
「カンボジア不動産って買えるですか?」
「カンボジア不動産投資ってどうなんですか?」
カンボジア不動産の購入、カンボジア不動産投資を検討している方もいらっしゃるかと思います。今回は、カンボジア不動産投資、カンボジア不動産の買い方・メリットデメリット・リスク・利回り・税金まで、徹底的に検証したいと思います。
そもそも、カンボジア不動産は日本在住の日本人が買えるの?
購入できます。
土地の所有権は持てません。戸建ても購入できません。
コンドミニアム(日本でいう分譲マンション)の区分権の所有は、外国人にも認められています。
カンボジアという国とは?
概要
| 投資先 | カンボジア不動産 |
|---|---|
| 国名 | カンボジア王国 |
| 面積(k㎡) | 181,035k㎡ |
| 日本との比較 | 0.5倍 |
| 人口 | 16,770,000人 |
| 日本との比較 | 0.1倍 |
| 首都 | プノンペン |
| 民族 | 90%がカンボジア人(クメール人) |
| 言語 | クメール語 |
| 宗教 | 仏教(一部少数民族はイスラム教) |
| 通貨 | リエル(KHR) |
| 政策 | 立憲君主制 |
| 主要産業 | 農業、工業、サービス業 |
| 日本からの移動時間 | 8時間 |
| 為替 | 変動相場制 |
| 格付け | S&P B フィッチ B ムーディーズ B2 |
カンボジア王国(カンボジア)は、東南アジアのインドシナ半島南部に位置する立憲君主制の国です。南はタイランド湾に面し、西はタイ、北はラオス、東はベトナムと国境を接しています。
国民の90以上が、クメール語(カンボジア語)を話し、仏教(上座部仏教)を奉ずるクメール人(カンボジア人)です。
カンボジアの中心には湖と河川の複合体であるトンレサップ湖があり、その河川部分は国土の東部を縦貫する国際河川たる大河メコン川の支流となっており、水運と漁業・農業を支えています。この平野部にカンボジア人口の3分の1が居住しています。トンレサップ湖の北辺にはクメール王朝の遺跡として世界的に有名なアンコール・ワットやアンコール・トムといったアンコール遺跡(1992年、世界遺産登録)が存在します。
年間平均気温約30℃ほどで、雨季が5月~10月、乾季が11月~4月です。
政治
国家体制は、国王を元首とする立憲君主制です。ノロドム家とシソワット家のメンバーから、王室評議会が国王を選出する仕組みとなっています。王室評議会は、首相、両院の議長、両院の副議長(2名ずつ)、上座部仏教の2つの宗派の代表(1名ずつ)の合わせて9名からなり、秘密投票で国王を選出します。国王の地位は終身です。
議会は、両院制を採用しており、定数125議席からなる国民議会(下院)議員は直接選挙で選出され、定数61議席からなる元老院(上院)議員は間接選挙と国王からの任命によって選出されます。
経済
主要産業は農業、漁業、林業などの第一次産業である。近年は観光産業と縫製産業が成長し、最貧国ではあるものの外国からの投資も大きな伸びを示しています。
米ドルが流通して使えることからも、外国からの投資が増えています。銀行預金・融資の米ドル比率は、85%程度です。
カンボジア不動産が不動産投資で注目される理由・メリット
1.人口が今後も増加する予想
カンボジアの人口は、現時点では1,100万人ほどです。2050年には2,000万人を超えると予想されています。
カンボジアの総人口推移
2.人口ピラミッドがきれいな形状で、人口ボーナスも長く獲得できる
きれいな正三角形をしていて、子供の数が多く、人口ボーナスが長期的に継続されることがほぼ確実と言えます。若年層が多いことが目立つ、人口ピラミッドです。
カンボジアの人口ピラミッド
3.プノンペンの人口は、人口600万人を突破する予想
カンボジアは人口が少ない国です。
- 首都のプノンペンの人口は、現在:約200万人です。
政府は
- 首都を半径100kmに拡大する
- 人口約600万人を突破する
という計画が発表をしています。
プノンペンの大きさは、東京23区とだいたい同じ大きさで、人口600万人いれば、かなりの人口密度になります。
人口密度が高くなれば、それだけ住宅需要も増えることを意味します。
4.高いGDP成長率
カンボジアは、高いGDP成長率を実現しています。
カンボジア GDP
直近の成長率は11%を超えています。
