フィリピン不動産投資における「外国人規制」の壁を越える5つの合法的スキーム

日本国内の将来的な人口減少や円安リスクを背景に、資産の分散と防衛を図る日本人富裕層・実業家の間で、成長著しい東南アジアへの不動産投資がかつてないほどの注目を集めています。中でもフィリピンは、圧倒的な人口増加と力強い経済成長を背景に、魅力的な投資先として位置づけられています。

しかし、国境を越えて億単位の資金を動かす日本人投資家にとって、新興国特有の法規制は非常に高いハードルとなります。特にフィリピンでは、外国人による「不動産(土地)の所有」に対して極めて厳格な制限が設けられており、現地の法務事情を軽視した不適切なスキームを用いた投資は、最悪の場合「資産の没収」という致命的なリスクをはらんでいます。

本稿では、フィリピンにおいて外国人投資家が合法的に不動産を所有・支配するための具体的な「5つのアプローチ」を、法務および実務の観点から詳細に紐解きます。単なるセカンドハウスの購入にとどまらず、インフレ対策、キャピタルゲイン(売却益)の獲得、あるいは将来的な事業展開を見据えた大規模な資産配置を検討する富裕層に向けて、安全かつ確実な投資戦略のロードマップを提示します。

免責事項および注記:
本記事における法規制、判例、および所有スキームに関する記述は、信頼できる情報源に基づき執筆されています。一方で、人口推移やGDP成長率、一般的な不動産利回りといったマクロ経済に関する数値分析は、読者の皆様の理解を深めるための補足情報です。実際の投資判断・資金投入にあたっては、必ず現地の専門家(弁護士や公認会計士)を交え、独立した法務・税務デューデリジェンス(資産査定)を行うことを強く推奨いたします。

フィリピン市場へ投資マネーが流入する背景と、立ちはだかる「絶対的な法規制」

世界中の機関投資家や富裕層のマネーがフィリピンに向かう最大の理由は、圧倒的な「人口ボーナス」と高い経済成長率にあります。

  • 人口ボーナス期とは:生産年齢人口(15〜64歳)がそれ以外の従属人口を上回り、豊富な労働力が経済成長を力強く後押しする期間のことです。フィリピンは1億人を超える人口を抱え、平均年齢も20代半ばと非常に若く、この人口ボーナス期が2050年頃まで続くと予測されています。
  • GDPの持続的成長:年率6%前後という堅調な経済成長に伴い、購買力のある中間層・富裕層が急速に拡大しています。

これらが良質な住宅・商業施設への需要を押し上げ、長期的なキャピタルゲイン(不動産価格の上昇による売却益)と、安定したインカムゲイン(家賃収入などの運用益)の両立を可能にする強固な土壌を形成しています。

投資家が直面する「土地所有権」という最大の壁

しかし、日本人投資家が最初に直面し、最も警戒すべき壁が「土地所有権」の問題です。

1987年に制定されたフィリピン共和国憲法により、外国籍の個人および法人がフィリピン国内の土地を所有することは、原則として全面的に禁止されています。例外は法定相続などに限定されており、この強固なナショナリズムに基づく規制が、長年にわたり多くの外国人投資家の足かせとなってきました。

それでもなお、グローバルな富裕層がフィリピン不動産への投資を拡大し続けているのはなぜでしょうか。それは、この厳しい憲法の制限を厳密に遵守しながらも、実質的な所有権や開発利益を享受するための「合法的なスキーム」が、法律によって明確に整備されているからです。

収益最大化とリスクコントロールを両立する投資戦略

フィリピン不動産への投資において、インカムゲイン(賃料利回り)とキャピタルゲイン(売却益)のどちらに比重を置くかで、選択すべき物件種別やスキームが大きく変わります。外国人投資家が単独で不動産を保有・運用する場合、実務上、その選択肢は主に「コンドミニアム」に集中することになります。

コンドミニアム(高層高級マンション)の特性と戦略

フィリピン国内のコンドミニアムは、プールやジム、コンシェルジュを備えた高層ビル型が主流であり、マニラ首都圏(マカティやBGCなどの経済特区・ビジネス街)に集中しています。

