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サウジアラビアの不動産当局(REGA:Real Estate General Authority)が、外国人投資家向けの国家デジタル不動産プラットフォーム 「Saudi Properties」 を公開しました。目的は、2026年1月に施行される「非サウジ(外国人)不動産所有法」 のもとで、外国人が物件を探し、適格性を確認し、申請し、当局承認・登記まで進める流れを一つの窓口に集約することです。
発表のタイムラインとしては、REGAが 2025年12月5日 に「Saudi Properties」を国家プラットフォームとして発表し、法施行(報道では2026年1月中旬)に備える位置づけを明確にしています。
一方で、法の「施行日」については、媒体により 2026年1月1日 とする報道もあれば、1月中旬、1月21日 とする記載もあり、運用開始の“厳密な日付”は確認が必要です(いずれも「2026年1月施行」は共通)。
Saudi Properties で想定されている主な機能は次の通りです。
- 物件の閲覧:外国人が購入可能な物件・プロジェクトを検索
- 適格性チェック:居住者/非居住者、対象エリア、保有制限などの条件確認
- 申請・承認プロセス:申請、当局の審査・承認
- 登記(レジストリ)連携:所有権登録までの手続きのデジタル化
- デベロッパーとの連絡:開発会社とのコミュニケーション導線
背景
今回の動きは、サウジの国家戦略 「Vision 2030」(脱石油依存・投資誘致・都市開発)に沿った不動産市場の開放策の一環です。従来は外国人の不動産所有に制約が強く、手続きも断片的でしたが、法整備+デジタル窓口の一本化で海外マネーを呼び込みやすくする狙いがあります。
また、REGAのQ&Aでは、旧法(2000年)の存在に触れつつ、2025年7月14日(勅令M/14)で更新法を承認したと説明されています。
今回の法改正で「何が変わるのか」(投資家目線の要点)
REGAの公式Q&Aが示す大枠は「誰が」「どこで」「どんな権利を」持てるのかを、政令・実施規則・地理的範囲(ゾーン)文書で明確化する設計です。
- 対象になり得る主体(例)
非サウジ個人(居住/非居住)、非サウジ企業、非営利、国際機関、外国株主を含むサウジ企業、SPV/ファンド等が列挙されています。 - 対象エリア(ゾーン指定)
「外国人が取得できる地理的範囲(Geographic Scope)」は、当局が公表する文書で地図・場所・保有上限・権利内容などが示される想定です。都市名としては リヤド、ジッダ、マッカ、マディーナ などが例示されています。 ただし“どの地区がOKか”は、原則この文書待ちになります。 - 聖地エリアの扱い(重要)
マッカ(メッカ)とマディーナについて、REGAのQ&Aでは 「ムスリム個人のみ」 など制限がある旨が明記されています。 さらに別報道では「居住する非サウジ個人が、指定ゾーン外でも自用の住宅1件を保有できる」一方で、マッカ・マディーナは例外とされています。
用語解説(難しいところだけ、投資家向けに噛み砕き)
- REGA:サウジの不動産規制・制度設計を担う当局(今回のプラットフォームの所管)。
- Non-Saudi Property Ownership Law(非サウジ所有法):外国人(非サウジ)による不動産所有を、ゾーン指定や条件付きで制度化する枠組み。
- Geographic Scope(地理的範囲/指定ゾーン):外国人が買える場所を地図付きで指定する“購入可能エリア一覧”。ここが出るまで、具体的な投資対象の当たり付けが難しい点がポイントです。
- In-kind registration(物件単位の登記):登記簿を“人”ではなく“物件(ユニット)”単位で管理し、所有権や権利関係を明確化する仕組み。REGAは保護策として強調しています。
- Usufruct(用益権):ざっくり言うと「所有はしないが、使って利益を得る権利(一定期間の利用権など)」。日本の借地権・賃借と完全一致ではないので、契約形態の確認が必須です。
コスト・ペナルティの論点
制度は「参入しやすくする」一方で、ルール違反には強い制裁も用意されています。
- 手数料・税の考え方
REGAのQ&Aでは、非サウジの不動産処分に関する費用として 合計10%(5%の不動産処分税+追加最大5%) という説明があります。 一方で、別報道では「取引額の最大5%のフィー」などの書き方もあり、最終的には実施規則・具体運用の確認が必要です。 - 違反時のペナルティ
虚偽情報などを含む違反には、最大 1,000万サウジリヤル(SAR) 規模の罰金や、ケースによっては物件の競売などが示されています。
ニュースの見解
日本人の海外不動産投資家にとって、今回の「Saudi Properties」開始は、サウジ投資のハードルを下げる“入口整備”としてインパクトがあります。手続きが分散していた市場で、検索→適格性→申請→承認→登記を一本化する発想は、海外投資で最も事故が起きやすい「情報の非対称」「手続きのブラックボックス」を減らす方向だからです。
ただし、投資判断でいちばん重要なのはここからです。
- (1) 指定ゾーンの公表が“実質スタート地点”
どのエリアで外国人が買えるか(地図・保有上限)が確定して初めて、賃料水準・出口戦略・価格歪みを具体化できます。現段階では「リヤド・ジッダ等で特定エリア」といった大枠までなので、ゾーン文書の更新を待って投資対象を絞るのが安全です。 - (2) 聖地(マッカ・マディーナ)は制限が明確
日本人投資家(非ムスリム想定)の場合、マッカ・マディーナは制度上の制限に当たりやすい領域です。ここは「買える前提」で検討しない方が事故を避けられます。 - (3) コストは“10%前後”を仮置きして採算感度を見る
税・フィーの表現に差があるため、現時点では保守的に「売買の摩擦コストが大きめになり得る」前提でIRR感度を見ておくのが無難です(最終的には実施規則・取引類型ごとの確認が必須)。 - (4) 期待値:リヤド/ジッダ中心に“海外マネー流入プレミアム”が出る可能性
入口が整備され、制度が回り始めると、国際投資家の参加による価格形成の変化(需給のタイト化、優良案件の競争)も想定されます。短期の値上がり期待だけで飛びつくより、「買える場所」「権利形態」「登記」「出口時コスト」 をSaudi PropertiesとREGA情報で固めた上で、都市別・プロジェクト別に選別するのが、2026年のサウジ不動産の基本戦略になるはずです。
