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フィリピン・マカティ市、地下鉄事業めぐり巨額損失補填を断念

2025年7月9日、フィリピン・マカティ市のナンシー・ビナイ市長は、同市が進めていたマカティ・インナーシティ地下鉄プロジェクトに関連する和解金11.3億ペソ(約30億円)の支払いを断念すると発表しました。これは前任のアビー・ビナイ市長(ナンシー氏の実姉)が任期終了直前の2025年6月23日に締結した和解契約に基づく支払い義務で、市は現在の年間予算(84億ペソ)では対応できないとしています。

「深夜の和解」と呼ばれた契約と情報引継ぎの不備

この和解契約は、地下鉄事業を推進していた**フィリピン・インフラデブ社(Philippine Infradev Holdings)**に対して、市が損失補填を行うというものでしたが、現市長ナンシー・ビナイ氏はこれを「midnight settlement(深夜の和解)」と批判。新政権への情報の引き継ぎも極めて不十分で、プロジェクト進捗や契約内容に関する十分な文書はなく、わずかな箱にまとめられた契約書と付属資料のみが渡されたとされています。

地下鉄事業中止の背景と損失の大きさ

マカティ市が構想していた地下鉄は、2018年に準備が始まり、2025年末完成予定でした。当初はマニラ大都市圏の地下鉄網との接続も予定され、不動産価値の上昇が期待されていました。

しかし、2023年にタギッグ市との間で起きた領有権争いに敗北し、地下鉄の車両基地および複数の駅が建設される予定だった**10のEMBOバランガイ(行政区画)**がマカティ市の管理下から外れたため、プロジェクトは事実上停止。

この結果、**インフラデブ社は総額440億ペソ(約1170億円)**の損失を被り、2025年5月に合弁事業から撤退しました。和解契約はこの撤退を受けた損失補填のためのものでした。

投資家向け用語解説

  • JVA(Joint Venture Agreement):共同事業契約。フィリピンでは不動産開発などで地方自治体と民間企業が締結することが多く、日本人投資家が案件を調査する際の重要な契約文書。
  • EMBO(Enlisted Men’s Barrio):かつて軍人向けに設けられた地区。マニラ首都圏で土地権限をめぐる争いが度々起きるエリア。

ニュースの見解

日本人不動産投資家への影響と見解

今回の一連の問題は、現地の行政リスクと政治の変化が不動産開発に直結することを浮き彫りにしました。地下鉄の開発が中止されたことで、周辺不動産の価格上昇期待が剥落し、マカティ中心部の中長期的な資産価値見通しにも懸念が生じています

ただし、マカティは依然としてビジネス中心地であり、BGC(Bonifacio Global City)やタギッグ市との連携が再構築されるかどうかが今後の鍵です。日本人投資家にとっては、「プロジェクトの行政依存度」「契約主体の継続性」「政治の安定性」といった非財務リスクの分析が不可欠であり、現地パートナーや専門家との連携がより重要になる局面です。


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