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2025年2月24日、イギリス・ロンドンに本拠を置く不動産仲介会社「Market Standard(マーケット・スタンダード)」が、エジプトでの事業開始を正式に発表しました。この記事はモロッコ系メディア「Barlaman Today」による報道で、同社の中東・北アフリカ地域(MENA)への本格展開の第一歩として位置づけられています。
発表内容のポイントは次のとおりです。
- 2025年までに、エジプトの不動産デベロッパー向けに300億エジプトポンド(EGP)の売上を目標とする
- エジプト進出は、同社の地域展開戦略の入り口として位置づけ
- 今後の進出候補として
- サウジアラビア・リヤド
- UAE・アブダビ
- モロッコ
- ギリシャ
が挙げられている
別メディア「Daily News Egypt」によると、同社の会長 Aboul Fotouh Ghorab(アブル・フトゥーフ・ゴラーブ)氏は、エジプトを「地域戦略の起点」と位置づけ、国際水準に合わせたビジネスモデルを導入することで、開発会社と投資家の双方に新しい価値を提供するとコメントしています。
さらに、マーケティング責任者のAhmed Mansour(アフメド・マンスール)氏は、エジプト市場での成功を足掛かりに、2026年前後に湾岸諸国やモロッコなどへ本格展開する構想を明らかにしています。
Barlaman Today は、モロッコがMarket Standardの優先市場の一つと位置づけられていること、モロッコの不動産セクターが「高い需要」と「進化する規制環境」に支えられて成長していることを強調しています。
Market Standardとはどんな会社か
ニュースで名前だけ出てくる「Market Standard」について、投資家目線で整理しておきます。
- 本社所在地:イギリス・ロンドン
- 業種:不動産仲介(ブローカレッジ)
- デベロッパーが供給する住宅・商業物件を、投資家やエンドユーザーに販売・仲介するビジネスモデルです。
- 提供サービスの一例
- 住宅・商業用不動産の販売仲介
- 投資コンサルティング
- プロパティマネジメント(管理)
- デベロッパー向けマーケティング支援
同社はイギリス国内での実績を背景に、「グローバルな販売・マーケティングのノウハウ」と「現地市場の理解」を組み合わせる“ハイブリッド型ビジネスモデル”を掲げています。
ニュースの背景:なぜエジプトから入り、なぜモロッコを狙うのか
このニュースの背景には、「MENA地域の不動産を一体として捉える」ヨーロッパ発の投資マネーの流れがあります。
- エジプトを“玄関口”とする戦略
- エジプトは人口約1億人超、市場規模が大きく、住宅需要が旺盛です。
- 政府主導の新首都建設や新都市開発が続いており、デベロッパー案件が豊富です。
- 英国企業から見ると、
- プロジェクトのボリュームが大きい
- 英語話者・外資のプレゼンスが比較的高い
という点で、最初の「テスト市場」として扱いやすい側面があります。
- モロッコが“次の一手”として注目される理由
Barlaman Today は、モロッコをMarket Standardの優先マーケットと位置づけ、その理由として次の点を挙げています。
- 不動産需要の高さ
- 都市部の人口増加
- 観光・別荘需要
- 欧州・湾岸投資家の関心
- 規制・制度面の整備が進行中
- 不動産関連の法制度・透明性の改善
- 不動産フェアや投資誘致イベントの活発化
- MENA(中東・北アフリカ)一体の投資ストーリー
- ロンドンの投資家にとって、MENA地域は
- 湾岸(リヤド・アブダビ・ドバイ)
- 北アフリカ(エジプト・モロッコ)
を含む“ひとつの投資テリトリー”として語られることが増えています。
- Market Standardの戦略も、エジプト→湾岸→モロッコ→ギリシャというルートで、欧州とMENAをつなぐ「広域不動産ネットワーク」を築こうとしているように見えます。
用語の整理:不動産ブローカレッジ/地域展開/デベロッパー売上
投資家としてニュースを読む際に押さえておきたい用語を、簡単に整理します。
- 不動産ブローカレッジ(real estate brokerage)
- 自社で物件を開発・保有するのではなく、