十分に成長が見込める国です。
5.米ドルが流通する国
カンボジアは、ドルが流通している国です。
- 銀行預金、銀行融資の米ドル比率は85%
と言われています。
米ドルで買い物ができ、事業や投資、銀行口座での預金なども米ドルで可能になります。
米ドルが流通している = 外国企業が参入しやすい土壌がある
ことを意味しています。
世界の基軸通貨である米ドルが流通しているため、投資がしやすい国と言えます。
現地通貨が通貨安になる為替リスクも低く、不動産投資が可能になります。
今回おつりなどは、現地通貨のリエルが使われることが多いです。
6.高金利の米ドル建て定期預金で運用利回りを最大化できる
カンボジアの大きなメリットには
- 高金利の米ドル建て定期預金
があります。
年率7.0%を超える米ドル建て定期預金が利用できます。
不動産投資で得た賃料収入を、高金利の定期預金に回す運用をすれば、不動産収入と利息収入の二つのインカムゲインが期待できます。
7.プノンペンに新国際空港
カンボジアは、コロナ以前までは、観光客数が年々増加していました。

航空需要の増加に伴い、2016年6月、カンボジア政府は新空港を建設することを決めました。
2021年12月、カンボジア情報省より、空港名称を「タクマウ・テコ国際空港(Takhmao Techo International Airport) 」とすることが公表された。
空港建設は、中国の中国冶金科工集団が受注したました。
- 開発総費用 : 15億ドル
- 空港敷地面積 : 2,600ヘクタール(世界で9番目に広い)
- ICAO飛行場基準コード : 4F (エアバスA380、ボーイング747-8などの大型機にも対応)
- 管制塔の高さ : 108メートル
- 滑走路長 : 4,000メートル 1本(開港時)
- 開港:2025年
開港時に年間1,300万人、2030年に年間3,000万人、2050年に年間5,000万人の利用を見込んでいます。
新国際空港ができれば、観光客や外国企業の参入も活発になるため、不動産投資の機会としては、有望なものとなりまう。
カンボジア不動産の不動産投資におけるデメリット・リスク
1.人口が少ないリスク
同じ海外不動産で人気のフィリピンなどと比較すると明らかですが、人口が圧倒的に少ないのです。
人口が少ない理由は、1975~1979 に政権を担っていた、クメールルージュ(カンボジア共産党)の指導者ポル・ポトによる「国民の大虐殺」が原因です。約4年間で、当時の人口の約3分の1にあたる約150~200万人の人々が犠牲になったと言われています。
そのため、人口ピラミッドも若干いびつな形になっています。
若い世代が増えてきていて、人口は増加傾向にあるものの、現時点では人口は1,000万人強と少なく、人口が少ない点が不動産需要が大きくならない、または経済規模が大きくならない理由として、懸念されるものと言えます。
これは、カンボジア不動産に投資する大きなリスクです。
2.不動産への投資額が下がっている
下記のデータを見ると、2023年は、不動産市場への投資額が減少していることがわかります。

不動産市場への投資が下がる = 不動産価格の上昇余地がないと見なされている
ということになるため、投資先としての魅力が薄まっていることがわかります。
3.不動産価格も上昇していない
全体的にみると2019年と比較して、不動産価格は上昇しています。

しかし、BKKなどの都心部では、ほぼ横ばいとなっており、不動産価格の上昇が見られません。
ディベロッパーが開発し、外国人に販売されているのは、都心部のレジデンスであることが多く、不動産価格の上昇が見込めないリスクがあります。
4.ディベロッパーの建設がとん挫するリスク
海外不動産投資では「プレビルド」で新築物件の竣工前の5年以上前から購入することが可能です。
ディベロッパーは、プレビルドで建設前にお金を集めて、その資金で建設費を賄います。
このような仕組みになっているため、資金不足で建設ができなくなった場合には、ディベロッパーが倒産し、プレビルドで支払ったお金が戻ってこないリスクはあります。
このリスクを回避する方法は、信頼できる、実績のある(事業歴や建設実績が多い)現地のディベロッパーを選ぶことが求められます。
