モロッコ治安の全体評価と最新リスク傾向
モロッコは北アフリカの中では比較的安定した治安を維持しており、主要都市は外国人に対する警備体制が強化されています。特に国際空港・観光エリア・政府関連施設では、警察官や警備員の配置が増え、外国人の安全確保を優先した政策が継続しています。一方で、都市部では観光客や外国人投資家を狙った軽犯罪が依然として発生しており、訪問目的が「投資・物件視察」である場合はリスクの捉え方が一般旅行者とは大きく異なります。
国際的な安全評価では、米国務省・英政府ともにモロッコを「レベル2(注意強化)」とし、渡航は可能としながらもテロと軽犯罪の警戒を求めています。テロに関しては当局が積極的に摘発を行っているため大規模な事件は近年発生していませんが、観光地や商業施設など外国人が集まりやすい場所は潜在的な標的とされており、警備体制は常に強化される傾向にあります。
軽犯罪については、旧市街(メディナ)や繁華街でのスリやひったくりが多く、特に携行品・スマートフォン・財布などを狙った手口が増加傾向にあります。また、偽ガイドによる案内強要や高額請求、カードスキミングなど、旅行者心理を突いた詐欺も報告されています。投資家の場合は「視察ルートが決まっている」「土地勘のない状態での移動が多い」という事情から、犯罪に遭遇しやすくなる点が特徴です。
日中は比較的安全なエリアでも、夜間は急に人通りが減るため犯罪リスクが上昇します。視察は可能な限り日中に行い、治安の安定した地区に滞在することが基本になります。特に港湾都市・大都市周辺では人口流入が活発で、地域ごとの治安の差が大きいため、物件候補地の周辺安全性を事前に確認することが重要です。
政治情勢にも注意が必要です。大都市ではデモが突発的に発生することがあり、交通規制や警察との衝突による混乱が起きる場合があります。基本的には外国人を狙った暴力はありませんが、巻き込まれると移動が制限されるため、渡航中は現地ニュースや大使館の情報を随時チェックすることが推奨されます。
総合すると、モロッコは「渡航可能な安全水準」でありながら、投資目的の滞在は一般旅行よりもリスク要素が多くなりやすい国です。地域差・時間帯・行動範囲による治安変動が大きく、事前調査と計画的な移動が安全確保の鍵になります。

主要都市別の治安状況。投資家が見るべき安全度
主要都市ごとに治安リスクの質が異なるため、物件の購入判断や視察の計画は都市の特性に応じて見極める必要があります。投資目的の滞在では「観光客の肌感覚」ではなく、「投資家としての安全指標」を基準に判断することが重要です。
カサブランカ(Casablanca)
モロッコ経済の中心都市で、ビジネスパーソンや投資家が最も利用する都市です。大都市特有の軽犯罪が多く、スリやひったくりは商業地・駅周辺で発生しやすい傾向があります。とくにビジネス街では「外国人=資金がある」という認識が強いため、視察中は高価な時計やバッグを避けることが安全につながります。
海岸沿いの散策は昼間であれば比較的安全ですが、夜間はタクシー移動を徹底したほうが安心です。
投資家向けのポイントとして、中心部の開発が進んでおり物件価格が上昇しやすい一方、人口密度と交通量が多く路地の治安が安定しない場所もあります。物件周辺の昼夜の雰囲気を必ず確認したほうが良い都市です。
マラケシュ(Marrakech)
観光都市として知名度の高いマラケシュは、外国人を狙うスリ・詐欺・観光客追尾の偽ガイド行為が多発しています。メディナ内は迷路状で視察ルートが複雑になりやすく、個人行動はリスクが高まります。
一方で、新市街(ギリーズなど)は比較的落ち着いており、投資対象として検討しやすいエリアです。観光需要が高いため、短期レンタル物件の利回りを狙う投資家に人気があります。
