アメリカ不動産投資は、日本在住の日本人でも検討できます。ただし「外国人だから買えないか」だけを確認して終えると危険です。州・物件用途ごとの取得規制、資金調達、現地の固定資産税や保険、賃貸所得の申告、売却時のFIRPTA源泉徴収までを、購入前から一つの工程として設計する必要があります。

この記事では、米国不動産を初めて検討する日本人向けに、購入可否の確認から出口までを順番に整理します。制度・税務情報は2026年8月29日に米国政府の一次情報を確認しています。州法や個別契約、税務上の結論は物件と保有者の状況で変わるため、契約前に現地弁護士、税理士、タイトル会社へ確認してください。

結論:日本人の購入は可能でも、州・用途・立地の確認が先

一般的な住宅の取得について、外国人を全国一律に禁止する連邦ルールがあるわけではありません。一方、外国人による土地取得を規制する州法は増えており、農地は米国農務省への報告制度、軍事施設などに近い特定不動産はCFIUS(対米外国投資委員会)の審査対象になり得ます。つまり「日本国籍なら必ず買える」でも「外国人は買えない」でもなく、州、買主の属性、土地用途、所在地を照合するのが正確です。

確認対象 購入前に見ること 主な確認先
一般住宅 州法、HOA規約、賃貸規制、権利関係 州・郡、タイトル会社、弁護士
農地・森林等 外国人保有規制とAFIDA報告 USDA Farm Service Agency
特定施設周辺 CFIUSの対象不動産か CFIUS、国家安全保障に詳しい弁護士
図1:外国人が取得前に分けて確認すべき3区分。出典:CFIUSUSDA AFIDA

自己居住用の一般住宅でも、州や自治体、コンドミニアムのHOAによって短期賃貸や賃貸期間、修繕、ペットなどの条件が異なります。投資目的なら「所有できるか」だけでなく「想定する貸し方が許されるか」を売買契約前に確認します。

アメリカ不動産購入の7ステップ

  1. 1. 目的と出口
    賃貸・自己利用、保有年数、売却条件を決める
  2. 2. 州・都市選定
    需要、税、保険、規制を比較する
  3. 3. 資金計画
    自己資金、ローン、為替余力を確保する
  4. 4. 専門家選定
    仲介、弁護士、税理士、管理会社を確認する
  5. 5. 調査・契約
    インスペクション、タイトル、収支を精査する
  6. 6. 決済・賃貸
    送金、保険、管理、会計記録を整える
  7. 7. 申告・売却
    日米の申告とFIRPTAを準備する
図2:米国不動産投資の実務フロー。制度確認から出口までを逆算して進める。

1.投資目的と出口を先に決める

キャピタルゲイン狙い、長期賃貸、自己利用を混ぜると、選ぶ州や物件がぶれます。少なくとも保有予定年数、毎月の持ち出し上限、空室が続いた場合の耐久期間、売却を判断する条件を数字で決めます。米国は州・都市による価格差が大きいため、全国平均だけで投資判断をしないことが重要です。価格トレンドを比較するときは、FHFA House Price Indexの州・都市別データを使い、同じ地域・同じ指標で推移を確認します。

2.州・都市を「需要・費用・規制」で絞る

雇用、人口、供給、空室だけでなく、固定資産税、保険料、HOA費、管理料、修繕費を同じ表に並べます。ハリケーン、洪水、山火事などの災害リスクは保険の加入可否と保険料に直結します。高い表面利回りが、税金・保険・修繕後の手残りでも高いとは限りません。

3.現金購入とローンを比較する

日本の居住者が米国ローンを使う場合、米国居住者向け住宅ローンと同じ条件になるとは限りません。頭金、金利、審査資料、外貨送金、物件評価、リザーブ資金を金融機関ごとに確認します。日本側で資金調達する場合も、円の返済とドルの賃料という通貨のずれを確認してください。海外不動産ローンの基本は海外不動産投資ローンの解説も参照できます。

4.買主側の専門家をそろえる

売主や販売会社から紹介された担当者だけに依存せず、買主の利益を守る役割を明確にします。州によって弁護士が決済に関与する範囲は異なります。仲介会社のライセンス、管理会社の実績、CPAまたは税理士の非居住者申告経験、タイトル会社の見積もりを確認します。

5.デューデリジェンスを行う

オファー後は、建物インスペクション、修繕履歴、未払い税、リーエン、境界、賃貸契約、HOA議事録や特別徴収の予定などを調べます。タイトル保険は、過去の権利や未払いを原因とする請求リスクに備える仕組みです。米国消費者金融保護局は、タイトル関連費用を含むクロージングサービスは比較でき、州によって表示や必要手続きが異なると案内しています。

