
「モロッコ不動産って買えるですか?」
「モロッコ不動産投資ってどうなんですか?」
「モロッコ不動産の今ってどうなっていますか?」
モロッコ不動産の購入、モロッコ不動産投資、モロッコ移住を検討している方もいらっしゃるかと思います。今回は、モロッコ不動産投資、モロッコ不動産の買い方・メリットデメリット・リスク・利回り・税金まで、徹底的に検証したいと思います。
そもそも、モロッコ不動産は日本在住の日本人が買えるの?
購入できます。
日本在住の日本人でも、モロッコ不動産は購入できます。モロッコでは、外国人による都市部の住宅、アパートメント、ヴィラ、商業区画、オフィス、工業用物件の取得が認められており、現地居住者であることや、モロッコ国籍の共同名義人を入れることは原則として必要ありません。
ただし、投資家目線では「買えるか」よりも、「どの物件なら安全に買えるか」「将来売却した資金を日本へ戻せるか」の方が重要です。モロッコ不動産で日本人投資家が基本にすべきなのは、カサブランカ、ラバト、マラケシュ、タンジェなどの都市部にある、登記済みの住宅・商業物件です。所有権が明確で、ANCFCCに登録されたタイトル付き物件であれば、売買契約、登記、将来の売却までの手続きが比較的読みやすくなります。
外国人が買いやすいのは都市部の登記済み物件
日本人投資家に向いているのは、次のような物件です。
- 都市部の区分マンション
- 新築または築浅のコンドミニアム
- 登記済みのヴィラ
- 商業区画、オフィス、店舗
- 工業団地や物流エリア周辺の事業用物件
- 外国人向けに販売実績のある開発物件
特に、区分マンションや新築開発物件は、土地の権利関係が整理されているケースが多く、管理規約、共益費、登記、引き渡し条件も確認しやすい傾向があります。初めてモロッコ不動産を購入する場合は、価格の安さよりも「登記の明確さ」「管理体制」「売却しやすさ」を優先した方が安全です。
一方で、郊外の土地、農村部の土地、旧市街のリヤド、相続が絡む中古物件、複数名義の物件は、取得できるかどうかだけでなく、権利確認・改装許可・売却時の買い手探しまで含めて難易度が上がります。
農地・未登記物件・旧市街物件は慎重に見る
モロッコでは、農地または農地性のある土地について、外国人の直接所有に制限があります。見た目は空き地や郊外の開発用地に見えても、登記上・行政上は農地扱いになっている場合があります。この場合、外国人がそのまま購入できない、用途変更許可が必要になる、長期使用権など別の形を検討する、といった対応が必要です。
また、モロッコには登記済みのタイトル付き物件だけでなく、伝統的な権利証明に基づく未登記・半登記状態の物件も存在します。いわゆるMelkia系の物件は、価格が割安に見える一方で、境界、相続人、共有者、抵当権、第三者の権利主張が後から出てくるリスクがあります。
マラケシュやフェズの旧市街にあるリヤドは、観光不動産として魅力がありますが、建物の老朽化、耐震性、改装許可、歴史地区の規制、賃貸運営許可、近隣トラブルまで確認が必要です。高利回りに見える物件ほど、購入前に建物調査と権利調査を分けて行うべきです。
日本から購入する場合の実務フロー
日本に住んだままでも、現地の弁護士、公証人、不動産会社、銀行を通じて購入手続きを進めることは可能です。一般的な流れは、物件選定、仮申込、デューデリジェンス、売買契約、送金、登記、引き渡しです。現地に行けない場合は、委任状を作成して代理人に署名手続きを任せる方法もあります。
ただし、海外不動産では「代理人に任せられる」と「任せても安全」は別です。少なくとも、売主側の業者だけでなく、買主側の弁護士または独立した専門家を入れ、以下を確認する必要があります。
- 所有者が本当に売主本人か
- ANCFCC上の登記内容と売買対象が一致しているか
- 抵当権、差押え、係争、共有名義がないか
- 未払い税金、共益費、管理費が残っていないか
- 建築許可、用途地域、増改築履歴に問題がないか
- 家具付き販売の場合、家具・設備リストが契約書に入っているか
- 引き渡し時期、遅延時の違約金、修繕責任が明記されているか
新築プレビルド物件の場合は、完成予定日、支払いスケジュール、工事遅延時の扱い、エスクローまたは保全措置、ディベロッパーの過去実績を確認します。完成前物件は価格上昇を狙いやすい一方、引き渡し遅延・仕様変更・販売会社の説明不足が投資収益を大きく崩す原因になります。
売却代金を日本へ戻すには外貨送金の証拠が重要
モロッコ不動産では、購入できるかだけでなく、売却後に資金を日本へ戻せるかを最初から設計しておく必要があります。外国人投資家が外貨で資金を持ち込み、銀行・公証人・登記などの手続きを適切に記録しておけば、賃料収入や売却代金を国外送金できる枠組みがあります。
注意すべきなのは、現地での支払い記録が不明確なまま購入した場合です。現金払い、第三者口座経由、送金目的が曖昧な入金、契約書と送金額の不一致があると、将来の売却時に「この投資は外貨で行われた」と証明しにくくなります。その結果、売却益や元本を円・ドル・ユーロに替えて日本へ戻す際に、追加書類や確認に時間がかかる可能性があります。
日本人投資家は、購入時点で次の書類を保管しておくべきです。
- 日本側からの送金記録
- モロッコ側銀行の入金証明
- 外貨両替またはコンバーティブル口座に関する書類
- 売買契約書
- 公証人の証明書類
- 登記完了書類
- 税金・登録費用・手数料の支払い証明
- 賃貸収入がある場合の賃貸契約書と入金記録
購入前に確認すべきポイント
モロッコ不動産は、日本在住の日本人でも購入可能です。ただし、投資対象として見るなら、次の条件を満たす物件を優先すべきです。
- 都市部または需要のある観光地、工業都市にある
- 登記済みで所有権が明確
- 農地または農地性のある土地ではない
- 公証人と買主側専門家を通じて契約できる
- 売却時に買い手が見込める立地である
- 賃貸運用する場合、管理会社と運営許可を確認できる
- 外貨送金と将来の資金回収の証拠を残せる
「外国人でも買える」という点だけで判断すると、価格の安い土地や旧市街物件に目が向きやすくなります。しかし、日本人投資家にとって重要なのは、購入後に貸せること、管理できること、売却できること、資金を日本へ戻せることです。初回投資では、権利関係が複雑な物件よりも、都市部の登記済み物件を選び、法務・税務・送金の確認を済ませてから契約する方が現実的です。
モロッコという国とは?