ただし観光地特有の価格変動があり、詐欺的な投資案件も出回りやすいため、現地エージェントの信用性を細かく確認する必要があります。
タンジール(Tangier)
港湾都市で物流拠点として発展を続けていますが、港周辺では盗難やバイクによるひったくりが多いとされています。とくにフェリー到着エリアや旧市街の入口付近は混雑が多く、スリの温床になりがちです。
一方で都市開発が進む新市街側は治安が安定しており、外資系企業の進出も多いため、長期的な不動産価値の上昇を期待する投資家に注目されています。
視察時は港湾エリアを無理に歩かず、配車アプリまたは公式タクシーのみを利用することで安全に行動できます。
フェズ(Fez)
文化都市として知られ、美しい旧市街には多くの観光客が訪れますが、旧市街は細道が多く、偽ガイドや強引な案内が深刻な問題として続いています。路地に入ると警察の監視が届きにくく、観光客が狙われやすいため、同行者や現地エージェントの有無が安全性を大きく左右します。
新市街エリアは比較的落ち着いていますが、旧市街近接地域では夜間の徒歩移動は避けたほうが安全です。
不動産の購入では、旧市街の歴史的建物は修繕コストと法規制が複雑なため、管理体制が整ったエリアを選ぶ方が投資効率は安定します。
ラバト(Rabat)
首都ラバトは比較的治安が良い都市で、官公庁街の監視体制も厳重です。政治デモが発生することはありますが、適切に管理されているケースが多く、投資家にとっては安定した滞在が可能です。
海岸周辺は夜間に人通りが少なくなるため注意は必要ですが、全体的に落ち着いた雰囲気で長期滞在向きの都市といえます。
投資家が都市別に注意すべきポイント一覧
- カサブランカ:軽犯罪多め、商業地中心のスリ対策が必須
- マラケシュ:観光詐欺・偽ガイドが多い。新市街は比較的安全
- タンジール:港周辺の盗難・ひったくりに注意
- フェズ:旧市街の強引な客引きや案内がリスク
- ラバト:比較的安定しているがデモ発生時は近づかない

不動産投資家が直面しやすい治安リスク
モロッコで不動産投資を検討する際は、観光客向けの一般的な治安情報だけでは不十分です。現地視察、物件契約、管理委託など投資家特有の行動は、犯罪者や悪質業者に狙われやすいポイントになりやすく、事前にリスク構造を理解しておくことが重要です。
物件視察中に狙われやすいリスク
物件視察は「高額取引を行う外国人」が行う行動として認識されており、以下のようなリスクが発生しやすいです。
- 非公認ガイドによる強引な同行・高額請求
メディナや旧市街では、投資家が視察していることを察知した人物が「不動産に詳しい」と接触し、勝手に案内したうえで高額料金を請求するケースがあります。断っても執拗に同行しようとする例も報告されています。 - 視察ルートを尾行されるケース
複数物件を回る行動パターンが犯罪者にとって分かりやすく、バッグやスマホなどのひったくりに狙われることがあります。特にカサブランカ・マラケシュの混雑エリアでは注意が必要です。 - 空室物件での安全確保が難しい状況
管理が行き届いていない物件では、防犯設備や扉・窓が脆弱で、視察時に窃盗目的の侵入者と遭遇するケースがあります。
契約関連で発生しやすいリスク
投資家を狙った詐欺は「契約段階」で発生することが多く、被害額が大きくなる傾向があります。
- 販売価格の吊り上げや条件の不当変更
口頭で提示された条件と契約内容が異なる、高額な手数料が後から追加されるなど、外国人投資家に対し不利な契約を迫る事例があります。 - 所有権・権利関係の不透明さを悪用した詐欺
モロッコでは土地・建物の権利証明の書式が複数存在し、偽造書類や未承認物件の販売によるトラブルが起こりやすいです。工事中物件では着工すらしていない案件が販売される“影の投資案件”も問題化しています。 - 仲介者の身元が曖昧なまま契約が進むケース
