「インドネシアの首都ってジャカルタじゃないの?」
「インドネシアが首都移転するって本当?」
「インドネシアの首都っていつ移転されるの?」
海外不動産投資でも、国の首都移転は、最大の転換期であり、投資機会になりうるチャンスでもあります。しかし、一方で、多くの首都移転がいつ完了するか?実際に行われるか?は不明瞭な部分が多く、投資タイミングを計るのが難しい事象でもあります。
今回は、インドネシアの首都移転「ヌサンタラ」に関する現在でわかる情報をわかりやすく解説します。
インドネシアが首都移転をするのは本当か?
インドネシアの首都移転に関する議論というのは、デヴィ夫人の旦那さんであるスカルノ大統領の時代から、検討されてきたものです。
インドネシアでは、首都ジャカルタへの一極集中の弊害で、渋滞、スラム街の拡大、地盤沈下、自然災害リスクの増大など、いろいろな社会問題が起こっているからです。これは長年の課題として、インドネシアには認識されていました。
2017年4月のジョコ・ウィドド(ジョコウィ)政権の時に、ジャカルタからの首都移転がhつ合旅検討されました。
2019年4月、ジャカルタは将来的にはインドネシアの首都ではなくなり、10年かけてすべての政府機関を新首都に移転することが発表されました。
2019年8月26日、ジョコウィ大統領は、新首都の一部を東カリマンタン州のペナジャム・ノース・パセル県、一部をクタイ・カルタネガラ県に建設すると発表しました。国家開発計画省は、移転には推定466兆ルピア(327億米ドル)の費用がかかり、政府が費用の19%を負担し、残りは主に官民パートナーシップと国有企業と民間部門による直接投資で賄う予定であると発表しました。
2021年9月初旬、首都移転法案が成立しました。2021年9月29日、ジョコウィ政権は国務長官および国家開発計画省を通じて、首都移転に関する包括法案を含む大統領書簡を人民代表評議会(DPR)に提出しました。
2022年1月17日、 DPRと政府および地域代表者評議会(DPD)との特別委員会会議において、国家開発計画大臣のスハルソ・モノアルファは、新国家の首都はヌサンタラと命名されると述べました。
つまり、
- 2017年に検討
- 2019年に発表
- 2021年に法案成立
- 2022年に首都名「ヌサンタラ」が決定
と、明確なものとして、インドネシアの首都移転が決まったのです。
なぜ、インドネシアは首都を移転するのか?
1.ジャカルタに人口集中
ジャカルタの人口は
- 11,436,004人
※2024年時点
となっています。
面積は、661.5km²ですので
東京と比較すると
東京
- 人口:14,133,086人
- 面積:2,194km²
- 人口密度:6,441人/km²
ジャカルタ
- 人口:11,436,004人
- 面積:661.5km²
- 人口密度:17,287人/km²
東京の2.68倍の人口密度がある
状態になっているのです。
人口密度が過大になってくると・・・
- 住宅不足
- 交通渋滞
- 大気汚染の深刻化
- スラム街の拡大
- 所得差の拡大
と、様々なマイナス面が浮かび上がってきます。
これが大きなジャカルタからの首都移転の理由となっています。
2.ジャカルタの地盤沈下
ジャカルタでは、地下水を過剰に汲み上げてしまい、地盤沈下が発生しています。
工場や商業施設による過剰な地下水揚水により地盤沈下が進み、特に北部では1970年代以降、沈下が最大約4メートルに達しています。
- 直近の25年間で16フィート(約4.9メートル)の沈下
- 年間最大17cm(6.7インチ)沈下
と言われていて、2030年までに解決策を見つけなければ、ジャカルタがジャワ海に飲み込まれるのは不可避だと専門家は予測しています。
世界で最も速く沈下する首都の1つとなっています。
この原因も、人口集中にあり
- 経済発展とともに、工場や商業施設での地下水の利用拡大
- 市民の3人に1人は水道水を利用できない貧困状態
- 市内に点在する違法な井戸が生活の生命線
という背景もあるのです。
3.巨大地震のリスク
インドネシアは、日本以上に地震が多発する地震大国となっています。
マグニチュード5.5以上の地震発生回数(年平均)では
- 中国:2.1回
- インドネシア:1.62回
- イラン:1.43回
- 日本:1.14回