比較的、カンボジアでは、実際に完成しないというディベロッパーの数が少なくありません。ディベロッパー選びは、確実に建設できるところを選ぶ必要があります。
5.カントリーリスク
カンボジアは、アジアにおいて汚職の度合いがかなり高い国とされています。カンボジアは、腐敗指数が21.0で世界で5番目に腐敗していることになっています。
また、ポル・ポト政権下による大虐殺などもあり、東南アジアの中では、カントリーリスクは高めの国と言えます。
カンボジア不動産価格推移
カンボジア(プノンペン)住宅価格指数推移
高級マンションの平均価格(米ドル/㎡)
出典:Global Property Guide 2025年7月最新データ
カンボジア(プノンペン)住宅価格指数推移変動率
高級マンションの平均価格(米ドル/㎡)
出典:Global Property Guide 2025年7月最新データ
カンボジア不動産投資で発生するコスト
※コストは、ディベロッパー、物件、時期によっても違いがあります。あくまでも参考事例として、実際の発生するコストは、その時の不動産会社にヒアリングしましょう。
カンボジア不動産投資で発生するコストには
- 物件価格
- 資産譲渡税(付加価値税:VAT)
- 登記費用
- 印紙税
- 賃貸管理費
- 共益費・修繕費
- 付帯設備費・家具家電費用
- 火災保険
- 税金(固定資産税)
- 税金(不動産収入税・所得税)
- 税金(キャピタルゲイン税)
物件価格
物件価格は、その販売物件の価格です。
カンボジア不動産では、他の海外不動産投資と同様に「プレビルド」での販売が一般的です。
- 5年間で半年ごとに10%ずつ払って、5年後に竣工
- 初回15%、物件完成85%で、5年後に竣工
というようなイメージです。
また、プレビルドの費用の一括払いによる割引もあります。
5%~20%程度の割引があります。
資産譲渡税(付加価値税:VAT)
購入時に資産譲渡税(付加価値税:VAT)が発生します。
4%の費用になります。
売買価格または評価額の高い方に対しての4%です。
登記費用
登記時に必要な契約文章の認証に関する弁護士・司法書士などの専門家費用です。
弁護士費用が100ドル程度、行政費用が1,000ドル程度発生します。
登記証書の発行も可能です。
印紙税
100リエル~2,000リエル程度の印紙税が必要になります。
賃貸管理費
賃貸管理費は、物件を賃貸に貸すときに賃貸管理を行う不動産会社に支払う費用です。家賃の1カ月分です。
共益費・修繕費(修繕管理費)
共益費・修繕費(修繕管理費)というのは日本でもある共用施設の維持・管理のための費用です。
賃貸管理費の負担は、物件規模によって、管理会社が設定しています。
㎡単価で1~2USD/月が相場です。
付帯設備費・家具家電費用
カンボジア不動産の場合は、家具・家電付きで賃貸に出すのが一般的です。
家具・家電付きの物件でなければ、オーナー側が家具・家電を用意しなければならないのです。100万円程度の初期費用が発生します。
火災保険
火災保険にも加入する必要があります。火災保険料が発生します。
税金(固定資産税)
固定資産税は、物件評価額の80%に対しての0.1%です。
税金(不動産収入税・所得税)
カンボジア非居住の外国人の場合は、賃貸収入の14%です。
税金(キャピタルゲイン税)
値上がり益に関する課税はありません。0%です。
カンボジア不動産投資後の利回りシミュレーション
- 為替 1$(米ドル) = 150円
という場合に
- 建物金額:200,0000USD(30,000,000円)
と仮定します。
初期費用
- 資産譲渡税(付加価値税:VAT):4.0% = 8,000USD(1200,000円)
- 弁護士費用 = 100USD(15,000円)
- 行政費(印紙税含) = 1,000USD(150,000円)
想定家賃
- 200,000USDで購入できる都心部の物件の場合、年12,000USD・月1,000USD(150,000円)ほど
運用時コスト
- 固定資産税:0.1% = 200USD(30,000円)
- 賃貸管理費:家賃の10% = 120USD(18,000円)/月
- 共益費・管理費: = 60USD(9,000円)/月
というコストが想定されます。
収入に関しては、所得税は「外国税額控除」で日本の所得税と相殺できるため、履いて計算します。
概算のシミュレーション
