「キプロス不動産って買えるですか?」
「キプロス不動産投資ってどうなんですか?」

キプロス不動産の購入、キプロス不動産投資を検討している方もいるかと思います。今回は、キプロス不動産投資、キプロス不動産の買い方・メリットデメリット・リスク・利回り・税金まで、徹底的に検証したいと思います。

目次

そもそも、キプロス不動産は、日本在住の日本人が買えるの?

元々、キプロス不動産では、

外国人(非EU国籍者)は、キプロスでの不動産購入には一定の制限がある」とされてきました。

具体的には、

  • 戸建て、またはアパート、1件
  • または、最大4,014㎡の土地
  • 所有目的は基本的に「本人および家族の使用」である必要がある
  • 購入には、閣僚会議(Council of Ministers)の承認が必要

とされていました。

これだけ聞くと、「制限が多くて、投資できないのでは?」と思うかもしれません。

しかし、近年のキプロス政府の方針により、外国からの投資促進が重要課題となり、規制は事実上かなり緩和されています。

現在では、リマソールやパフォスといった人気地域では、外国人の不動産購入が可能で、かつ賃貸や転売も許可されており、実質的には不動産投資として活用できる環境が整っています。

また、キプロスには不動産購入を通じた「永住権取得制度(ゴールデンビザ)」もあり、一定の投資額(30万ユーロ以上)を満たせば、永住ビザも取得可能です。

大前提として、キプロス政府は、外資導入による経済成長とEU圏内での競争力を高めることを目的として、外国人投資家への不動産市場開放を進めています。

キプロスという国とは?

概要

投資先キプロス不動産
国名キプロス共和国
面積(k㎡)9,251k㎡
日本との比較0.02倍
人口1,358,282人
日本との比較0.01倍
首都ニコシア
民族ギリシャ系、トルコ系、その他(マロン派、アルメニア系等)
言語ギリシャ語、トルコ語(この他、英語が広く用いられている)
宗教ギリシャ正教、回教、その他(マロン派、アルメニア教会等)
通貨ユーロ(EUR)
政策一院制
主要産業観光業、金融業、海運業
日本からの移動時間16時間
為替変動相場制
格付けS&P BB-
フィッチ B+
ムーディーズ BB-

キプロス共和国(Republic of Cyprus)は、東地中海に位置する島国で、ヨーロッパ・中東・アジアの交差点という戦略的な立地を持ちます。面積は約9,251平方キロメートルで、四国とほぼ同じ規模。人口は約92万人と小規模ですが、EU加盟国として高い生活水準と安定した政治体制を有しています。首都は内陸部のニコシアで、世界で唯一分断された首都でもあり、北部は事実上トルコ系勢力が支配する「北キプロス・トルコ共和国」となっています(国際的には承認されていません)。

気候は典型的な地中海性気候で、夏は暑く乾燥し、冬は温暖で雨が少ないのが特徴です。年間300日以上が晴天といわれ、ヨーロッパのリゾート地としても人気が高く、特にリマソール、パフォス、ラルナカなどの沿岸都市には観光客が多く訪れます。通貨はユーロを採用し、ギリシャ語とトルコ語が公用語ですが、英語も広く通用するため外国人にとって生活しやすい環境が整っています。

経済面では、観光業、金融業、不動産業、IT産業が主要な柱で、法人税率が欧州でも低水準(12.5%)に抑えられていることから、国際企業の誘致にも成功しています。加えて、EU域内でのアクセス性、英国との歴史的つながり(旧英領)もあり、イギリスやロシア、イスラエルなどからの不動産投資・移住需要が高まっています。政治的安定性、法整備の信頼性も高く、特に不動産取引においては英米法の影響を受けた厳格な登記制度があり、外国人でも安心して購入できます。

また、ゴールデンビザ制度により、一定額以上の不動産投資を行った外国人には永住権が付与される制度もあり、資産運用・移住を目的とした投資家にも魅力的な選択肢となっています。キプロスは小国ながらも、多文化・多機能な魅力を併せ持つ注目の投資先です。

経済

キプロスの経済は、地中海の要衝という地理的優位性と、欧州連合(EU)加盟国としての制度的安定性を背景に、サービス産業を中心に発展してきました。特に観光、金融、不動産、海運の4分野は、GDPの大半を占める重要な柱となっています。