概要
| 投資先 | モロッコ不動産 |
|---|---|
| 国名 | モロッコ王国 |
| 面積(k㎡) | 446,550k㎡ |
| 日本との比較 | 1.18倍 |
| 人口 | 36,911,000人 |
| 日本との比較 | 0.30倍 |
| 首都 | ラバト |
| 民族 | アラブ人(65%)、ベルベル人(30%) |
| 言語 | アラビア語(公用語)、ベルベル語(公用語)、フランス語 |
| 宗教 | イスラム教(国教)スンニ派がほとんど |
| 通貨 | モロッコ・ディルハム(MAD) |
| 政策 | 立憲君主国 |
| 主要産業 | 農業、水産業、鉱業、工業、観光業 |
| 日本からの移動時間 | 20時間 |
| 為替 | バンド付きの通貨バスケット制 |
| 格付け | S&P BBB- フィッチ BBB- ムーディーズ Ba1 |
モロッコは、アフリカ北西部に位置し、地中海と大西洋の両方に面する国です。ジブラルタル海峡を挟んでスペインと向かい合い、欧州・アフリカ・中東をつなぐ場所にあります。
不動産投資の観点では、単に「ヨーロッパに近い国」と見るだけでは不十分です。モロッコの強みは、欧州に近い立地、比較的安定した政治体制、観光収入、海外在住モロッコ人からの送金、自動車・航空部品などの輸出産業が組み合わさっている点にあります。
一方で、全国どこでも不動産需要が強いわけではありません。投資対象として見やすいのは、経済中心地のカサブランカ、行政・外交機能が集まるラバト、観光需要の強いマラケシュ、港湾・工業都市として伸びるタンジェ、リゾート・観光地としてのアガディールです。地方都市や農村部は価格が安く見えても、賃貸需要、売却流動性、権利確認の面で難易度が上がります。
地理:欧州近接と港湾インフラが不動産需要を作る
モロッコは、北に地中海、西に大西洋、内陸にアトラス山脈、南部にサハラ周辺の乾燥地帯を持つ国です。地域によって気候・産業・人口密度が大きく異なり、不動産の需要構造も都市ごとに変わります。
カサブランカからラバトにかけての大西洋沿岸部は、金融、行政、商業、住宅需要が集まりやすいエリアです。タンジェ周辺は、タンジェメッド港や自由貿易区を背景に、物流・工業・輸出製造業の需要が強い地域です。マラケシュやアガディールは、観光、短期賃貸、ホテル、別荘需要が中心になります。
このため、モロッコ不動産では「国全体の成長率」だけで投資判断をするのは危険です。住宅需要を狙うなら雇用と人口流入、観光不動産を狙うなら航空便・宿泊稼働率・観光政策、物流不動産を狙うなら港湾・高速道路・工業団地への距離を確認する必要があります。
政治:北アフリカでは安定しているが、地政学リスクは残る
モロッコは国王を元首とする立憲君主制の国です。周辺の北アフリカ諸国と比べると、政治体制は比較的安定しており、外資導入、観光振興、インフラ整備、産業誘致を継続的に進めてきました。
不動産投資において政治の安定は重要です。政権交代や急な制度変更が頻発する国では、外国人の所有権、税制、送金規制、開発許可が読みにくくなります。その点、モロッコは長期計画に基づいたインフラ投資や観光政策を進めやすい国です。
ただし、西サハラ問題、アルジェリアとの緊張、周辺地域の安全保障リスクは残ります。主要都市の日常生活や観光市場に直ちに大きな影響が出ているわけではありませんが、国際情勢が悪化すれば、観光客数、外資流入、為替、投資家心理に影響する可能性があります。
特にマラケシュ、アガディール、フェズなど観光依存度の高い不動産は、地政学ニュースや航空便の減便に影響を受けやすい点に注意が必要です。
経済:観光・製造業・送金・リン鉱石が外貨収入を支える
モロッコ経済は、農業だけに依存する国ではありません。現在は、観光、自動車、航空部品、リン鉱石・肥料、繊維、物流、再生可能エネルギーなどに産業が広がっています。
不動産投資で重要なのは、これらの産業がどの都市の賃貸需要を作っているかです。
カサブランカは、金融、商業、企業本社、BPO、IT関連の需要があり、ビジネス層向けの住宅・オフィス需要が厚い都市です。ラバトは、行政機関、大使館、国際機関、所得水準の高い職業層による住宅需要があります。タンジェは、港湾、自動車、物流、工業団地関連の雇用が住宅需要を支えます。マラケシュは、観光客、外国人滞在者、富裕層、短期賃貸需要が中心です。
一方で、モロッコ経済は天候にも左右されます。農業は雇用と地方所得に大きな影響を持ち、干ばつが続くと消費や地方経済が弱くなります。エネルギーや小麦の輸入依存もあり、国際価格の上昇は貿易赤字やインフレ圧力につながります。
投資家は、GDP成長率だけでなく、観光収入、海外送金、自動車輸出、リン鉱石・肥料輸出、エネルギー輸入額を見て、モロッコの外貨収入が安定しているかを確認する必要があります。
人口・都市化:需要は全国均一ではなく主要都市集中
モロッコの人口は約3,800万人規模で、都市化率は65%台まで上昇しています。人口規模だけで見れば、日本やインドネシアのような巨大市場ではありませんが、主要都市への人口集中が進んでいる点が不動産投資では重要です。
住宅需要が見込みやすいのは、雇用、教育、行政、交通、商業施設が集中する都市部です。特に、カサブランカ、ラバト、タンジェ、マラケシュでは、住宅購入層、賃貸入居者、外国人滞在者、駐在員、観光客の需要が重なります。
ただし、若年層が多いことは、必ずしも高賃料物件の需要が強いことを意味しません。所得水準が限られる層も多いため、現地向け賃貸では家賃設定を誤ると空室が長引きます。中間層向けの住宅、家具付き賃貸、職住近接の物件、交通アクセスの良い物件に需要が集まりやすい一方、郊外の低品質物件や地方の大型物件は流動性が低くなりやすいです。
日本人投資家が狙う場合は、「人口が増えているから買う」ではなく、「その都市で誰が借りるのか」「賃料を払える層がどれだけいるのか」「売却時の買い手は現地富裕層か外国人か」まで確認する必要があります。
通貨・金融環境:急落しにくいが円建てでは為替リスクが残る
モロッコの通貨はモロッコ・ディルハムです。ディルハムは完全な自由変動相場ではなく、ユーロと米ドルの通貨バスケットに連動する管理型の為替制度が採用されています。ユーロ比率が高いため、欧州経済やユーロ相場の影響を受けやすい通貨です。
