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2025年9月15日、フィリピン大手紙「Philippine Daily Inquirer」が報じたところによると、フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas=BSP)の最新データで、不動産向け融資残高が2025年第2四半期(6月末時点)に 3兆300億ペソ(約8兆円規模) に達しました。これは銀行全体の貸出ポートフォリオの 19.61% を占め、前四半期の19.41%(2兆9,700億ペソ)から増加しています。
住宅ローンは四半期比 2.3%増の1兆1,600億ペソ、商業用不動産ローンは 約2%増の1兆8,700億ペソ へ拡大しました。一方で、不良債権(90日以上延滞したローン)は 1,145億ペソ(3.78%) に上昇し、前期の3.75%からやや悪化。特に住宅ローンの不良債権比率は 6.44% と過去3四半期で最高水準に達しています。
BSPは2020年のパンデミック期に、不動産向け融資比率の上限を20%から25%に引き上げ、業界支援を行いました。しかし同時に「ストレステスト規制」を導入し、仮に不動産ローンの25%が焦げ付いた場合でも自己資本基準を満たせるかを金融機関に求めています。
さらに、金利政策では今年に入り利下げを続け、政策金利を5.0%へと引き下げ「中立水準(Goldilocks level)」に設定。BSP総裁エリ・レモロナ(Eli Remolona Jr.)氏は、インフレが抑制され需要が堅調ならば、年末まで据え置きの可能性が高いと述べています。
背景
フィリピンは都市化・人口増加を背景に住宅需要が拡大し続けていますが、同時にオフィス・商業施設開発も旺盛です。特にマニラ首都圏やセブ、ダバオなど主要都市では、外資企業の進出に伴いコンドミニアム需要が高止まりしています。
一方で、不良債権比率の上昇は「住宅ローン借り手の返済能力低下」を示しており、金利環境や景気減速の影響が懸念されています。
ニュースの見解
このニュースは、日本人投資家にとって以下の点で重要です。
- 銀行融資拡大=住宅市場の活発化
銀行が引き続き住宅・商業用ローンを伸ばしていることは、不動産開発が勢いを維持している証拠です。特に住宅ローン比率の増加は、居住用コンドミニアム市場の底堅さを裏付けます。 - 不良債権増加=市場リスクの高まり
不良債権の上昇は、フィリピン国内の中間層や新興富裕層が返済に苦しんでいる兆候とも読めます。過剰融資や過熱した投機の兆しがあるため、投資家は購入物件のエリア選定と賃貸需要の安定性を慎重に見極める必要があります。 - 政策金利の引き下げ=資金調達コスト低下
BSPの利下げは融資環境を緩和し、今後の不動産需要を下支えします。円建て資金を活用する日本人投資家にとっても、ペソ安・金利動向を注視すべき局面です。
総じて、フィリピン不動産市場は 成長余地が大きい一方でリスク管理が不可欠 な状況です。日本人投資家が参入する場合は、①一等地の優良コンドミニアム、②高需要の賃貸マーケット(駐在員・外国人留学生向け)、③安定したデベロッパー案件に絞ることが推奨されます。