観光業は、キプロス経済の中心的な存在であり、国の外貨収入の多くを支えています。年間300日以上が晴天とされる温暖な気候、青い海とビーチ、古代遺跡の数々が、ヨーロッパや中東、旧ソ連圏の旅行者を惹きつけています。イギリス、ドイツ、ロシア、イスラエルなどからの観光客が多く、夏場のリゾート地は非常に賑わいを見せます。観光客の回復とともに、ホテル・飲食・交通・小売など幅広い関連産業も潤い、地方経済を支えるエンジンともなっています。

金融業もキプロスの特徴的な産業です。法人税率が12.5%と欧州内で低水準に抑えられ、かつ英米法ベースの法制度が整備されていることから、多国籍企業がキプロスを本拠地とするケースが多く見られます。特に投資ファンド、信託業務、保険・金融仲介業などは国際的にも競争力があり、「地中海のオフショア金融センター」としての立ち位置を確立しています。

不動産市場も活況を呈しています。EU内での住居需要、観光による短期賃貸需要、そして外国人による投資や移住が相まって、キプロス各地で新築住宅や商業物件の開発が進んでいます。特に、永住権(ゴールデンビザ)制度の存在が大きく、30万ユーロ以上の不動産投資によってEU圏内での長期滞在権を得られる仕組みが、アジアや中東、ロシアなどからの富裕層を引き寄せています。物件価格は年々上昇傾向にあり、賃貸利回りも3〜6%と安定していることから、キャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙える市場となっています。

さらにキプロスは、意外にも「海運大国」です。国際船籍の登録数で世界上位に位置しており、海運関連会社の多くがリマソールに拠点を置いています。こうした企業から得られる法人税・登記収入なども国家財政の重要な一部となっています。

近年では、情報通信産業やスタートアップ誘致にも注力しており、特にイスラエルや欧州のIT企業が進出を始めています。英語が広く通じ、税制も明確で、法的な安定性もあることから、リモートワーカーやITフリーランスにとっても魅力的な拠点とされています。

一方で、キプロス経済にはいくつかの課題もあります。例えば、北キプロスとの分断状態が依然として続いており、国土の一部は事実上トルコの支配下にあります。ただし、経済活動の大部分は南側(ギリシャ系のキプロス共和国)で行われており、日常的には大きな混乱はありません。さらに、観光業の季節変動性や、外資への依存度の高さといった構造的な弱点も指摘されています。

それでも、マクロ経済は安定しており、インフレや財政赤字もコントロール下にあります。EU規制に準拠した透明な制度、地政学的に重要な位置、そして比較的柔軟な税制度を活かして、キプロスは今後も中東・欧州間のビジネス拠点として発展していくと見られています。小さな島国ながら、経済的には多様な顔を持ち、国際投資家や事業家にとって注目に値する市場といえるでしょう。

キプロス不動産が不動産投資で注目される理由・メリット

1.EU加盟国でありながら、不動産価格が割安

キプロスは2004年にEUに加盟し、ユーロ圏の一員でありながら、不動産価格が他の地中海諸国と比べて極めて割安です。

例えば、スペインのバルセロナでは新築物件が1㎡あたり5,000〜6,000ユーロが相場ですが、キプロスの首都ニコシアでは1,800〜2,500ユーロ、人気リゾート地のリマソールでも3,000〜4,000ユーロ程度にとどまります。この価格差により、低予算でも地中海リゾート物件が保有できることから、個人投資家やリタイアメント層に人気です。

ユーロ圏の不動産価格比較

国名都市名販売価格(EUR or USD:1-Bed)
オーストリアウィーン315,000
キプロスニコシア140,000
フランスパリ437,000
ドイツベルリン329,000
アイルランドダブリン295,000
イタリアミラノ305,000
ルクセンブルクルクセンブルク654,000
オランダアムステルダム405,000
ポルトガルリスボン420,000
スペインマドリード320,000