購入価格以外に必要な費用

米国では取得時の費用項目と負担者が州・契約で変わります。広告の価格に一律の率を足すだけでは不十分です。Loan EstimateやClosing Disclosure、タイトル会社の明細を使い、項目別に見積もります。

購入・決済時
インスペクション、鑑定、弁護士・エスクロー、タイトル検索・保険、ローン費用、登記関連
保有中
固定資産税、保険、HOA、管理、修繕、空室、会計・申告、送金
売却時
仲介・決済、修繕、税務申告、FIRPTA源泉徴収、為替差を含む日本側申告

図3:取得・保有・売却の費用棚卸し。金額は州、融資、物件、契約で変わるため見積書で確認する。出典:CFPBIRS

賃貸収入にかかる米国税

IRSは、非居住外国人が米国内不動産から得る所得について、米国の事業と実質的に関連しない場合は原則30%または租税条約上の低い税率で課税されると説明しています。一方、IRC 871(d)の選択により実質関連所得として扱い、必要経費控除を反映して申告する方法があります。この選択を行う場合はForm 1040-NRの継続的な申告などが必要です。

どちらが有利かは、減価償却、金利、管理費、保有形態、他の米国所得によって変わります。法人・LLCを使えば自動的に節税できるわけではなく、州税、年次費用、情報申告、相続税の論点が増える場合があります。契約名義を決める前に、日米双方を扱える専門家に確認してください。

売却時のFIRPTA:売却額の15%が一般的な源泉徴収

外国人が米国不動産持分を売却する場合、FIRPTAに基づき、買主側が原則として売却による実現額の15%を源泉徴収します。これは最終的な利益課税額そのものではありません。要件を満たせば例外や、Form 8288-Bによる源泉徴収額の減額証明を申請できる場合があります。申請や納税者番号の準備には時間がかかるため、売却契約を結んでから考えるのでは遅いことがあります。

米国内国歳入庁IRSのFIRPTA withholdingページ。米国不動産権益の処分に対する源泉徴収を15%(2016年2月17日より前の処分は10%)と記載している
15%という数字の出どころ。IRSは「米国不動産権益を外国人から購入する者は実現額の15%を源泉徴収する義務がある」と説明しています。出典:IRS FIRPTA withholding

日本の居住者は、日本側でも国外所得や売却益の申告が必要になる可能性があります。外国税額控除を含む扱いは、海外不動産の確定申告とあわせて確認してください。購入時から取得価額、決済費用、改良費、賃料、経費、為替レートの記録を残すことが出口対策になります。

失敗を避けるチェックリスト

  • 州法・土地用途・CFIUS該当性を確認した
  • HOAと自治体の賃貸規制を確認した
  • 固定資産税と保険の実額見積もりを取った
  • タイトル、リーエン、境界を調査した
  • インスペクション後の修繕予算を入れた
  • 空室と為替変動を含む収支を試算した
  • 管理会社の契約解除・修繕承認条件を読んだ
  • 賃貸所得とFIRPTAの申告体制を決めた
図4:契約前の最終確認。1項目でも未確認なら、解消してから送金・署名へ進む。

アメリカ不動産投資でよくある質問

日本に住んだまま購入できますか?

遠隔で進められる取引はありますが、本人確認、公証、送金、融資、州法上の手続きは案件ごとに異なります。現地を見ずに買う場合でも、第三者のインスペクションと権利調査を省略しないでください。

物件を買えば米国ビザを取得できますか?

不動産を所有することと在留資格は別の制度です。住宅の購入だけで自動的に居住資格が得られるとは考えないでください。滞在や事業を伴う計画は移民法の専門家に確認します。

利回りは何%なら合格ですか?

一律の合格値はありません。表面利回りではなく、税、保険、HOA、管理、修繕、空室、ローン、為替コストを引いた税引前キャッシュフローで比較します。価格上昇を前提に赤字を許容するなら、保有期間と撤退条件を明示します。

州をどう比較すればよいですか?

FHFAの州・都市別価格指数、自治体の人口・雇用、税務当局の固定資産税、保険見積もり、現地賃貸データを同じ期間で比較します。為替の考え方は海外不動産投資の金利・為替リスクも参考になります。

まとめ

日本人がアメリカ不動産を検討するとき、入口は「購入できるか」、本当の論点は「州・用途・立地の規制、取得後の手残り、日米申告、売却時の資金拘束まで管理できるか」です。州と物件を決める前に出口と費用表を作り、タイトル会社、弁護士、税務専門家から個別確認を取る順番が安全です。海外不動産購入全体の進め方は海外不動産購入の方法・注意点もあわせてご覧ください。

主な一次情報:IRS:非居住外国人の米国内不動産所得IRS:FIRPTA源泉徴収FHFA House Price IndexCFIUSUSDA AFIDA

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