- 初期コスト合計:209,100USD(31,365,000円)
- 年間想定賃料:12,000USD(180,000円)
- 運用コスト合計:4,560USD(684,000円)
- 想定年間収益:7,440USD(1,116,000円)
- 利回り:3.56%
カンボジアの物価(給料・家賃・不動産価格・住宅ローン金利)
カンボジア不動産に投資するうえでは、カンボジアの物価を抑えておく必要があります。
カンボジア物価の中でも、水・レストラン・家賃・不動産価格などを東京と比較しています。また、物価ではありませんが、平均給料・住宅ローン金利の数値も東京と比較しました。
カンボジア(プノンペン)と日本(東京)の物価比較
| 都市/国 | 東京/日本 | プノンペン/カンボジア | プノンペン/カンボジア |
|---|---|---|---|
| 通貨 | 円 | USD | USD |
| データ計測日時 | 2025/11 | 2025/11 | 2025/11 |
| データ計測時点の為替 | 1円 | 156.94円 | 156.94円 |
| 物価 | 平均 | 平均(円換算) | 比率(対東京) |
| 安いレストランでの食事 | 1,200円 | 785円 | 65% |
| 一般的なレストラン・2名・3コース | 6,600円 | 4,708円 | 71% |
| マクドナルドのバリューセット | 750円 | 1,099円 | 146% |
| 国産生ビール(0.5リットル) | 600円 | 157円 | 26% |
| 水・ボトル(1.5リットル) | 129円 | 157円 | 122% |
| タクシー 1km(通常料金) | 500円 | 157円 | 31% |
| ガソリン(1リットル) | 178円 | 157円 | 88% |
| シティセンターのアパートメント (1 ベッドルーム) | 158,384円 | 75,645円 | 48% |
| アパートメント (1 ベッドルーム) センター外 | 93,938円 | 43,002円 | 46% |
| 市内中心部のアパート購入の平方メートルあたりの価格 | 1,618,828円 | 355,783円 | 22% |
| センター外のアパート購入の平方メートルあたりの価格 | 792,363円 | 211,869円 | 27% |
| 平均月給(税引後) | 386,814円 | 61,364円 | 16% |
| 住宅ローン金利 (%)、年間、20 年間固定金利 | 1.63% | 10.30% | 644% |
カンボジア不動産の買い方
カンボジア不動産に強い日本人スタッフがいる、日本人が運営する不動産会社に依頼するのが一番確実な方法です。
カンボジア不動産は、多くの日本人の不動産会社が進出しています。だからこそ、買い手側(投資家側)のニーズをくみ取って、物件を紹介し、不安を払しょくしてくれる、信頼できる不動産会社を見つける必要があります。
多くの選択肢がある反面、カンボジアで不動産会社が儲かると思って、出てきた新しい会社も少なくありません。ネットワークが少ないと、デメリットも多いので注意が必要です。
カンボジア不動産投資のおすすめエリア
プノンペン
カンボジアの首都がプノンペンです。
現在の人口は200万人ですが、政府発表では、2035年までに、首都を半径100kmに拡大・人口600万人を突破すると予想されています。
カンボジアは人口が少ない国のため、投資先としてはプノンペンが唯一の候補と言えます。
プノンペンの中では
- ボンケンコン(BKK1、BKK2、BKK3)
- チャムカモン
- 7マカラ
などの3都市が比較的治安が良く、大使館などがあり、暮らしやすい都心部となっています。
ボンケンコン(BKK1、BKK2、BKK3)
も外国人駐在員や、カンボジアの富裕層が多く住むエリアです。日系ショッピングセンターのイオンモールからも近く、高級レストランやスターバックスカフェなどが多く集まるエリアで、プノンペン随一の繁華街といえます。
チャムカモン
カンボジアイオンモール1号店があり、日本の大使館もあるエリアです。カジノ「ナガワールド」や「ロシアンマーケット」など商業施設が多く集まっているエリアです。
7マカラ
オリンピックスタジアムやオリンピアモールなどがあるエリアです。プノンペンタワーというランドマーク的なオフィスビルがあり、オフィス街と言えます。