2.不動産購入による永住権(PR)取得が可能

出典:キプロス政府

キプロス政府は投資移民制度を整備しており、30万ユーロ以上の不動産を購入すれば、投資家本人と家族(配偶者・子ども・親)に永住権(PR)が与えられます。

この永住権は就労義務がなく、EU域内での滞在や移動に制限がないのが魅力です。教育移住を希望する家庭や、ヨーロッパとの2拠点生活を望む富裕層にとって、資産取得とビザ取得を同時に実現できる投資となっています。

3.賃料収入・売却益にかかる税負担が軽い

キプロスの所得税制度では、個人の年間所得が19,500ユーロ未満であれば所得税が非課税です。

また、賃料収入は特別防衛税(SCD)などの対象にはなりますが、その税率も非常に低く抑えられています(例:3%~5%)。不動産の譲渡益についても、特定条件(居住年数や自己使用など)を満たせばキャピタルゲイン税が軽減または非課税になる制度があります。

これにより、インカムゲイン・キャピタルゲインの両方で高い税効率が期待できます。

キプロスの主な税制概要

1. 法人税(Corporate Tax)
  • 税率:12.5%
  • EU加盟国の中でも最も低い水準。
  • キプロス法人が国外で得た所得(配当、利息など)には免税や非課税制度あり。
2. 配当所得税(Dividend Tax)
  • 原則:非課税(個人・非居住法人)
  • 特定条件を満たす法人間配当も非課税

※居住者が受け取る国内配当については「防衛税(SDC tax)」がかかる場合あり(17% など)。

3. キャピタルゲイン税(Capital Gains Tax)
  • 原則:非課税
  • 株式や不動産の売却益は基本的に非課税
  • ただし、キプロス国内不動産の売却益に限り20%のキャピタルゲイン税がかかる
4. 所得税(個人所得税)
  • 年間19,500ユーロ以下:非課税
  • 超過部分は以下の累進課税:
年間所得額税率
0~19,500ユーロ0%
19,501~28,000ユーロ20%
28,001~36,300ユーロ25%
36,301~60,000ユーロ30%
60,001ユーロ超35%
5. VAT(付加価値税)
  • 標準税率:19%
  • 生活必需品等は5%または9%の軽減税率対象

4.相続税・贈与税がゼロで資産承継に有利

2000年に相続税・贈与税が廃止され、現在キプロスでは生前贈与・相続ともに非課税です。

他国であれば数十%課税されるケースが多い中、資産保有者が子どもや孫に不動産を譲渡する際、税金を一切支払う必要がありません。

これは特に、世代を超えた長期資産運用や相続対策を重視する投資家にとって大きなメリットです。

5.地中海の交通要衝として経済発展が継続

キプロスは、ヨーロッパ・中東・アジアの交差点に位置する地理的優位性から、物流・観光・ビジネス拠点としての重要性が高まっています。

リマソール港の拡張プロジェクトや、ラルナカ空港の近代化に加え、中国やイスラエルからのインフラ投資も流入中です。こうした公共投資の恩恵を受けて、不動産価値の上昇が期待されるエリアが次々と開発されています。

6.英語が広く通用し、契約書や登記も英語対応

キプロスはイギリス統治下にあった歴史的背景から、英語が非常に広く使われており、人口の80%以上が英語を話せるとされています。

行政手続きや銀行口座開設、不動産登記・契約書も英語で対応可能なため、外国人でも法的リスクなく不動産を取得・保有できる環境が整っています。
英語が共通言語であることは、他の非英語圏EU諸国と比べて大きな安心材料です。

7.高水準の医療・教育インフラが整備されている

キプロスはEU加盟国として、医療制度の質とアクセス性が高く、EU圏の医療カード(EHIC)を使って多くの治療が受けられます。

また、英語で授業を行うインターナショナルスクールや大学も充実しており、特に医療・法学・観光学分野の教育に強みがあります。教育目的での移住や、リタイアメント後の安心した生活を求める層にとっても、選ばれる理由となっています。

8.ユーロ建てで資産を保有できる

キプロスはユーロ圏であるため、不動産価格や収益は基本的にユーロ建てとなります。

ユーロは米ドルに次ぐ世界の主要通貨であり、為替リスクを軽減した資産分散が可能です。日本円建ての資産に偏っている投資家にとって、為替ヘッジとしてのユーロ不動産は価値が高いです。

