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2025年11月25日、フィリピンの暗号資産ニュースサイト「BitPinas」が、分散型取引所ApeX Protocolの調査結果として「Crypto Comfort Index(クリプト・コンフォート指数)」を発表しました。
この調査の中で、フィリピンは「日常生活で仮想通貨(暗号資産)を使いやすい国ランキング」で世界10位となりました。
主なポイントは次のとおりです。
- 調査主体:ApeX Protocol(分散型取引所)
- 発表日:2025年11月(BitPinas掲載は2025年11月25日)
- 指数名:Crypto Comfort Index(0〜100点で評価)
- フィリピンのスコア:73.5(世界10位)
- フィリピンのクリプト保有率:10.6%
- 「pay with crypto(仮想通貨で支払う)」の月間検索数:3,500件
- 仮想通貨:
- 法的に利用が認められている
- 仮想通貨デビットカードの利用が可能
- 日常の店頭・オンライン取引での利用が可能
- ただし、不動産の購入を仮想通貨で行う仕組みはまだ整備されていない
同じ指標では、上位国は次のようになっています。
- 1位:シンガポール(スコア99.0、保有率約24.4%、不動産購入もクリプト対応)
- 2位:アメリカ(97.0、保有率15.5%、3万台超のクリプトATM、不動産購入も可)
- 3位:スイス(95.3、1,130台のATM、不動産購入も可)
- 4位:香港(93.3、保有率14.3%、日常決済とデビットカードに対応)
- 5位:カナダ(90.1、3,000台超のクリプトATM、不動産購入も可)
フィリピンは、ATM台数や不動産のクリプト決済では上位国に劣るものの、
「保有率」「デビットカード」「日常決済」などがバランスよく整備されていることから、
総合スコア73.5でトップ10入りを果たしています。
Crypto Comfort Indexとは何か
ニュースの理解のために、Crypto Comfort Indexの中身を整理します。
この指数は、以下の7つの指標を組み合わせて算出されています。
- 各国の仮想通貨保有率
- 人口当たりの仮想通貨ATM台数
- 国内に拠点を置く仮想通貨取引所の有無・数
- 「pay with crypto」など支払い関連の検索ボリューム
- 仮想通貨デビットカードの有無
- 国内(インカントリー)で仮想通貨支払いができるか
- 不動産を仮想通貨で購入できるかどうか
これらを0〜100点にスコア化し、「その国で仮想通貨をどれだけ“日常使いしやすいか”」を可視化したものがCrypto Comfort Indexです。
難しい用語も整理しておきます。
- 分散型取引所(DEX):
中央管理者を置かず、ブロックチェーン上のスマートコントラクトで取引を行う取引所のことです。ApeX Protocolはその一つです。 - 仮想通貨デビットカード:
ウォレット内の仮想通貨をチャージして使えるカードで、支払い時には法定通貨に自動変換されるタイプが一般的です。 - インカントリー取引:
その国の店舗やオンラインサービスで、実際に仮想通貨を使って支払いができることを指します。
フィリピンの仮想通貨環境の特徴
今回の調査で分かる、フィリピンの現状の特徴は次の通りです。
- 仮想通貨の「保有率」は10.6%と、決して低くない水準
- 仮想通貨での支払いに対する関心も高く、「pay with crypto」の検索が月3,500件
- 仮想通貨デビットカードが利用可能で、日常の店舗・オンライン決済にも対応
- 規制上は「合法」と整理されており、利用環境は整備されつつある
- 一方で「不動産の購入を仮想通貨で行う」仕組みはまだ整っていない
つまりフィリピンは、
- 「日々の支払い」における仮想通貨利用は広がりつつある
- しかし「大口の資産(不動産など)の購入」に仮想通貨を直接使う段階には達していない
という「中間段階」にあるといえます。
若い世代中心の普及と政府の姿勢
ApeX Protocolのコメントによると、世界的に見て仮想通貨普及の中心は若い世代であり、
各国政府はその動きに追いつこうと、規制整備や活用のルールづくりを進めているとされています。
フィリピンも例外ではなく、
- 若い世代を中心に仮想通貨・NFT・ゲーム(Play-to-Earnなど)への関心が高い
- 政府・規制当局も、違法行為を抑えつつ産業として取り込む方向性を模索している
という状況にあります。
