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2026年4月20日付のフィリピン現地紙報道では、フィリピン政府に対して住宅政策の大幅な見直しを求める声が強まっています。きっかけになったのは、米国の調査会社Gallupの住宅 affordability(住宅取得のしやすさ)に関する報告で、フィリピンが住宅の手に入りにくさという点で極めて厳しい評価を受けたことです。これを受けて、フィリピンの不動産・建設業界団体であるCreba(Chamber of Real Estate and Builders’ Associations)が、現在の制度では低所得者向け住宅の供給も、民間デベロッパーの事業継続も両立しにくいと訴えました。

何が起きたのか

今回のニュースで中心になっているのは、フィリピンの住宅供給制度であるBHD(Balanced Housing Development)です。これは共和国法7279号、いわゆるUrban Development and Housing Actに基づく仕組みで、民間デベロッパーに対して一定割合の社会住宅供給を求める制度です。

記事内で示された主な論点は次の通りです。

  • Crebaの会長 Noel Cariño 氏が、制度の再調整が必要だと明言したこと
  • BHDでは、民間デベロッパーに対し分譲住宅では事業費の15%、コンドミニアムでは事業費の5%相当の社会住宅対応が求められていること
  • 業界側は、制度の趣旨自体を全面否定しているのではなく、現行の運用が重すぎると主張していること
  • 2018年以降、開発事業者が社会住宅向けのHousing Escrow Fundに拠出してきた金額が、DHSUD記録ベースで150億ペソに達していること
  • その拠出金が回収不能な前払い損失として扱われていると業界側が指摘していること
  • さらに当局が法定要件に加えて追加75%の負担を求めているため、実質的に事業費の最大15%近い回収不能コストになり得ると懸念されていることです。

この問題提起は、単なる業界の不満ではありません。Cariño氏は、付加価値税12%、キャピタルゲイン税、固定資産税、社会住宅税など各種負担が既に重い中で、さらに追加的な損失負担が続けば、住宅産業自体の縮小や機能不全につながりかねないと警告しています。

背景にある住宅 affordability crisis とは何か

「affordability crisis」とは、簡単に言えば、一般の人が住宅を買える・借りられる水準を超えて価格やコストが上がってしまう問題です。住宅価格、所得水準、住宅ローン金利、建設コスト、供給量のバランスが崩れると起こります。

フィリピンでこの問題が深刻化しやすい背景には、いくつかの構造要因があります。

  • 都市部への人口流入が続き、住宅需要が強いこと
  • 中間層・低所得層向けの供給が不足しやすいこと
  • 建設コストや税負担が上昇しやすいこと
  • 民間デベロッパーに政策負担を多く求めると、結果として採算の合う物件しか作られにくくなること

つまり、社会住宅を増やしたい政策意図はある一方で、民間事業者の採算を圧迫しすぎると、かえって供給全体が鈍るという矛盾が起きやすい局面です。今回の報道は、その矛盾がかなり表面化してきたことを示しています。

用語の整理

このニュースを理解するうえで、いくつかの用語を押さえておくと見通しがよくなります。

BHD

Balanced Housing Developmentの略です。民間デベロッパーに一定割合の社会住宅供給や拠出を求める制度です。フィリピンでは住宅政策の重要な柱ですが、負担の重さと実効性が争点になっています。

DHSUD

Department of Human Settlements and Urban Developmentの略です。フィリピンの住宅・都市開発を担当する政府機関です。制度運用や実施規則の整備を担っています。

Housing Escrow Fund

社会住宅向けの資金管理口座のようなものです。本来は社会住宅プロジェクトに活用されるべき資金ですが、記事では管理や報告の信頼性に問題があるとの指摘が出ています。

COA

Commission on Auditの略です。フィリピンの会計監査機関です。今回の記事では、開発事業者からの拠出金について、長年にわたりモニタリングや会計管理、報告が不十分で、残高や使途の報告も信頼性に欠け、不正リスクにさらされていた可能性があると指摘されています。

日本人投資家が見るべきポイント

フィリピン不動産に関心のある日本人投資家にとって、今回のニュースは「低所得者向け住宅政策の話」で終わりません。民間不動産事業全体の収益構造、供給構造、規制リスクを見る材料になります。

注目点は主に次の通りです。

  • 住宅政策の見直しが進めば、デベロッパーのコスト構造が変わる可能性があること
  • 負担が軽くなれば、供給回復や新規開発の採算改善につながる可能性があること
  • 逆に負担強化が続けば、価格転嫁や供給減少、プロジェクト遅延が起こる可能性があること
  • エスクロー資金の管理問題は、制度透明性や行政執行の質を見る重要な材料であること
  • フィリピン不動産では、立地や需要だけでなく、政策実務と制度運用の安定性も投資判断に直結することです。

コンドミニアム投資を検討する日本人にとっては、表面的な販売価格や利回りだけで判断しないことが重要です。開発会社がどの程度政策負担を抱えているか、販売在庫の消化状況はどうか、今後の規制変更で追加コストが出る余地があるかまで確認したほうが安全です。

ニュースの見解

今回のニュースは、フィリピン不動産市場の弱さを示すものではなく、むしろ「住宅需要は強いのに、制度設計がそれをうまく受け止めきれていない」という構図を示しています。これは投資家にとって重要です。需要が弱い市場より、需要はあるが制度調整が必要な市場のほうが、中長期では改善余地が大きいからです。

日本人の海外不動産投資家としては、今回のニュースから次のように考えるのが現実的です。

  • フィリピンは依然として人口動態と都市化を背景に住宅需要が強い市場です
  • ただし政策負担や行政運用が収益性を左右しやすく、規制リスクの見極めが欠かせません
  • とくに新築コンドミニアム投資では、デベロッパーの財務余力、供給計画、制度変更への耐性を確認する必要があります
  • 中長期では、住宅政策の合理化が進めば、供給拡大と市場の健全化につながる可能性があります
  • 一方で、制度の不透明さや資金管理の甘さが残る場合は、価格形成や事業進捗に歪みが出るおそれがあります

投資判断としては、今すぐ全面的に強気になる局面ではありません。ただし、政策見直しの方向が明確になり、実際に制度運用の透明性が改善するなら、フィリピン住宅市場には再評価の余地があります。日本人投資家は、物件単体ではなく、制度変更の流れとデベロッパーの対応力をセットで見るべきです。そうすることで、表面利回りでは見えない本当のリスクと機会が判断しやすくなります。

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