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エジプト政府が、不動産市場の「透明性アップ」と「外国人投資の呼び込み」を狙って、制度と手続きをまとめて作り直す動きを加速させています。
- 2026年1月27日(火)、米国商工会議所(AmCham Egypt)の年次不動産会議 「Egypt Rising: Real Estate as a Regional Powerhouse」で、Ahmed Ibrahim(アハメド・イブラヒム)氏が改革内容を説明しました。イブラヒム氏は、新都市コミュニティ庁(NUCA)の計画・プロジェクト担当副長官(Vice Chairperson)であり、住宅・公共事業・新都市コミュニティ省の副大臣(Deputy Minister)も兼ねる要職です。
改革の柱1 不動産業者に「プロ免許」を導入
ニュースで強調されたのが、仲介・販売など不動産実務者の厳格なライセンス制度です。カナダのように、
- 研修受講を必須化
- ルール違反があれば免許停止・取り消し
といった仕組みを参考に、エジプトでも「誰でも仲介できる」状態を改め、投資家保護と業界の質を上げる狙いだと説明しています。
※用語解説:プロフェッショナル・ライセンシング
国が定めた基準を満たした人だけが、不動産取引の業務を行える仕組みです。無資格業者や強引な販売を減らしやすくなります(制度設計次第で実効性が変わります)。
改革の柱2 「面積表記」を統一して、開発業者の説明ブレを減らす
もう1つの大きな論点が、物件の面積基準(ネット/グロス)の統一です。エジプトでは、開発会社、コンサル、自治体、登記側で面積の扱いがズレることがあり、国内外投資家にとって不透明さの原因になってきた、と課題認識が語られています。
- ネット面積(net area):室内など、実際に使える専有部分中心
- グロス面積(gross area):共用部按分などを含めた広めの算定になりやすい
このズレがあると、「同じ80㎡に見えても実際の使い勝手が違う」「㎡単価の比較が崩れる」といった問題が起きます。
改革の柱3 中央データベースを整備し、価格をEGPとUSDで表示へ
投資判断(フィージビリティ)に使えるよう、中央集約の不動産データベースを開発中で、オンラインで閲覧できる形を目指すとされています。さらに、物件価値をエジプトポンド(EGP)と米ドル(USD)の両方で表示する構想にも触れています。
※用語解説:フィージビリティ(feasibility study)
投資採算の検討のことです。想定賃料、稼働率、維持費、売却価格、為替などを置いて「成立するか」を見ます。
改革の柱4 外国人が「買う〜登記する」をデジタルでつなぐ
最大の実務インパクトになり得るのが、不動産輸出(real estate export)向けの統一デジタル・プラットフォームです。
通信省・司法省・内務省と連携し、自治体(municipal authorities)と不動産登記(real estate registry)を直接つなぐことで、非エジプト人購入者が購入〜登記までを、より簡素で透明な手続きで進められるようにする、と説明されています。
※用語解説:不動産輸出(Real estate export)
「不動産を海外に売る」という意味で、外国人・海外在住者に購入してもらい、外貨流入を増やす政策文脈で使われます。実際、エジプトは不動産プラットフォームを外貨獲得の仕組みとして位置づける発信もしています。
改革の柱5 新都市の「都市データ観測」も強化
NUCAの「Urban Observatory(都市オブザーバトリー)」を稼働させ、新都市の都市データを集めて分析し、投資家・政策立案側の参照情報にする構想も示されました。
背景 なぜ今「統一ルール」と「オンライン化」なのか
今回の改革は、単なるIT化ではなく、投資家が不安に感じやすい“取引の不透明さ”を制度で潰しにいく動きです。加えて、エジプトはここ1〜2年、外国人・海外在住者の購入を促すための公式プラットフォーム整備を進めており、2025年12月18日にも統一デジタルプラットフォームの立ち上げが報じられています。
ニュースの見解
日本人の海外不動産投資家目線では、今回の流れは「買いやすさ」だけでなく、“調べやすさ・比較しやすさ”が改善する可能性がポイントです。
- プラス影響(期待)
- 面積基準(ネット/グロス)が統一されれば、㎡単価比較・賃料単価比較の精度が上がります。
- 中央データベースが整うと、過去の相場感やエリア比較がしやすくなり、デベロッパー任せの情報から一歩抜けられます。
- 購入〜登記がデジタルでつながれば、外国人にとって最大の壁になりがちな手続き不透明・時間ロスが減る可能性があります。
- 注意点(投資判断としての現実)
- こうした改革は「発表直後は移行期」になりやすく、現場の運用が追いつくまでのブレが出ることがあります。最初の数年は、案件ごとに手続きの実態を確認する姿勢が必要です。
- 面積統一が進むほど、逆に「これまで広めに表示されていた物件」の見え方が変わり、価格の妥当性評価がシビアになります(悪いことではなく、適正化の一種です)。
- 公式プラットフォームの整備が進んでも、物件の品質・管理体制・賃貸需要は別問題です。データが整うほど、立地や供給過多のリスクも可視化されるので、エリア選別が重要になります。
結論としては、エジプト不動産は「制度整備による投資環境の改善フェーズ」に入りつつあると見ます。短期では移行期の摩擦に注意しつつ、制度が本格稼働した後を見据えて、
- 面積定義(ネット/グロス)の確認
- 登記導線(誰がどこまで代行し、どこで完了するか)の確認
- データベースや公式プラットフォームの情報を使った相場検証
を前提に、案件を選別していくのが堅実です。
