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2026年2月8日、Daily News Egyptなどの現地メディアは、エジプト議会において不動産市場の安定化を目指した大規模な法整備が進められていると報じました。現在、エジプト議会(衆議院および参議院)には、過去最多となる約25名の不動産開発業者が議員として在籍しており、業界の実情を反映した法改正議論が活発化しています。
今回の報道で明らかになった主な審議内容は以下の通りです。
- エスクロー口座(Escrow Accounts)の義務化検討
衆議院住宅委員会のマフムード・タヘル(Mahmoud Taher)議員らは、不動産プロジェクトごとに独立した「エスクロー口座」の設置を提案しています。これにより、開発業者がプロジェクト資金を他の用途に流用することを防ぎ、資金管理の透明性を高める狙いです。 - 不動産仲介業(ブローカー)の規制強化
アミン・マスード(Amin Massoud)住宅委員会副委員長によると、現在8〜15%にも高騰している仲介手数料(歴史的な標準は2.5%)を是正するため、仲介業者のライセンス制導入やデジタル化、報酬の適正化を目指す法案が議論されています。 - 「利益の三角形」のバランス調整
国、投資家、市民(購入者)の3者の利益バランスを回復させることが目的とされており、購入者が経済的困窮に陥った際の過度な違約金(物件価格の10〜12%)の見直しや、メンテナンス費用の管理権限を開発業者から居住者組合へ移行させる案などが盛り込まれています。
ニュースの背景
エジプトの不動産市場は近年急速に拡大していますが、その一方で「オフプラン(完成前物件)」販売におけるトラブルも散見されていました。開発業者が複数のプロジェクト資金を混同して管理してしまい、建設が遅延したり、最悪の場合は資金ショートしたりするリスクが課題となっていました。
また、2026年2月10日にはエジプト政府の内閣改造が行われ、産業貿易大臣や計画大臣などが交代しています。新体制下において、外貨獲得の主要産業である不動産セクターの信頼性を国際基準(グローバルスタンダード)に引き上げ、海外からの投資を呼び込みたいという政府の強い意図が背景にあります。
用語解説
- エスクロー口座(Escrow Account)
不動産の売買において、買い手が支払った代金を第三者機関(銀行など)が一時的に預かり、建設の進捗状況に応じて開発業者に資金を支払う仕組みです。これにより「代金を払ったのに建物が完成しない」という持ち逃げや倒産リスクから投資家を守ることができます。 - 付合契約(Adhesion Contracts)
契約の一方(この場合は開発業者)が作成した契約条件を、相手方(購入者)が変更できず、飲むか断るかしかない契約のこと。今回の法改正では、こうした業者有利な契約内容を見直し、購入者に不利な条項を制限する動きがあります。 - 居住者組合(Occupants’ Union)
日本の「管理組合」に近い組織です。従来、メンテナンス費用は開発業者が管理することが多かったですが、透明性を確保するため、組合が主導して管理費を徴収・運用できる権限を強化しようとしています。
ニュースの見解
今回の法改正の動きは、エジプト不動産への投資を検討している日本人投資家にとって極めてポジティブなニュースと言えます。
これまで新興国不動産投資における最大のリスクは「プレビルド(完成前)物件の建設頓挫」でした。もし今回議論されている「プロジェクトごとのエスクロー口座」が法制化されれば、投資した資金が確実にその物件の建設に使われることが担保されるため、投資リスクは大幅に低減します。特に外国人投資家の信頼獲得を目的としている点から、海外送金の透明性なども向上する可能性があります。
また、仲介業者の規制強化も重要です。現地では無免許のブローカーが高額な手数料を要求するケースがありましたが、ライセンス制や銀行経由の支払いが義務化されれば、不当な手数料中抜き詐欺などのトラブルに巻き込まれる可能性が低くなります。
今後の投資判断への影響:
- 法案成立のタイミングを注視する: まだ「審議中」の段階ですが、成立すれば市場の健全性が一気に高まります。
- 大手デベロッパー選びの重要性: 規制強化は、資金力のない中小デベロッパーの淘汰につながる可能性があります。議会に開発業者が多いということは、業界大手にとって有利な(=しっかりとした資本規制がある)ルールになる可能性が高いため、実績のある大手開発業者の物件を選ぶことがより重要になります。
2026年はエジプト不動産市場が「量的な拡大」から「質的な成熟」へと転換する重要な年になりそうです。
