「サウジアラビア不動産って買えるですか?」
「サウジアラビア不動産投資ってどうなんですか?」

サウジアラビア不動産の購入、サウジアラビア不動産投資を検討している方もいるかと思います。今回は、サウジアラビア不動産投資、サウジアラビア不動産の買い方・メリットデメリット・リスク・利回り・税金まで、徹底的に検証したいと思います。

目次

そもそも、サウジアラビア不動産は、日本在住の日本人が買えるの?

購入できます。

日本在住の日本人でも、サウジアラビアの不動産を取得できる可能性があります。

2026年1月22日に施行された「非サウジ人不動産所有法」は、サウジアラビアに居住する外国人だけでなく、国外に居住する外国人個人も対象にしています。そのため、日本在住者が不動産を取得するために、必ずサウジアラビアの居住資格を取得したり、現地法人を設立したりしなければならないわけではありません。

ただし、新制度が認めているのは「非居住者も取得申請の対象になれる」という点です。日本人がサウジアラビア国内の不動産を、地域や物件を問わず自由に購入できるという意味ではありません。

実際に購入できる物件は「地理的範囲」と「権利の種類」で決まる

外国人が取得できる地域は、サウジアラビア閣僚評議会が定める「地理的範囲(Geographical Scopes)」によって決まります。

地理的範囲ごとに、主に次の条件が設定されます。

  • 外国人が取得できる地域やプロジェクト
  • 取得できる権利の種類
  • 地域内における外国人保有比率の上限
  • 用益権を取得できる最長期間
  • 物件の用途や取得者に関する追加条件

取得できる権利が、土地・建物を完全に保有する所有権とは限らない点にも注意が必要です。地域やプロジェクトによっては、一定期間その不動産を使用・収益できる用益権などが認められる場合があります。

したがって、販売資料に「外国人購入可能」「フリーホールド」と記載されているだけでは判断できません。対象となる区画が地理的範囲内にあるか、取得する権利が所有権なのか用益権なのか、外国人保有比率の上限に達していないかを、物件単位で確認する必要があります。

2026年6月15日時点では、サウジアラビア不動産総局の一般向け案内ページは、実施規則と地理的範囲文書の公表時期を「2026年第1四半期」と表示しています。一方、一般公開ページ上では、対象地域の詳細地図、外国人保有率の上限、地域別の権利条件を一覧で確認できる状態にはなっていません。

仲介会社やディベロッパーの説明だけで購入可否を判断せず、公式ポータル「Saudi Properties」での判定や、サウジアラビア不動産総局が公表する最新の地理的範囲文書を確認する必要があります。

日本在住者が購入申請するまでの流れ

サウジアラビア国外に住む外国人の購入申請は、公式ポータル「Saudi Properties」を通じて行います。

日本在住者の場合は、原則として次の流れになります。

  1. サウジアラビアの在外公館などを通じてデジタルIDの発行手続きを行う
  2. デジタルIDを利用して「Saudi Properties」にアクセスする
  3. 購入者情報、取得目的、対象物件などを登録する
  4. 地理的範囲や取得条件について審査を受ける
  5. 売買手続きと不動産登記を行う

売買契約書への署名や代金の支払いだけで、法的な不動産取得が完了するわけではありません。新法では、所有権や用益権などの権利は、不動産登記簿に登録されることで有効になると定められています。

予約金や頭金を支払う前に、外国人として取得可能な物件であることと、最終的に登記できる権利であることを確認しなければなりません。

サウジ居住者には自己居住用物件の例外がある

サウジアラビアに適法に居住している外国人個人には、地理的範囲の外でも、自己居住用として1つの不動産を取得できる例外があります。

ただし、この例外には次の制限があります。

  • 対象はサウジアラビアに適法に居住している個人
  • 自分が住むための不動産に限られる
  • 投資用、賃貸用、転売用の取得には利用できない
  • メッカとメディナは対象外

日本に住み続けたまま賃貸運用や値上がり益を目的として購入する場合、この自己居住用の例外は通常利用できません。日本在住の投資家は、地理的範囲内で外国人投資家に認められた物件を選ぶことが基本になります。

メッカ・メディナは個人の宗教によって扱いが異なる

メッカとメディナでは、外国人個人による不動産取得に特別な制限があります。

外国人が個人名義で不動産を取得できるのは、原則としてイスラム教徒に限られます。そのため、非イスラム教徒の日本人個人が、メッカまたはメディナの不動産を直接所有することはできません。

一方、外国資本が入ったサウジアラビア法人、サウジ証券取引所の上場会社、認可された投資ファンドなどには、個人とは異なる規定が設けられています。「外国人や外国資本はすべて取得禁止」という制度ではありませんが、個人投資家が法人向けの規定をそのまま利用できるわけではありません。

メッカ・メディナの案件では、購入者の宗教、取得名義、法人区分、対象地域、取得する権利を通常の都市以上に厳密に確認する必要があります。

契約前に確認すべき6項目

日本在住の日本人がサウジアラビア不動産を購入する場合は、契約前に最低限、次の6項目を確認します。

  1. 対象物件の土地・区画が、外国人取得可能な地理的範囲に含まれているか
  2. 取得する権利が完全な所有権か、期限付きの用益権か
  3. 用益権の場合、残存期間と更新・売却条件がどうなっているか
  4. 地域やプロジェクトの外国人保有比率が上限に達していないか
  5. 不動産登記簿への登録が可能で、登記上の権利者が確認できるか
  6. 「Saudi Properties」で購入者と物件の双方が取得条件を満たすか

サウジアラビア不動産の購入可否は、「外国人に市場が開放されたか」ではなく、「この購入者が、この物件について、この権利を取得し、正式に登記できるか」で判断する必要があります。

サウジアラビアという国とは?