この制度は、トルコリラやアルゼンチンペソのような急激な通貨下落リスクを抑える効果があります。一方で、日本人投資家にとっては、円とディルハムの為替リスクが残ります。円安時に購入し、その後円高に戻ると、現地価格が横ばいでも円換算の評価額は下がります。
政策金利は2026年3月時点で2.25%に据え置かれており、極端な高金利国ではありません。これは住宅ローンや開発資金にとって一定の安定材料です。ただし、外国人投資家が現地融資を受ける場合は、居住者属性、収入証明、頭金、担保評価、銀行審査の条件が厳しくなる可能性があります。
モロッコ不動産を検討する場合は、物件価格だけでなく、購入時の為替、送金手数料、現地口座、売却代金の国外送金、税引後の円換算利回りまで含めて判断する必要があります。
文化・生活環境:観光需要と長期滞在需要に影響する
モロッコは、アラブ、ベルベル、アンダルシア、フランスの文化が重なる国です。旧市街のメディナ、スーク、リヤド、イスラム建築、海岸リゾート、砂漠ツアーなど、観光資源が多く、欧州からの旅行者にとって近距離の異文化リゾートとして機能しています。
投資家にとって重要なのは、文化的な魅力そのものではなく、それが宿泊需要・短期賃貸需要・外国人滞在需要に転換されるかです。マラケシュのリヤド、アガディールのリゾート物件、カサブランカやラバトの家具付き賃貸は、観光客や外国人滞在者の需要を取り込みやすい一方、運営力によって収益が大きく変わります。
また、イスラム文化圏であるため、ラマダーン期間中の業務スピード、契約交渉、営業時間、生活リズムは日本と異なります。契約書や行政手続きではアラビア語・フランス語が使われることが多く、英語だけで完結しない場面もあります。現地の弁護士、公証人、会計士、管理会社を使わずに進めるのはリスクが高いです。
都市別に見る投資対象の違い
モロッコ不動産は、都市ごとに投資テーマが異なります。
| 都市 | 主な需要 | 向いている物件 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| カサブランカ | 金融、商業、企業本社、ビジネス層 | 中間層・富裕層向け住宅、家具付き賃貸、オフィス | 価格が高く、利回りは圧縮されやすい |
| ラバト | 行政、大使館、国際機関、高所得層 | ファミリー向け住宅、高級賃貸、安定志向の住宅 | 値上がりより安定運用向き |
| マラケシュ | 観光、短期滞在、外国人購入者 | リヤド、ヴィラ、短期賃貸、ホテル系物件 | 季節性、許認可、運営力に左右される |
| タンジェ | 港湾、物流、自動車、工業団地 | 実需住宅、従業員向け賃貸、物流・工業系物件 | 工業エリアとの距離と交通動線が重要 |
| アガディール | リゾート、観光、長期滞在 | ビーチ周辺住宅、サービスアパートメント | 観光依存とシーズン変動に注意 |
| フェズ | 歴史観光、文化都市 | リヤド、観光向け小規模宿泊施設 | 旧市街物件は権利・改装許可の確認が難しい |
初めて投資する場合、最も検討しやすいのはカサブランカ、ラバト、タンジェの登記済み住宅です。観光不動産で高い利回りを狙うならマラケシュやアガディールも候補になりますが、短期賃貸運営、レビュー管理、清掃、集客、許認可まで含めて事業として見る必要があります。
投資家目線での位置付け
モロッコは、海外不動産投資において「高成長の新興国」と「欧州に近い安定国」の中間に位置する国です。ドバイのような世界的な資金流入市場ではなく、フィリピンやベトナムのような人口急増国でもありません。一方で、アフリカの中では制度・インフラ・外資受け入れ環境が比較的整い、観光・製造業・物流の複数テーマを持つ点が特徴です。
投資対象として見る場合、モロッコ不動産は短期転売よりも、賃貸収入と中長期の都市成長を組み合わせる投資に向いています。特に、カサブランカの実需住宅、ラバトの安定賃貸、タンジェの工業・物流連動需要、マラケシュの観光不動産は、それぞれ異なる投資テーマを持っています。
一方で、所得水準、失業率、地方格差、為替、送金手続き、権利確認、旧市街物件の複雑さなど、日本人投資家にとって見えにくいリスクもあります。モロッコを「国全体で買う」のではなく、都市、立地、用途、運営方法、出口戦略を分けて判断することが必要です。

モロッコ不動産は、欧州近接、観光拡大、製造業の集積、都市化という追い風を持つ一方、物件選定を誤ると流動性の低い資産を長期間抱えるリスクがあります。投資判断では、国の成長ストーリーよりも、対象都市の賃貸需要、登記の明確さ、管理体制、売却時の買い手、円換算後の利回りを優先して確認すべきです。
モロッコ不動産が不動産投資で注目される理由・メリット
1.ヨーロッパとアフリカを結ぶ「玄関口」という圧倒的な立地優位性
モロッコはアフリカ大陸の最北西端に位置し、ジブラルタル海峡を挟んでスペインと向かい合う地政学的な「要衝」の国です。
ヨーロッパ主要都市からは飛行機で数時間という距離であり、アフリカ市場へのゲートウェイとして位置づけられています。
特に、北部のタンジェ近郊にある「タンジェ・メッド港」は、アフリカ最大級のコンテナ港として急速に発展しており、欧州・アフリカ間の物流ハブとして世界有数の取扱量を誇ります。周辺には自動車・電機などの輸出産業の工業団地が集積しており、港湾・物流関連の雇用が継続的に生まれていることから、周辺都市での住宅ニーズを押し上げています。
また、カサブランカとタンジェを結ぶ高速鉄道(アフリカ初のTGV)がすでに開業しており、今後は観光都市マラケシュ方面への延伸計画も進んでいます。鉄道・道路・港湾・空港が一体となったインフラ整備が進むことで、主要都市圏への人口・企業の集中が続き、中長期的な不動産需要の下支え要因となります。
2.3,600万人超の人口と、進行する都市化・若い労働人口
モロッコの人口は約3,700万人(2020年時点)で、国連推計では今後も緩やかな増加が続くと見込まれています。
モロッコの総人口推移
人口の約6割強が都市部に居住しており、都市人口率は63.5%と、都市化の進展が顕著です。