  • インカムゲイン戦略:外資系企業の駐在員や現地の富裕層からの賃貸需要が極めて高く、安定した家賃収入を狙うための基本戦略となります。
  • キャピタルゲイン戦略(プレビルド投資):「プレビルド(竣工前販売)」と呼ばれる、まだ建設が始まっていない、あるいは建設中の段階で物件を割安な価格で購入し、完成時や数年後の価格上昇局面で売却して利益を得る手法です。フィリピンでは最もポピュラーな投資手法の一つです。

タウンハウス・戸建てへのアプローチ

一方で、土地付きの戸建てやタウンハウス(連棟式住宅)は、前述の「土地所有制限」があるため、外国人は一切購入できないと考えられがちです。

しかし、一部の洗練されたデベロッパーは、コンドミニアム所有権の法的なモデル(CCT:Condominium Certificate of Title)を応用して開発・分譲されているタウンハウスや一戸建てプロジェクトを展開しています。この特殊な仕組みを利用すれば、外国人も合法的に低層の住宅物件を完全所有することが可能であり、他の外国人投資家と差別化を図る独自のポートフォリオ(資産配分)を構築することができます。

外国人投資家が不動産を合法的に取得・支配する5つのスキーム

憲法による土地所有の禁止という大前提の中で、日本人がフィリピンで不動産権利を確保し、強固な事業基盤や投資資産を構築するための5つの合法的なアプローチを解説します。

1. コンドミニアム法(共和国法第4726号)に基づく「直接所有」

最も手続きがシンプルで、透明性が高く、日本人投資家に最も推奨される手法がコンドミニアムの購入です。

共和国法第4726号(通称:コンドミニアム法)により、ひとつのコンドミニアム開発プロジェクトにつき、全ユニット(専有部分)の最大40%までを外国籍の個人または法人が所有することが法的に認められています。

  • 具体例:100室のユニットを持つコンドミニアム棟であれば、そのうちの「40室」は外国人に向けて販売し、外国人の単独名義で登記することが可能です。
  • メリット:この40%という枠内で取得した物件の権利(CCT)は、フィリピン国民と全く同等に保護されます。自身の判断で自由に賃貸に出したり、売却したりすることが可能です。

2. 長期リース法(投資家リース法)による「土地利用と建物所有の分離」

「土地の所有権は持てないが、その土地の上に建つ家や建物の所有権は持てる」という法律の原則を活用した、法人や大規模投資向けの強力なスキームです。

共和国法第7652号(投資家リース法)に基づき、外国人投資家はフィリピン人地主と長期の土地賃貸借契約(リース契約)を結び、その土地の上に自らの資金で住居や商業ビルを建設することで、「建物の完全な所有権」を得ることができます。

従来、このリース期間は当初50年、さらに25年の更新(計75年)という制度でしたが、法改正により大きな転換期を迎えました。

【重要】2025年の法改正による「99年リース」の解禁
承認および登録された投資目的であれば、合計で最大99年間の民間土地のリースが可能となりました。99年という期間は、実質的に3世代にわたる資産運用を可能にします。土地の所有権という名目に固執することなく、超長期の地上権を確保することで、建物の減価償却メリットを享受しながら、事実上の完全所有に近い形で大規模な開発や事業投資を行うことが可能となります。

3. フィリピン国内法人の設立を通じた「不動産の完全所有」

よりアグレッシブに、個別のコンドミニアムの一室ではなく、「一棟丸ごとの商業ビル」や「広大な私有地・住宅用地」を取得したい場合に用いられるのが法人スキームです。

フィリピンの会社法では、資本の60%をフィリピン人が所有する法人は「フィリピン国民(内国法人)」として扱われます。したがって、日本人投資家の出資比率を40%以下に抑えた内国法人を設立すれば、その法人の名義を通じて、フィリピン国内の土地や建物を制限なく購入することが可能になります。

  • 専門用語解説:アンチ・ダミー法(名義貸し禁止法)の厳格な適用リスク
    この法人スキームを利用する際、投資家が最も警戒すべき法律が「アンチ・ダミー法」です。外国人が、名目上だけフィリピン人を株主として仕立て上げ(ダミーとして使い)、裏で実質的に会社と不動産を100%支配しようとする行為は、重大な犯罪として厳しく罰せられます。
  • 取締役会における外国人役員の数は、外資出資比率と同じく最大40%に制限されます。
  • この法律の規定に違反した場合、最悪のシナリオとして、取得した不動産そのものが国家に没収される(没収刑)リスクがあります。

名義貸しのような不透明で脱法的な手法は絶対に避け、信頼できる現地のビジネスパートナーとの「真正な合弁事業」として、適法に構造化(ストラクチャリング)する必要があります。

