海外の物件を見に行く前に、その国が公的にどう格付けされているかを一度見ておくと、現地の営業資料だけでは分からない足もとが見えます。日本には、政府が100%出資する機関が公表している国・地域ごとの区分があります。
株式会社日本貿易保険(NEXI)が公表している「国カテゴリー表」は、Aが最も良く、Hが最も厳しい8段階です。2026年9月14日現在の表には219の国・地域が掲載され、注記でさらに6の地域が同じカテゴリーとして扱われています。
区分はNEXIが単独で決めるものではありません。NEXIのページには、OECDカントリーリスク専門家会合でそれぞれの評価が決定され、NEXIはその評価を基にカテゴリーを決めていると書かれています。
固定された表ではなく、2026年だけで3月・6月・9月の3回変わりました。9月の回ではギリシャがFからDへ2段階上がり、キプロスがEからDへ上がっています。
A〜Hの8段階に219の国・地域が入っている
NEXIの国カテゴリー表は、アジア・中近東/ヨーロッパ/北中米/南米/アフリカ/オセアニアの6地域に分けたうえで、各国をAからHのいずれかに置いています。2026年9月14日現在の表を数えると、掲載は219の国・地域です。いちばん厚いのはHで、219のうち74がここに入ります。
| カテゴリー | 掲載数 | 入っている国・地域の例 |
|---|---|---|
| A | 23 | 日本、シンガポール、ドイツ、フランス、英国、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド |
| B | 12 | 大韓民国、アイルランド、スペイン、マルタ、エストニア、チェコ、スロバキア |
| C | 22 | 中華人民共和国、台湾、香港、マレーシア、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、カタール、ポルトガル、ポーランド、チリ |
| D | 25 | ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、インド、イスラエル、キプロス、ハンガリー、ギリシャ、メキシコ、モロッコ |
| E | 15 | アゼルバイジャン、セルビア、パナマ、ブラジル、コロンビア、南アフリカ共和国 |
| F | 20 | トルコ、カザフスタン、ウズベキスタン、ジョージア、アルメニア、ヨルダン、アルジェリア、フィジー |
| G | 28 | モンゴル、カンボジア、バングラデシュ、ネパール、バーレーン、エジプト、ナイジェリア、タンザニア |
| H | 74 | パキスタン、スリランカ、ミャンマー、ラオス、ロシア、ウクライナ、アルゼンチン、ケニア、エチオピア、南スーダン共和国 |

Aに入っているのは日本とシンガポールのほか、西欧の主要国、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドです。表の「アジア・中近東」の列でAに入っているのは、日本とシンガポールの2つだけです。この列のほかの国はCから下に置かれています。香港・マカオ・台湾・中国はいずれもCです。
表には国名のほかに3桁の国コードが付いています。シンガポールは112、日本は192、アメリカ合衆国は304という具合です。変更の告知も国名と国コードの組み合わせで出されるため、どの国の話なのかが一意に決まります。
決めているのはOECDの専門家会合。NEXIはその評価を基にする
国カテゴリー表の冒頭には、区分がどのように決まるかが書かれています。OECDカントリーリスク専門家会合において、国ごとの債務支払状況や経済・金融情勢等の情報に基づいて議論が行われ、それぞれの評価が決定されます。NEXIもこの会合にメンバーとして参加しており、NEXIはこのOECDの評価を基に国・地域のカテゴリーを決めていると説明しています。
この成り立ちから分かることが2つあります。ひとつは、カテゴリーが景気の印象や報道の量ではなく、債務の支払状況という具体的な材料から組み立てられていること。もうひとつは、日本の一機関の独自判断ではなく、国際的な枠組みの評価を踏まえていることです。
この表は貿易保険の引受方針に使うための区分です。不動産の値上がりやすさ、治安、住みやすさを直接測ったものではありません。カテゴリーが良いことは、その国の物件が有利であることを意味しません。
NEXIのページにも、保険種によって引受方針に違いがあり、具体的な引受基準は貿易保険規程集の第13部を参照するか窓口に相談するように、との注意書きが置かれています。