最大都市カサブランカの人口は約314万人、首都ラバトは約166万人、観光都市マラケシュも80万人規模と、100万都市まではいかないものの、中規模都市が複数存在するのが特徴です。
- カサブランカ市:314万人/約220k㎡
さらに、カサブランカ都市圏(周辺の住宅地や工業地帯を含む)まで見ると人口は600万人超とも言われ、人口密度の高さや通勤圏の広がりから、賃貸住宅・分譲住宅のニーズは長期的に続きやすい構造といえます。
人口の年齢構成に目を向けると、モロッコは依然として若年・生産年齢人口の割合が高く、雇用機会の拡大に伴って都市への人口流入が続いています。これは、賃貸住宅の需要が中長期で見込めるという点で、不動産投資家にとって重要なポイントです。
3.安定した経済成長と産業の多角化による、中長期の賃貸需要
モロッコの実質GDP成長率は、干ばつなどによる一時的な減速はあるものの、1990年代後半以降おおむね年3〜4%前後のプラス成長を続けてきました。
従来の農業・観光に加え、近年は以下のような分野で産業の多角化が進んでいます。
- 自動車産業:欧州向け輸出の組立工場・部品工場が相次いで進出
- 航空機関連:欧州メーカーの部品生産拠点が集積
- 肥料・化学:豊富なリン鉱石資源を活かした肥料産業
- 再生可能エネルギー:世界最大級の太陽熱発電所や風力発電が稼働中
このような「工業化」と「輸出産業の伸び」は、都市部に安定した雇用をもたらし、工業団地周辺の中間層向け住宅需要を高めています。住宅購入余力を持つ層が増えることで分譲市場が広がる一方、単身者・駐在員・地方からの若年労働者向けの賃貸需要も厚みを増しており、経済構造の変化が不動産市場にじわじわと反映されている段階だといえます。
4.観光立国としての成長が、ホテル・民泊・別荘ニーズを押し上げる
モロッコは世界的な観光地としても知られ、マラケシュ、フェズ、シェフシャウエン、サハラ砂漠ツアーなど、多彩な観光資源を持っています。
観光客数は長期的に増加傾向にあり、2023年にはコロナ前を上回る過去最高に近い水準まで回復し、2024年には1,700万人超の訪問者を記録したと報じられています。政府は2030年までに年間観光客2,600万人を目標としており、観光業はGDPの約7%前後を占める重要産業です。
モロッコの観光客数推移
観光客の増加は、以下のような不動産ニーズを直接的に押し上げます。
- マラケシュ旧市街のリヤド(伝統的な邸宅)を改装したブティックホテル
- 短期滞在者向けのアパートメント貸し(民泊や長期滞在型の宿泊施設)
- ヨーロッパ富裕層による別荘・セカンドハウス需要
観光インフラや空港・高速道路の整備が進めば進むほど、ホテル用地・リゾート開発・観光都市周辺の住宅開発など、様々な形で不動産市場への波及効果が期待できます。特にマラケシュやアガディールといった観光都市では、観光シーズンの宿泊需要が高く、高稼働率の賃貸運用を実現しやすい土壌があります。
5.ディルハムの安定性による、過度な為替リスクの抑制
モロッコの通貨「モロッコ・ディルハム(MAD)」は、欧州通貨(ユーロ)と米ドルの通貨バスケットに連動した管理フロート制を採用しています。
長年にわたって為替変動は比較的穏やかで、「通貨が急落しやすい新興国」と比べると、対主要通貨での下落リスクは抑えられてきました。
ディルハムは完全な固定相場ではないものの、中央銀行がバスケットに対する変動幅を段階的に拡大しながらも、急激な下落を避ける運営を行っており、インフレ率も近年はおおむね一桁台で推移しています。
日本人投資家にとっては、
- 「超ハイインフレ通貨」のように短期間で価値が目減りしにくい
- ユーロ・ドルとの連動性が高く、為替リスクを読みやすい
というメリットがあり、「現地通貨建てで賃料を得る」タイプの不動産投資でも、一定程度リスクをコントロールしやすい環境といえます。もちろん為替リスクがゼロになるわけではないため、ユーロやドルとのレート動向を確認して投資タイミングを見極めることが重要です。
6.まだ割安な価格水準と、比較的高い賃貸利回り
モロッコの住宅価格は、欧州主要都市と比べると総じて水準が低く、同じ予算でもより広い面積の物件を取得できるケースが多くなります。
特に、タンジェやマラケシュといった観光・物流の拠点都市では、外国人投資家向けの物件が増えている一方で、価格はまだ「欧州リゾート地」と比べると手が届きやすいレンジにあります。
各種調査では、カサブランカ、ラバト、マラケシュなど主要都市のマンション賃貸利回りは、概ね年間5〜7%台が目安とされ、都市によってはそれ以上の水準が報告されています。これは、世界平均と比較してもやや高めの利回りであり、「キャッシュフロー重視」の投資家にとって魅力的なポイントです。
賃料は、
- 港湾・工業団地の周辺エリア
- 観光地中心部や旧市街、ビーチリゾートエリア
- 首都圏・金融街(カサブランカ・ファイナンス・シティ周辺など)
で特に堅調な傾向があります。
一方で、郊外の低所得層向け住宅などは賃料水準が低く、管理の手間もかかるため、エリア・物件タイプの選別が非常に重要になります。
7.インフラ投資・都市再開発が進み、資本価値の上昇余地
モロッコ政府は
- 港湾(タンジェ・メッド)の拡張
- 高速鉄道網の延伸(タンジェ〜カサブランカ〜マラケシュ)
- 空港の拡張・新ターミナル整備
- カサブランカやラバトでのLRT・路面電車網の整備
- カサブランカ・ファイナンス・シティなどビジネス特区の整備
といった大型インフラ・都市開発プロジェクトを推進してきました。
特にカサブランカでは、金融センター機能を持つ新業務地区の整備や、サッカーの国際大会(アフリカネイションズカップ、ワールドカップ共同開催)に向けたスタジアム・ホテル開発が進み、「アフリカのスマートシティ」を目指した都市改造が加速しています。
インフラ投資は短期的には工事渋滞や騒音といったデメリットもありますが、中長期的には
- アクセス性の向上(駅・幹線道路・空港への近接性アップ)
- エリアブランドの向上(金融街・観光地区としての認知度上昇)
- 地価・賃料の底上げ
につながる可能性が高く、早い段階で「将来のハブエリア候補」を見極めて投資できれば、キャピタルゲインを狙う余地も出てきます。