キプロスの為替「EUR/JPY」

キプロスの為替「EUR/USD」

9.観光地としての魅力が高く、安定した賃貸需要

キプロスは「ヨーロッパのハワイ」とも呼ばれるほど、気候・自然・治安の三拍子が揃ったリゾート地で、年間平均320日が晴れとされています。

ラルナカやパフォスなどのエリアでは、観光客向け短期賃貸(Airbnbなど)が活況を呈しており、表面利回りが6〜8%を超えるケースも存在します。
また、英語圏からの観光客に人気が高く、長期滞在者向けの賃貸需要も安定しています

10.不動産登記制度や法制度が整っており、安全性が高い

キプロスは英米式のコモンロー(Common Law)をベースとした法制度を採用しており、不動産登記制度も非常に整っています。

所有権登記は電子化されており、重複登記や虚偽登記のリスクは極めて低く、海外投資家も安全に権利保有が可能です。さらに、法務局(Land Registry Office)による登記保証制度があり、万が一のトラブル発生時にも保護を受けられる体制が整っています。

キプロス不動産投資におけるデメリット・リスク

1.人口が増えるわけではない

キプロスは、島国であり、大きな国土があるわけではないため、人口は微増・維持という国です。今後のキャピタルゲインを狙う上での人口ボーナスは期待できない国と言えます。

キプロスの総人口推移

出典:United Nations 2024

2.為替リスク。ユーロ安による円建て価値の目減りに注意

キプロスはユーロ圏に属しており、通貨は「ユーロ(EUR)」です。

ユーロの為替レートは、世界情勢や金融政策の影響を受けやすく、円に対して大きく上下することがあります。たとえば、欧州中央銀行(ECB)の利下げや、地政学的リスク(ウクライナ情勢など)によってユーロ安が進めば、日本円に換算した不動産価値や家賃収入は減少するリスクがあります。

今後、日本が利上げを進め、ユーロが低金利政策を維持した場合には、ユーロ安・円高が進行する可能性も否定できません。ユーロ建ての資産は、日本円換算の価値に為替影響を大きく受けることを理解しておく必要があります。

3.政治・外交リスク。分断国家としての特殊事情

キプロスは、1974年のトルコによる北部占領以降、現在も南北で実質的に国家が分断されています。

投資対象となるのは国際的に承認された「南キプロス(ギリシャ系)」ですが、北キプロス(トルコ系)との緊張状態が完全に解消されたわけではありません。地政学リスクは比較的低いとはいえ、政治的対立が再燃すれば投資先としての信用に影響する可能性があります。

また、トルコとの外交関係の影響で、周辺国との摩擦が経済や不動産市場に影響を与えるリスクもゼロではありません。

4.市場の流動性リスク。買い手が限られる可能性

キプロスの不動産市場は、マルタやギリシャと同様に「欧州域内の富裕層」や「第三国の移住者」をターゲットとしたものが中心です。

そのため、日本人やアジア人投資家による現地物件の売却時には、買い手が欧州圏に限定されやすく、市場の流動性に制限が出る可能性があります。特に高級リゾート物件や移住目的の住宅は、景気後退時に売れにくくなる傾向があるため、中長期保有を前提に考える必要があります。

また、短期売却を前提にすると、登記費用・仲介手数料・税負担などのコストが利益を圧迫する点にも注意が必要です。

5.税制変更・優遇措置の見直しリスク

キプロスは、かつて「投資による市民権付与プログラム(通称:ゴールデンパスポート制度)」を導入し、不動産投資を通じて多くの外国資本を呼び込んできましたが、制度の乱用や政治スキャンダルを受けて2020年に市民権付与プログラムは廃止されました。

一方で、不動産投資を通じた永住権取得プログラム(Permanent Residency by Investment)は現在も継続中であり、20万ユーロ〜30万ユーロ程度の不動産購入を条件に、非EU圏からの投資家に対してキプロスでの居住権が付与されています。

ただしこの永住権制度も、EUの圧力や国際的な規制強化によって将来的に条件が厳しくなる可能性はあります。また、税制面においても、OECDのBEPS対応や最低法人税率制度(15%ルール)などの影響で、キプロスの低税率・非課税メリットが今後見直されるリスクも考慮すべきです。