現地アドバイザーやブローカーを名乗る人物が無許可で仲介を行い、手付金のみ受け取って消える手口が確認されています。
滞在中・管理委託中に起こりやすいリスク
購入後の運用フェーズでは、管理体制の弱さや外部とのトラブルが投資価値を下げる要因となります。
- 短期滞在物件での盗難・内部不正
清掃スタッフ、管理業者、短期滞在者による室内盗難が発生しやすい傾向があります。管理会社の信頼性は物件価値に直結します。 - 管理業者のサービス品質による損害
約束した清掃やメンテナンスが行われず、レビュー悪化や稼働率低下につながるケースがあります。投資家不在を狙い、報告内容を虚偽にする業者も存在します。 - 近隣エリアのスラム化・治安悪化の進行
物件周辺の治安が時間とともに悪化し、賃料が下落するケースがあります。開発計画の遅延や停止により、将来価値が大きく下がるリスクもあります。
投資家が巻き込まれやすい特殊な詐欺・トラブル
一般の観光客よりも“狙い甲斐がある”と見なされる投資家には、以下のようなケースも目立ちます。
- 不動産を餌にした人間関係トラブル(恋愛・婚姻詐欺)
SNSや現地で知り合った相手から「共同投資」を持ちかけられ、金銭を要求される事例があります。 - 高額ランドバンキング関連の虚偽プロジェクト
西サハラ地域の土地開発プロジェクトを勧誘され、実際には建設許可が存在しないことが後から判明する例もあります。 - “投資家専用”を名乗る非正規リスクヘッジサービス
盗難保険や資産保護を名乗る民間サービスのうち、実体のない団体が投資家にのみ高額な契約を持ちかけることがあります。

地域別で避けるべき危険エリア
投資目的でモロッコに渡航する場合、安全に視察や商談を進めるためには「行かないほうが良いエリア」を正確に把握しておくことが重要です。特に国境周辺や政治的に不安定な地域、さらに観光地とは異なるリスクが存在するため、治安情報は最新のものを確認しながら慎重に行動することが求められます。
アルジェリア国境付近(20〜30km 圏内)
アルジェリアとの国境地帯は、複数の政府機関が「渡航禁止」に指定している最も危険度の高いエリアです。
- 軍が展開し、誤って接近するだけで拘束・尋問される可能性があります。
- 国境線が視覚的に分かりにくく、GPS頼りの移動は非常に危険です。
- 武装勢力の潜伏や不審車両の横行など、外国人を巻き込む事件の発生確率が高い地域として警告されています。
投資家が視察でこの地域に近づく必要はまったくなく、完全に避けるのが最適です。
西サハラ地域(西サハラ全域)
西サハラはモロッコの統治が及びにくく、治安リスクが突出して高いエリアです。
- 武装勢力の拠点が点在し、外国人を狙った誘拐や襲撃リスクがあります。
- 未処理の地雷・不発弾が多数残存し、観光目的・事業目的ともに自由な移動は不可能です。
- カナダ・英国・米国を含む複数の国が「不要不急の渡航禁止」「全ての渡航を避ける地域」と明確に警告しています。
投資家が誤って視察や調査で足を踏み入れることのないよう、地図上で位置を確認しておくことが重要です。
ハイアトラス山脈南部・山岳の僻地
一部の山岳エリアでは、過去に外国人旅行者を狙った事件が発生しており、現在も治安当局が警戒を続けています。
- 人の少ない山道では犯罪発生時に助けを求められず、救助まで時間を要します。
- ガイド不在での単独行動は拉致・強盗のリスクが高まります。
- 道路環境が悪く、夜間走行は事故・犯罪ともに危険性が上昇します。
不動産視察の場合、山間部はそもそも投資対象外であることが多いため、立ち寄る理由がない限り避けるのが安全です。