8.相対的に安定した政治・治安と、対外開放的な投資環境
モロッコは立憲君主制の国で、長年にわたり同じ王朝(アラウィー朝)のもとで統治が続いています。
アラブの春の際にも、憲法改正などを通じて大規模な政変を回避し、近年もおおむね政治・治安は安定した状態を維持しています。
対外経済面では、モロッコはEUとの関係を重視し、EUから「優先的地位(Advanced Status)」を付与されているほか、50以上の国・地域と自由貿易協定を結んでいます。アフリカの中でも「ビジネス環境が整った国」として評価されており、多国籍企業の地域拠点や金融機関のアフリカ拠点が集まりつつあります。
不動産投資の観点から見ると、
- 外国人の不動産取得が認められている(軍事・一部農地などの制限区域を除く)
- 外国からの直接投資を積極的に受け入れており、投資保護協定も多数締結
- 欧州との人の往来・ビジネス交流が活発で、駐在員・長期滞在者の賃貸需要が見込める
といったプラス要因があります。
もっとも、モロッコはあくまで「新興国」であり、失業率、所得格差、インフォーマルセクターの多さ、地方の貧困など、構造的な課題も抱えています。エリアによってはインフラが未整備であったり、行政手続きに時間がかかったりすることもあるため、現地の信頼できる専門家やパートナーと組むことが不可欠です。
9.言語・文化・法制度面で、欧州との親和性が高い
モロッコの公用語はアラビア語とベルベル語ですが、フランス語はビジネス・行政・高等教育の場で広く使われており、北部ではスペイン語も通じやすい環境です。
欧州との歴史的なつながりが強く、
- 欧州基準に近い建築・インフラ規格
- フランス語・英語を話せる現地専門家(弁護士・会計士・不動産業者)が多い
- 欧州向け輸出企業が多く、会計・法務慣行も欧州との接点が大きい
といった特徴があります。
これは、日本から直接進出する場合でも、「欧州スタイルの法務・会計に慣れた専門家」を見つけやすいという意味で、実務上のメリットになります。
まとめ
モロッコ不動産が注目される背景には、
- ヨーロッパとアフリカを結ぶ優れた立地
- 人口増加と都市化による住宅需要の底堅さ
- 産業多角化と観光立国戦略による中長期の成長期待
- 比較的安定した通貨と、まだ割安な価格水準・高めの賃貸利回り
- 大型インフラ投資と都市再開発による将来のキャピタルゲイン余地
- 政治・治安の安定と、対外開放的な投資環境
といった複数の要素が重なっています。
一方で、西サハラ問題や失業率の高さ、エリア間格差などのリスクも存在するため、「国家全体としてのポテンシャル」と「物件個別のリスク」を切り分けて、都市・エリア・プロジェクトを慎重に見極めることが、日本人投資家にとって重要な視点となります。
モロッコ不動産の不動産投資におけるデメリット・リスク
1.為替リスクと通貨規制リスク
モロッコの通貨はモロッコ・ディルハム(MAD)で、日本円とは直接ペッグされていません。実務的にはユーロと米ドルのバスケットに対して一定の変動幅の中で管理されている通貨制度が採用されており、完全な変動相場ではない一方で、対円レートは市場の需給によって常に変動します。
モロッコの為替「MAD/JPY」
モロッコの為替「MAD/USD」
日本からモロッコ不動産に投資する場合、少なくとも次の二つの為替変動を意識する必要があります。
- 日本円と米ドル/ユーロの為替変動
- 米ドル/ユーロとモロッコ・ディルハムの為替変動
円安局面でモロッコ不動産を購入し、その後、円高方向に戻ると、現地価格が維持されていても円ベースでは評価額が下がる可能性があります。賃料収入もモロッコ・ディルハム建てで得るケースが多いため、円換算するときのレート次第で利回りが大きく変動します。
また、モロッコでは経常収支や外貨準備の状況を踏まえ、資本取引に一定の規制が設けられており、外貨送金や配当の本国送金に細かい手続きや制限がかかることがあります。投資時に現地銀行を通じて適切な登録をしていないと、将来、売却代金や賃料収入を円やドルに交換して日本に送る際に制約を受けるおそれがあります。
さらに、モロッコ経済は農業や観光収入の影響を受けやすく、干ばつや世界的な不況により、通貨が一時的に弱含む局面も想定されます。為替差損が生じる可能性を前提に、長期的な視点で投資判断を行う必要があります。
2.政治・地政学リスク(西サハラ問題・周辺国との関係)
モロッコへの不動産投資では、比較的安定した王制と治安の良さが「プラス材料」として語られる一方で、西サハラをめぐる問題や近隣国との関係という「地政学リスク」も存在します。
モロッコは現在、西サハラの大部分を実効支配しており、その統治を承認する国もあれば、国連を含め法的地位が未解決であるとみなす立場もあります。この問題は長期化しており、完全に政治リスクが解消されているとは言えません。
また、アルジェリアとは西サハラ問題などを背景に長年緊張関係が続いており、国交断絶に至るなど、外交的な対立が続いています。現時点で大規模な軍事衝突に発展しているわけではないものの、国境封鎖や外交的な緊張が長期化すると、投資家心理の悪化や外資流入に影響する可能性があります。
地政学リスクは、普段は意識されにくいものの、ひとたび緊張が高まると、観光客の減少や投資マネーの流出、不動産価格の下落につながるリスクがあります。長期保有を前提とする不動産投資では、「政情が比較的安定している国」であっても、潜在的な火種があることを認識した上でポートフォリオ全体の分散を考える必要があります。
3.法制度・権利関係の複雑さ(メルキア物件など)
モロッコ不動産の特徴として、所有権の形態が複数存在する点が挙げられます。
- 日本で言う「登記済み」に近い、正式な「タイトル付き物件」
- 伝統的な慣習法に基づく権利証明にとどまる「メルキア(Melkia)」物件
メルキア物件は、相続や口頭での売買などを通じて権利が継承されてきたケースが多く、境界が曖昧だったり、複数の名義人が存在したりすることがあります。このような物件は価格が安めに見える一方で、所有権をめぐる紛争、第三者による権利主張、将来的な登記(タイトル化)手続きに時間と費用がかかるといったリスクが指摘されています。