キプロス不動産価格推移

キプロス全国住宅価格指数推移

住宅物件(2010年第1四半期 = 100)


出典:Global Property Guide 2025年7月最新データ

キプロス全国住宅価格指数推移変動率

住宅物件(2010年第1四半期 = 100)


出典:Global Property Guide 2025年7月最新データ

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おすすめのキプロス不動産物件情報

おすすめのキプロス不動産物件情報

キプロス不動産最新動向/2025年12月時点

マクロ環境・金利

  • 景気・インフレ
    キプロス経済は2024年に実質+3%台前半の成長を達成し、ユーロ圏の中でも比較的高い伸びを維持しています。2025年も観光とICT・ビジネスサービスを中心に+2.5〜3%前後の成長予測で、「小さいが機動的な経済」として評価されています。
    物価は2023年までの高インフレから大きく落ち着き、2024〜2025年のHICPベースでは1〜3%程度のレンジ。2025年秋は0%台まで低下しており、生活コストの急騰は一服している状況です。
  • 政策金利と住宅ローン金利
    キプロスはユーロ圏のため、金利は欧州中央銀行(ECB)に連動しています。ECBは2024年以降、段階的な利下げを行い、2025年秋時点では預金ファシリティ金利は2%前後で据え置きという状況です。
    住宅ローン金利は、銀行や借り手属性によりますが、2025年初の時点で概ね3.5〜5.5%程度が目安とされます。変動金利でユーロ短期金利にスプレッドを上乗せする形が一般的で、2022〜23年の急上昇局面から比べると、やや借りやすい水準に落ち着いてきています。

住宅(分譲・賃貸)

  • 価格は「上昇ペース鈍化しつつ、なお緩やかな右肩上がり」
    中央銀行の住宅価格指数(RPPI)では、2025年Q2の住宅価格は前年比+4.7%と、公表されています。ここ数年の二桁近い伸びと比べるとペースは鈍化しているものの、依然として全国的には上昇基調を維持しています。とくにアパート(フラット)は伸びが加速し、戸建ては落ち着きつつあるという構図です。
  • 売買ボリュームは堅調、2025年は再び記録更新ペース
    2024年通年の不動産取引件数は約2.39万件、取引総額は約57億ユーロとされ、前年から小幅ながら増加しました。2025年1〜9月の時点で、土地登録局に提出された売買契約書は前年比+13%、取引額は約34.9億ユーロ(+約12.6%)まで拡大しており、市場の「量」はむしろ強含みです。
    地域別では、取引額ベースでリマソールが約37〜44%を占める“牽引役”、次いでニコシア、パフォス、ラルナカが続きます。高価格帯(100万ユーロ超)の取引は依然としてリマソールとパフォス沿岸部に集中しています。
  • 外国人需要と投資ビザが中上位価格帯を押し上げ
    2024年の取引ベースで見ると、非EU(第三国)バイヤーが全体の25%超を購入したとされ、外国人需要は依然として市場の重要なドライバーです。国籍としては、英国・イスラエル・レバノン・中国などに加え、ロシア・ウクライナからの資金も一定程度残っていますが、制裁以降のロシア比率は低下し、多国籍化が進んでいます。
    不動産購入による永住権(ゴールデンビザ)プログラムも継続しており、30万ユーロ以上の新築物件購入+海外からの一定以上の収入証明により、非EU投資家が比較的迅速に永住権を取得できる仕組みです。2020年に廃止された市民権(パスポート)取得スキームに代わる枠組みとして、富裕層の30〜60万ユーロ帯のアパート・ヴィラ需要を支えています。
  • 賃料と利回り:都市部アパートは5〜6%台
    RICS/KPMGの2025年Q3の調査では、全国平均の表面利回りは、アパート約5.4%、戸建て約3.0%、オフィス約5.6%とされています。利回り自体は1年前からほぼ横ばい〜わずかな低下に留まり、賃料の上昇と価格の伸びがバランスしている状態です。
    都市別では、リマソールのアパート利回りが概ね5.5〜6%前後、ニコシアが約5%弱、パフォス・ラルナカが4%台とされ、「利回り重視ならニコシア・リマソール内陸部」「値上がり期待と短期賃貸なら海沿いリゾート」という役割分担が見られます。