カサブランカ・マラケシュの郊外道路・夜間のビーチ周辺
都市部自体は比較的安全ですが、「郊外」「夜間」に限って急にリスクが高まります。
- ビーチ付近では夜間の刃物を使った強盗が報告されています。
- 街灯が少なく、車やバイクを使ったひったくりが多発します。
- 人通りのない道路では、外国人狙いのスリやバッグ奪取が起こりやすい傾向があります。
視察や商談が夜間に及ぶ場合は、必ず配車アプリ・公式タクシーを利用し、徒歩移動を避けることが安全です。
港湾エリア(タンジール・ナドール周辺)
港町は物流拠点として栄える一方で、軽犯罪が多い場所でもあります。
- 密輸関連の犯罪組織が動くことがあり、外国人への窃盗が日常的に発生
- 夜間は人の往来が減り、襲撃・強盗のリスクが増加
- スマホやバッグを狙ったバイク窃盗が都市部より多め
不動産に関係する視察の場合、港湾エリアに用事がなければ近づかない判断が賢明です。
メディナ(旧市街)の一部狭小エリア
マラケシュやフェズの旧市街は魅力的な観光地ですが、一部の細い路地はリスクがあります。
- 偽ガイドが執拗に案内を強要し、高額請求につながるケース
- 故意に道を間違わせて迷路のような路地に誘導する詐欺
- 観光客が密集し、スリ・置き引きの温床になりやすい
旧市街を歩く場合は「公式ガイド利用」「主要ルートのみ移動」が基本です。

現地で増加している犯罪タイプと対策
主要都市の開発が進む一方で、投資家が短期渡航する場面を狙った犯罪が局地的に増加しています。特に観光客やビジネス訪問者は金銭的余裕があると見られやすく、不動産視察中も標的になりやすいため、犯罪の特徴と実践的な対策を把握することが重要です。
バイクによるスマホ・バッグのひったくり
都市部では、二人乗りバイクによるひったくりが継続的に増えています。スマホを片手に地図を確認している観光客が狙われやすく、旧市街・ビーチ沿い・交通量の多い交差点で特に発生しやすい傾向があります。
対策
- スマホは歩きながら操作せず、建物内や人目のある場所で確認する
- ショルダーバッグは身体の前側に掛ける
- 大通り沿いの路肩やバイクが通りやすい道で立ち止まらない
- 高級スマホケースやブランドバッグの使用を控える
クレジットカードスキミングと決済詐欺
クレジットカードのスキミング被害は、観光都市で繰り返し報告されています。カード情報を抜き取り、不正決済に利用されるケースが中心で、店舗の決済端末に細工されている事例もあります。
対策
- カード決済時は端末から目を離さない
- 不自然なカードリーダー(厚みが異常・外装のガタつき)には触れない
- ATMは銀行内か大型商業施設内のみで使用する
- 渡航中はカード利用通知をオンにし、不審履歴を即確認する
偽ガイドや非公式案内による高額請求
観光地やメディナ周辺では、非公式ガイドや案内人を装い、途中から高額料金を請求するトラブルが増えています。不動産視察の同行者として接触してくるケースもあり、土地勘のない投資家を狙った勧誘が問題になっています。
対策
- 公式認定ガイド(許可証バッジの提示)以外は利用しない
- 不動産視察は正規のエージェントを事前に選定し、契約内容を共有する
- 「無料案内」「近道を教える」という声掛けには一切応じない
- エージェントの名刺・免許番号を控えておく
夜間の暴行・強盗リスクの増加
カサブランカやマラケシュの一部エリアでは、夜間の路地や海沿いの暗い場所で強盗被害が報告されています。刃物を使った脅迫もみられ、抵抗すると負傷するリスクが高まります。
対策
- 夜間の徒歩移動を避け、配車アプリか公式タクシーを利用する
- 飲食店から宿泊先への移動ルートは事前に確保しておく
- 高額の現金・時計・アクセサリーを持ち歩かない
- 無人のビーチや空き地に近づかない