海外投資家が安心して購入できるのは、原則として「タイトル付き物件」に限られると考えた方が安全ですが、地方都市や農村部などでは、そもそもタイトルが取得されていない土地・建物も少なくありません。その場合、
- 法律上は購入できても、実際には開発許可や建築確認が取りにくい
- 金融機関の担保評価が付かず、レバレッジを使いにくい
- 将来売却する際に、買い手の層が限られる
といったデメリットにつながります。
さらに、モロッコの法律や契約書はアラビア語・フランス語で作成されることが一般的であり、日本人投資家にとって言語面・実務面でのハードルが高い点もリスクです。契約内容の細部(引き渡し条件、修繕負担、違約金、引き渡し時期など)を十分理解しないまま署名すると、想定外の義務を負うおそれもあります。
4.税制・コスト構造に関するリスク
モロッコで不動産を保有する場合、購入時・保有中・売却時それぞれに税金や諸費用が発生します。主な例としては次の通りです。
- 購入時:登記費用、公証人費用、登録税、仲介手数料など
- 保有中:住宅税(居住用物件)、コミューン税(自治体サービス税)などの固定資産関連税
- 売却時:キャピタルゲイン課税(売却益に対する課税)
特に、モロッコ居住者ではない外国人投資家の場合、モロッコ側での課税に加え、日本側での申告義務(国外財産調書や所得税申告)も生じるため、トータルの実効税率が想定より高くなる可能性があります。
また、モロッコは一部分野に税優遇策がある一方、不動産投資については「恒久的な優遇制度」が日本人投資家向けに用意されているわけではありません。制度改正により、
- 譲渡益の非課税枠や減免措置が変更される
- 保有税の税率や評価方法が見直される
- 短期売買に対する課税強化が行われる
といった可能性もあり、長期的な税負担が読みにくい点はリスクとなります。
さらに、日本側では国外不動産を利用した節税スキームへの規制が強まっているため、「日本の税制上のメリット」を前提にした投資ストーリーは慎重な検討が必要です。
5.賃貸運用におけるリスク(空室・家賃・借主保護)
モロッコ不動産を賃貸運用する場合、次のようなリスクが考えられます。
都市ごとの需要の偏り
カサブランカやラバト、マラケシュ、タンジェなどの大都市圏は、人口集中や観光需要を背景に賃貸需要が見込める一方、地方都市やリゾートエリアはシーズン性が強く、オフシーズンの空室リスクが高くなります。観光客向けの短期賃貸に依存している物件は、地政学的リスクや世界景気の悪化、パンデミックなどの外部ショックに脆弱です。
家賃水準と支払い能力
モロッコの一人当たり所得水準は、日本や欧州と比べると低く、賃料を高く設定しすぎると入居者候補が限られます。現地の平均賃金や家計の実態を無視して「日本人から見て割安」と感じる賃料を設定してしまうと、長期空室や家賃滞納リスクが高まります。
借主保護の強さと立ち退き手続き
モロッコでは、居住用賃貸において借主保護の考え方が比較的強く、契約期間中の一方的な退去要求や、家賃滞納時の強制退去には裁判所の手続きが必要になる場合があります。手続きが長期化すると、「家賃を支払わない入居者が住み続ける」状態が続き、キャッシュフローが悪化します。
管理・メンテナンスの難しさ
日本から遠く離れた国であるため、運用面を現地パートナーに依存せざるを得ません。
- 信頼できる管理会社を探す
- 修繕やクリーニング、入退去時のチェックを任せる
- トラブル発生時に迅速に対応する
といった点で、管理会社の選定を誤ると、家賃の着服や修繕の先延ばしにより、賃貸経営そのものが破綻するリスクがあります。
6.市場規模・流動性・出口戦略に関するリスク
モロッコは人口約3,600万人規模の国であり、不動産市場も国内需要を中心に発展していますが、「世界の投資マネーが集中する巨大金融センター」と比べると、市場規模や情報量、流動性の面で見劣りする部分があります。
売りたいときにすぐ売れない可能性
日本人投資家が保有する物件の出口候補は、
- 現地の富裕層・中間層
- 欧州や中東からの外国人投資家・移住者
といった層に限られます。マーケットが急落した局面で買い手がほとんど出てこない場合、想定より大幅に安い価格での売却を迫られたり、長期間売れずに保有を続けざるを得なかったりするリスクがあります。
情報の非対称性
現地の売買事例や賃料相場に関する統計データが十分に整備されていない分野もあり、「実際はいくらで売れるのか」「本当に利回り何%で回るのか」といった見通しを、日本にいながら精度高く立てるのは容易ではありません。情報が限られる分、価格交渉において外国人投資家が不利になりやすい点もリスク要因です。
出口までの時間軸が長くなりやすい
モロッコ不動産は、短期の売買益(キャピタルゲイン)を狙うよりも、長期保有で賃料収入と中長期の値上がりを狙うスタイルが基本となります。そのため、
- 5年未満での売却を前提にした資金計画
- 急な資金需要に対応するための「すぐ売却」
といったニーズには向きません。投資額が生活資金や老後資金と混在していると、流動性不足が家計全体のリスクにつながる可能性があります。
7.自然災害・インフラに関するリスク
モロッコはアフリカ大陸の北西端に位置し、プレート境界に比較的近い地域であるため、地震リスクが存在します。近年もマラケシュ近郊を震源とする大きな地震が発生し、人的被害と建物被害が生じました。
大都市部では徐々に耐震基準が整備されてきているとされるものの、
- 旧市街の伝統的な建物
- 地方都市や山間部の住宅
など、耐震性に不安のある建物も少なくありません。歴史的な街並みやリヤド(中庭付きの伝統住宅)といった魅力的な物件ほど、耐震補強が難しいケースもあります。
また、インフラ面では、主要都市の電気・水道・道路網は整備が進んでいる一方、
- 郊外エリアでの停電や断水
- 道路事情の悪さによる資材輸送の遅れ
など、建築工事や大規模修繕に影響が出る可能性もあります。自然災害そのものだけでなく、災害後の復旧スピードや行政の対応能力も含めて、日本とは異なるリスクプロファイルを持っている点に注意が必要です。
8.文化・商慣習・法務実務のギャップ
