フィリピンの不動産投資を検討されている皆様へ、現地の経済状況と今後の投資判断に役立つ最新ニュースを解説します。
最新ニュース
2026年1月26日、フィリピンの主要英字紙「Philippine Daily Inquirer」は、マルコス政権下における2025年の経済成長率が政府目標を下回る見込みであると報じました。
エコノミストらによる予測の中央値によると、2025年のフィリピンの実質GDP(国内総生産)成長率は4.8%にとどまる見通しです。これは2024年の5.7%から大きく減速しており、政府が掲げていた「5.5%〜6.5%」という成長目標を3年連続で未達することになります。
今回の発表における主要なポイントは以下の通りです。
- 第4四半期の微増: 2025年第4四半期の成長率は前年同期比4.2%と推定され、第3四半期の4.0%からはわずかに改善しましたが、力強さに欠ける結果となりました。
- 10年ぶりの低水準: パンデミックの影響を受けた2020年を除くと、2011年(アキノ政権下の汚職撲滅キャンペーン時)以来の低い成長率となります。
- 金融政策の動き: 経済の減速を受け、フィリピン中央銀行(BSP)は2025年12月に政策金利を0.25%引き下げ、4.5%としました。2024年8月からの利下げ幅は合計で2.0%に達しています。
ニュースの背景:なぜ経済は減速したのか
今回の成長鈍化には、主に3つの大きな要因が絡み合っています。
- 政府内の汚職捜査と公共支出の停滞
マルコス大統領が命じた「治水事業(Flood control projects)」に関する不正調査が決定的な要因となりました。このスキャンダルには議員や閣僚、技術者が関与しており、調査の影響で公共事業の支出が遅れ、建設部門が停滞しました。これはビジネスや消費者の信頼感(コンフィデンス)を冷え込ませる結果となりました。 - 相次ぐ台風被害
気候変動の影響により、頻繁かつ強力な台風がフィリピンを襲いました。これにより農業生産(特に米)が打撃を受け、消費活動も抑制されました。 - 米国の関税政策と貿易摩擦
記事内では、米国のドナルド・トランプ大統領(※記事時点の2026年文脈)による相互関税措置が世界的な貿易の流れを乱し、金融市場の変動を招いたと言及されています。これがフィリピンの対外貿易にも不透明感をもたらしました。
用語解説
ニュースを正しく理解するために、いくつかの専門用語や背景を補足します。
- BSP (Bangko Sentral ng Pilipinas): フィリピン中央銀行のこと。物価の安定や金融システムの健全性を維持する役割を持ちます。景気を刺激するために金利を引き下げる(利下げ)政策をとっています。
- GDP成長率: 国内で一定期間に生み出された付加価値の合計が、前年と比べてどのくらい増えたかを示す指標。不動産価格の上昇余地を測る上で、経済全体の成長力は重要なベースとなります。
- 治水事業スキャンダル: フィリピンでは台風被害が深刻なため、治水インフラは最重要課題の一つです。しかし、ここに巨額の予算が投じられる一方で、汚職の温床になりやすいという構造的な問題が指摘されています。
ニュースの見解
今回のニュースは、フィリピン不動産投資家にとって「短期的な警戒」と「長期的な期待」の両方を示唆する内容です。
1. 短期的なリスク:インフラ開発の遅れと賃貸需要
公共事業の汚職捜査により、政府主導のインフラ建設が一時的に停滞しています。これにより、特定のエリアで予定されていた開発スケジュールの遅延や、それに伴う地価上昇の鈍化が懸念されます。また、GDP成長の鈍化は、オフィス需要や住宅購入意欲(実需)の回復を緩やかにするため、キャピタルゲイン狙いの短期転売には向かない時期と言えます。
2. 金融緩和による追い風
一方で、経済対策としてフィリピン中央銀行(BSP)が政策金利を4.5%まで引き下げている点は、不動産投資家にとって好材料です。
- 借入コストの低下: 現地でローンを組む場合や、デベロッパーの資金調達コストが下がることで、不動産市場の下支えになります。
- 2026年の回復期待: 多くのエコノミストは、予算執行が正常化すれば、2026年には成長率が5.5%へ回復すると予測しています。
3. 投資家が取るべき戦略
「AI主導による電子機器への需要増」という明るい材料もあり、フィリピンの輸出産業自体は底堅さを見せています。
今後は、政府のインフラプロジェクトに過度に依存したエリアよりも、民間主導で既に実需(BPO企業や駐在員需要)が存在するマニラ首都圏の一等地(マカティ、BGCなど)の物件を選別することが、より重要になるでしょう。2025年の減速を「仕込み時」と捉えるか、回復を確認してから動くか、慎重な判断が求められます。
