カナダでは2023年1月1日から、非カナダ人による住宅用不動産の購入が連邦法で禁じられています。日本から見ると「カナダの不動産は買えない国」という理解になりがちですが、実際の条文はもっと細かく、地域・住戸数・買い手の属性の3つで対象かどうかが変わります。しかもこの禁止は恒久措置ではなく、現時点で示されている期限は2027年1月1日です。ここでは連邦法と規則、CMHCの解説、州政府の税制ページを一次資料として、いま何ができて何ができないのかを整理します。
先に結論
- 禁止しているのは連邦法「Prohibition on the Purchase of Residential Property by Non-Canadians Act」で、法と規則は2023年1月1日に施行されました。
- 期限は当初2025年1月1日でしたが、2024年2月4日にカナダ政府が2年の延長を発表し、現在は2027年1月1日までとされています。それ以降へ延ばす公表は、本記事の作成時点では確認できませんでした。
- 対象になるのはCMA(国勢大都市圏)またはCA(国勢集計地域)の中にある、住戸数3戸以下の住宅です。CMA・CAの外にある物件と、4戸以上の建物、純粋な商業用不動産は対象外です。
- 例外があります。要件を満たす一時滞在者(学生・就労者)、保護対象者、カナダ市民または永住者の配偶者との共同購入などです。相続・離婚・贈与による取得も購入には当たりません。
- 違反すると最大1万カナダドルの罰金と、裁判所による売却命令の対象になります。売却命令が出ても、非カナダ人が受け取れる金額は購入価格を超えません。
- 禁止が解けても税は残ります。ブリティッシュコロンビア州は指定地域で20%、オンタリオ州は州全域で25%の上乗せ課税を外国人買い手に課しています。
禁止しているのは連邦法。まず対象かどうかを4つで判定する
この規制は州法ではなく連邦法です。条文は「非カナダ人が住宅用不動産を直接または間接に購入することを禁止する」と定めています(第4条第1項)。判定は次の順で進めるのがわかりやすい構成になっています。

「非カナダ人」に含まれるもの
個人では、カナダ市民でなく、インディアン法に基づく人でもなく、永住者でもない人が該当します。法人も対象で、カナダ国外で設立された法人のほか、カナダの法律で設立されていても株式が公開されておらず、非カナダ人に支配されている法人が含まれます。カナダ法人を作れば回避できる、という単純な話ではないということです。
地域の線引きはカナダ統計局の区分による
対象になるのは、カナダ統計局の標準地理分類2021に基づくCMAまたはCAの中にある物件です。CMHCの解説ページには、CMAは人口が合計10万人以上で、そのうち5万人以上が中心部に住んでいる地域だと記載されています。つまり都市圏の外にある別荘地やリゾート物件は、この禁止の対象から外れることになります。

住戸数と用途
対象は、最大3戸までの住宅を含む建物と、その一部(半戸建てやコンドミニアムの1戸など)です。4戸以上の集合住宅は対象外で、純粋な商業用不動産も対象になりません。投資として複数戸を運用したい場合、規制の枠外にある物件の型が存在するということです。
対象になるもの・ならないものを一覧で確認する
| 条件 | 扱い | 根拠になっている考え方 |
|---|---|---|
| CMA・CA内にある3戸以下の住宅 | 禁止の対象 | 法第4条第1項の原則 |
| CMA・CAの外にある住宅 | 対象外 | 規則が定める地理的範囲の外 |
| 4戸以上の建物 | 対象外 | residential property の定義から外れる |
| 純粋な商業用不動産 | 対象外 | 同上 |
| 空き地の取得 | 対象外(2023年3月27日以降) | 規則の改正で除外された |
| 開発目的での購入 | 対象外 | 同上 |
| 2023年1月1日より前に申し込んだ購入 | 対象外 | 施行日前の契約 |
| 相続・離婚・贈与による取得 | 対象外 | 「購入」に当たらない |
「対象外」は「自由に買える」という意味ではありません。連邦の購入禁止に当たらないだけで、州の上乗せ課税、金融機関の非居住者向け融資条件、州や自治体の空室税は別に判断されます。禁止の外に出る設計をしたつもりが、税と資金調達で成立しなくなることがあります。
例外として買える人
規則は、禁止の例外となる人を具体的に定めています。CMHCのFAQには次のような区分が挙げられています。
直近5年分の税務申告があること、居住日数が244日以上あること、購入価格が50万カナダドル以下であることといった条件が示されています。
有効な就労許可を持ち、その残存期間が183日以上あることが条件として挙げられています。
難民のほか、国際的な危機によりカナダに滞在している人が含まれます。ウクライナからの避難民に対するCUAETも例として挙げられています。
カナダ市民または永住者である配偶者と共同で購入する場合は、法第4条第2項の例外に当たります。
いずれもカナダに生活の基盤がある人を想定した例外です。日本に住みながら投資目的で購入したい人が使える枠は用意されていません。ここが、外国人枠の範囲内なら非居住者でも買えるタイのコンドミニアムのような制度と大きく違うところです。
いつまで続くのか