モロッコはイスラム文化圏であり、また長年フランスの影響を受けてきた国でもあります。そのため、
- 契約書の言語(アラビア語・フランス語)
- 商習慣(価格交渉、手付金の扱い、支払い条件)
- 宗教行事(ラマダーン期間の業務スローダウン)
など、日本や英語圏での取引とは異なる点が多く存在します。
例えば、
- 合意していた引き渡し期日が守られない
- 書面よりも口頭の約束が重視される場面がある
- 書類の提出に時間がかかる
といったことは日常的に起こり得ます。これらは「文化の違い」として受け止めることもできますが、投資家にとってはスケジュール遅延や追加コストの発生につながるリスク要因です。
また、宗教上の理由から金融取引に制約のある場面もあり、一般的な銀行ローンではなくイスラム金融の枠組み(ムラバハなど)が使われることもあります。この仕組みを理解しないまま契約すると、想定とは異なるキャッシュフローやコスト構造になるおそれがあります。
9.物件選定・プロジェクト選定に関するリスク
モロッコには、歴史的な旧市街のリノベーション物件から、新興住宅地・リゾート開発まで、多様な不動産プロジェクトが存在します。しかし、すべてが安定した収益を生むわけではありません。
観光地偏重の立地
マラケシュなどの観光都市では、観光客向けのホテルや短期賃貸に依存したビジネスモデルが多く、
- 世界的な景気後退
- 航空運賃の高騰
- 治安不安や地政学リスクの高まり
などによって、稼働率や平均単価が大きく変動する可能性があります。
開発計画とインフラ整備のギャップ
新興エリアの分譲プロジェクトでは、「将来この周辺に○○ができる」「高速道路や鉄道が整備される予定」といった将来計画を前提に販売されることがありますが、実際には計画が遅延したり、規模が縮小されたりするケースも考えられます。インフラ整備が遅れれば、想定した賃料水準や転売価格に届かないリスクがあります。
ディベロッパーの信用力
モロッコの主要都市には実績あるディベロッパーも存在しますが、中小業者の中には財務基盤が弱い会社も含まれます。
- 工期遅延
- 仕様変更
- 引き渡し後のアフターサービスの欠如
などが起きると、投資家が本来想定していた利回りを達成できないだけでなく、追加の修繕費・訴訟費用を負担するリスクもあります。実績や財務内容、過去プロジェクトの評価などを慎重に確認することが必要です。
まとめ
モロッコ不動産は、
- 欧州との地理的近さ
- 観光資源の豊富さ
- 長期的な人口増と都市化
といった魅力的な要素を持つ一方で、
- 為替・通貨規制
- 政治・地政学リスク
- 権利関係や法制度の複雑さ
- 税制・コストの予測しにくさ
- 市場流動性・出口戦略の難しさ
- 自然災害やインフラ面の不確実性
など、投資家が冷静に見ておくべきデメリット・リスクが多く存在します。
重要なのは、「リスクがあるから投資すべきでない」と短絡的に判断することではなく、
- 自分の資産全体の中で、モロッコ不動産にどの程度の比率を割くのか
- どの都市・どの用途(居住用・商業用・リゾート)に絞るのか
- どの程度の保有期間と為替リスクを許容するのか
- 現地で信頼できる専門家(弁護士、税理士、不動産会社)をどこまで確保できるのか
といった点を具体的に検討したうえで、リスク許容度に見合った投資額・投資スタイルを選ぶことです。
日本人投資家にとっては、情報の非対称性や距離のハンディキャップも大きいため、
- 少額から始める
- 複数国・複数資産への分散を前提とする
- 現地視察と専門家のセカンドオピニオンを活用する
といった「守りの姿勢」を徹底することが、モロッコ不動産投資のデメリット・リスクをコントロールしながら活用していくうえで重要になります。
モロッコ不動産お問い合わせ
モロッコ不動産 最新動向
マクロ環境・金利
- 政策金利は2.25%で据え置き
モロッコ中央銀行は2026年6月会合で政策金利を2.25%に据え置きました。2026年6月の消費者物価上昇率は前年同月比0.3%まで低下しています。一方、2026年の実質成長率予測は中央銀行の5.2%、IMFの4.4%、世界銀行の4.2%と幅がありますが、農業生産の回復と大型公共投資が景気を支えるという見方は共通しています。 - 住宅ローン金利は5%前後
2026年第1四半期の不動産向け融資金利は平均5.13%、個人向け住宅ローンは平均4.66%でした。優良な給与所得者や自己資金の多い購入者では4%台を提示される場合がありますが、保険料や手数料を含む実質的な年間負担率は5%台半ばになりやすい状況です。政策金利が低下しても、銀行の調達費用や信用審査の影響により、住宅ローン金利の低下は限定的です。
不動産市場全体
- 価格より取引件数の落ち込みが大きい
2026年第1四半期の不動産価格指数は前四半期比2.4%低下、前年同期比では0.4%低下しました。一方、取引件数は前四半期比40.2%減、前年同期比9.3%減です。年末に取引が集中しやすい季節要因を考慮する必要はありますが、価格が緩やかな調整にとどまる一方、買い手が慎重になり、成約までの期間が長期化していることを示しています。 - 住宅・土地・事業用物件がそろって調整
前四半期比では住宅価格と都市用地がそれぞれ3.0%低下、事業用不動産が0.8%低下しました。住宅の内訳はマンションが2.7%低下、戸建て住宅が2.7%低下、ヴィラが6.4%低下です。取引件数はマンションが37.5%減、戸建てが51.6%減、ヴィラが53.1%減となり、高額物件ほど流動性が低下しています。
住宅・都市別動向
- カサブランカ
2026年第1四半期の価格は前四半期比2.7%低下、取引件数は37.8%減でした。住宅価格は3.0%低下しましたが、事業用物件は2.5%上昇しており、住宅と業務系で動きが分かれています。マンションの参考的な売出価格は市内平均で1平方メートル当たり1万2,000~1万5,000ディルハム前後、アンファ、アイン・ディアブ、カサブランカ・ファイナンス・シティ周辺の新築・高級物件では2万~3万5,000ディルハム超となる例があります。 - ラバト・サレ