物件視察中の詐欺・押し売り
投資家を狙った「現地限定価格」「至急契約が必要」といった詐欺が増えています。工事中物件や非公開物件を理由に内覧を迫られ、現金を求められるケースもあります。
対策
- 契約・送金・手付金は現地で即断せず、日本側専門家と二重チェックする
- 工事中物件は建築許可・登記状況・施工企業を事前に確認する
- エージェントを複数社比較し、口コミと免許番号の照合を行う
- 現金の手渡しを求める業者は避ける
ATM・路上での狙い撃ち犯罪
日中は比較的安全ですが、混雑する市場やバスターミナル周辺では現金を引き出した直後に尾行され、スリやひったくりに遭うケースがあります。
対策
- ATM利用時は周囲を確認し、複数人に囲まれない場所を選ぶ
- 引き出した現金を片手で数えない
- 袋や財布を取り出す動作を最小限にする
- 路上で声をかけられたら足を止めず、距離を取る

文化・法律が治安に影響する点
モロッコは観光大国として外国人に寛容な面がある一方で、保守的なイスラム文化と独自の法律が生活のあらゆる場面に影響しています。不動産投資家や視察目的の滞在者は、文化・宗教・法制度への理解不足から、思わぬトラブルを招くケースが少なくありません。ここでは、治安リスクと直結するポイントを整理し、滞在中に守るべき実務的ルールをまとめます。
宗教的価値観と日常行動が治安に及ぼす影響
モロッコ社会ではイスラム教が生活の根幹を成しており、宗教行為への無理解や不注意な振る舞いがトラブルを招くことがあります。
特にラマダン期間中は宗教的義務に対する意識が一層強まり、外国人でも以下の行動が誤解を生みやすいです。
- 日中の飲食や喫煙を人前で行う
- 大声や騒音を出して周囲の祈りを妨げる
- 宗教施設周辺での不用意な撮影や短い服装
こうした行動は軽い注意で済む場合もありますが、状況により警察介入や罰金の対象になる可能性があります。
不動産視察中も、宗教的な時間帯(礼拝・断食明けの夕刻)を避け、移動や交渉のスケジュールを調整することが安全につながります。
法律・慣習が関係する対人トラブルのリスク
モロッコでは性的・婚姻に関する法律が日本とは大きく異なります。外国人でも「周囲からの通報」でトラブル化する事例があり、治安リスクとして無視できません。
未婚カップル・同伴者との行動
- 未婚カップルの同室宿泊は、都市部のホテルでは黙認されることが多いものの、地域によっては問題視される
- 公共の場での密着・過度なスキンシップは、治安当局に注意される可能性がある
- 視察同行者が異性の場合、軽い誤解から通報されるケースも報告されている
不動産視察では複数名での移動が多いため、同行者との距離感・振る舞いには注意が必要です。
同性間の恋愛表現
- 同性間の恋愛行為はモロッコでは違法
- 軽い接触や写真撮影でも、公共の場では誤解を招く可能性がある
視察チーム内に多様なバックグラウンドのメンバーがいる場合、事前の注意共有が必須です。
撮影・機材・表現行為に関わる法律
モロッコでは外国人の撮影行為に対する規制が多く、知らずに行うと身柄拘束や罰金につながります。
- 軍施設、政府関連施設、警察署の撮影は禁止
- ドローンは許可制で、無許可の場合は没収・罰金
- 宗教施設や旧市街では住民の顔を写すことがトラブルのもと
不動産投資家が物件周辺の動画を記録する際、ドローン撮影や長時間の撮影は特に注意が必要です。現地エージェントの許可確認が安全確保につながります。
女性・単独行動での治安上の配慮
女性に対する声かけ・軽いつきまといは地方都市を中心に報告されています。
不動産視察の場合、女性担当者が一人で街区の調査を行うと、以下のリスクが高まります。
- 不要な声かけによるストレス・トラブル