4. 婚姻関係(フィリピン人配偶者)を通じた共同所有と権利保全

フィリピン人配偶者を持つ日本人投資家向けのアプローチです。外国籍の配偶者は、土地の権利書(タイトル)に自身の名前を記載することはできませんが、不動産の売買契約書には名前を残すことができます。

仮に土地の権利がフィリピン人配偶者の単独名義であっても、外国人配偶者は法的に「衡平法上の権利(Equitable interest:形式的な名義に関わらず、実質的な資金拠出などの事実に基づいて認められる公平な権利)」を主張できる可能性があります。

判例:Veloci対Garcia事件
フィリピン最高裁判所は、「付従物は主物に帰属する(土地の所有者が、その土地の上に建つ建物の所有権も自動的に有する)」という一般原則が、絶対的なものではないという画期的な判決を下しました。
つまり、土地の所有者と建物の所有者が異なることを示す「明確で説得力のある証拠」があれば、それらは別個の財産として扱われるべきだと示しました。これにより、土地と建物の所有権を分離して権利を主張する法的根拠が強化されました。

  • 実務上の重要ポイント:このスキームで自身の権利を守るためには、不動産の購入や建築に費やした「日本からの海外送金記録」「建築費用の領収書」など、すべての資金の流れを1円単位に至るまで正確に記録・保管し、自身の出資の事実をいつでも裁判所で証明できる状態にしておくことが不可欠です。

5. 相続を通じた例外的な土地取得

原則として外国人の土地所有を禁じる憲法ですが、唯一の例外として「法定相続」による土地の取得は外国人に認められています。

フィリピンの相続法に基づき、日本人配偶者は亡くなったフィリピン人配偶者から土地を相続することが可能です。

  • 注意すべき法務リスク:ここで注意すべきは、「法定相続」と「遺言(Will)による贈与」の違いです。亡くなった配偶者や血族以外(例えば、個人的に親しいフィリピン人の友人や、単なるビジネスパートナーなど)から、遺言によって土地を譲り受けることは、外国人に対する土地所有の迂回ルートとみなされ、法律上無効となります。相続はあくまで法定の親族関係(配偶者や子供など)に限定される点を正しく理解しておく必要があります。

投資を成功に導くための実践的アクションプラン

フィリピンの不動産市場は、極めて高いリターンが期待できる反面、日本とは全く異なる法制度や商慣習の壁が厚く、独学や自己流でのアプローチは致命的な失敗を招く恐れがあります。多額の資産を安全に運用し、次世代へ継承するためには、以下の実践的アクションプランの徹底が求められます。

  1. トップクラスの専門家チームの組成
    物件購入の意思決定を行う前に、必ず現地の法務に精通した信頼できる弁護士(Corporate Lawyer)、および実績と透明性のある不動産エージェントに相談してください。特に、法人設立スキーム(60:40ルール)を利用して土地や商業ビルを取得する場合、コンプライアンス違反による資産没収を避けるため、アンチ・ダミー法に抵触しない極めて安全な資本構造とガバナンス体制を、専門家と共に構築する必要があります。
  2. 資金トラッキング(証拠保全)の徹底
    フィリピン人配偶者との共同購入や、法人を通じた投資を行う場合、日本からの送金履歴、物件開発にかかった建築費用の証明など、全ての金銭的貢献を文書化し、証拠として厳重に保全してください。これは将来的な権利関係のトラブル発生時や、投資資金の回収(イグジット)において、ご自身の受益権を証明し資産を守るための最大の武器となります。
  3. 最新の法改正の継続的なモニタリング
    2025年に改定された「投資家リース法の99年リース枠の拡大」に見られるように、フィリピン政府は外資誘致に向けて法整備を段階的に進めています。これら最新の法改正は、いち早く動ける投資家にとっての「先行者利益(新たなビジネスチャンス)」を意味します。常に最新の一次情報にアクセスできる体制を整えることが重要です。

フィリピン市場における不動産投資は、単なる物件の売り買いではなく、現地の法制度を深く熟知し、適切なストラクチャー(仕組み)を構築する「知的なゲーム」です。表面的な高い利回りや甘い言葉に惑わされることなく、強固な法的保護のもとで、貴方の重要な資産を安全に、そして飛躍的に成長させるための第一歩を踏み出してください。

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