ラバトの価格は前四半期比4.7%低下、取引件数は55.4%減となりました。特に住宅価格が6.2%低下した一方、都市用地は9.5%上昇しており、再開発や公共施設周辺の土地需要が価格を支えています。2026年にはサレ側で高さ約250メートル、55階建てのムハンマド6世タワーが開業し、ホテル、オフィス、住宅、商業を一体化した新しい業務・観光拠点が形成されています。 - マラケシュ
価格は前四半期比1.5%低下、取引件数は51.5%減でした。一般住宅の取引は鈍化していますが、ゲリーズ、イヴェルナージュ、パルメライ、旧市街のリアドなど、観光客や外国人を対象とする物件は別市場として動いています。短期賃貸の収益性は高くなり得ますが、宿泊許可、管理費、清掃費、予約サイト手数料、季節変動を差し引くと、表面利回りと実質利回りの差が大きくなります。 - タンジェ・アガディール
タンジェは価格が前四半期比3.9%低下、取引件数は36.4%減でしたが、タンジェ地中海港、工業団地、高速鉄道の恩恵を受ける物流・工業関連地域は中期的な需要があります。アガディールは全体価格が0.3%低下した一方、ヴィラ、都市用地、商業・オフィス価格は上昇しており、観光・リゾート関連の選別需要が確認できます。
住宅購入支援
- 低・中価格帯の新築需要を下支え
2024~2028年の住宅購入支援制度では、税込価格30万ディルハム以下の住宅に10万ディルハム、30万超~70万ディルハム以下の住宅に7万ディルハムが支給されます。原則として住宅を所有しておらず、過去に公的住宅支援を受けていないモロッコ国民が対象です。2026年5月時点で受給者は10万人を超えており、地方都市や郊外の新築マンション需要を支えています。
オフィス・商業施設
- プライムオフィスと旧型物件の二極化
事業用不動産価格は前年同期比でほぼ横ばいですが、オフィス価格は1.4%低下しました。一方、オフィス取引件数は前年同期比2.0%増です。カサブランカではCFC、アンファ、シディ・マアルフなど、交通アクセス、駐車場、電力・通信設備、環境性能を備えた新しいオフィスが選ばれています。旧市街や老朽ビルでは、設備更新や床面積の分割を行わないと長期空室になりやすい状況です。 - 商業施設は生活密着型と体験型が中心
店舗価格は前四半期比1.1%低下、前年同期比では横ばいでした。大型モールでは飲食、娯楽、ファミリー向け施設を組み込む動きが続く一方、一般的な路面店舗は家計の購買力や人流の影響を受けやすくなっています。物販だけの区画よりも、飲食、医療、美容、教育、日用品など来店目的が明確なテナントが安定しやすい市場です。
ホテル・観光不動産
- 2030年ワールドカップが供給拡大を加速
モロッコは2025年に約2,000万人の観光客を受け入れ、ホテル収容能力は30万床超となりました。2030年までにさらに6万床を追加する計画で、鉄道、空港、道路、競技場、都市整備への投資額は1,900億ディルハム超です。マラケシュとアガディールに加え、ラバト、カサブランカ、タンジェ、フェズでもホテルやサービスアパートメントの開発が増える見通しです。 - 供給過剰には注意
大会開催都市では宿泊需要の増加が見込まれますが、大会前の建設集中により、2030年以降に中価格帯ホテルの供給過剰が生じる可能性があります。ブランド力、空港・駅からの距離、団体客への対応、会議設備、運営会社の実績を確認する必要があります。
物流・工業不動産
- タンジェからナドルへ投資軸が拡大
タンジェ地中海港周辺の工業団地には2024年時点で約1,400社が立地し、約13万人を雇用しています。自動車、航空、食品、繊維、再生可能エネルギー関連の工場・倉庫需要が中心です。2026年後半にはナドル・ウェスト・メッド港の稼働が予定され、当初800ヘクタール、将来的に5,000ヘクタール規模の工業用地が計画されています。 - 物件選定はインフラ性能が重要
工業用地や倉庫では港への距離だけでなく、電力容量、給排水、従業員の通勤手段、大型車両の動線、保税・自由貿易区の適用条件が収益性を左右します。港湾計画だけを根拠に周辺土地を取得すると、造成や用途変更に時間がかかるリスクがあります。
外国人取得制度
- 都市部の住宅・商業物件は取得可能
外国人は居住資格の有無にかかわらず、都市区域のマンション、ヴィラ、オフィス、店舗、工業施設を原則として自己名義で取得できます。ただし、農地や農業用途と分類された土地の所有は制限され、非農業用途証明であるAVNAの取得が必要になる場合があります。取得時の登記税、土地登記費用、公証人報酬などの諸費用は、一般に売買価格の6~10%程度が目安です。 - 外貨送金記録を残すことが重要
非居住者が将来の売却代金や利益を国外へ送金するには、購入資金を正規の銀行経由で外貨送金し、両替証明などを保存する必要があります。また、未登記物件、旧市街のリアド、共有名義、相続未処理物件では権利関係が複雑な場合があるため、公証人だけでなく独立した弁護士による確認が重要です。
リスク・留意点
- 取引流動性:価格指数の下落以上に取引件数が減少しており、売却まで長期間を要する可能性があります。
- 地域格差:ワールドカップ関連投資は主要都市と大西洋沿岸に集中し、地方・内陸部への波及は限定的です。
- 水不足:マラケシュやリゾート地域では、プールや庭園を持つ大型物件の水利用コストと規制が重要になります。
- 法的権利:未登記土地、農地分類、建築許可、増改築の未承認、管理費滞納を購入前に確認する必要があります。
- 短期賃貸:観光需要が強くても、管理会社手数料、修繕費、空室期を含めた実質収益で判断すべきです。
まとめ
2026年のモロッコ不動産は、市場全体では価格の小幅下落と取引件数の減少が続く一方、観光、インフラ、物流、プライムオフィスには大型投資が流入する選別相場です。一般住宅は住宅購入支援が低・中価格帯を下支えし、カサブランカとラバトでは業務需要、マラケシュとアガディールでは観光需要、タンジェとナドルでは工業・物流需要が主要な成長要因です。
投資対象としては、単純な都市平均ではなく、駅・空港・港湾・業務地区へのアクセス、登記状況、用途規制、管理体制、実際の賃貸需要を個別に確認する必要があります。2030年ワールドカップは強い追い風ですが、すでに期待を織り込んだ高値物件や、大会後の利用計画が不明確なホテル・商業施設には慎重な判断が求められます。