概要

投資先サウジアラビア不動産
国名サウジアラビア王国
面積(k㎡)2,149,690k㎡
日本との比較5.69倍
人口34,814,000人
日本との比較0.28倍
首都リヤド
民族アラブ人
言語アラビア語(公用語)
宗教イスラム教
通貨モロッコ・ディルハム(MAD)
政策君主制
主要産業石油、LPG、石油化学
日本からの移動時間19時間
為替固定相場制(ドルペッグ制)
格付けS&P A+
フィッチ  AA
ムーディーズ A1

人口増加を「賃貸需要」と直結させてはいけない理由

サウジアラビアの人口は、2024年央時点で約3,530万人です。このうちサウジ国籍者は約1,960万人、非サウジ国籍者は約1,570万人で、全人口の44.4%を外国人居住者が占めています。

2023年から2024年に増えた約160万人のうち、75.6%は非サウジ国籍者でした。さらに、非サウジ国籍者の89.9%は15~64歳の生産年齢人口です。

この人口構成から読み取れるのは、人口増加の相当部分が、出生や恒久的な世帯形成だけでなく、雇用、企業進出、建設プロジェクト、外国人労働者の流入によって生まれていることです。

外国人就業者の増加は、賃貸住宅、家具付き住宅、サービスアパートメント、企業契約住宅の需要を押し上げます。一方、勤務先の移転、プロジェクト終了、雇用制度やビザ制度の変更によって、特定地域の需要が短期間で移動する可能性もあります。

物件を評価するときは、都市全体の人口増加率ではなく、次の入居者がどこから来るのかを確認する必要があります。

  • 政府機関や政府関連企業の職員
  • 外資系企業や地域統括本部の駐在員
  • 建設・インフラプロジェクトの従事者
  • 石油・化学・製造業の技術者
  • 観光・ホテル・小売業の従業員
  • サウジ人の単身者、夫婦、子育て世帯

「人口が増えている国だから買う」のではなく、「対象物件の賃借人となる人口が増えているか」で判断します。

サウジアラビア不動産は都市ごとに需要源が異なる

サウジアラビアの国土は日本の約5.7倍ありますが、不動産需要は主要都市と特定の開発地域に集中しています。全国平均の人口、所得、不動産価格だけでは物件を評価できません。

リヤド

リヤドは政治、行政、金融、企業本社機能が集中する首都です。政府機関、政府系企業、コンサルティング、金融、テクノロジー、建設関連企業の集積が、オフィスと賃貸住宅の主要な需要源になります。

住宅では、外資系企業の駐在員向け住宅、企業契約可能な高品質アパート、学校やオフィスへのアクセスが良いファミリー物件が、一般的な郊外住宅とは異なる市場を形成します。

一方、リヤドの需要は政策、企業移転、政府支出の影響を受けやすく、現在の需要が民間企業の自律的な成長によるものか、期間限定の国家プロジェクトによるものかを区別する必要があります。

ジッダ

ジッダは紅海沿岸の商業・物流都市で、港湾関連企業、観光、商業、ホテル、航空、巡礼関連サービスなどが需要源です。

住宅投資では、リヤドと同じ基準で判断せず、海岸部、空港アクセス、商業地域、観光開発地域ごとに入居者属性を確認します。沿岸部の建物では、湿気、塩害、外壁や設備の腐食対策も維持費に影響します。

ダンマーム・アルコバール・ダーランを含む東部州

東部州は、原油、天然ガス、石油化学、製造業、港湾、工業団地に関連する住宅・オフィス・物流需要が中心です。

企業契約や技術者向け住宅が見込める一方、単一企業や単一産業への依存度が高い物件では、契約終了時の空室リスクが大きくなります。周辺企業数、主要雇用主、契約期間、代替テナント層を確認する必要があります。

メッカ・メディナ

メッカとメディナでは、巡礼・宗教観光を背景にホテル、宿泊施設、商業施設の需要があります。ただし、外国人の取得制限、宗教要件、運営許認可、季節による稼働率変動があるため、通常の住宅投資とは分けて評価する必要があります。

国家主導の成長とプロジェクト優先順位変更リスク

サウジアラビアは、国王と中央政府を中心に政策を実行する君主制国家です。意思決定が集中しているため、大規模インフラ、都市開発、制度改革を短期間で進められる点は、不動産市場にとってプラスに働きます。

一方、政府の判断によって、規制、開発計画、建築条件、賃貸制度、税・手数料、プロジェクトの完成時期が変更される可能性があります。

2026年度予算は、歳入1兆1,474億サウジリヤルに対し、歳出1兆3,128億サウジリヤルで、1,654億サウジリヤルの赤字を見込んでいます。政府は引き続き大型投資を行う方針ですが、すべての開発計画が同じ優先順位で、当初予定どおり実行されるとは限りません。

国家プロジェクト周辺の物件を購入するときは、完成予想図やマスタープランではなく、次の進捗を確認します。

  • 土地取得と権利関係が完了しているか
  • 開発許可と建築許可が取得されているか
  • 施工会社が決定し、工事が開始されているか
  • 道路、鉄道、電力、水道などの予算が確保されているか
  • 物件引き渡し前に周辺施設が利用可能になるか
  • 計画変更時の返金、解約、遅延補償が契約書にあるか

国の信用格付けが高いことと、個別のディベロッパーや不動産プロジェクトが予定どおり完成することは別の問題です。

非石油経済は成長しているが、原油と財政の影響は残る

サウジアラビアの実質GDPは2025年に4.5%成長し、非石油部門も4.9%成長しました。2026年第1四半期の実質GDPは前年同期比2.8%増で、非石油部門も2.8%増となっています。

観光、物流、金融、建設、娯楽、ICT、鉱業などの成長によって、不動産需要の発生源は石油産業以外にも広がっています。

不動産用途ごとの主な需要源は次のとおりです。

不動産用途主な需要源
オフィス政府機関、地域統括本部、金融、コンサル、テクノロジー企業
賃貸住宅国内人口移動、外国人就業者、企業駐在員、政府関連職員
ホテル・サービスアパートメント観光、巡礼、出張、イベント
物流施設EC、港湾、空港、製造業、食品、医薬品、3PL
商業施設若年人口、観光客、飲食、娯楽、体験型消費
工業不動産エネルギー、石油化学、製造業、鉱業