おすすめのカンボジア不動産物件情報
カンボジア不動産 最新動向
マクロ環境・金利
- 経済成長とインフレ
カンボジア経済はコロナ後のリバウンドが一巡しつつも、2024〜2025年も実質成長率5.5〜6%前後の拡大が続く見通しです。牽引役は縫製・製造業、観光、建設・不動産関連投資です。Knight Frankのレポートでも、2025年のGDP成長率見通しを約6%とし、商業不動産の「純吸収」は引き続きプラスと見込まれています。(content.knightfrank.com) - 金利・金融環境
カンボジアは高度なドル化経済で、明示的な政策金利はありませんが、商業銀行のドル建て住宅ローン金利は年8%前後で安定してきています。Knight Frankも「住宅ローン金利は平均8%程度で安定」と指摘しており、米ドル金利の低下を受け、さらなる上昇圧力は限定的とみられています。(content.knightfrank.com) - 融資姿勢
コロナ期の延滞問題を踏まえ、銀行は引き続き自己資金比率・返済比率(DTI)・職業の安定性を慎重に見ていますが、優良案件への融資は十分に出ている状態です。外資向けには、現地銀行+デベロッパー分割払い、海外銀行の投資ローンなど、多様なスキームが組まれています。
住宅(分譲・賃貸)
- コンド供給の“量”はピーク圏だが、質と価格で調整中
プノンペンのコンドミニアム供給は2024年末時点で57,772戸/132プロジェクトに達しており、2025年も完成予定案件の引き渡しが続きます。(content.knightfrank.com)
セグメント別ではミッドティア(中価格帯)とコア(中〜中上価格帯)が全体の約8割を占め、高級・プライムは合計2割程度にとどまっています。 - 価格は“調整済み+選別相場”
コロナ前のピークからは名目価格が一段階切り下がった水準で横ばい〜小幅安が続いており、Knight Frankも「価格調整局面は続くが、適切な価格設定のミッドティア・コア案件では販売が持ち直し」とコメントしています。(content.knightfrank.com)
実務上は、- 新築プレセール:平米単価を抑えたコア物件が売れ筋
- 既存高級物件:リセール価格のディスカウント+家具付き+分割払い延長など条件改善
といった「実質値引き」で需給調整が行われています。
- 賃貸需要と利回り感覚
賃貸面では、若年層カップルやローカルの中間層、外資系企業の駐在員・フリーランスなどがミッド〜コア物件を中心に賃貸しており、- 中心部1ベッド:家賃600〜900ドル/月
- 周辺部・築古:400〜600ドル/月
程度が相場感です。
表面利回りは、良いロケーションの1ベッドで6〜8%前後が一つの目安で、開発事業者が掲げる「保証利回り8〜10%」は、販売促進要素としてやや誇張気味に受け取られています。
- 販売戦略:“価格・立地・ブランド”が鍵
Knight Frankの調査では、2024年後半の新規コンドの「ローンチ後1四半期の販売率」は29%と、2019年以来の高水準を回復しました。(content.knightfrank.com)
好調プロジェクトの特徴は、- 信頼度の高いデベロッパー(過去案件の完成実績あり)
- 中心〜準中心立地(BKK1、Chamkarmon、Chroy Changvarなど)
- 過度なGRRよりも、現実的な価格設定+設備・共用部の差別化
といった「地に足のついた商品設計」です。
- サービスアパート vs コンド賃貸
サービスアパート供給も増えており、2024年末時点で約8,400戸、2027年には約10,259戸まで増える見込みです。平均稼働は**約54%**にとどまり、コンド賃貸との競合が激しくなっています。(content.knightfrank.com)
実務的には、- 短期〜中期滞在:サービスアパート
- 1年以上:コンド賃貸(+清掃サービスを付けて“なんちゃってサパート化”)
という住み分けが進んでいます。
オフィス
- 空室率は6割前後の“借り手市場”
プノンペンのオフィス市場は、2024年末時点で**全体稼働率61.4%**と、前年から約2ポイント改善したものの、依然として空室の多い状況です。(content.knightfrank.com)
グレード別賃料の目安は、- Grade A:15〜25ドル/㎡・月
