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2025年7月23日、マレーシアの首都クアラルンプールで開催された「ASEAN不動産会議2025(Arec 2025)」と「Archidex(建築・インテリア・建設展示会)」において、マレーシアの住宅・地方自治大臣Nga Kor Ming(ンガ・コー・ミン)氏が、ASEAN地域の都市開発および住宅戦略に関する重要なビジョンを発表しました。
Nga大臣は演説の中で、東南アジア地域が直面する3つの主要課題を強調しました:
- 住宅トリレンマ(Housing Trilemma):住宅の「質」「価格」「供給」が同時に満たされないという問題。
- 地政学的経済ショック(Geoeconomic Shocks):為替の不安定化、建設コストの高騰、エネルギー価格の変動など。
- 人口急増:2045年までにASEANの65%が都市部に居住する見込み。
具体的には、ベトナムでは高級コンドミニアムの価格が前年比8%下落、シンガポールでは賃貸価格が18%上昇し、若年層の持ち家購入が後回しになっている現状が報告されました。マレーシアも例外ではなく、建材コストの増加により開発コストが不安定化しています。
Nga大臣は、「今後は“家”という概念が変わっていく」と述べ、ウィーン(オーストリア)のような社会的賃貸住宅の整備、若者世代の“所有から柔軟性へ”の価値観シフト、そして持続可能な都市設計の必要性を強調しました。
また、マレーシアが導入している「レンタル・トゥ・オウン(RTO)」制度を紹介し、賃貸から最終的な所有へと移行できるこのモデルが、低所得層や若者世代の住宅取得を支援すると述べました。
会議では、以下の3つの地域構想も発表されました:
- ASEAN住宅政策ラボの創設(データに基づく政策立案を支援)
- ASEAN都市進捗ダッシュボードの開発(住宅供給・炭素削減を可視化)
- Arecの恒久開催化(ASEAN議長国が毎年主催)
ニュースの見解
このニュースは、マレーシア政府がASEAN全体の都市開発を主導しようとする明確な意思表示であり、マレーシア不動産市場がより戦略的・持続可能な開発へとシフトしていることを示しています。
日本人不動産投資家にとって注目すべき点は以下の通りです:
- 都市化の加速と若者の賃貸志向:将来の投資対象は「所有型」だけでなく、「高品質な賃貸住宅」も視野に入れる必要があります。
- RTO制度の強化:将来的な資産価値上昇が期待されるRTO対象物件は、投資先として有望です。
- 通貨とコストの変動リスク:リンギットの不安定な為替や建設コストの高騰が、投資リスクを高めているため、現地通貨ヘッジ戦略や物件種別の選定が重要になります。
また、マレーシアの住宅政策が**国際規格(例:気候対応設計やインクルーシブな住宅制度)**に向かっていることから、長期的な安定運用を見据えた投資には有利な環境といえます。
マレーシアの不動産は、ASEANの成長と政策の変化を背景に、新たな成長軌道に入ろうとしています。住宅トレンドの変化を読み取りつつ、「現地社会との調和」や「流動性の確保」を重視したポートフォリオ構築が、これからの成功の鍵を握るでしょう。