- デベロッパー(開発会社)が作った物件を販売
- 投資家とエンドユーザーを仲介
することで、仲介手数料やマーケティングフィーを収益源とするビジネスです。
- 地域展開(regional expansion plan)
- ひとつの国で成功したビジネスモデルを、
- 近隣の国・地域に横展開していく計画のことです。
- Market Standardの場合、
- まずエジプトで実績を作り
- その後、リヤド・アブダビ・モロッコ・ギリシャなどへ進出
というステップを描いています。
- デベロッパー売上300億EGPという目標
- 300億エジプトポンド(約9.7億ドル規模)は、
- 「Market Standardが仲介・販売をサポートする開発案件の累計販売額」
を指すとみられます。
- 「Market Standardが仲介・販売をサポートする開発案件の累計販売額」
- 日本の投資家向けに言い換えると、
- 「デベロッパーの販売プラットフォームとして相当なボリュームを扱う計画」
というイメージです。
- 「デベロッパーの販売プラットフォームとして相当なボリュームを扱う計画」
ニュースの見解
このニュースは、一見すると「ロンドンの不動産仲介会社がエジプトに来ました」という話ですが、モロッコ不動産に関心のある日本人投資家にとっても、重要なシグナルを含んでいます。
まずプラス面から整理します。
- 1. 国際プレーヤーの参入は、市場の“格上げ”サイン
- ロンドン拠点の仲介会社がわざわざ中東・北アフリカに拠点を設けるのは、
- 「この地域で、国際投資家を相手に商売が成り立つ」と判断しているからです。
- とくにBarlaman Todayが「モロッコは優先市場」と報じている点は、
- モロッコ不動産市場が、欧州・湾岸の投資資金から“本格的に見られ始めている”
ことを示します。
- モロッコ不動産市場が、欧州・湾岸の投資資金から“本格的に見られ始めている”
- 2. プロジェクト情報へのアクセスが改善する可能性
- Market Standardのような国際ブローカーがモロッコに入ると、
- 英語ベースの販売資料
- 国際投資家向けのIR的な情報公開
が増える可能性があります。
- これにより、日本からでも
- 案件の比較がしやすい
- 契約条件や利回り構造を英語で確認しやすい
といったメリットが期待できます。
- 3. モロッコ案件が「エジプト・湾岸」とセットで売られる時代に
- エジプト→湾岸→モロッコという戦略から考えると、将来的に
- 「エジプト新都心+マラケシュ別荘案件」
- 「カサブランカ商業物件+アブダビ案件」
のように、複数国のポートフォリオを売るパッケージ商品も出てくる可能性があります。
- これは、分散投資の観点では魅力ですが、
- 各国のリスク・法制度を自分で棚卸しする必要がある
という難易度も上がります。
- 各国のリスク・法制度を自分で棚卸しする必要がある
一方、注意すべき点もあります。
- 国際ブローカーの参入は、
- 人気エリアの物件価格や賃料を一段引き上げる方向に働くことが多く、
- 「割安なフロンティア市場」というより、
- “準メジャー市場”としての価格帯に移行していく可能性があります。
- また、販売資料が洗練されるほど、
- プロジェクトのリスクが見えにくくなるケースもあり、
- 「資料がきれい=安全」ではない点は、日本の新築マンション販売と同じです。
日本人の海外不動産投資家としては、今回のニュースをきっかけに、
- モロッコを「中長期的に国際マネーが入りやすい市場」としてウォッチ対象に入れる
- エジプト・湾岸・モロッコをセットで見る“リージョナルな視点”を持つ
- 将来Market Standardや類似プレーヤーがモロッコ進出を正式発表した際には、
- どの都市(カサブランカ・ラバト・マラケシュなど)にフォーカスするのか
- 価格帯・想定利回り・出口戦略をどう設計しているのか
を重点的にチェックする
といったスタンスが現実的です。
結論として、このニュースは「今すぐモロッコに飛びつくべき」という意味ではなく、
モロッコ不動産市場が、欧州・湾岸資本の“本線ルート”に乗りつつあるという中長期トレンドの一端
を示すものです。日本人投資家としては、過度に遅れず、かつ浮かれ過ぎず、「情報先行で市場を追いかける段階」に入ったと捉えるとよいと思います。
