日本に住む日本人が、投資目的でインドの住宅をそのまま購入できるとは限りません。判断の起点は国籍だけではなく、インドの外国為替管理法(FEMA)上の居住区分、OCI・NRIなどの資格、取得方法、物件種別です。日本在住でインド系の資格を持たない日本人は、原則として「foreign national of non-Indian origin resident outside India」に当たり、通常の売買による所有権取得は認められていません。

先に結論:日本在住の一般的な日本人が、インドのマンションを現地の人と同じように直接購入する前提で資金計画を進めるのは危険です。5年以内の賃貸、適法な相続、FEMA上のインド居住者となる場合などは扱いが異なりますが、広告や仲介会社の説明だけで判断せず、送金前にインドの弁護士とAuthorized Dealer(AD)銀行へ書面で確認してください。

日本人がインド不動産を買えるかは4つの区分で決まる

「外国人は禁止」「インドに半年住めば買える」という一文だけでは不十分です。FEMAの居住判定は滞在日数だけでなく、就労、事業、その他の目的と、インドに不確定期間滞在する意思を含めて判断されます。また、OCIやNRIに該当する人には別の取得ルールがあります。

購入者の主な区分 一般的な扱い 見落としやすい条件
日本在住・インド系資格なし 通常の売買による直接取得は原則不可 5年以内の賃貸、適法な相続などは別扱い。個別のRBI許可が必要となる取引もある
FEMA上のインド居住者 日本国籍のみを理由に一律禁止とはいえない 182日だけで自動判定しない。滞在目的、ビザ、州法、物件用途を確認する
NRI・OCI 住宅・商業用不動産を一定条件で購入可能 農地、プランテーション、ファームハウスは原則対象外。支払方法にも要件がある
NRI・OCIの外国籍配偶者 要件を満たせば配偶者との共同取得が可能な場合がある 婚姻の登録・継続期間、資金経路、対象物件などの条件を個別確認する
図表1:購入可否の入口。RBIのMaster Direction、2019年Non-Debt Instruments Rules、FEMAを基に整理。個別事情による例外があるため、最終判断表ではありません。

FEMA上の「居住者」は日本の税務上の居住者と別物

FEMA第2条(v)は、前年度に182日を超えてインドに居住したかだけでなく、インドでの雇用・事業、または不確定期間滞在する意思を示す目的を考慮します。観光や短期滞在を積み重ねただけで購入資格が生じる、と決めつけるべきではありません。反対に、日本の住民票や税務上の居住地だけでFEMAの区分が決まるわけでもありません。

購入を検討するなら、パスポート、ビザ、入出国履歴、雇用契約・事業資料、OCIカードの有無などをそろえ、インド法の専門家とAD銀行に「取引日時点でどの区分に該当するか」を確認します。販売会社の口頭説明は、法的意見や銀行の送金審査の代わりにはなりません。

インド準備銀行RBIのMaster Directionページ。外国為替管理法1999に基づく不動産の取得または移転に関する指令が掲載されている
区分の判断根拠が置かれている場所。RBIはFEMA1999に基づく不動産の取得・移転について、認可ディーラー銀行向けのMaster Directionを公開しています。AD銀行が送金審査で参照するのはこの系統の指令です。出典:Reserve Bank of India, Master Direction
1. 身分を確認
国籍だけでなく、NRI・OCI・外国籍配偶者・その他の外国人のどれかを整理
2. FEMA居住区分を確認
日数、滞在目的、ビザ、就労・事業実態を専門家が確認
3. 取得方法と物件種別を確認
購入、相続、贈与、共同取得、賃貸/住宅、商業、農地等を分ける
4. 州法・RERA・権利・送金を確認
契約前に州RERA、登記・権原、許認可、税務、銀行経路を照合

図解2:契約前の判断順序。購入資格の確認が終わる前に申込金や予約金を送らないことが重要です。

所有できない場合に検討される方法と注意点

5年以内の賃貸

RBIの案内では、インド非居住の外国人でも、5年を超えない賃貸はRBIの事前許可なしに行える場合があります。ただし、賃借権は所有権ではありません。更新条件、転貸、保証金返還、登記の要否、州法上の扱いを契約書で確認します。

相続

インド居住者からの相続など、規則が認める経路で取得できる場合があります。相続できることと、自由に売却して海外へ送金できることは別問題です。相続人の資格、被相続人の取得経緯、移転登記、税務、売却代金の送金条件を一連で検討します。