- 人通りの少ない路地での軽犯罪
- 誤解による警察介入
控えめな服装に加え、昼間の人通りが多い時間帯の視察計画を組むことでリスクを低減できます。
宗教・政治への発言が及ぼす治安リスク
モロッコでは王政や宗教に対する批判は厳しい処罰の対象になることがあります。
特に以下の行為は避けるべきです。
- SNSで宗教や政治体制を揶揄する投稿
- 王室関連施設や行事の批判的発言
- 現地の政治デモに近づく行動
海外不動産視察中は、SNS投稿の内容すら投資家の安全に影響するため、慎重な行動が求められます。
投資家特有の「治安に関係する誤解されやすい行動」
不動産視察ならではの行動が、文化や法律とのギャップにより誤解を招くケースがあります。
- 現地住民の住宅前で長時間撮影
- 路地や空き地を繰り返し調査している姿が不審に見える
- 現場スタッフとの激しい交渉が「揉め事」とみなされる
- 警備員のいるエリアで許可なく敷地に入る
これらはスムーズな投資活動を妨げるだけでなく、治安当局の介入につながる場合もあります。事前に現地エージェントと役割を明確化し、行動前に許可を取ることが安全確保の基本です。

投資家・視察者が安全に滞在するための実務対策
投資目的の渡航では、一般旅行者よりも訪問先や行動時間が限定され、犯罪リスク・詐欺リスクに遭遇する確率が高まります。現地情勢を踏まえた「実務的な安全対策」をまとめました。
公式タクシー・配車アプリを優先して利用する
移動トラブルは犯罪被害につながりやすいため、移動手段の選択が最重要です。
- 市街地ではメーター制の「プチタクシー」、都市間では「グランタクシー」を利用します。
- 事前登録制の配車アプリ(Careem など)は比較的安全で、料金トラブルも起こりにくいです。
- 夜間や郊外の徒歩移動は避け、視察先への移動はドライバー付き車両を依頼するのが最も安全です。
現地エージェント・案内人の身元を必ず事前確認する
不動産視察では、偽ガイドや無許可ブローカーがもっとも大きなリスクとなります。
- 身元・会社登録番号・過去の取引実績・担当者の身分証(CIN)の提示を必須とします。
- 契約書・案内ルート・内覧リストは事前にメールで受け取り、記録を残します。
- メディナ(旧市街)や観光地周辺で「ついてきて案内する」と声をかけられるケースは、ほぼ詐欺または高額請求につながるため無視するのが安全です。
視察スケジュール・移動ルートを日本側に共有しておく
犯罪・事故・立ち入り禁止エリアなどのリスクに備え、行動情報の共有は必須です。
- 日程・立ち寄り場所・移動時間帯・担当エージェント名を、家族・社内担当者に共有します。
- 緊急連絡時の連絡経路(WhatsApp など)を事前に統一しておきます。
宿泊はセキュリティとレビューの実績で選ぶ
物件視察は「現地の中級宿」で済ませる投資家も多いですが、治安上のリスクは確実に上がります。
- ホテルの条件は「24時間ガードマン配置」「監視カメラの稼働」「セーフティボックス設置」。
- 国際ブランド(マリオット、ヒルトン系など)はセキュリティ基準が安定しており安心です。
- 民泊・リヤド利用時は「玄関の施錠構造」「宿泊者のレビュー」「管理者の常駐有無」を必ず確認します。
夜間外出と人通りの少ないエリアは避ける
犯罪統計でも、夜間・薄暗い路地・ビーチ沿いの人の少ない区画はリスクが急増します。
- マラケシュ旧市街・カサブランカ中心部・タンジール港湾部は、夜間の独歩は特に危険度が上がります。
- ビジネスディナー後は必ずホテルまで車を手配します。
スマホとバッグは「狙われやすい位置」に置かない
モロッコで多いのはバイクによるスマホ・バッグのひったくりです。
- スマホの「手持ち操作」は路地や車道沿いで避けます。