2026年だけで3回変わった。直近はギリシャが2段階上がった
NEXIの「国・地域ごとの引受方針」のページには、引受方針の変更が日付つきで並びます。2026年は3月24日・6月29日・9月7日の3回、国カテゴリーの変更が告知されました。このほかに5月22日と7月24日に、OECDの持続可能な貸付勧告の対象国の分類更新も出ています。

直近の2026年9月7日の告知では、6つの国・地域が動きました。実施日は9月14日で、いま公開されている表はこの変更を反映したものです。
| 告知日 | 実施日 | 国・地域(国コード) | 変更 |
|---|---|---|---|
| 2026年9月7日 | 2026年9月14日 | アイルランド(206) | C → B |
| ギリシャ(230) | F → D | ||
| キプロス(233) | E → D | ||
| クロアチア(241) | D → C | ||
| 英領バージン諸島(332) | A → B | ||
| セントビンセント・グレナディーン諸島(336) | G → H | ||
| 2026年6月24日 | 2026年7月6日 | ベトナム(110) | E → D |
| ナミビア(550) | G → F | ||
| 2026年3月17日 | 2026年3月31日 | サンピエール島・ミクロン島(仏)(303) | C → D |
| アンギラ(英)(337) | D → C | ||
| セント・マーチン(仏)(384) | D → E |

11の国・地域のうち、良い方向へ動いたのが7、悪い方向へ動いたのが4でした。幅がいちばん大きかったのはギリシャで、FからDへ2段階です。キプロスもEからDへ上がっています。ベトナムは7月6日実施でEからDになりました。
ここで分かるのは、半年から1年も前に書かれた区分の一覧は、そのままでは使えないということです。国名とカテゴリーを引くときは、告知の実施日と、表の上部に出ている「◯年◯月◯日現在」を一緒に見る必要があります。
主な投資先の現在のカテゴリー
当サイトで扱っている国・地域を、2026年9月14日現在の表から抜き出すと次のようになります。アジアの新興国はDからGに広く散り、中東の産油国はCに集まっています。
| 国・地域 | 国コード | カテゴリー | 同じカテゴリーにいる国の例 |
|---|---|---|---|
| アラブ首長国連邦(ドバイ・アブダビ) | 147 | C | マレーシア、台湾、ポルトガル |
| マレーシア | 113 | C | 中華人民共和国、サウジアラビア、ポーランド |
| タイ | 111 | D | ベトナム、フィリピン、インドネシア |
| ベトナム | 110 | D | インド、メキシコ、ハンガリー(2026年7月6日にEから変更) |
| フィリピン | 117 | D | タイ、ギリシャ、モロッコ |
| インドネシア | 118 | D | インド、オマーン、ウルグアイ |
| キプロス | 233 | D | イスラエル、ギリシャ(2026年9月14日にEから変更) |
| メキシコ | 305 | D | コスタリカ、ペルー、ボツワナ |
| トルコ | 234 | F | カザフスタン、ジョージア、ジャマイカ |
| ウズベキスタン | 152 | F | アルメニア、ヨルダン、ナミビア |
| カンボジア | 120 | G | モンゴル、バングラデシュ、エジプト |
| エジプト | 506 | G | ナイジェリア、ウガンダ、ボスニア・ヘルツェゴビナ |
キプロスは2026年9月14日にEからDへ上がりました。永住権と不動産の関係はユーロ圏の永住権とキプロス不動産で扱っています。メキシコは制限区域の仕組みがあり、国境100km・海岸50kmの信託の仕組みに書きました。タイの購入条件はタイのコンドミニアム購入ガイドにまとめています。
カテゴリーから読み取れること・読み取れないこと
読み取れること
債務の支払状況や経済・金融情勢をもとにした、公的機関の現時点の評価。同じカテゴリーに入る国どうしが、その観点では近い位置にあること
読み取れないこと
物件価格の見通し、賃料水準、外国人の所有可否、治安、生活環境。これらはカテゴリーとは別の資料で確かめる必要がある
使い方
出発点であって結論ではない。カテゴリーが低い国を外すためではなく、どこを重点的に調べるかを決めるために使う
投資先を調べるときの使い方
カテゴリーを調べてから物件を見るまでの順番
- 表の日付を先に見る