禁止は2年間の時限措置として始まりました。当初の期限は2025年1月1日です。2024年2月4日、当時の副首相兼財務大臣が、外国人によるカナダ住宅の所有禁止をさらに2年延長して2027年1月1日までとする意向を発表しました。CMHCの解説ページにも、この延長がそのまま記載されています。
本記事の作成時点で、2027年1月1日より先へ延長するという政府の公表は確認できませんでした。確認できていない以上、「解除される」とも「また延びる」とも書けません。購入の計画を立てるなら、期限そのものを前提にするのではなく、期限の前後どちらでも成立する条件で組むほうが安全です。同じ論点は、当初2年の予定が2029年6月30日まで延びたオーストラリアの既存住宅購入禁止でも起きています。時限措置は延びる前提で見ておくのが実務的です。
禁止が解けても残る、州の上乗せ課税
連邦の購入禁止と、州が課す外国人向けの上乗せ税は別の制度です。禁止の対象外だったとしても、州税は当然にかかります。
| 州・制度名 | 税率 | 適用範囲 | 対象者 |
|---|---|---|---|
| ブリティッシュコロンビア州 Additional property transfer tax |
20% | 指定地域(キャピタル地域圏、フレーザーバレー地域圏、メトロバンクーバー地域圏、セントラルオカナガン地域圏、ナナイモ地域圏) | 外国人(foreign national)、外国法人、課税対象の受託者 |
| オンタリオ州 Non-Resident Speculation Tax(NRST) |
25% | 州全域。2022年3月30日に20%へ引き上げて州全域へ拡大し、2022年10月25日に25%へ | 外国法人・外国人・課税対象の受託者。1戸以上6戸以下の一戸建て住宅を含む土地の移転が対象 |
ブリティッシュコロンビア州の制度は、通常の不動産取得税に加えて課される点が特徴です。州の説明では、課税されるのは登記する持分の割合に応じた住宅部分の市場価値で、たとえば外国人が70%の持分を取得するなら市場価値の70%に対して課税されると例示されています。ツワッセン・ファーストネーションの条約地に所在する物件には適用されません。

オンタリオ州のNRSTは、州の一般的な不動産取得税(Land Transfer Tax)に加えて課されます。率は2022年10月25日以降25%です。同年3月30日に20%へ引き上げられると同時に適用範囲が州全域へ広がり、その後さらに引き上げられた経緯があります。