このため、
- デジタル決済や送金サービス
- クリプト関連スタートアップ
- Web3・ブロックチェーン関連ビジネス
といった分野が、首都圏マニラや主要都市を中心に徐々に広がっています。
他国と比較したフィリピンのポジション
不動産投資家の視点で重要なのは、「不動産を仮想通貨で買える国」との比較です。
上位国のうち、
- シンガポール
- アメリカ
- スイス
- カナダ
- ポルトガル
- アイルランド
などは、調査時点で「仮想通貨による不動産購入も可能」とされています。
一方、
- 香港
- ブラジル
- フィリピン
は、
- 日常の仮想通貨決済は進んでいる
- しかし、不動産購入についてはまだ対応していない
という位置づけです。
まとめると、
- フィリピンは東南アジアの中でも「日常利用しやすい国」に入る
- ただし、不動産という観点では「シンガポールや一部欧米諸国よりも制度面が一歩後ろ」にいる
という整理ができます。
フィリピン不動産市場とデジタル資金の関係
現時点で、フィリピンでは「仮想通貨で直接不動産を購入する」ことは一般的ではありませんが、
不動産投資との間接的なつながりは、すでにいくつか見えてきます。
たとえば、今後想定できる影響としては以下のようなものがあります。
- 海外からの資金流入の変化
- 海外在住のフィリピン人(OFW)の送金や、外国人投資家が、
将来的にステーブルコインなどのデジタル資産を経由してフィリピンに資金を送る可能性があります。 - デジタル決済インフラの整備
- 家賃・共益費・各種サービス料金の支払いが、
さらにキャッシュレス・デジタル化することで、賃貸運営の効率が上がる可能性があります。 - クリプトフレンドリーな若年層テナントの増加
- 若いIT人材やデジタルノマドをターゲットとした物件では、
オンライン決済環境・高速インターネットなどがより重要な付加価値になります。
このように、仮想通貨の直接利用が不動産購入にまで広がっていなくても、
「デジタルマネーに慣れた人が増えること自体」が、
都市部の住宅・オフィス需要の質に影響してくる可能性があります。
ニュースの見解
フィリピン不動産への投資を検討している日本人投資家にとって、
今回のニュースから読み取れるポイントと注意点を整理します。
まず、ポジティブな側面です。
- フィリピンは「日常の仮想通貨利用」において世界トップクラスに入り始めている
- 若い世代を中心にデジタル金融リテラシーが高まり、
デジタル決済やオンライン取引に抵抗のない層が増えている - 将来的に、
- 不動産クラウドファンディング
- トークン化不動産(不動産の証券化・トークン化)
- ステーブルコイン経由の家賃・管理費支払い
といった「不動産×デジタル資金」のサービスが展開される土壌がある
一方で、現時点での冷静な見方も重要です。
- 今のフィリピンでは、
- 仮想通貨で直接物件代金を支払うことは一般的ではない
- 契約・登記・税務などは、依然としてフィリピンペソ建て・銀行送金が中心
- 規制は「合法」方向にあるものの、
- マネーロンダリング対策
- 税務上の取扱い
など、今後のルール変更余地は十分あります。 - 仮想通貨相場は変動が大きく、
- 「クリプトで儲かった資金が不動産へ流れる」シナリオもあれば、
- 相場下落で逆に不動産需要が弱まる可能性もあります。
日本人投資家としては、次のようなスタンスが現実的です。
- 「今すぐクリプトでフィリピン不動産を買う」という発想ではなく、
「フィリピンはデジタル金融・クリプトに前向きな国であり、
中長期的に不動産市場にも波及しうる」というマクロトレンドとして捉える - 物件選定では、
- マニラ首都圏
- セブ
- ダバオ
など、フィンテック企業・デジタルノマド・IT人材が集まりやすいエリアに注目する - 将来の出口戦略として、
- デジタル決済に積極的な管理会社
- オンラインで賃貸募集・契約が完結しやすい運営スキーム
を持つパートナーを意識しておく
総じて今回のニュースは、
「フィリピンはクリプト・デジタル金融に強い親和性を持つ国であり、 中長期的には不動産投資にも追い風となりうる環境が整いつつある」
ことを示しています。
ただし、具体的な投資判断は、
- フィリピンペソ・円の為替動向
- フィリピンの金利・住宅ローン環境
- 現地の不動産規制・税制
- 自身のリスク許容度
を踏まえて慎重に行うことが必要です。
クリプトの盛り上がりそのものは「追い風の一要素」として参考にしつつ、不動産投資としては、立地・利回り・賃貸需要といった基本条件を重視する姿勢が重要だといえます。
