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2025年9月19日、マレーシアの業界紙The Edge Malaysiaは、全国不動産開発業者協会(REHDA)が実施した開発業者調査の結果を報じました。調査対象187社のうち70%超が販売価格を3〜5%引き上げる計画と回答。背景にはSST(Sales and Service Tax:売上税・サービス税)の負担増があり、62%が「SSTによりプロジェクトコストが大幅に上昇し、事業運営に影響する」とみています。

REHDAは政府と協議を進めており、二重課税の回避、主要資材や環境配慮製品への税制優遇、入力税控除(Input Tax Credit)や還付の迅速化、税率の簡素化(段階税率やフラット3%案)、税務当局とのデジタル連携強化などを要望。記者会見では、会長Datuk Ho Hon Sang氏、直前会長Datuk NK Tong氏、副会長Datuk Zaini Yusoff氏が登壇しました。

Ho氏は「住宅はSST非課税だが、商業用は課税複合用途(ミックスドユース)では判定が難しい。資材は概ね非課税だが、人件費や機械レンタルは課税で、コスト構成の詳細な仕分けが非常に煩雑」と説明。労務費と資材費が概ね半々である実情から、フラット3%のSSTといった簡素化案を提案しました。

併せて、Home Ownership Campaign(HOC)の復活も要望。過去(HOC1・HOC2)には名義変更等の印紙税免除により販売好調だったことから、需要喚起策として再導入を呼びかけています。

背景と制度のポイント

  • SSTの拡大・実務負担:近年、サービス税率や対象範囲の見直しが進み、建設・不動産関連サービスにおける課税実務が複雑化。住宅(Residential)は非課税でも、施工・賃貸機器・専門サービスなどで課税が発生しやすく、原価に波及します。
  • 住宅vs商業・複合用途商業(Commercial)は課税が基本。複合用途の大規模案件は、区分ごとの課税判定・按分が必要で、コスト計算と価格設計が難しくなっています。
  • 価格転嫁圧力:開発業者の73%が建設コスト3%以上の上昇を想定、結果として販売価格3〜5%の引き上げを検討。利幅の圧縮回避キャッシュフロー保全が狙いです。

調査結果の内訳と業界要望

  • 187社サーベイ
  • 62%…SSTでプロジェクトコストが大幅増事業運営に影響
  • 約70%建設コストが少なくとも3%上昇と推定
  • 70%超販売価格を3〜5%引き上げる計画
  • REHDAの要望
  • 二重課税の回避入力税控除(ITC)還付の迅速化
  • 税率の簡素化(フラット3%案や段階税率)
  • 資材・グリーン建材への税優遇
  • 税務当局(関税局など)とのデジタル連携強化
  • HOC復活(印紙税免除等)で需要喚起

難しい用語ミニ解説

  • SST(Sales and Service Tax)売上税・サービス税の総称。物品の売上に課される売上税と、各種サービスに課されるサービス税で構成。最終消費段階での課税色が強く、仕入税額控除は限定的
  • Input Tax Credit(入力税控除):企業が仕入時に支払った税を後で相殺・還付できる仕組み。SSTでは範囲が限定され、キャッシュフローが圧迫されやすい。
  • ミックスドユース(複合用途)住宅+商業+オフィス等を一体開発。用途別に課税取り扱いが異なるため、原価配賦・税務処理が複雑
  • HOC(Home Ownership Campaign):購入者の印紙税軽減などで需要喚起を狙う政府・業界の共同キャンペーン。在庫消化・新規供給の下支えに寄与。

市場への短期インパクト

  • 新規発売の価格表(プライスリスト)調整3〜5%の名目値上げが想定され、早期完成在庫や完成間近案件は上げ幅が相対的に小さい可能性。
  • 建設段階のキャッシュフロー管理人件費・重機レンタル等のSST課税部分で資金繰り負担が増し、着工・引渡しスケジュールに慎重姿勢。
  • セグメント差商業・オフィス・一部投資用レジは転嫁圧力が強く、純住宅(自用)はHOC復活の有無で実質負担が左右される見通し。

中期・長期の論点

  • 政策対応の帰趨簡素化・ITC拡充・HOC再開が実現すれば、価格上昇圧力を一部相殺。未実現なら名目価格上昇と供給抑制のリスク。
  • サステナブル建材優遇グリーン建材の税優遇が実装されれば、ESG志向の海外投資家にとって銘柄選別の材料に。
  • 金利・為替との相互作用リンギット安局面では円建て投資家に割安感が出る一方、建設コストの外貨連動分は上がりやすい。

ニュースの見解

日本人の海外不動産投資家向けポイント

  1. 価格前提の見直し:2025年後半〜2026年の新規分譲・竣工前案件は、3〜5%の価格上振れを前提にIRR(内部収益率)や出口利回りを再計算。完成在庫(Ready-to-move)工期進捗が進んだ案件は相対的に価格硬直性が低く、交渉余地が生まれる可能性。
  2. 用途別・構成別の税務精査住宅は非課税、商業は課税という原則に、複合用途の按分が絡むと実質負担が物件ごとに差デベロッパーのコスト積算根拠(人件費・機械レンタルの扱い)価格転嫁ロジック開示資料やQAで確認しましょう。
  3. 政策トリガー(HOC復活)の監視HOC再導入が決まると、印紙税軽減=実質取得コストの低下一次取得需要が回復しやすく、短期の成約率・在庫回転が改善。HOC対象・期間・上限の条件が投資妙味を左右します。
  4. 為替・調達の多層管理円⇔リンギット(RM)のヘッジ方針と、支払スケジュール(進捗払い)の整合を。外貨建ての建設入力(輸入資材・外注)比率が高い案件はコスト変動リスクを内包し、価格改定条項の有無を確認。
  5. ESG・グリーン優遇の実益グリーン建材への税優遇が制度化されれば、運営コスト削減(光熱費・修繕)テナント需要の両面でプラス。グリーン認証(GBI等)省エネスペックを比較指標に入れてください。

当面は指値に慎重、一方で完成在庫や引渡し間近の良立地レジ選別的にアプローチする局面。HOC再開・税務簡素化の政策進展が見えたタイミングで、一次取得需要の波に合わせた短中期のキャピタルゲイン狙いが取りやすくなります。DD(デューデリジェンス)は「SSTの扱い」「複合用途の配賦」「価格改定条項」「為替ヘッジ」の4点を必須項目に据えましょう。


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