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2024年10月30日、エジプトの首相モスタファ・マドブリーの立ち会いのもと、エジプト新首都(New Administrative Capital)に自由貿易地区を開発するための覚書(MoU)が調印されました。この覚書は、エジプトの都市開発機関ACUD、グローバル物流企業DP World、そしてエジプトの投資・自由貿易ゾーンの規制機関であるGAFI(General Authority for Investment and Free Zones)によって締結されました。
何が計画されているのか?
このプロジェクトは、新首都に約500エーカー(約200ヘクタール)の自由貿易地区を設置する計画です。この自由貿易地区は、エジプト国内および国際的な投資と貿易を促進することを目的としており、エジプトの主要港湾であるアイン・ソフナ港から近いという地の利を生かし、電子機器、自動車、消費財、衣料品などの産業に重点を置く予定です。
フリーゾーンの種類と特徴
フリーゾーンとは?
エジプトの自由貿易ゾーン(フリーゾーン)は、税制の優遇や関税免除などの特典を提供し、投資家にとって魅力的な場所です。エジプト内外の企業がここで事業を行うことで輸出を増やし、エジプト経済全体を活性化させる狙いがあります。
エジプトのフリーゾーンは、大きく「公設フリーゾーン」と「私設フリーゾーン」の2種類に分類されます。
公設フリーゾーン
- 設置場所
アレクサンドリア、スエズ、ポートサイド、ダミエッタ、イスマイリア、カイロなど、主要な港湾や空港に隣接した地域に設置されています。 - 特徴
輸出入手続きが容易で、製造業や倉庫業、サービス業など多様な事業活動が可能です。 - 手数料:
- 製造業: 輸出時にFOB価格の1%および製造運営費用の1%相当の手数料が課されます。
- 倉庫業: 輸入時にCIF価格の2%、商品売買の際に2%相当の手数料が課されます。
- 搬出入のない事業: 総収入の1%、仲介手数料の1%相当額を半年ごとに徴収されます。
私設フリーゾーン
- 設置目的
特定のプロジェクトや企業向けに、原材料の産地に近接する地域や事業の性質上、公設フリーゾーン以外の場所に独占的に設置されます。 - 特徴
公設フリーゾーンよりも設立要件が厳しく、投資・フリーゾーン庁(GAFI)の承認が必要です。 - 手数料:
- 製造業: 国外への輸出時にFOB価格の1%および製造運営費用の1%相当の手数料が課されます。国内に搬入する際は販売額の2%相当の手数料が課されます。
- 倉庫業: 輸出時にインボイスにおける収入額の2%相当の手数料が課されます。
- 搬出入のない事業: 総収入の2%、仲介手数料の2%相当額を半年ごとに徴収されます。
- 利用条件
株式会社または有限責任会社の形態をとること、国内製造部品割合30%以上を3年以内に達成することなどが求められます。業種によっては輸出比率80%を求められる場合もあります。
主な優遇措置
- 税制上の特典: フリーゾーン内での事業活動に対して、関税を含むすべての税が免除されます。ただし、GAFIへ手数料を納める必要があります。
- 低賃貸料:
- 工業プロジェクト: 年間5ドル/m²
- 倉庫保管・サービスプロジェクト: 年間10ドル/m²
- なお、イスマイリア(工業、サービスプロジェクトのみ)、ダミエッタ、シェビン・エル・コムの3つの公設フリーゾーンでは、同額の50%減額が適用されます。
- 輸出義務: フリーゾーン内で事業を行う企業は、総生産量の50%以上を輸出する義務があります。
- 国内市場へのアクセス: フリーゾーンからエジプト国内に輸入される商品は、外国からの輸入品と同様に課税されます。
最近の動向
エジプト政府は、フリーゾーンの活用を通じて外国直接投資(FDI)の増加を図っています。特に、スエズ運河経済特区(SCZone)を中心に、グリーン水素やグリーンアンモニアの製造・輸出拠点としての地位を確立することを目指しています。
また、2023年には投資法が改正され、石油精製、肥料産業、鉄鋼、ガス精製・液化・移送などの産業もフリーゾーン内での操業が可能となりました(エネルギー最高評議会の承認が必要)。
これらの取り組みを通じて、エジプトは経済の多様化と持続的な成長を目指しています。
期待されるメリット
この自由貿易地区は、税制優遇や関税免除の利点があり、エジプト経済を支える輸出能力の強化が期待されています。また、エジプトがアフリカ、中東、欧州などの主要市場への輸出拠点として戦略的な位置にあるため、同地区に進出する企業はこれらの広範な市場へのアクセスが可能です。
DP Worldの役割
DP Worldは世界中で物流ネットワークを持つ企業であり、エジプトのアイン・ソフナ港も運営しています。この経験とネットワークを活かし、新首都の自由貿易地区プロジェクトに多くの投資とビジネスチャンスをもたらすことが期待されています。
エジプトは、経済成長と輸出拡大を目指し、投資家に多様な優遇措置を提供する「自由貿易ゾーン(フリーゾーン)」を設置しています。これらのゾーンは、税制上の特典や関税免除などの利点を通じて、国内外の企業の投資を促進しています。
ニュースの見解
エジプト新首都に新しい自由貿易ゾーンが設置されることは、日本人投資家にとってもいくつかのポジティブな影響が考えられます。
不動産の価値向上の可能性
新首都の自由貿易ゾーンは、インフラの充実や物流ネットワークの強化が期待されるため、エリア全体の発展が進み、不動産価格の上昇が見込まれます。日本人投資家が新首都やその近隣エリアに不動産を所有している場合、資産価値の向上の恩恵を受けられる可能性が高いです。
投資機会の拡大
エジプト政府がフリーゾーンを通じて外資誘致を強化しているため、今後エジプトでの商業施設や住宅用不動産の需要が増加することが予想されます。特に製造業や物流関連の企業が増えれば、住宅需要や商業スペースの需要が生じ、日本人投資家にとって新たな投資先としての魅力が増すでしょう。
テナントの安定性向上
DP Worldなどの国際企業が関与しているため、自由貿易ゾーン内の事業が安定する見込みがあり、商業用不動産を所有する場合、優良なテナントが見つかりやすく、安定した収益が期待できます。特にフリーゾーンの利点を活かして活動する多国籍企業や地元企業の誘致が進むことで、賃貸契約の安定性が向上します。
輸出関連ビジネスの活性化
自由貿易ゾーンの設置により、エジプトは輸出型ビジネスの拠点としてさらに強化されます。これにより、物流施設や倉庫、不動産開発に関連するビジネスが活性化し、日本人投資家が参画できる分野が増える可能性があります。特に物流や商業不動産の分野での長期的な収益性が高まるかもしれません。
政府支援の拡充
エジプト政府が外国直接投資(FDI)を促進する方針をとっているため、日本人投資家にとっては税制上の優遇や関税免除といったフリーゾーンのメリットを享受しながら、エジプトの成長市場への参入がしやすくなります。特に、エジプト政府の支援により、現地でのビジネス展開がスムーズになり、リスクが抑えられるでしょう。
エジプトの新首都に自由貿易ゾーンが設置されることで、不動産価格の上昇、テナントの安定確保、物流と輸出の活性化などが期待され、日本人投資家にとっても中長期的な成長の機会が広がる可能性があります。また、エジプト市場での投資がしやすくなるため、リスクを分散させつつ収益を追求できる魅力的な市場となり得ます。