すでに保有している人が見落としやすい税
禁止が始まる前に取得した物件を持っている場合、連邦の空き家税であるUnderused Housing Tax(UHT)の扱いが変わっている点に注意が必要です。カナダ歳入庁の案内では、2026年3月26日に国王裁可を受けたBudget 2025 Implementation Act, No. 1により、2025年以降の暦年についてはUHTの申告も納付も不要になりました。ただし2022年・2023年・2024年の3年分については、申告と納付の義務が引き続き残ります。
「廃止されたから何もしなくてよい」と読むと、過去分の申告漏れになります。UHTは税額がゼロでも申告義務が生じる設計だったため、対象になる年の申告を出していない保有者は、廃止後も遡って手続きが必要です。保有形態が個人か法人か、パートナーシップかトラストかで扱いが変わるため、対象年の判定は個別に確認してください。
いまカナダを検討する場合の現実的な選択肢
| やりたいこと | 現行制度での可否 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 日本在住のまま都市部のコンドミニアムを買う | 2027年1月1日まではできない | 期限の延長・失効に関する政府の公表 |
| CMA・CAの外にある物件を買う | 連邦の禁止の対象外 | 物件所在地がCMA・CAに含まれないかを統計局の区分で確認 |
| 4戸以上の集合住宅を買う | 連邦の禁止の対象外 | 州の上乗せ税、非居住者向け融資、管理体制 |
| 就労・留学でカナダに滞在しながら買う | 要件を満たせば例外に当たる | 居住日数、税務申告、就労許可の残存期間、価格上限 |
| カナダ市民・永住者の配偶者と共同で買う | 法の例外に該当 | 持分の設計と、州の上乗せ税の適用範囲 |
禁止の期限まで待つという判断もありますが、その間に市場が動くかどうかは別の問題です。禁止の対象外に出られる条件を満たせないなら、他国と比べて優先度を下げるのが自然な結論になります。外国人による所有の枠組みが比較的はっきりしている市場としては、コンドミニアムの外国人所有が制度として認められているフィリピンや、同意が必要な人と不要な人が明確に分かれているニュージーランドが比較対象になります。
よくある質問
日本人はカナダで家を買えないのですか
連邦法の対象になる物件、つまりCMAまたはCAの中にある3戸以下の住宅については、2027年1月1日まで購入できません。CMA・CAの外にある物件、4戸以上の建物、商業用不動産は対象外です。また、要件を満たす一時滞在者やカナダ市民・永住者の配偶者との共同購入は例外として認められています。
禁止はいつ終わりますか
現在示されている期限は2027年1月1日です。もともとの期限は2025年1月1日でしたが、2024年2月4日に政府が2年の延長を発表しました。本記事の作成時点で、それより先へ延ばす公表は確認できませんでした。
カナダ法人を設立すれば買えますか
買えるとは限りません。法の定義では、カナダの法律で設立された法人であっても、株式が公開されておらず非カナダ人に支配されている場合は「非カナダ人」に含まれます。法人を挟む形での回避を想定した条文になっています。
違反するとどうなりますか
非カナダ人本人と、違反を知りながら手助けした人は、略式手続で最大1万カナダドルの罰金に処されます。さらに、上級裁判所が住宅用不動産の売却を命じることができます。売却された場合、非カナダ人が受け取れる金額は当初の購入価格を超えません。
禁止の対象外なら税金も安いのですか
いいえ。連邦の購入禁止と州の上乗せ課税は別の制度です。ブリティッシュコロンビア州の指定地域では市場価値の20%、オンタリオ州では州全域で25%の上乗せ税が外国人買い手に課されます。
空き家税(UHT)は払わなくてよくなったのですか
2025年以降の暦年については、申告も納付も不要になりました。ただし2022年・2023年・2024年の3年分については、申告と納付の義務が残っています。過去分の手続きを済ませていない場合は、廃止後も対応が必要です。
別荘やリゾート物件なら買えますか
その物件がCMA・CAの外にあるなら、連邦の購入禁止の対象にはなりません。ただし所在地がどの区分に入るかは、カナダ統計局の標準地理分類で確認する必要があります。加えて、州や自治体の空室税、非居住者向けの融資条件は別に検討することになります。
参照した一次情報
- CMHC「Prohibition on the Purchase of Residential Property by Non-Canadians Act」(施行日・2年延長・CMAの定義)
- CMHC「Prohibition on the Purchase of Residential Property by Non-Canadians Act – Frequently asked questions」(定義・例外・対象外のケース)
- Justice Laws Website「Prohibition on the Purchase of Residential Property by Non-Canadians Act」(第2条・第4条・第6条・第7条・第8条)
- Department of Finance Canada「Government announces two-year extension to ban on foreign ownership of Canadian housing」(2024年2月4日)
- Province of British Columbia「Additional property transfer tax for foreign entities and taxable trustees」(税率20%・指定地域)
- Government of Ontario「Non-Resident Speculation Tax」(税率25%・適用範囲)
- Canada Revenue Agency「Underused Housing Tax (UHT)」(2025年以降の申告・納付の取り扱い)