- アフガニスタン:0.81回
ですから、日本よりも、自身が多い国なのです。
インドネシアの国土は、インド・オーストラリアプレート、ユーラシアプレート、太平洋プレートの3つのプレートにまたがっており、「環太平洋火山帯」あるいは「環太平洋造山帯」と呼ばれる地域に属しています。
ジャカルタがあるジャワ島は、巨大地震を引き起こす原因となりうる、巨大な活断層の上に存在しています。ジャワ島中部を南北に走る活断層があり、プレートの境目に位置するため、自身が発生しやすいのです。
プレートの重なりあうジャカルタ(ジャワ島)は、地震が発生しやすいため、首都移転で、比較的地震が少ないボルネオ島(カリマンタン島)に首都移転するのは、自然再額を防ぐ意味でも大きなポイントなのです。
インドネシアが首都移転プロジェクトの概要
首都の位置
ジャカルタ
ヌサンタラ
ヌサンタラ(Nusantara、Capital City of Nusantara)(インドネシア語 Ibu Kota Nusantara, IKN)は、ボルネオ島(カリマンタン島)の東海岸、東カリマンタン州に位置しています。東カリマンタン州の人口は400万人未満です。
ボルネオ島のの北西部は、マレーシアとブルネイの領土で、インドネシアと3カ国でこの島を共同所有している形になっています。
プロジェクトの概要
- 広さ:2,560㎢
- 建設開始:2022年7月
- 完成予定:2045年(インドネシア建国100周年)
- 推定費用:320億ドル(466兆ルピア)※政府が20%、官民連携で80%
- デザインコンテスト:優勝者はアーバン+の「ナガラ・リンバ・ヌサ(Nagara Rimba Nusa
ジョコウィ大統領の公約
この都市は持続可能性と周囲のカリマンタンの森林の保護を目的として設計されています。
- ヌサンタラを「環境に優しくスマートなグローバル都市」にする
- インドネシアを先進国の仲間入りさせる
- 2045年までに炭素排出量を実質ゼロにする
- 移動手段の80%を公共交通機関、自転車、徒歩
- エネルギーはすべて再生可能エネルギー
- 面積の10%を食料生産に割り当て
新首都ヌサンタラでは、COP28で発表されたヌサンタラネットゼロ2045戦略を通じて、「2045年までに炭素排出量を実質ゼロにする」ことが掲げられています。
- 環境に優しいインフラと再生可能エネルギーの開発
- 効率的な交通システムの導入
- 緑地の維持
- 将来の首都の約4分の3を熱帯林と緑地帯で覆う
インドネシアが首都移転プロジェクトの進行状況
- 2022年7月:建設開始(政府中央エリアゾーン:政府機関、学校、病院)
- インドネシア全土から約15万人から20万人の労働者がこのプロジェクトに参加
- 2024年10月までに:6,000人の公務員が、プラボウォ・スビアント次期大統領の就任に合わせてヌサンタラに移転する予定
- 人口:人口が2024年末までに6万人に達し、2040年までに200万人に増加すると予測
インドネシアが首都移転プロジェクトの課題
資金調達面の問題
政府は総資金の20%を国家予算から調達する予定だが、民間部門から80%を調達する必要がある計画になっています。
過去2年間で約32兆ルピア(20億ドル)が国家予算から支出され、2024年度予算ではさらに40兆6000億ルピアが計画されています。
民間企業からは、35兆9000億ルピアが支出されています。
「推定費用:320億ドル(466兆ルピア)」ですから、まだまだ全然足らないというの現状です。
インドネシア政府は新首都建設を支援する外国投資の誘致に懸命に取り組んでいますが、現段階では外国企業はそれほど積極的に投資する状況になっていないのです。
外国企業が本当に「首都移転が成功するかどうか?」に懸念を抱えているのが現状ということです。
インドネシア政府によると、2024年1月16日時点でインドネシアは約345通の関心表明書を受け取っており、そのうち約207通は国内企業からで、シンガポール、マレーシア、日本、韓国の外国企業も参加に関心を示しているが、ロジェクトへの資金提供を公に約束した企業はないのが現状です。
プロジェクトが大規模すぎて、個別のプロジェクトの具体的な進め方や目標が決まっておらず、多くの外国企業が参加に躊躇している現状があります。
まだまだ、現状では、課題も多いのがインドネシアの首都移転です。