オフィス

  • IT・金融・バックオフィス需要が質の高いビルに集中
    オフィス市場はパンデミック後のテレワーク定着で全体の面積需要は抑制されつつも、ニコシア・リマソールのAグレードビルではIT企業、金融・ファンド管理業、サービス企業の入居が継続しています。RICS指標では、2024〜2025年にかけてオフィス賃料は小幅な上昇、利回りは5%台後半で安定しており、欧州内では比較的魅力的な水準です。
  • Bグレード以下はテナント付けに時間、リノベーション前提
    一方で、築年数の経ったBグレードビルや郊外オフィスは、フロアを細かく分割した柔軟レイアウトや、共用部の改装・ESG対応を行わない限り、空室期間が長期化しやすい状況です。家賃は横ばい〜やや軟調で、サービスオフィス併設・フレックスオフィス化などの再ポジショニングがトレンドになっています。

リテール・商業(モール・路面店)

  • 観光と内需回復でモールは堅調、路面店は二極化
    大型ショッピングモールや観光地周辺の商業施設は、観光と内需の回復を背景に来客数・売上とも回復〜過去最高レベルに近い水準です。一方で、地場の小規模路面店や二等立地の小型モールは、オンライン消費や競争激化で賃料調整が続いており、空室リスクが相対的に高いです。RICSデータでは、リテール資産の利回りは約5.7%と、住宅よりやや高いものの、賃料や価格は横ばい〜小幅安のケースも見られます。
  • テナント・オーナーとも「成果連動・内装支援」が一般化
    新規出店では、売上連動型賃料(%レント)や内装費のオーナー負担など、インセンティブ付き契約が一般化しています。プライム立地モールではベース賃料+歩合、二等立地では短期契約・ポップアップストアで空き区画を埋める動きが多いです。

ホテル・観光関連不動産

  • 観光客数は過去最高圏、収益性も高水準
    観光はキプロス経済の中核セクターで、2024年の訪問者数は約400万人超と過去最高圏に達しました。2025年1〜10月の観光客数は、前年同期比で二桁増となっており、2025年も過去最高更新ペースと報じられています。観光収入も同時期で約15〜17%増とされ、ホテル・リゾートの収益性は高水準を維持しています。
  • インフラ投資と水資源問題
    ラルナカ・パフォス両空港の拡張・改修計画や新規路線の増便により、中長期的な観光キャパシティは拡大方向です。一方で、近年の少雨・干ばつによりダム貯水率が低下し、政府はホテルへの小規模海水淡水化プラント導入補助を打ち出しています。観光依存度の高いリゾート物件では、水資源・インフラコストが中長期の重要なリスク要因となりつつあります。

物流・工業・その他セグメント

  • 港湾・空港アクセスの良いエリアで賃貸倉庫需要
    物流セクターでは、リマソール港・ラルナカ港周辺、および空港アクセスの良いエリアで近代的な高天井倉庫・ライトインダストリアルへの需要があります。ただし、RICS・民間調査では、2024年に倉庫や工業系の価格・賃料は一時的にマイナスとなった後、2025年には横ばい〜小幅反発といった動きで、住宅ほどの成長性はないが安定したニッチという位置付けです。
  • データセンター・再エネ関連など新しいニーズ
    EU規制対応や電力事情を背景に、小規模ながらデータセンター、再生可能エネルギー関連用地への投資例も増えています。とはいえ、マーケット全体から見るとまだ限られたニッチであり、投資には個別案件の精査が必須です。