ただし、政府収入、公共投資、銀行融資、企業活動は、現在も原油価格と石油収入の影響を受けます。

非石油部門の成長だけを見るのではなく、物件周辺の需要が政府支出、原油関連企業、民間消費、外国企業のどれに依存しているかを分解します。複数の需要源を持つ物件ほど、単一プロジェクト終了時の影響を抑えやすくなります。

ドルペッグ制が日本人投資家に与える影響

サウジリヤルは、1米ドル=3.75サウジリヤルの固定相場制を採用しています。

サウジリヤルと米ドルの交換比率は安定していますが、日本人投資家にとって為替リスクがなくなるわけではありません。円から見れば、サウジリヤルは実質的に米ドルと同じ方向に動きます。

購入時より円高・ドル安になれば、サウジリヤル建ての物件価格や賃料が変わらなくても、円換算した資産価値と収益は減少します。

投資収支は、少なくとも次の条件で試算します。

  • 購入時より円が10%上昇した場合
  • 購入時より円が20%上昇した場合
  • 賃料が据え置かれ、管理費だけが上昇した場合
  • 売却までの期間が想定より2~3年延びた場合
  • 売却代金の日本送金に時間と手数料がかかった場合

また、ドルペッグ制のもとではサウジアラビアの金利環境も米国金利の影響を受けやすいため、現地購入者の住宅ローン負担や、不動産の取得余力にも影響します。

サウジアラビア不動産が不動産投資で注目される理由・メリット

1.人口が増加し続ける中東最大級のマーケット

サウジアラビアの人口は2024年半ば時点で約3,530万人です。前年から約160万人増加し、その増加分の75.6%を非サウジ国籍者が占めました。総人口に占める外国人の割合も44.4%に達しています。

非サウジ人口の89.9%は15~64歳の生産年齢人口です。サウジアラビアの人口増加には、出生による自然増だけでなく、企業進出、建設、観光、物流、IT、金融などの雇用に伴う外国人流入が大きく影響しています。

不動産需要は、次の二つに分けて考える必要があります。

  • サウジ国民:結婚、世帯形成、政府の住宅取得支援による分譲住宅需要
  • 外国人就業者:勤務地に近い賃貸住宅、家具付き住宅、サービスアパートメント需要

サウジ国民世帯の持ち家率は2025年に66.24%まで上昇しています。国民向け住宅では、中所得層が購入できる価格、住宅ローン支援の対象、学校・生活施設へのアクセスが重要です。

外国人向け住宅では、人口増加率よりも、周辺にある企業、政府機関、工業団地、プロジェクト拠点を確認しなければなりません。外国人就業者は雇用契約やプロジェクトの終了に伴って移動するため、雇用主が限定される地域では需要が急減する可能性があります。

投資対象を選ぶ際は、人口統計だけでなく、主要雇用主、通勤時間、テナントの国籍・所得、家具付き需要、法人契約の割合、Ejarに登録された実際の賃料を確認する必要があります。

サウジアラビアの総人口推移

出典:United Nations 2024

2.人口ピラミッドがいびつな形状ではあるが、一定の人口ボーナスも見込める

いびつな形ではあるが、比較的中堅層の年齢が多く、まだ一定期間は人口ボーナスが期待できます。

サウジアラビアの人口ピラミッド

出典:United Nations 2024

サウジアラビアの年齢階層別の人口推移

出典:United Nations 2024

人口ボーナスとは

生産年齢人口(15~64歳)に対する従属人口(14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が低下し、経済成長を促す効果のことで、 人口ボーナス期では豊富な労働力を背景に個人消費が活発になる一方、高齢者が少なく社会保障費用が抑えられるため、経済が拡大しやすい状況となります。

3.国家主導で進む「経済構造転換」による長期的な成長期待

サウジアラビアは、原油依存からの脱却を目的とした国家戦略「Vision 2030」を掲げ、経済構造の大転換を進めています。

これまで石油収入に大きく依存してきた経済を、観光、エンターテインメント、IT、物流、金融、不動産といった非石油分野へとシフトさせることで、持続的な経済成長を目指しています。

サウジアラビアでは、観光、都市開発、物流、製造業、テクノロジー、再生可能エネルギーなどの非石油分野が拡大しています。2025年には非石油経済がGDPの約55%を占め、非石油部門は4.9%成長しました。

不動産投資では、非石油産業の拡大によって需要源が石油産業だけに限定されなくなることが重要です。企業の事務所、従業員住宅、倉庫、ホテル、商業施設など、複数の用途に需要が発生します。

ただし、国家戦略に含まれるすべての開発案件が、同じ速度で完成するわけではありません。

PIFが2026年4月に公表した2026~2030年戦略では、急速な拡大から、長期的な価値創出、投資効率、ガバナンス、民間部門の参加を重視する方針へ移行しています。重点分野は、観光・娯楽、都市開発、先端製造、物流、エネルギー、NEOMなどの六つの経済エコシステムです。

投資家にとっては、国家プロジェクトの名称よりも、次の実行条件が重要になります。

  • 事業資金が確保されているか
  • インフラ工事が着工済みか
  • 住宅や商業施設の引き渡し実績があるか
  • 入居企業、ホテルブランド、運営会社が決まっているか
  • 周辺道路、電力、水道、交通機関が供用されているか
  • 民間ディベロッパーが負担する資金割合が過大ではないか