国カテゴリー表の右上にある「◯年◯月◯日現在」を確認する。2026年は3回変更があったため、半年前の写しは実際と食い違う - 国コードで引く
同じ地域に似た名前の国・地域がある。国コードまで合わせると取り違えが起きない - 直近の変更告知を見る
「国・地域ごとの引受方針」のページに告知が日付順に並ぶ。実施日が先の日付なら、表はまだ反映前のことがある - 別の資料と突き合わせる
外国人の所有可否や送金の規制は、カテゴリーとは別に国ごとに調べる。日本側で必要な報告は海外不動産の規制と報告・調書にまとめている
カテゴリーが下のほうだからという理由だけで投資先を外す使い方はおすすめしません。HやGに入っている国にも、外国人が購入できる制度を整えている国があります。逆にカテゴリーが上でも、外国人の所有が制限されている国はあります。トルコはFですが居住と不動産の制度が整っており、トルコへの移住で扱っています。
よくある質問
- カントリーリスクの評価は何段階ですか。
- NEXIの国カテゴリー表はAからHの8段階です。Aが最も良く、Hが最も厳しい区分になります。2026年9月14日現在の表には219の国・地域が掲載され、注記でさらに6の地域が同じカテゴリーとして扱われています。
- 誰がこの評価を決めているのですか。
- NEXIのページには、OECDカントリーリスク専門家会合において、国ごとの債務支払状況や経済・金融情勢等の情報に基づいて議論が行われ、それぞれの評価が決定されると書かれています。NEXIもこの会合にメンバーとして参加し、OECDの評価を基にカテゴリーを決めています。
- どのくらいの頻度で変わりますか。
- 2026年は3月24日・6月29日・9月7日の3回、国カテゴリーの変更が告知されました。告知日と実施日は別で、9月7日の告知は9月14日実施です。
- 日本はどのカテゴリーですか。
- Aです。アジア・中近東の列でAに入っているのは、日本(国コード192)とシンガポール(112)の2つだけでした。
- カテゴリーが良い国の不動産なら安全ですか。
- この表は貿易保険の引受方針に用いる区分で、不動産の値動きや外国人の所有可否を示すものではありません。NEXI自身も、保険種によって引受方針に違いがあるため具体的な引受基準は規程集を参照するか窓口に相談するよう案内しています。物件の判断には別の資料が要ります。
- いちばん多くの国が入っているカテゴリーはどれですか。
- Hです。219の国・地域のうち74がHに入っており、アフリカの国の多くと、ロシア、ウクライナ、パキスタン、スリランカ、ミャンマー、アルゼンチンなどが含まれます。
まとめ
日本から参照できるカントリーリスクの区分は、NEXIが公表している国カテゴリー表です。AからHの8段階で、2026年9月14日現在の表には219の国・地域が載っています。最も厚いのはHで74、次がGの28、Dの25と続きます。
区分はOECDカントリーリスク専門家会合での評価が土台で、NEXIはそれを基にカテゴリーを決めています。材料は国ごとの債務支払状況と経済・金融情勢です。景気の印象ではなく、支払いの実績から組み立てられている点が、この表の性格を決めています。
そして固定された表ではありません。2026年だけで3回の変更があり、9月14日実施の回ではギリシャがFからDへ2段階、キプロスがEからDへ動きました。ベトナムは7月6日にEからDへ上がっています。引用するときは必ず表の「◯年◯月◯日現在」まで一緒に書き写してください。
参照した一次情報
- NEXI(株式会社日本貿易保険)国カテゴリー表(2026年09月14日現在) https://www.nexi.go.jp/cover/categorytable(2026年10月13日取得)
- NEXI 国・地域ごとの引受方針 https://www.nexi.go.jp/cover/(2026年10月13日取得)
- NEXI トピックス 国カテゴリーの変更(2026年9月7日) https://www.nexi.go.jp/topics/cover/202609021294.html(2026年10月13日取得)
- NEXI トピックス 国カテゴリーの変更(2026年6月24日) https://www.nexi.go.jp/topics/cover/202606241214.html(2026年10月13日取得)
- NEXI トピックス 国カテゴリーの変更(2026年3月17日) https://www.nexi.go.jp/topics/cover/202603171095.html(2026年10月13日取得)
