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フィリピンの主要経済紙BusinessWorldは、フィリピンの銀行・信託部門(trust entities)が不動産セクターに抱えるエクスポージャー(投融資の合計の“関わり度合い”)が、2025年9月末時点で小幅に低下したと報じました(2025年12月18日 0:34配信)。

何が起きたのか(数字と事実)

Bangko Sentral ng Pilipinas(BSP:フィリピン中央銀行)のデータを基に、銀行セクターの不動産関連の比率・残高が示されています。

  • 不動産エクスポージャー比率:19.54%(2025年9月末)
  • 2025年6月末:19.61%
  • 2024年9月末:19.55%
  • 不動産向けの投資+融資総額:3.451兆ペソ(2025年Q3時点)(前年比+7.19%)
  • 不動産向け融資:3.096兆ペソ(前年比+8.9%)
  • 住宅(Residential):1.188兆ペソ(+11.4%)
  • 商業(Commercial):1.909兆ペソ(+7.41%)
  • 延滞(Past due)不動産ローン:1,586.19億ペソ(+7.06%)
  • 不良債権(NPL)不動産ローン残高:1,160.86億ペソ(+4.06%)
  • ただし不良債権比率(NPL比率)は3.75%へ低下(前年同時期3.92%から)
  • 銀行の不動産投資(証券等):3,547.49億ペソ(前年比−5.75%)
  • 不動産関連の債券(Debt securities):2,324.96億ペソ(−5.51%)
  • 不動産関連の株式(Equity securities):1,222.53億ペソ(−6.22%)

背景(なぜ小幅に低下したのか)

記事では、銀行側の慎重姿勢を示すコメントが複数出ています。

  • Union Bank of the Philippinesのチーフエコノミスト、Ruben Carlo O. Asuncion氏は、
    「不動産関連証券への投資減」「プロジェクト立ち上げの鈍さ」「NPLの高さ」「借入コストの高止まり」を背景に、慎重な貸出姿勢があると述べています。
  • Reyes Tacandong & Co.のシニアアドバイザー、Jonathan L. Ravelas氏も、需要の弱さやNPL上昇、デベロッパーの新規供給ペース抑制、BSPの監督強化が“慎重さ”につながるとコメントしています。
  • 一方で、Colliers Philippinesのリサーチ責任者Joey Roi H. Bondoc氏は、Q3は季節性で貸出が鈍りやすく、今回の変化は「大きな増減ではなく、ほぼ横ばい」という見方も示しています。特にメトロマニラのコンド(分譲マンション)プレセール(完成前販売)の成約が力強くない点に言及しています。

用語解説(難しい言葉をかみ砕く)

  • エクスポージャー(Exposure):銀行が特定分野(ここでは不動産)にどれくらい資金を出しているか、投資・融資の合計で見た“関与の大きさ”です。BSPは金融安定の観点からこの比率を監視しています。
  • NPL(Nonperforming Loans:不良債権):返済が滞り、回収が難しくなっているローンです。NPLが増えると、銀行は貸出に慎重になりやすいです。
  • Past due(延滞):支払い期日を過ぎたローン残高です(必ずしも全てがNPLではありませんが、悪化の前兆になり得ます)。
  • bps(basis points:ベーシスポイント):金利の単位で、25bps=0.25%のことです。

金利と為替の材料(投資家が気にする追加情報)

  • BSPは政策金利を4.5%へ引き下げ(2025年12月11日)、これは2022年9月以来の低水準とされています。
  • ただしBondoc氏は、政策金利が下がっても、銀行の住宅ローン金利がすぐ下がらない点を問題として挙げています。
  • さらに記事では、ペソ安が住宅需要を押し上げる可能性にも触れられており、1ドル=59ペソ台に達した場面が複数回あり、2025年12月4日に1ドル=59.22ペソの安値を付けたとされています。

ニュースの見解

日本人のフィリピン不動産投資への影響(見立て)

今回の「19.54%への小幅低下」は、急激な信用収縮というより、銀行が不動産向けの“熱量”を上げすぎないよう調整しているサインとして捉えるのが現実的です(Colliers側も“ほぼフラット”と評価)。

そのうえで、日本人の海外不動産投資家目線では、次の点が実務上のインパクトになりやすいです。

  • メトロマニラのコンド(特にプレセール)
    銀行がコンド市場への融資に慎重だと、ローカル購入者のローン承認が伸びづらく、販売ペースが鈍る局面が出ます。結果として、デベロッパーが在庫圧縮のために支払い条件の優遇や販促(※物件ごと)を厚くする可能性があります(ここは物件選別のチャンスにもなり得ます)。
  • 金利低下の恩恵が“すぐには来ない”前提
    政策金利は4.5%まで下がっていますが、記事中の指摘通り住宅ローン金利に反映が遅いなら、利下げ=即需要爆増とはなりにくいです。短期は「金利環境改善期待」よりも、実際のローン金利・審査姿勢を前提に出口(賃貸・売却)を組むのが安全です。
  • 延滞・NPLは“残高増”でも比率は低下
    不動産NPL残高は増えつつも、NPL比率は低下しています。数字の読み方としては、市場全体が崩れているというより、銀行がリスク管理しながら拡大している局面と解釈しやすいです。

投資判断で意識したいチェックポイント

  • 物件エリア別に、現地購入者の住宅ローン依存度が高い価格帯か(ローンが詰まると需給が緩みやすい)
  • デベロッパーの販売戦略が、“値引き”ではなく“支払い条件の柔軟化”中心か(資産価値の毀損を抑える動きか)
  • ペソ安局面での投資は、購入時の為替メリットと同時に、将来の送金・売却時の為替ブレもあるため、為替前提の資金計画を置く

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