計画発表だけの地域と、雇用・交通・入居者がすでに存在する地域を同じ価格で評価すべきではありません。

国家レベルで方向性が明確に示されているため、短期的な景気循環ではなく、中長期の成長シナリオを描きやすい点は、海外不動産投資において大きな魅力と言えます。

4.交通インフラと大型イベントが、特定エリアへの人流を変える

リヤドでは地下鉄、幹線道路、都市公園、空港関連施設、Expo 2030関連インフラの整備が進んでいます。

リヤド地下鉄の累計利用者数は2026年第2四半期までに2億3,200万人を超えました。市内では500キロメートルを超える道路網の整備も進められています。

Expo 2030 Riyadhは2030年10月1日から2031年3月31日まで開催され、4,200万回以上の来場が想定されています。会場面積は約600万平方メートルで、197カ国の参加が予定されています。

交通インフラの投資効果は、都市全体へ均一に及ぶわけではありません。不動産価格に影響するのは、駅や道路が存在することではなく、物件から目的地までの移動時間が実際に短縮されるかどうかです。

確認すべき項目は次のとおりです。

  • 駅までの徒歩動線と暑熱環境
  • 駅の開業状況と運行本数
  • オフィス街、空港、イベント会場までの所要時間
  • 駐車場の台数と道路混雑
  • 周辺の用途地域と追加供給可能な土地
  • イベント終了後にも残る雇用・居住需要

Expoやワールドカップなどの開催決定だけを根拠に購入するのではなく、イベント後も利用される交通・業務・住宅機能があるかを確認する必要があります。

5.観光需要が宗教・法人・国内旅行・イベントに分散している

サウジアラビアの観光需要は、外国人観光客だけに依存していません。

2025年の国内・海外を合わせた観光客数は約1億2,300万人で、このうち海外からの訪問客は約2,930万人、国内旅行者は約9,330万人でした。2026年第1四半期にも国内・海外合計で3,720万人が旅行し、観光消費額は827億サウジリヤルに達しています。

主要都市では需要源が異なります。

  • リヤド:企業出張、国際会議、政府関連業務、スポーツ・娯楽イベント
  • ジッダ:企業出張、紅海観光、国内旅行、メッカへの玄関口
  • メッカ・メディナ:ハッジ、ウムラなどの宗教観光
  • アルウラ・紅海沿岸:高級リゾート、文化・自然観光
  • 東部州:エネルギー、製造業、法人出張

観光客数の増加が、そのままホテル収益の増加を意味するわけではありません。2026年1~3月のホテル指標では、ジッダのRevPARが前年同期比4.4%上昇した一方、リヤドは9.5%下落しました。新規ホテルの供給、季節要因、国際線、イベント日程によって都市別の業績が異なります。

ホテル、ホテルレジデンス、サービスアパートメントを購入する場合は、次の項目を確認する必要があります。

  • 過去12カ月の稼働率、ADR、RevPAR
  • 周辺で計画されている客室供給数
  • 運営会社とホテルブランドの実績
  • 運営委託料、予約手数料、家具更新費
  • 最低保証賃料の支払主体と財務力
  • 宗教、法人、国内旅行のどの需要を狙う施設か
  • 所有者が自由に売却・利用できる条件

観光市場の成長は追い風ですが、立地と運営会社が弱いホテル物件まで救済するものではありません。

6.物流・工業用不動産は住宅と異なる成長ドライバーを持つ

サウジアラビアは紅海側と湾岸側の双方に港湾を持ち、リヤド、ジッダ、ダンマームを中心に物流・製造業の拠点整備を進めています。

EC、食品、医薬品、製造業、3PL、政府の備蓄需要などにより、即入居可能なAグレード物流施設が不足しています。

2026年第1四半期の物流施設の平均賃料は、前年同期比で次のように上昇しました。

  • リヤド中央部:18.7%上昇
  • リヤド東部:21.8%上昇
  • リヤド西部:16.2%上昇
  • ジッダ東部:13.4%上昇
  • ジッダ南部:17.4%上昇

リヤド東部の平均賃料は年間1平方メートル当たり305サウジリヤル、ジッダ東部は301サウジリヤルです。

物流不動産では、単なる土地の広さよりも、次の設備・契約条件が収益を左右します。

  • 港湾、空港、高速道路、工業団地までの所要時間
  • 天井高、床荷重、搬入口、トラックヤード
  • 空調、冷蔵・冷凍、非常用電源
  • 消防・安全基準への適合
  • テナント企業の信用力と残存契約期間
  • 増床余地と周辺の新規供給
  • 建物仕様が退去後も別テナントに転用できるか

物流施設は住宅より専門性が高いものの、テナントとの長期契約を確保できれば、人口増加や住宅価格とは異なる収益源を持てます。

7.外国人所有制度の施行により、投資の申請経路が明確になった

外国人による不動産所有制度は、2026年1月22日に施行されました。

居住者、非居住者、外国企業は、公式ポータル「Saudi Properties」を通じて申請する仕組みです。サウジアラビア国外に住む個人は、在外公館などを通じてデジタルIDを取得した後、申請を進める流れが示されています。

制度施行によって、外国人が取得できる可能性のある不動産の範囲は広がりました。ただし、外国人が全国の不動産を無条件で取得できるわけではありません。

取得の可否や条件は、地理的範囲を定める文書によって管理されます。文書には、対象地域の地図、取得可能割合、取得できる権利の種類、猶予期間、その他の規制が含まれるとされています。

2026年6月16日時点では、一般公開情報だけで個別物件の取得適格性を確定できない案件があります。CBREも2026年5月の市場報告で、リヤドにおける具体的な外国人所有対象地区が正式に確認されていないと指摘しています。

予約金や頭金を支払う前に、少なくとも次の事項を書面で確認する必要があります。

  • 物件が外国人取得対象区域内にあるか
  • 所有権、用益権、長期利用権のどれを取得するのか
  • 権利の有効期間と更新条件
  • 賃貸、転売、相続、担保設定の可否
  • オフプラン販売許可とエスクロー口座の有無
  • 外国人に適用される取得上限と用途制限
  • 登録料、取引税、管理費などの負担
  • メッカ・メディナに関する宗教・所有制限