- バッグは身体の前側で固定し、斜めがけでストラップ短めが安全です。
- 腕時計・ブランド品の露出は控えます。
金銭・カード管理を「分散保管」で行う
スキミングやATM盗難は主要都市で継続して発生しています。
- クレジットカードは2枚以上に分け、1枚はホテルのセーフティボックスに保管します。
- ATMは銀行内・ショッピングモール内のものを日中に利用します。
- 高額現金を持ち歩かず、必要額だけを分散して携帯します。
視察前に「周辺治安スクリーニング」を行う
物件の場所だけで判断せず、周辺要因をチェックします。
- 周囲の街灯の有無
- 昼夜の人通りの差
- 最寄り警察署までの距離
- スラム化・再開発計画の有無
- 観光地・港湾の近接度による軽犯罪リスク
海外旅行保険は「携行品補償+緊急医療搬送」まで加入する
モロッコは都市部以外の医療資源に偏りがあり、緊急搬送が必要になるケースがあります。
- 携行品補償(スマホ・PC・カメラなど投資家必須アイテム)
- 緊急医療搬送(EU圏などへの空路搬送にも対応)
- 現地キャッシュレス診療対応
これらを満たす保険を選ぶことでトラブル時の負担が大幅に減ります。
デジタルセキュリティも重要
投資情報・データを扱う渡航者はオンラインの保護も必須です。
- 公共Wi-Fiは利用せず、現地SIMまたはモバイルルーターを使用します。
- 不審なAirDrop・Bluetooth接続は拒否します。
- 契約書・取引データは暗号化フォルダで管理します。

物件購入前に確認すべき治安指標チェックリスト
投資用不動産はロケーションの魅力だけでなく、「治安の質」を定量・定性の両面から把握することが不可欠です。モロッコは街区ごとの差が大きく、治安指標を体系的に確認することで、購入後のリスクを大幅に減らせます。以下は、不動産投資家が現地視察で必ずチェックすべき項目を整理したチェックリストです。
物件周辺の安全性を見極めるチェック
昼夜の人通りと生活動線
- 昼だけでなく日没後の人通りを確認する
- 住民層(家族世帯、労働者、観光客など)の傾向を把握する
- 過度に人が減る時間帯の有無を確認する
犯罪発生マップと警察拠点
- 市区ごとの犯罪発生マップを取得し、該当街区の傾向を確認する
- 警察署・交番・巡回ルートまでの距離を把握する
- メディナ周辺など、犯罪が多発するエリアとの距離を確認する
インフラ環境が示す治安の質
道路照明・停電頻度
- 物件前・主要道路の照明の明るさと均一性を確認する
- 夜間に暗所が発生していないかを調べる
- 停電の頻度・復旧の早さを地元住民にヒアリングする
監視カメラ・警備体制
- 監視カメラの設置場所と死角の有無を確認する
- ガードマンの人数・シフト体制・巡回頻度を確認する
- 出入り管理があるゲート付きコミュニティかどうかを確認する
周辺地域の治安トレンドと将来性
スラム化・違法建築の有無
- 隣接ブロックに老朽家屋・放置車両・未舗装エリアがないか確認する
- 違法建築が密集する区域が付近にないか把握する
- ゴミの散乱・落書きなど、街区の管理状況を観察する
開発計画による治安変動
- 近隣でホテル・商業施設・インフラ整備の予定があるか調べる
- 観光・港湾エリアとの距離を確認し、観光客狙いの犯罪リスクを判断する
- 市区の治安改善プロジェクトや再開発計画を調査する
投資運用で必須となる追加チェック
管理会社の信頼性
- 24時間対応の有無を確認する
- 管理会社のトラブル対応実績を確認する
- スタッフ数・駐在スタッフの質を調べる
入居者層と契約リスク
- 短期滞在者が多い地域かどうか把握する
- 賃貸契約の形式(保証金制度、契約期間、更新条件)を確認する
- 無断滞在や近隣トラブルの発生傾向を調べる

