通算 → NG
- 法人が海外不動産を持って、簡便法による減価償却費での損益通算 → OK
です。
しかしながら、法人の場合は、累進課税ではないため、法人で減価償却費の赤字を計上しても、大きな節税メリットが生まれないのが現状です。
また、譲渡所得の税率も低くないため、個人所有の方が有利になることも考えられます。あまり、節税スキームとしては、効果を上げなくなってしまうのです。(見積法により耐用年数を算定した場合でも、その使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がない場合は、本改正の適用対象となる。)
まとめ
海外不動産の損益通算は
- 個人・簡便法 → NG(赤字として認められない)
- 個人・見積法 → OK(節税効果がほとんどない)
- 法人・簡便法 → OK(節税効果がほとんどない)
- 法人・見積法 → OK(節税効果がほとんどない)
というのが現状です。
節税、税金対策狙いで海外不動産を保有するのは難しいのが現状です。
現在の海外不動産投資に関しては
- 大きなキャピタルゲイン狙い
- 外貨・外国資産の保有による資産の分散
- 移住、将来の移住
- 移住による税金対策
が主になっています。