制度変更は市場参入の追い風ですが、規制が完全に撤廃されたことを意味するものではありません。

サウジアラビア不動産の不動産投資におけるデメリット・リスク

1.為替リスク

サウジアラビア不動産投資を日本人が行う場合、最初に意識すべきなのが為替リスクです。サウジアラビアの通貨はサウジリヤルで、日本円との間には常に為替変動リスクが存在します。

サウジリヤルは米ドルと連動する仕組みを採用しており、表面的には安定しているように見えます。しかし、これは「為替変動が起きない」という意味ではありません。

日本円が円安の局面で不動産を購入し、その後円高に振れた場合、日本円ベースで見たときの資産価値や売却益は目減りします。

特に海外不動産投資は、購入価格が大きく、保有期間も長期になりやすいため、わずかな為替変動でも損益への影響は無視できません。賃料収入を得ていても、円転した際に為替差損が発生すれば、実質利回りが大きく低下するケースもあります。

サウジアラビア不動産は中長期投資を前提とするケースが多いため、購入時だけでなく、売却時・送金時まで含めた為替リスクを十分に想定しておく必要があります。

サウジアラビアの為替「SAR/JPY」

サウジアラビアの為替「SAR/USD」

2.外国人による不動産所有制度の制約

サウジアラビアでは、外国人による不動産投資環境は近年改善されつつあるものの、依然として制約が多いのが現実です。

すべてのエリアで自由に不動産を購入できるわけではなく、地域や物件の用途によっては、外国人が所有できない、もしくは特別な許可が必要な場合があります。

また、制度や運用は発展途上であり、将来的にルールが変更される可能性も否定できません。

日本国内の不動産投資と異なり、「所有権が完全に守られる」「制度が長年固定されている」という前提で考えるのは危険です。法制度の変更によって、売却条件が厳しくなったり、保有コストが増加したりするリスクも考慮する必要があります。

制度の理解不足のまま投資を行うと、想定していた運用ができなくなる可能性があるため、事前の情報収集と慎重な判断が不可欠です。ためには、大きな出資元を見つけてこないといけない状況であり、100%首都移転が成功すると断言できるものではないのです。

3.不動産市場の歴史が浅く、価格データが限定的

サウジアラビア不動産市場は、国家主導で急速に拡大している一方で、民間向け不動産投資市場としての歴史はまだ浅い側面があります。

そのため、日本や欧米諸国のように、長期間にわたる価格推移データや、不況期・金融危機時の耐性データが十分に蓄積されているとは言えません。
価格上昇が続いている局面では魅力的に見えますが、その裏には「調整局面を経験していない」という不確実性が存在します。

国家プロジェクトや大型開発が集中することで、一時的に需給バランスが崩れ、供給過剰に陥るリスクもあります。実需以上に投資マネーが流入した場合、将来的に価格調整が起こる可能性は十分に考えられます。

4.ディベロッパーリスク・開発遅延リスク

サウジアラビアでは、大規模な都市開発や新規プロジェクトが数多く進められていますが、これらの多くは「計画段階」や「建設途中」の物件です。

海外不動産投資では、建設前または建設中に購入するケースも多く、その場合、ディベロッパーの信用力が極めて重要になります。計画通りに建設が進まない、完成が大幅に遅れる、仕様が変更されるといったリスクは常に存在します。

国家主導プロジェクトであっても、すべてが予定通り進行するとは限りません。経済状況や政策方針の変更により、開発スピードが鈍化する可能性も考えられます。

完成遅延が発生すれば、賃貸運用の開始が遅れ、想定していたキャッシュフローが得られなくなる点は大きなデメリットです。

5.賃貸市場の透明性と流動性の課題

サウジアラビアの賃貸市場は、日本のように情報が完全にオープンで、誰でも相場を把握できる環境ではありません。

エリアごとの賃料水準、空室率、賃借人属性などのデータが限定的であり、実際の運用成績は物件ごとの差が大きくなりがちです。賃貸需要は確実に存在するものの、エリア選定を誤ると、想定よりも入居が決まらないケースもあります。

また、売却時の流動性も日本国内と比べると低く、短期間で買い手が見つからない可能性も考慮しなければなりません。「売りたいときにすぐ売れる」という前提で投資判断を行うのは危険です。

6.文化・宗教・商習慣の違いによる運用リスク

サウジアラビアは、イスラム文化を基盤とした独自の価値観と商習慣を持つ国です。日本とは生活様式や考え方が大きく異なるため、その違いを理解せずに投資を行うと、運用面で想定外のトラブルが起こる可能性があります。

契約手続きや交渉の進め方、意思決定のスピードなども、日本的な感覚とは異なる場面が多く見られます。現地パートナーや管理会社との連携がうまく取れなければ、物件管理や賃貸運営がスムーズに進まないこともあります。

文化的背景を軽視した投資は、結果的にストレスやコスト増加につながりやすいため、十分な理解が必要です。

7.政治・地政学リスク

中東地域に位置するサウジアラビアは、地政学的な影響を受けやすい立地にあります。地域情勢の変化や国際関係の緊張が高まった場合、投資マインドの冷え込みや不動産価格への影響が出る可能性があります。

国内は比較的安定しているものの、周辺国を含めた広い視点でのリスク管理が求められます。万が一、情勢不安が顕在化した場合、不動産価格や賃貸需要が一時的に落ち込むリスクは否定できません。

8.情報の非対称性による判断ミスのリスク

海外不動産投資全般に言えることですが、サウジアラビア不動産は特に情報の非対称性が大きい市場です。

日本語で得られる情報は限定的であり、現地情報の多くは英語やアラビア語で発信されています。情報収集力の差が、そのまま投資成果の差につながりやすい環境と言えます。

十分な裏付けがないまま、将来性や成長ストーリーだけで判断してしまうと、期待と現実のギャップに直面する可能性があります。

サウジアラビア不動産は大きな成長余地を持つ一方で、為替、制度、流動性、文化、地政学といった複数のリスクが重なり合う市場です。日本人投資家にとって魅力的な選択肢である反面、国内不動産と同じ感覚で投資することはできません。