法人・ファンド等を経由する投資

「現地法人を作れば住宅を自由に買える」という単純な回避策は採用できません。法人の事業活動に必要・付随する不動産なのか、外資規制、実質的支配者、資金用途、税務、会計、撤退時の送金まで別の規制が生じます。不動産を持つためだけの名目的な法人や名義貸しは、法務・税務・資金回収のリスクを増やします。

買える人でも必要な物件デューデリジェンス

購入資格があることは、物件が安全であることを意味しません。インドのRERA(不動産規制開発法)は一定のプロジェクトに登録や情報開示を求めますが、登録表示だけで完全な権利保証になるわけではありません。州ごとのRERAサイトで登録番号、事業者、承認、工期、訴訟・苦情等を確認し、独立した弁護士が原本と公的記録を照合します。

購入資格FEMA居住区分、NRI・OCI資格、配偶者要件、RBI許可の要否
プロジェクト州RERA登録、登録有効期間、承認図、完成予定、エスクロー運用
権利関係権原の連続性、担保・差押え、係争、土地用途、建築・占有許可
契約支払工程、引渡条件、遅延時の救済、解約、瑕疵、準拠法・紛争解決
資金経路AD銀行、送金名義、口座、ローン、外貨からルピーへの交換記録
出口売却可能な相手、源泉徴収、税務申告、売却代金の国外送金条件

図解3:最低限の確認項目。RERA登録の有無だけでなく、購入者資格・権原・送金・出口まで横断して確認します。

購入時から売却・日本への送金までを一つの計画にする

適法に購入できても、支払はインドの銀行チャネルを通し、適用される税金・印紙税・登録料等を処理する必要があります。売却時は買主による源泉徴収、譲渡所得の申告、売却代金の口座区分、国外送金の証憑などが関係し得ます。税率や必要書類は居住区分、保有期間、条約、州、取引時期で変わるため、古いブログの数字を予算に固定しないでください。

日本の税務では、日本居住者であれば海外不動産の所得や売却益が申告対象になることがあります。インド側と日本側の扱いを別々に確認し、外国税額控除の可否も含めて税理士へ相談します。詳しくは海外不動産と確定申告、通貨変動の考え方は金利・為替リスクの解説も参照してください。

資格リスク

契約後に購入資格が否定されると、登記・送金・解約で問題になり得ます。

権利リスク

売主の権原、担保、許認可、土地用途の不備はRERA登録だけでは消えません。

資金回収リスク

売却できても、税務・銀行書類が整わなければ国外送金が滞る可能性があります。

市場・為替リスク

ルピー建て価格の上昇と、日本円換算の収益は一致しません。空室・流動性も別に評価します。

図解4:購入可否とは別に管理する4つのリスク。詳しい確認方法はインド不動産投資のリスク解説で整理しています。

契約前に専門家へ渡す質問リスト

  1. 私は取引日時点でFEMA上のどの居住区分・資格に該当しますか。
  2. この取得方法と物件種別は許可されますか。RBIの個別許可は必要ですか。
  3. 売主の権原、担保、係争、土地用途、建築・占有許可に問題はありませんか。
  4. 州RERAの登録内容と契約書・販売資料に相違はありませんか。
  5. 申込金から最終支払まで、どの名義・口座・銀行経路を使いますか。
  6. 購入時、保有中、賃貸中、売却時にどの税・費用・申告が発生しますか。
  7. 売却相手の制限と、日本へ資金を戻すための書類・上限・所要期間は何ですか。

法的意見は、販売会社と利害関係のないインドの弁護士から取得します。税務はインドと日本の双方、送金は取引を扱うAD銀行に確認し、回答と根拠資料を保存してください。

まとめ

インド不動産の購入可否は「日本人だから不可」「182日住めば可」のどちらか一方では説明できません。日本在住でインド系資格を持たない一般的な日本人の直接購入は原則不可ですが、FEMA居住者、NRI・OCI、一定の配偶者、相続、短期賃貸などで扱いが分かれます。最初に購入資格、次にRERA・権原、最後に支払と売却代金の送金を確認し、契約金を支払う前に書面の法務・銀行回答をそろえることが重要です。

主な一次資料(2026年8月30日確認)

本記事は一般的な情報提供であり、法務・税務・投資助言ではありません。法令、運用、州ごとの制度は変更されるため、契約時点の一次資料と専門家の個別判断を優先してください。

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