制度・規制トピック

  • 外国人の購入制限と新たな規制強化の動き
    現行制度では、EU市民はキプロス人と同様に物件数の制限なく購入可能です。一方、非EU市民は通常、1戸の住宅(または一定面積以下の土地)までに制限され、購入後に内務省(事実上は各地区当局)からの許可取得が必要とされています。
    さらに2025年11月には、非EU個人・法人の不動産取得を「一つの住宅またはアパート、もしくは一つのオフィスに限定」し、農地や森林の取得を禁止するといった法改正案が国会に提出されました。まだ審議中ですが、可決されれば非EU投資家による複数物件取得や土地投資への制約が一段と強まる可能性があります。
  • 市民権プログラムは終了、ゴールデンビザは継続
    かつての「ゴールデンパスポート」市民権取得スキームは、2020年に廃止されました。その後は、不動産投資を通じた「ゴールデンビザ(永住権)」プログラムが主流となっており、2024年までに累計約7,000件超の永住権が発給されたとされています。規制当局は近年、デューデリジェンスや実際の居住実態の確認を強化しており、投資家にとってはコンプライアンス対応コストも考慮すべきポイントです。

投資家への示唆(セグメント別)

  • 住宅(自用・長期賃貸)
  • 価格は全国平均で年+4〜6%程度の緩やかな上昇ペースに落ち着きつつあり、「バブル的な急騰は一服、ただし下がりにくい」局面です。
  • 地元需要と外国人需要の両方を取り込みやすいのは、ニコシア・ラルナカの中価格帯アパートで、ローン利用もしやすく、賃貸需要も安定しています。
  • 海沿いリゾートのヴィラ・高級アパートは、価格水準がすでに高く、入退出コスト・維持費・短期賃貸規制を加味したうえでの選別が必要です。
  • 短期賃貸・リゾート物件
  • パフォス、アイアナパ、プロタラス、ラルナカ沿岸エリアは、季節性は強いものの高い日別単価と稼働率が期待できるエリアです。
  • 一方で、Airbnb等の短期賃貸には登録・ライセンス取得が必要であり、規制強化や観光税の導入が収益性に影響し得る点に留意が必要です。
  • オフィス・リテール・物流
  • コアなオフィス・物流施設は、5〜6%程度の利回り+ユーロ建て安定収入という観点から、分散投資先としての魅力があります。
  • リテールは、モール内プライム区画と二等立地路面店で収益性の差が大きく、テナントリスクの見極めがとくに重要です。
  • 小規模海外投資家にとっては、現地での運営・リーシング実務が必要なため、信頼できるパートナーやREIT・ファンド経由での参入が現実的です。

リスク・留意点

  • 政策・規制リスク
    非EU投資家向けの購入制限強化や、ゴールデンビザの条件見直しなど、外国資本に対する規制環境が変化しつつある点は最大の注意ポイントです。将来的に「複数物件の保有が認められない」「農地取得が不可」といった制限が実務に影響する可能性があります。
  • 地政学・マクロリスク
    東地中海地域の地政学リスク、EU全体の成長減速、金利の不確実性などは、観光需要や投資マインドに波及し得ます。特に、観光依存度の高い沿岸リゾートは、外部ショックの影響を受けやすいです。
  • 気候変動・水資源
    干ばつの頻発とダム貯水率の低下により、水道料金やインフラ負担の増加が中長期リスクとして意識されています。ホテル・プール付きヴィラ・ゴルフリゾートなど、水消費の多い資産では、自治体の規制や追加投資の可能性を事前に確認する必要があります。
  • 施工・タイトルリスク
    キプロスでは過去に建築許可・タイトル不備、デベロッパー破綻が問題となった経緯があり、現在も個別案件ではリスクが残ります。物件選定時には、
  • タイトル(所有権)の有無
  • 抵当権・差押えの有無
  • 建築確認・用途変更の状況
    を、独立した弁護士を通じて必ずチェックすることが重要です。

まとめ

2025年12月時点のキプロス不動産市場は、

  • マクロ環境は安定成長+低インフレ+緩やかな金利水準
  • 住宅価格は「上昇ペース鈍化だが、なお右肩上がり」
  • 取引ボリュームは2025年も二桁増と活発
  • 賃貸利回りはアパートで概ね5〜6%台と、欧州内で見ても競争力のある水準、

というのが全体像です。

一方で、非EU投資家への規制強化の動き、水資源・気候リスク、タイトル・建築関連の個別リスクなど、慎重なデューデリジェンスが求められるポイントも多く存在します。

総じて、キプロス不動産は「急騰を狙う投機市場」というより、
観光・居住ニーズに根ざした中長期のインカム+緩やかな値上がりを狙うマーケットにシフトしつつある、と整理できる状態です。

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