メリットだけでなく、これらのデメリット・リスクを正しく理解した上で、長期視点と十分な準備をもって検討することが、サウジアラビア不動産投資で後悔しないための重要なポイントとなります。

サウジアラビア不動産・最新の不動産価格推移データ

サウジアラビア不動産価格推移

※サウジアラビア住宅価格指数


出典:Global Property Guide 2026年1月最新データ

サウジアラビア不動産価格推移変動率

※サウジアラビア住宅価格指数


出典:Global Property Guide 2026年1月最新データ

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サウジアラビア不動産投資で発生するコスト

※コストは、ディベロッパー、物件、時期によっても違いがあります。あくまでも参考事例として、実際の発生するコストは、その時の不動産会社にヒアリングしましょう。

サウジアラビア不動産投資で発生する主なコストには

  • 物件価格
  • 購入時諸費用(契約・登記関連)
  • 外国人投資関連手数料
  • 付帯設備費・内装費
  • 管理費・修繕積立金
  • 保険料
  • 賃貸管理費
  • 税金(不動産取引税・所得税など)

が挙げられます。

物件価格

物件価格は、購入する不動産そのものの価格です。

サウジアラビアでは、近年の経済改革や都市開発に伴い、新築レジデンスや大規模開発案件が中心となっています。

  • 一部エリアでは
  • 建設途中での分割払い
  • 引き渡し時に残金支払い

といった支払スケジュールが採用されることがあります。

分割払いの場合、頭金として物件価格の10%〜30%程度が必要になるケースが一般的です。

購入時諸費用(契約・登記関連)

売買契約締結時には、契約書作成費用や登記関連費用が発生します。

これらは

  • 司法書士・弁護士費用
  • 不動産登記費用
  • 行政手数料

として請求されることが多く、物件価格の1%〜3%程度が目安です。

外国人投資関連手数料

外国人がサウジアラビアで不動産を取得する場合、投資許可や登録に関する追加コストが発生します。

具体的には

  • 外国人投資登録手数料
  • 追加審査・申請手数料

などがあり、数十万円〜数百万円相当になるケースがあります。

付帯設備費・内装費

サウジアラビア不動産では、内装が最低限の状態で引き渡される物件も少なくありません。

賃貸運用を前提とする場合は

  • 家具
  • 家電
  • 照明
  • カーテン

などの初期費用が必要になります。

物件規模にもよりますが、日本円換算で100万円〜300万円程度を見込むケースが一般的です。

管理費・修繕積立金

マンションや複合施設では、共用部分の維持管理費が発生します。

管理費は

  • 警備
  • 清掃
  • 共用設備の維持

などに充てられ、月額固定で請求されます。

相場は物件グレードや立地によりますが、月額数万円〜十数万円程度が目安です。

保険料

不動産オーナーは、火災・自然災害・事故に備えた保険への加入が推奨されます。

保険料は

  • 建物評価額の0.2%〜0.5%程度

が一般的な水準です。

賃貸管理費

賃貸運用を行う場合、入居者対応や家賃回収、メンテナンスを委託するための賃貸管理費が発生します。

管理費は

  • 家賃の5%〜10%程度

が相場となります。

税金(不動産取引税)

サウジアラビアでは、不動産売買時に不動産取引税が課されます。

税率は

  • 物件価格の5%

が基本です。

購入時に一括で支払う必要があります。

税金(所得税)

サウジアラビアでは、個人の賃貸収入に対して原則として所得税は課されません。

ただし

  • 法人名義
  • 特定スキーム

での運用の場合は、別途課税対象となる可能性があるため、事前確認が必要です。

サウジアラビア不動産投資におけるコストの考え方

サウジアラビア不動産投資では

  • 購入時コストが比較的高め
  • 保有時の税負担が軽い
  • 管理・運用コストは物件次第

という特徴があります。

短期売買よりも、中長期保有を前提に

  • トータルコスト
  • 実質利回り
  • 為替影響

を総合的に判断することが重要です。

サウジアラビアの物価(給料・家賃・不動産価格・住宅ローン金利)

サウジアラビア不動産に投資するうえでは、サウジアラビアの物価を抑えておく必要があります。

サウジアラビア物価の中でも、水・レストラン・家賃・不動産価格などを東京と比較しています。また、物価ではありませんが、平均給料・住宅ローン金利の数値も東京と比較しました。

サウジアラビア(リヤド)と日本(東京)の物価比較

都市/国東京/日本リヤド/サウジアラビアリヤド/サウジアラビア
通貨SARSAR
データ計測日時2026/32026/32026/3
データ計測時点の為替1円41.81円41.81円
物価平均平均(円換算)比率(対東京)
安いレストランでの食事1,200円1,254円105%
一般的なレストラン・2名・3コース6,550円8,362円128%
マクドナルドのバリューセット800円1,254円157%
国産生ビール(0.5リットル)600円251円42%
水・ボトル(1.5リットル)131円84円64%
タクシー 1km(通常料金)500円293円59%
ガソリン(1リットル)176円84円48%
シティセンターのアパートメント (1 ベッドルーム)180,558円179,616円99%
アパートメント (1 ベッドルーム) センター外101,867円131,116円129%
市内中心部のアパート購入の平方メートルあたりの価格1,812,404円455,562円25%
センター外のアパート購入の平方メートルあたりの価格814,000円300,321円37%
平均月給(税引後)413,060円367,175円89%
住宅ローン金利 (%)、年間、20 年間固定金利1.70%5.39%318%