- Grade B:10〜17ドル/㎡・月
- Grade C:6ドル/㎡〜
とされ、名目賃料は横ばいでも実効賃料はディスカウント+フリーレント+内装支援で実質下がっているケースが多いです。
- 今後の供給とテナント動向
2025年には約158,000㎡の新規供給が予定されており、その後も2028年までに約54万㎡の追加供給が見込まれています。(content.knightfrank.com)
テナント側は、- 銀行・保険・テック企業などのHQ移転・拡張
- 工業団地やSEZに進出する企業のバックオフィス機能
などの需要がある一方、フロア縮小・賃料見直し交渉も活発で、**「グレードAの良いビルに移りながらコストは据え置き〜減少」**という“フライト・トゥ・クオリティ”が起きています。
リテール・商業
- モールは供給過多気味、郊外型中心に競争激化
2024年後半時点で、プノンペンのリテールモール供給は約870,520㎡/60モール。今後3年で約32%増の**約115万㎡まで拡大が見込まれています。(content.knightfrank.com)
一方で平均稼働率は64.5%(前年比▲3.5pt)**と低下しており、特に二級立地のモールはテナントリーシングに苦戦しています。 - 賃料とテナントミックス
プライムモール賃料は、- プライム:18〜28ドル/㎡・月
- セカンダリー:10〜22ドル/㎡・月
とされますが、実際には5〜12%程度の下落が確認されており、売上歩合や内装費支援などを組み合わせた柔軟な契約が増えています。(content.knightfrank.com)
テナント構成はF&B・エンタメ・体験型テナントの比重が高まり、ショールーム+オンライン販売の“オムニチャネル前提”の使い方が増えています。
ホテル・観光
- 観光はコロナ前超え、ホテル供給は高級化
観光は2024年に国際観光客6.7百万人と、ついにコロナ前の水準を上回りました。これに合わせてプノンペンのホテル供給は約1.6万室(前年比+7%)に達し、2028年には約1.93万室まで増える見込みです。(content.knightfrank.com) - ブランドホテルの進出
2024年にはシャングリラをはじめ複数の3〜5つ星ホテルが開業しており、今後もWyndhamなど国際ブランドの開業が予定されています。(content.knightfrank.com)
クラス構成は、- ラグジュアリー・アップスケール:25%
- アッパーミドル:32%
- ミッドスケール・エコノミー:43%
と、今後は高級・アップスケール比率が高まる方向です。
- 稼働とADRのイメージ
Knight Frankによれば、観光省統計ベースの平均稼働率は**約78%**とされていますが、実際のマーケット感覚では、- 中心部のビジネスホテル:平日6〜7割、週末7〜8割
- 観光シーズンのシェムリアップ・沿岸リゾート:ハイシーズン高稼働/ローシーズンの落ち込み
といった「シーズナリティは残るが、全体は明らかに回復」という局面です。(content.knightfrank.com)
物流・工業
- SEZ・工業団地への需要は堅調
プノンペン周辺〜国境エリア(プノンペン経済特区、スバイリエン、ポイペト周辺)では、- 中国+1、タイ+1を狙う製造業のシフト
- EC・軽工業向けの賃貸倉庫需要
がじわじわ増加しています。
現地ブローカーのレポートでは、 - プライム工業地の長期リース(40〜50年):総額換算で60ドル/㎡前後
- 標準的なレンタル工場・倉庫:2.5〜3ドル/㎡・月
といった水準が多く、インフラ整備の進んだパークではプレミアムが付きます。
- 課題はインフラと電力コスト
港湾・高速道路などのインフラ整備は進みつつあるものの、- 電力単価の高さ
- 通関・手続きの煩雑さ
など、ベトナムやタイと比べてハンディも残っています。
その分、地代・人件費の割安さを武器に、ラボ型の組立・軽工業や部材加工が集積する動きが強いです。
REIT・資本市場
- カンボジアでは本格的な上場REIT市場はまだ立ち上がっておらず、実務的には
- 不動産開発会社の株式
- トラストスキームを使った私募型ファンド
- 海外上場REIT(シンガポール等)を通じて間接的にカンボジア資産に投資
といった形が中心です。
