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2025年6月10日、インドネシアの大手英字紙『ジャカルタ・ポスト』は、インドネシア政府が都市部の「戸建住宅(landed house)」に対する税率の引き上げを検討していると報じました。この政策の目的は、国民の居住形態を戸建住宅から「高層住宅(アパート等)」へと移行させることにあります。
この計画に対し、インドネシア不動産協会(Real Estate Indonesia:REI)は強く反発。副会長のバンバン・エカジャヤ氏は、「消費者の購買力が弱まり、不動産市場全体が低迷している中で、新たな税負担を課すのは時期尚早」と述べました。
特に問題視されているのは、政府が推進する住宅供給プログラム「FLPP(Housing Finance Liquidity Facility)」で提供される住宅の多くが戸建住宅である点です。REIは、今回の税制変更が「住宅供給の国家的課題(バックログ:約1,500万戸)」の解決を妨げる恐れがあると警告しています。
背景と問題点
政府は都市人口の増加を受け、土地の有効利用と都市機能の高度化のため、高層住宅への移行を促しています。一方で、民間デベロッパーからは、高層住宅の開発コストが販売価格のベンチマークを上回るため、「経済的に成り立たない」との指摘もあります。
また、インドネシアではアパート管理の不備や住民間のトラブルが多発しており、高層住宅への信頼がまだ根付いていないのが実情です。REIはこうした「構造的問題(structural issues)」を解決しないまま税制度を変更するのは本末転倒だとしています。
用語解説
- Landed House(戸建住宅):地面に直接建てられた住宅。一般に庭付きの一軒家などを指します。
- High-rise Living(高層住宅):マンション・アパートなどの集合住宅での居住スタイル。
- FLPP(住宅金融流動性施設):インドネシア政府が推進する住宅ローン支援制度。低所得者向けに低金利融資を行います。
- Housing Backlog(住宅バックログ):住宅不足数。現在のインドネシアでは約1,500万戸と推定されています。
ニュースの見解
この税制改正案は、日本人投資家にとって大きな意味を持ちます。特にジャカルタやスラバヤ、バリ島などの都市部で土地付き住宅を購入・保有している場合、今後の税負担増がリターンに影響する可能性があります。

また、現地では高層住宅の需要創出が意図されているものの、管理や法制度の整備が不十分なことから、物件の流動性や賃貸需要には不透明感も残ります。今後、政策の方向性と市場反応を注視しつつ、**「税制・補助制度・管理体制」**を総合的に見極めることが、不動産投資戦略のカギとなるでしょう。