サウジアラビア不動産の買い方

サウジアラビア不動産に強い日本人スタッフがいる、日本人が運営する不動産会社に依頼するのが一番確実な方法です。

まだまだ、サウジアラビア不動産は発展途上ですので、信用できるディベロッパーなのかどうか?も、予想ができないものです。多くのディベロッパーと交渉した経験を持つ不動産会社が一番情報を握っていると言っても過言ではありません。

サウジアラビアに精通していたり、サウジアラビアに住んでいる方であれば別ですが、日本在住の日本人の場合は、信頼できるサウジアラビア不動産を取り扱う不動産会社を見つけることをおすすめします。

サウジアラビア不動産 最新動向

マクロ環境・金利

  • 成長率は減速、非石油部門は底堅い
    2026年のサウジ経済は、ビジョン2030の実行フェーズに入る一方、石油部門の弱さと地域情勢の不安定化で成長見通しがやや下方修正されています。2026年予算は1,650億リヤル、GDP比約3.3%の財政赤字を前提に、物流、観光、産業、AI、宗教観光など収益性の高い分野へ支出を振り向ける方針です。従来の「巨大で象徴的な開発」から、より実需・収益・インフラ効果を重視する方向へ再調整されています。
  • 政策金利と住宅ローン
    サウジリヤルは米ドル連動のため、金利環境は米FRBの動きに強く左右されます。2026年半ば時点の政策金利は、レポ金利4.25%、リバースレポ金利3.75%が目安です。高金利局面が長引いたことで住宅購入の審査は慎重化し、2026年3月の個人向け住宅ローン実行額は約41.9億リヤルまで落ち込みましたが、4月は約63.3億リヤルへ戻り、極端な冷え込みからはやや回復しています。

住宅(分譲・賃貸)

  • 住宅価格は調整局面
    2026年第1四半期の不動産価格指数は前年比1.6%下落しました。住宅部門は3.6%下落し、住宅地が3.9%下落、アパートが1.1%下落、ヴィラが6.1%下落しています。一方、商業不動産は3.4%上昇しており、住宅と商業で方向感が分かれています。地域別では、リヤド州が4.4%下落、マッカ州が0.7%下落、東部州は6.9%上昇です。
  • 販売市場は“高額ヴィラ離れ”が進行
    住宅取引額は2026年第1四半期に約820億リヤルとなり、前年比で4.5%減少しました。特に土地取引が弱く、2月は住宅取引全体が前年同月比で大きく落ち込みました。買い手は大型ヴィラや広い土地より、流動性が高く、賃貸にも回しやすい30万〜50万リヤル台のスタジオ・小型アパートを選ぶ傾向が強まっています。リヤドは依然として最大市場ですが、価格上昇を前提にした投資より、賃料収入と出口の見えやすさが重視されています。
  • リヤド賃料は5年間凍結
    2025年9月から、リヤド市内の住宅・商業賃料は5年間の値上げ停止が導入されています。既存契約だけでなく新規契約にも影響し、空室物件も原則としてEjarに登録された直近賃料が基準になります。リヤドの賃貸市場は2024〜2025年に急騰しましたが、この規制により2026年は投機的な賃料上昇が抑えられ、既存入居者には安定、家主側には利回り上限という影響が出ています。
  • 賃料水準の実務感
    リヤドの主要地区では、年間アパート賃料が2万〜8万リヤル台、ヴィラ賃料が4万〜16万リヤル台に分布しています。高級・人気地区ではHittinのアパートが年約8.1万リヤル、ヴィラが年約16.3万リヤル、Al Malqaのアパートが年約6.6万リヤル、ヴィラが年約14.8万リヤルです。Qurtobahのヴィラは年約29.9万リヤルと突出しており、地区ごとの差は大きいです。

オフィス

  • リヤドAグレードは極端な品薄
    サウジ不動産で最も強いのはリヤドのAグレードオフィスです。2026年第1四半期のリヤドAグレード稼働率は約98%、リヤド全体のオフィス稼働率も97.7%前後で、実質的に空きが少ない状態です。RHQ制度により、780社超の国際企業がリヤドに拠点を置いており、需要の柱になっています。
  • 供給は増えるが、短期的には不足継続
    2026年にはリヤドで約56万㎡のオフィス供給が予定され、2027〜2028年にはさらに約90万㎡が追加される見込みです。Misk City、Westfield Riyadh Offices、Diriyah Square Officesなどが供給源になります。ただし、需要の質がAグレード・新築・高スペックに偏っているため、古いBグレード物件はテナント維持に苦戦しやすい構図です。需要業種はテクノロジーが約半分、コンサル・金融・法務が続いています。
  • 地方都市も選別型
    ジェッダのAグレードオフィス稼働率は約94%、プライム賃料は年1㎡あたり約1,490リヤルで安定しています。ダンマームは上位ビルが約91%稼働する一方、古いBグレードは設備・管理・デジタル接続性で劣り、テナントが新築・高品質ビルへ移る傾向が明確です。

リテール・商業

  • モールから体験型複合施設へ
    小売は従来型モール中心から、飲食、娯楽、ウェルネス、ラグジュアリー、日常利用を組み合わせた体験型施設へ移行しています。2025年の小売決済では電子決済が85%を占め、消費行動のデジタル化が進みました。飲食は週次支出の約16.6%、ファッション・アクセサリーは約15.8%を占め、国内消費が市場を支えています。
  • 大型供給は2026〜2027年に集中
    Westfield JeddahとWestfield Riyadhは2026年に開業予定で、The Avenues Riyadhは2027年第1四半期が予定されています。これらの案件により、20万㎡超のAグレード小売・オフィス床が市場に追加されます。優良施設の賃料は大きく崩れておらず、家主側は安易な賃料減免よりもテナント構成と滞在時間の最大化を重視しています。

