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2025年5月12日、エジプトの住宅・公共施設・都市コミュニティ省(Ministry of Housing, Utilities, and Urban Communities)は、不動産開発会社の支援と不動産市場の混乱緩和を目的とした包括的なインセンティブパッケージ(優遇策)を発表しました。
これは、エジプト産業連盟の不動産開発部会(Real Estate Development Chamber)と同省の高官による協議の結果として承認されたもので、不動産業界全体にとって極めて重要な政策転換となります。
主な優遇措置の内容
- 住宅・商業・オフィス用途の物件を「サービスドユニット(ホテル型運用可能な物件)」に無料で転換可能に
- 通常発生する用途変更手数料が不要に
- 深刻なホテル不足の解消と、投資家による短期賃貸運用の後押しが目的
- 営業ライセンスの有効期間を1年から5年に延長
- デベロッパーにとっての事業安定性が向上
- 土地購入時の分割払い金利(15%)の優遇措置を1年間延長(2025年5月〜2026年5月)
- 開発中プロジェクトの工期を6ヶ月延長可能に
- インフレによる建設費高騰への対応
- 許可される建築面積を10%拡大
- 同一敷地でも収益性の高い設計が可能に
遅延支払いに関する救済措置
エル=シャルビーニ住宅相(Sherif El-Sherbiny)によると、「建物金融基金(Buildings Finance Fund)」に関わる居住・商業・業務・ヴィラ物件の遅延支払いに対しても特別救済策が適用されます。
- 2025年6月1日〜8月31日の3か月間に限り、延滞金ペナルティの70%を免除
- ただし一括支払いを行った場合に限る
- 裁判中・上訴中の物件にも適用。ただし、訴訟を起こした側は、すべての訴訟を取り下げることが条件
背景にあるエジプト不動産市場の現状
ここ数年、エジプトでは急速な都市開発が進行しており、とりわけ「新行政首都(New Capital City)」や「西カイロ」「アレキサンドリア」といったエリアでは、開発需要が高まっています。一方で、資材高騰や通貨変動、販売スピードの鈍化により、多くのデベロッパーが資金繰りの課題を抱えていました。
今回の政策は、これらの課題に対する直接的な救済とともに、政府主導の都市開発を支える投資促進策でもあるといえるでしょう。
ニュースの見解
日本人投資家への影響と見解
日本人海外投資家にとって、今回の発表は非常にポジティブな材料です。
- サービスドユニットへの用途変更が無料になったことで、観光需要の高いカイロや新行政首都での短期賃貸モデル(ホテル型投資)が展開しやすくなった点は見逃せません。
- 建築面積の拡大や工期延長、土地支払いの優遇などは、開発中物件の供給リスクを下げる効果もあり、建物完成までの安心感を投資家にもたらします。
- 政府と業界団体との定期協議の継続や国家不動産プラットフォームの始動予定なども、中長期的には市場の透明性向上と信頼性アップにつながると予想されます。
現在、エジプト不動産市場は中東・アフリカ地域の中でも最も高い成長余地を持つマーケットの一つ。特にホテル型レジデンスや複合開発物件への投資は、今後の価格上昇と賃貸収益の両面で魅力が高まっています