- ここ数年でトラスト法制・コレクティブインベストメントスキームの整備が進み、今後は証券取引所上場のREITを視野に入れた動きが出てきていますが、2025年時点では「準備段階」という位置づけです。
制度・規制トピック
- 外国人の所有ルール
- 外国人は土地そのものの直接所有は不可
- ただし、コンドミニアムなどの区分所有(ストラータタイトル)は建物の1階より上で全床面積の70%まで外国人所有可(実務上は“コンド投資”がメインのルート)
- 土地利用は、最長50年程度の長期リース+オプション延長や、カンボジア人パートナー多数出資会社を経由するスキームが一般的です。
- 税制・キャピタルゲイン
不動産譲渡益に対する**キャピタルゲイン税導入(20%)**は何度か延期されており、実務上は- 登録税(譲渡時4%)
- 年間の不動産税(0.1%)
等が中心ですが、「中長期的には譲渡益課税が本格導入されるリスク」を意識しておく必要があります。
投資家への示唆(セグメント別)
- 住宅(コンド・サービスアパート)
- 価格は全体として調整済み+横ばいで、今後も爆発的な値上がりより「選別的な底打ち」がメインシナリオです。
- **ミッド〜コアの実需・賃貸需要が厚い立地(Chamkarmon、BKK1周辺など)**に絞れば、家賃利回り6〜8%を狙いやすい一方、郊外や過度に高級な案件は空室と値下がりリスクが大きいです。
- オフィス
- テナントにとっては借り手市場で、グレードAの良いビルへの移転チャンスがあります。
- 投資家目線では、完成済み・安定稼働ビルをディスカウント価格で取得→テナント入替・リノベで再ポジショニングといったバリューアップ型戦略が中心になりやすい局面です。
- リテール・商業
- 供給過多とECシフトで、ショッピングモール投資はかなり目利きが必要です。
- 地域密着型のコミュニティモールや、F&B・エンタメに特化した小型商業施設など、「住宅地に根ざした日常消費」を狙う形が相対的に堅いと考えられます。
- ホテル・観光
- 観光は大きく回復し、2025年以降も国際空港の整備・観光プロモーションを背景に中長期のポテンシャルは高いです。
- ただ、ホテル開発案件は既に豊富で、特にラグジュアリークラスは競合も多いので、ブランド・ロケーション・オペレーターの実力を厳しく見る必要があります。
- 物流・工業
- 「中国+1」「タイ+1」としての製造基地・ロジ拠点としては、賃料の割安さと若年労働力に強みがあります。
- 投資判断では、港・国道・国境・電力網へのアクセスを最優先にチェックし、「汎用性の高いレイアウト+将来の用途転換余地」を持つ物件に絞るとリスクを抑えやすいです。
リスク・留意点
- 住宅・商業の供給過多
コンド・リテールともに供給が厚く、売れ残り・空室・賃料調整がしばらく続く可能性があります。完成遅延・中止リスクも、デベロッパーによっては無視できません。 - 規制・税制の変化
キャピタルゲイン課税など、税制整備が進むと「ネット利回り」が想定より低下するリスクがあります。外国人所有規制の運用や長期リースの扱いなども、契約前に専門家チェックが必須です。 - 為替・国際金融環境
ドル建て経済である一方、投資家の本国通貨との為替変動、世界的な金融引き締め・緩和サイクルに左右されやすく、出口時の為替レートがリターンに大きく影響します。 - 流動性リスク
ベトナム・タイなどと比べると市場の厚みはまだ小さく、大口の売却時に買い手が限定される=価格ディスカウントを強いられるリスクがあります。
まとめ
2025年時点のカンボジア不動産は、住宅・リテールの供給過多による調整局面と、オフィス・ホテル・物流の選別的な成長が同時に進んでいる状況です。
住宅はコロナ前ピークからの価格調整を一通りこなして、ミッド〜コアの実需・賃貸ニーズに軸足を移している段階であり、オフィスは借り手市場の中でグレードAへの移転需要が続いています。リテールは明確なオーバーサプライですが、F&Bや体験型テナントを核にしたコミュニティ型は依然として余地があります。観光はコロナ前を上回る回復を見せ、ホテル・サービスアパート・住宅賃貸の底上げ要因になっています。
投資家にとっては、「価格調整済みの優良資産を、適切な利回りで拾える局面」である一方、デベロッパーの信用力、位置・商品コンセプト、税・規制の変化を慎重に見極める必要がある市場だと言えます。