ホテル・観光

  • 国内旅行が下支え
    2026年第1四半期の国内・訪問観光客は合計3,720万人、観光支出は827億リヤルです。特に国内旅行者は2,890万人で前年比16%増、支出は347億リヤルでした。ラマダンとイード時期には国内旅行者が1,000万人に達し、外部環境が不安定な中でも国内需要がホテル市場を支えています。
  • リヤドは一時調整、ジェッダは比較的強い
    2026年3月単月では、サウジ全体のホテルRevPARは前年比15.7%低下、リヤドは18.5%低下しました。地域情勢、空域制限、季節要因が影響しています。一方、ジェッダは同月RevPARが13.1%上昇し、紅海沿岸・宗教観光・国内レジャーの強さが見えます。中期では、Expo 2030、2034年FIFAワールドカップ、Umrah Plus、紅海リゾート開発がホテル需要を押し上げる見通しです。

物流・工業

  • 最も構造的に強いセクター
    物流・工業は、EC、3PL、製造業、備蓄需要、紅海ルート活用で強い状態です。2026年第1四半期の平均倉庫・物流賃料は、リヤド東部が年1㎡あたり305リヤル、前年比21.8%上昇、リヤド中央が239リヤル18.7%上昇、リヤド西部が263リヤル16.2%上昇です。ジェッダ東部も301リヤル13.4%上昇しており、主要回廊では賃料上昇が続いています。
  • 紅海・鉄道・空港が成長軸
    地域情勢により東側海上ルートのリスクが意識され、ジェッダ・紅海側港湾の重要性が高まっています。Saudi Landbridge、Jeddah Islamic Port、SPARK、NEOM Oxagon、Riyadh Air Cargoなどが物流不動産の需要を押し上げています。ASMOによるSPARK内の140万㎡級物流施設、DHLの7.8万㎡ハブなど、大型案件も動いています。

REIT・資本市場

  • REITは利回り商品として再注目
    サウジREITは、分配重視の投資家にとって引き続き重要な選択肢です。2025年度のサウジREIT平均配当利回りは5%台後半が目安で、金利が低下方向に向かえば相対的な魅力は高まりやすいです。ただし、オフィス・商業施設の質、負債比率、固定賃料契約、賃料凍結の影響、物件入替能力で評価差が広がります。
  • 外国資金の受け入れが進む
    2026年2月から、サウジ取引所では外国ファンドに対する大口資産要件の一部見直しが行われ、国際資金を呼び込みやすい環境が整いつつあります。実物不動産だけでなく、上場REIT、不動産開発会社、インフラ関連銘柄を通じた投資も拡大しやすい局面です。

制度・規制トピック

  • 外国人不動産所有が本格始動
    2026年1月に外国人不動産所有法が施行され、2026年6月末にはREGAが「Saudi Properties」ポータルを通じて外国人の不動産所有申請受付を開始しました。サウジ在住の外国人は居住者番号で申請でき、国外居住者はデジタルID取得、外国企業はInvest Saudi経由で登録したうえで手続きを進める形です。メッカ・メディナは特別規制があり、所有はサウジ企業およびイスラム教徒の個人に限定されます。
  • 巨大開発は“選別と再設計”へ
    PIF主導のメガプロジェクトは全面停止ではありませんが、実現性・資金効率・収益性を基準に再評価されています。リヤドのNew Murabba内に計画されたMukaabは、資金・実現性の再検討により主要工事が停止された一方、周辺不動産開発は継続見込みです。今後は、Diriyah、Qiddiya、Expo 2030関連、物流・観光・宗教観光など、実需とイベント需要に結びつく案件が優先されやすいです。

投資家への示唆

  • 住宅
    一方的な値上がり局面ではなく、価格は調整し、賃貸は規制で安定化しています。リヤド中心・北部の優良アパートは賃貸需要が残りますが、高額ヴィラや投機的な土地取得は慎重に見るべきです。
  • オフィス
    リヤドAグレードは最も強い領域です。RHQ需要により空室が極めて少なく、短中期では賃料下落リスクが限定的です。ただし、2026〜2028年の新規供給で、古いBグレードや管理の弱い物件は選別されます。
  • リテール
    従来型モールより、飲食、娯楽、日常利用を組み込んだ複合型施設が優位です。単純な物販だけではなく、F&B、家族向け体験、ウェルネス、ラグジュアリーとの組み合わせが重要です。
  • ホテル
    国内旅行、宗教観光、ビジネス需要が下支えします。短期的には地域情勢で稼働率が振れますが、2030年以降の大型イベントを見据えた中期需要は強いです。
  • 物流・工業
    最も実需が読みやすい分野です。リヤド、ジェッダ、ダンマームのAグレード倉庫は不足しており、港湾・空港・鉄道・主要幹線への接続が投資判断の中心になります。

リスク・留意点

  • 金利リスク:政策金利がなお高く、住宅ローン負担が重いです。
  • 財政・原油リスク:政府支出は強いものの、原油価格次第で開発優先順位が変わります。
  • 規制リスク:リヤド賃料凍結により、短期的な賃料上昇益は制限されます。
  • プロジェクト遅延:メガプロジェクトは再設計・延期・縮小の可能性があります。
  • 供給集中リスク:2026〜2028年にオフィス・商業床が増えるため、立地と仕様で格差が広がります。
  • 地政学リスク:地域情勢は観光、物流、資本流入に短期的な影響を与えます。

まとめ

2026年7月時点のサウジアラビア不動産は、住宅価格の調整、リヤド賃料凍結、Aグレードオフィスの極端な品薄、物流・工業の高成長、外国人所有制度の本格化が同時に進む転換期です。以前のように「ビジョン2030なら何でも上がる」という単純な市場ではなく、政府・PIFの資金配分も、象徴的な巨大開発から、物流、観光、宗教観光、実需住宅、商業インフラへ再調整されています。投資対象としては、リヤドAグレードオフィス、主要都市の小型住宅、体験型商業施設、ジェッダ・リヤド・ダンマームの物流施設が有望です。一方で、高額ヴィラ、投機的な土地、旧型オフィス、計画依存度の高いメガプロジェクト周辺物件は、価格・流動性・完成時期を慎重に確認する必要があります。

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